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終章第九話 船旅

 キャリアーとの戦いに勝利したセルフィたちは造船所で船を買い、大規模破滅(カタストロフィ)の中心地である中央大陸へと向かうべく大海原へと繰り出した。一行は中央大陸へと向かう前に、船の燃料を確保するため、火山地帯が多く鉱石や燃料といった資源が豊かなフレイヤード大陸を目指すのであった……。

 

 シザーリーパーとの戦いの後、セルフィたちを乗せた船はフレイヤード大陸を目指し進んでいく。

「船は進んでいるけど大陸らしき影は見当たらないわね。フレイヤード大陸に到着するにはまだまだかかりそうみたいね。」

見張りを続ける二人の前にレナードが現れ、船の見張りを終えて戻るようにと伝える。

「そろそろ夕暮れ時だな…夜になると魔物も活発になるので、聖水を甲板に撒いて少しでも魔物が入ってこないようにしよう。二人とも、そろそろ夕食にするので見張りを終えて部屋に戻ってくれ。」

セルフィとミシュリアに部屋に戻るようにと伝えた後、魔除けの効果を持つ聖水を甲板に振りまいていく。船の扉に魔物が嫌う音を発する破魔鈴を取り付け、さらに退魔の効果を高める。

「魔物対策さえしっかりしておけばこれで夜の航海も安心だ…さてと、そろそろ夕食の支度にとりかかるとしよう。」

魔物除けの準備を終えたレナードは船内にある厨房へと向かい、夕食を作る準備を進める。

 「海に出る前に市場で買った食材はどれも新鮮でいい料理が作れそうだ…今日の夕食は海鶏とハーブを使った肉料理と、セルディアレタスとウォーターカクタスのさっぱりサラダにしよう。」

レナードはアドリアシティで購入した新鮮な食材を取り出し、華麗な手さばきで調理していく。料理の知識が豊富なレナードにかかれば、食材が美味なる料理と生まれ変わっていく。

「なかなかいい料理ができた。みんな腹を空かせているからおいしく食べてくれるといいのだが……。」

調理を終えたレナードは作った料理を手に、部屋で待つセルフィとミシュリアのもとへと向かう。

「遅くなってすまない、今日の夕食は海鶏の香草焼きとセルディアレタスとウォーターカクタスのさっぱりサラダだ。私は作った料理を他人に振舞うのは初めてだから、美味いかどうかは各自で判断してくれ。」

レナードは出来た料理を皿に盛りつけた後、お腹を空かせたセルフィとミシュリアはレナードが作った料理を口にする。

「この鶏肉の香草焼き、塩味と香草のダブルパンチな味で美味しいわ。それにサラダも歯ごたえがあって、野菜独特の瑞々しさが口の中に広がってくる感じよ。」

「肉と野菜のバランスがとれていて、とても美味しいわ!!レナードさん、こんなに美味しい料理を作ってくれてありがとうございます!!

美味しい料理を食べて喜びの表情を浮かべる二人を見たレナードは、嬉しさのあまり顔を赤くして恥ずかしがる。

「私が愛情を込めて調理した料理を食べて喜ぶ顔を見ていると、私も嬉しくなってしまうではないか。さて、私もお腹が空いたことだし食事にするとしよう。」

レナードは自分の分の料理を皿に盛りつけた後、三人はテーブルを囲んで夕食を楽しむのであった……。

 

 夕食を食べ終えた三人は航海を一時中断し、夜明けが来るまで休息を取っていた。二人が寝静まった後、レナードは甲板に出て何やら準備を始めていた。

「食料調達も大事な仕事だ…みんなが寝静まった後で食料調達をしておけば、料理のバリエーションも増えて空腹には困らないからな。さて、糸使いの私にかかれば魚を獲ることぐらい朝飯前さ。だが魔物だけは勘弁だけどな!!

レナードは見えない糸を網状に束ねた後、それを海へと投げ入れる。

「見えない糸を網状にしてから海に投げ込めば、海を泳ぐ魚は簡単に引っ掛かってくれるだろう。後は魚が引っ掛かるまで船内で仮眠をとりながらしばし待つだけだ。」

見えない糸で作られた網を投げてから一時間後、レナードは海に投げた網を力いっぱい引き揚げる。網の中には料理に使えそうな魚が数匹網にかかっており、なかなかの漁獲量であった。

「おおっ!!たくさん魚がかかっているぞ…この量だと数日分の食料になりそうだな。あと水揚げされた魚の中に闘刃鮫(ランブルシャーク)がかかっていたようだ。こいつの体に生えている無数の刃と鋭い牙は良質な武器の材料として重宝され、武器屋に持っていけば高値で買い取ってくれそうだ。食べられる所といったらヒレだけか…鮫の魚肉は鮮度が落ちるとアンモニアが発生してとてもじゃないが食えたものじゃないし、他の食材にもアンモニアの臭いが移ったりするから海に投げ捨てておこう。海に投げ捨てておけば他の生き物が食べてくれるだろう。」

ランブルシャークから使えそうな部位を剥ぎ取った後、レナードはランブルシャークの死体を海へと放り投げる。食料調達を終えたレナードは水揚げした魚を新鮮なうちに冷凍保存した後、寝室へと戻り眠りにつくのであった……。

 

 翌朝、セルフィたちより早く起床したレナードは厨房へと向かい、朝食の準備に取り掛かっていた。昨日の夜に捕まえた新鮮な魚と、滅多に獲れない火喰鳥の干し肉を使った料理を作るようだ。

「さて、今日の朝食は昨日獲れた魚とフレイヤード大陸に生息するきわめて凶暴な鳥の火喰鳥の干し肉を使った料理を作るとしよう。火喰鳥の脚肉はそのまま焼いて食べても美味いが、燻製した後で干し肉にすれば栄養価が凝縮されるうえ、保存食にもなるから便利だな。」

レナードは三等分した火喰鳥の干し肉と、魚の切り身とともに皿に盛りつけていく。調理を終えたレナードはテーブルに三人分の料理を並べた後、まだ眠りについているセルフィとミシュリアを起こすべく寝室へと向かう。

「セルフィ、ミシュリア。朝食ができたので早く起きたまえ。」

二人は眠たい目をこすりながら、ゆっくりとテーブルへと向かっていく。二人が椅子に座ったのを確認すると、レナードは今日の朝食のメニューを伝える。

 「今日の朝食は火喰鳥の干し肉とこの近海で獲れる魚の切り身だ。私が作った料理、美味しく食べてくれよ。」

レナードの言葉の後、セルフィたちはテーブルを囲んで朝食を食べ始める。全員が朝食を終えた後、レナードはこれからの旅の予定をセルフィとミシュリアに伝える。

「さて…今日中にフレイヤード大陸に上陸するため、全速力で船を進める予定だ。私たちの船が到着するまで、二人はしばらく釣りでもしながら時間をつぶしてくれ。アドリアシティを出る前に市場で釣り竿は普通の性能のものを5つほど買って物置小屋に置いてあるから、自由に持って行ってくれたまえ。生きた餌は野菜などの食材を食べてしまう可能性があるので買わなかったが、朝食の調理の際に出た魚の食べられない部位ならいくらでもあるぞ。それを餌に使えば魚は食いつくかもしれないな。後は運とタイミングだ!!

レナードは朝食の調理で出た魚の不要な部位をセルフィに渡した後、船を進めるべく操縦室へと向かっていく。餌を受け取ったセルフィとミシュリアは物置小屋から釣竿を持ち出し、すぐさま釣りの準備にとりかかる。

「ミシュリアは釣りは初めてそうだから教えてあげるわ。釣りというのはね、針のついた糸を水に垂らして魚を獲る昔ながらの狩猟方法よ。針に餌となるものを刺して海に放り投げた後、魚が食いつくまで待つ忍耐力が必要よ。魚が食いついたら竿を引いて魚のスタミナを奪い、一気に水面に上げれば食材をゲット出来るわ!!しかし魚との戦いに負ければ餌を取られて逃げられるから注意してね。」

「私、子供の頃からずっと王宮の中にいたのでこのような娯楽は一度もしたことがないので…セルフィさん、もしわからないところがあったら教えてくださいね。」

釣りが初めてのミシュリアはセルフィに教わりながら、釣りのための準備を進めていく。

 「準備はできたようね…それじゃあ糸を水面に垂らしてちょうだい。その状態でしばらく待っていれば獲物はかかってくるわ。」

二人は糸を水面に垂らし、獲物がかかってくるのを待つ。その状態で待つこと数十分後、セルフィの竿に魚がヒットしたのか、大きくしなり始める。

「おっ、私の竿に獲物がかかってきたようね…しかもこの感触は大物の予感がするわっ!!

セルフィは竿を大きく引き、魚のスタミナを徐々に奪っていく。しかしヒットした大きな魚はスタミナが高く、凄まじいパワーで針のついた糸を海底へと引きずりこむ。

「やばい…このままの状態が続けば針ごと持って行かれそうだわ!!だが私は負けないわ…かならず釣り上げてやるんだからっ!!

全速力で海の底へと逃げようとする魚に対し、セルフィは竿を握る両腕に力を込めて魚を水上へと引き上げていく。大物との数十分にわたる格闘の末、セルフィはついに大きな魚を釣り上げた。

「はぁはぁ…やっと釣れたわ。まさかかかってきた奴がこれほど大きい奴だったとは驚いたわ。とりあえずレナードにこいつが食べられる魚かどうか見てもらった方がよさそうね。私はレナードを呼んでくるから、あなたは釣りをしながらここで待っててください。」

「凄いですねセルフィさん。これほど大きな魚なら、三日分の食料になりそうね。」

その数分後、セルフィに連れられて甲板へとやってきたレナードが釣り上げた魚を見定め、セルフィとミシュリアに釣り上げた魚の詳細を話し始める。

 「こ…こいつは深海に棲む古代魚、フォッシルメガリアじゃないか!!こいつの鱗は強度が凄まじく、強力な防具の素材になり、その口にびっしりと生えている牙は凶悪なほどの切れ味を持っている幻の魚だ。とりあえずこいつを締めてから鱗と牙を剥ぎ取るとしよう。」

レナードは切れ味の鋭いメタルスライサーを取り出し、魚の急所である延髄と尾の付け根に切り込みを入れて血抜きを施す。フォッシルメガリアの締めを完了した後、レナードは武具の素材となる牙と鱗を剥ぎ取り、冷凍保存する。

「ふぅ…一匹だけでもたくさんの武具素材を手に入れることができた。古代魚や深海魚の肉は高く売れるから、食材屋に卸せばかなりの金が入りそうだな。ところで、あの大物を誰が釣り上げたんだ?

「私があの大物を釣り上げました。引きが強くて何十分も粘ってようやく釣り上げたのよ。」

自分が釣り上げたとのセルフィの言葉に、レナードはセルフィの持つ潜在能力に脱帽する。

「ま、まさかセルフィがあれほどの大物を釣り上げてしまうとは!?美しく華奢なスタイルをした体にどれほどの強大なる力を隠しているというのだ……。」

レナードが操縦席へと戻ったあと、セルフィとミシュリアは釣りを再開する。水面に糸を垂らして待つこと数分後、ミシュリアの竿がしなり始める。

「セ、セルフィさん!!私の竿にも魚がかかりました!!

「まずは魚の動きを感じ取り、竿を引っ張って一気に引き上げるのよ!!うまく竿を上げるタイミングを合わせないと針が口から抜けて逃げられちゃうわよっ!!

セルフィからアドバイスを受けながら、ミシュリアは竿を引き上げてヒットした魚を徐々に水面へと引き上げていく。魚との数分間の格闘の末、ミシュリアは魚を釣り上げることに成功する。

「やったわ!!少し小ぶりの魚ですが…初めて自分で釣った魚なので嬉しいですわ。セルフィさんの適切なアドバイスのおかげです!!

「サイズは小ぶりだが、これなら食料になりそうね。船がフレイヤード大陸に到着するまで釣りを楽しみましょう。」

セルフィとミシュリアはフレイヤード大陸に到着するまでの間、引き続き食料を調達するべく釣りを続ける。その数時間後、セルフィたちを乗せた船はついにフレイヤード大陸の港町に到着した。

 「二人とも、フレイヤード大陸に着いたぞ!!上陸のための準備を進めるぞ!!

レナードの言葉を聞いた二人は釣りを終了し、釣れた魚の入った魚籠を手に船内へと向かう。

「釣果はまずまずってところね。到着するまで二人で10匹ぐらい釣れたわ。レナード、魚を保存するための冷凍保存室の氷は船に戻るまでには持ちそうかな?

「この船にある冷凍保存室の氷は高い冷却機能を持つ極氷塊を使っているから一カ月ぐらいは持つだろうが、フレイヤードは火山地帯が多い国だから当然溶けるスピードも早くなる。目的を終えて急いで出港すればセーフってところかな。釣った魚は私が冷凍保存室に入れておくから、君たちは早く旅の支度をしたまえ。」

セルフィは二人で釣った魚をレナードに手渡した後、二人は急いで旅の支度を済ませ甲板へと向かう。その数分後、釣った魚の冷凍保存を終えたレナードが二人のもとに現れ、出発の号令を伝える。

「みんな準備はいいか…この船を降りたらフレイヤード大陸だ。私から先に言っておくが、ニルヴィニアが放った魔物がこの大陸にもいるかもしれないので、常に警戒を怠らないようにな。さて、そろそろ新大陸の第一歩を踏み出そうではないかっ!!

レナードの言葉の後、セルフィたちは船を降りてフレイヤード大陸の港町へと向かうのであった……。

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