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終章第十話 人狩鬼(マンハンター)

 船を手に入れたセルフィたちはアドリアシティの港を後にし、火山地帯が多く燃料資源が豊富なフレイヤードを目指すべく大海原へと繰り出した。途中海上で魔物の襲撃もあったが、一日かけてフレイヤードの港町に到着した。

 

 セルフィたちがフレイヤードを目指して船を進める中、第二収容所の囚人たちを解放したリリシアたちは地上界の人間が収容されている第三収容所を目指す一方、ニルヴィニアは脱獄したリリシア達を葬るべく魔物を次々と生み出し、作業要員であるヘルズヒューマノイドの手によって第三収容所付近へと運ばれていた。

「第三収容所ノ周辺ニ到着…タダチニ魔物ヲ放チマス。」

その言葉の後、第三収容所周辺に到着したヘルズヒューマノイドたちは筒を取り出し、蓋を開けて地面に投げつけた瞬間、凶暴な魔物が次々と筒の中から現れる。

「コイツハ鋭イ嗅覚デ人間ノ匂イヲ察知シ、両腕ニ備ワル刃デ人間ノ肉ヲ切リ裂イテ食ラウ残忍ナル食人鬼…マンハンターダ。コイツハ特ニ取リ扱イガ難シク、下手ヲスレバ俺タチマデ食ワレチマウカラコウヤッテ筒ニ閉ジ込メテルワケダ。魔物ヲ放チ終エタラスグニ黄金郷ニ戻ルゾ…全員食ワレタラタマッタモンジャナイカラナ!!

人肉を好物とする残忍な魔物であるマンハンターを放ち終えた後、急いで転送装置を作動させ黄金郷へと戻っていく。一方放たれたマンハンターは人間の匂いを感じ取ったのか、雄叫びを上げながら気配のある方へと走っていく。

「ギシャアアアアアアアァァッ!!!!

人間の首など容易く切り落とすほどの鋭利さを持つ刃を鳴らしながら、放たれたマンハンターの集団は第三収容所へと向かうリリシア達を葬るべく行動を開始するのであった……。

 

 一方その頃、光迅将軍ファルスと第二収容所の囚人たちを戦力に加えたリリシア達は地上界から連れてこられた囚人たちが収容されている第三収容所へと向かっていた。

「残すところは第三収容所だけね。みんな、かならず生きて帰るべき場所に戻るわよっ!!

「君たちは知らないと思うが、レミアポリスの王宮が突如上空に持ち上げられたという現象が地上界では起こっている。その事件の犯人はフェルスティアに大規模破滅をもたらした新生神ニルヴィニアという奴だ。俺は兵士たちとともに死力を尽くして立ち向かったが奴の魔力は凄まじく、俺たちはなす術なく敗れ第二収容所に連れてこられたというわけだ。」

ファルスが収容所に入れられるまでの経緯を話した後、リリシアもニルヴィニアとの戦いの経緯を話し始める。

「なるほどね…まさかあなたもニルヴィニアと戦っていたとは驚いたわ。私も仲間たちとともにニルヴィニアに戦いを挑んだが、圧倒的な力の前に敗れてしまったわ。私とともに戦ったクリスたちは全員石に変えられ、私は命からがら戦闘から離脱できたが黄金郷の神殿の前で力尽き収容所送りにされたわ。」

リリシアの言葉の後、ファルスは囚人たちを集めてこれからの目的を伝える。

 「そうか…ニルヴィニアとやらはフェルスティア七大魔王の紅一点のお前ですら敵わない相手なのか。どうやら奴はこの地上界を滅ぼした後、新たな世界を創造しようとしているのは確かだ。これから我々は地上界から連れてこられた囚人を解放した後、レミアポリスへと向かう。しかし王宮が上空に持ち上げられた今、皇帝であるアメリア様の生死は不明だがな。話が長くなってすまない…これより第三収容所へと向かい、囚人たちを解放するぞ!!

リリシア達が第三収容所へと向けて足取りを進めていたその時、後列にいた囚人たちが次々と切り裂かれていく。その異変にいち早く気付いたファルスは、すぐさま槍を構えて戦闘態勢に入る。

「囚人たちが何者かによって攻撃を受けた!!戦える者は今すぐ態勢を立て直して迎撃せよ!!

ファルスが振り向いたその時、その眼前には両腕に鋭い刃を備えたマンハンターがそこにいた。マンハンターは殺した囚人の人肉を食らい尽くした後、またすぐに腕を構えて次の囚人に狙いを定める。

 「奴め…これ以上犠牲を増やすことは許さん!!この俺が相手してやるっ!!!

ファルスは槍を構え、他の囚人に襲いかかろうとするマンハンターに攻撃を仕掛ける。しかしマンハンターは素早い動きでファルスの槍の一閃をかわし、すぐさま腕の刃の一撃を繰り出す。

「くっ…奴の動きが速すぎて攻撃が当たらな……うおっ!!

その言葉の後、マンハンターの非情なる腕の刃がファルスの体をかすめる。

「危ない危ない…あと少しヒットする箇所がずれていたら間違いなく大ダメージを受けていたところだった。さて、そろそろ反撃と行くぞ!!

ファルスが再びマンハンターに立ち向かう中、リリシアは第二収容所での解放戦で手に入れた魔力稼働型の回転刃を構え、ファルスの後に続く。

「奴の刃の一撃をまともにもらうと大ダメージは避けられないわ。私には第二収容所で手に入れた魔力稼働型の回転刃がある…回転する刃を魔物の首筋を狙えば致命傷を負わせることができそうね。」

ファルスとリリシアは手にした武器を振るい、次々と腕の刃を構えて襲ってくるマンハンターたちを迎え撃つ。一方別の場所では、ティエラとウルが囚人たちを守るべくマンハンターの群れと戦っていた。

 「奴は素早く動き…相手の急所を狙ってくる。奴の一撃をかわした後で反撃を叩きこむぞ!!

二人は息のあったコンビネーションで数頭のマンハンターを仕留めたが、数の多さに押され徐々に疲労の表情を浮かべていた。

「数が多すぎるわ…倒しても倒してもまた襲ってくるわ!!このままの状況が続けば確実に全滅するかも…。」

「こんなところでうろたえるな!!諦めなければこの過酷な状況でも打破できる…私を信じろ!!

弱気になるウルを励ましながら、ティエラは華麗なる剣技で次々と襲ってくるマンハンターの群れを斬り払う。ティエラ達が奮闘する中、リリシアとファルスは囚人たちを守りながらマンハンターを蹴散らしていく。

「後ろの方でティエラたちが頑張っているおかげで、ある程度は片付いたようだがまだ数体いる。くそっ…こんな時術さえ使えれば簡単に蹴散らせるのだが、魔力を抜かれているので使えん!!

「私だって魔力を全部抜かれてただの非力な女よ…唯一の武器は第二収容所で手に入れた魔力稼働型の回転刃だけよ。術が使えない今、武器だけでこの窮地を乗り切るしかないわっ!!

マンハンターの群れを次々と蹴散らしていくファルスとリリシアの目の前に、他のマンハンターよりも体格が大きく、肩から細長く強靭な腕を生やした魔物が姿を現す。

「やっと最後の一体のようだな…だがこいつは他の個体よりも段違いに大きいぞ。ここは俺が奴を引きつけるから、リリシアは奴の背後に回り攻撃を仕掛けろ!!

槍を構えたファルスがマンハンターのリーダーを引きつける中、リリシアは素早く背後に回り回転刃の一撃を食らわせる。魔力の力で回転する鋭い刃はマンハンターのリーダーの肉を引き裂き、ダメージを与えていく。

「リリシアが背後から攻撃を加えていると言うのに…怯む素振りすら見せない…どうやら奴は」

リリシアの気配に気づいたマンハンターのリーダーがリリシアの方へと振り向き、鋭い腕の刃を振り回して反撃する。しかしリリシアは素早く上空に飛び上がり、あらゆる物を寸断する刃の一撃をかわしマンハンターのリーダーの体に飛びつき、急いで肩へとよじ登っていく。

「まずは肩に生えているあの腕を斬ってしまえば戦いが楽になりそうね…まずは左肩に生えている腕から切り落とすっ!!

マンハンターのリーダーの肩に生えている腕を切り落とすべく、リリシアは回転刃を振り回し肩に生える腕に攻撃を加える。しかしマンハンターのリーダーは体を大きく揺らし、肩に生える腕を斬り落そうとするリリシアを振り落とそうとする。

「ギギギ…ギシャアアアァッ!!!

「くっ…このままでは振り落とされてしま…きゃああっ!!

振り落とされたリリシアはすぐさま態勢を立て直し、すぐさま回転刃を手にマンハンターのリーダーに立ち向かっていく。二人がマンハンターのリーダーと戦う中、後方での戦いを終えたティエラとウルが加勢に駆け付けてきた。

 「待たせたな…後ろの敵は私とウルが片付けた!!後はあの巨大な魔物だけだな…将軍様、まずは足を攻撃し、転倒させてから集中攻撃を仕掛けるぞ!!

加勢に加わったティエラとウルとともに、ファルスは槍を構えてマンハンターのリーダーの方へと向かっていく。しかしマンハンターのリーダーは鋭い刃のついた腕を振り回し、彼らの進軍を妨害する。

「皆の者よ…ここは回避に専念し、逃げながら奴の方へと向かうのだ!!

武器を構えた三人は怒涛となって放たれる猛攻をかわしつつ、マンハンターのリーダーの足へと向かい攻撃を食らわせる。一方リリシアはマンハンターのリーダーの腕をかわした後、腕を駆け上がり肩へと向かっていく。

「よし…一気に斬り落とさせてもらうわよっ!!

再びマンハンターのリーダーの肩に来たリリシアは、回転刃を振い再び肩に生える腕を攻撃する。リリシアは左肩に生える腕を切り落とした後、右肩に生える腕の破壊に取り掛かる。

「後は右肩だけだが…奴は痛みのあまり暴れているから進めないわ。ここはゆっくりと右側に移動し…きゃあっ!!

左肩に生える腕を切り落とされ、マンハンターのリーダーは痛みのあまりのたうち回る。右肩へと移動しようとしていたリリシアは振り落とされまいと体にしがみつくが、耐えきれず地面に落下してしまう。

「なんとか左肩に生えている腕は斬り落とせたけど、まだ右肩が残っているわ。しかし奴は痛みのあまり暴れているわ…今近づけば巻き込まれて大ダメージを受けてしまうわ。」

「となれば奴の動きを見ながら攻撃のチャンスを窺わなければならん…ということだな。将軍様、責めるチャンスが来たら指示をお願いする!!

ファルスは暴れるマンハンターのリーダーの動きを見て、攻撃のチャンスを窺っていた。その数分後、体に走る痛みが治まったのか、マンハンターのリーダーは疲れたのか地面に蹲る。

「奴が疲れたようだ…今が攻撃のチャンスだ!!その隙に奴の足を集中攻撃し、転倒を狙うぞ!!

マンハンターのリーダーの動きが止まったのを確認すると、ファルスは槍を構えてマンハンターのリーダーの足めがけて突進していく。リリシアたちもファルスの後に続き、マンハンターのリーダーの足に攻撃を仕掛ける。

 「皆の者よ、私に続け!!奴の態勢を崩してしまえば後はこっちのものだ!!例え我々の力が小さくとも、集まれば大きな力が生まれる!!

ティエラの指揮のもと、リリシアたちと囚人たちは一斉にマンハンターのリーダーの足に集中攻撃を仕掛ける。小さな力が結集され大きな力となった攻撃に耐えきれず、マンハンターのリーダーの体が大きく地面へと崩れ落ちる。

「奴の態勢を崩すことに成功した…この隙に奴の体力を削り、一気にたたみかけるぞ!!

マンハンターのリーダーが態勢を崩されもがき苦しむ中、リリシアたちは集中攻撃を仕掛けマンハンターのリーダーにダメージを与えていく。

「みんな…ここは俺が奴に止めを刺す!!それまで君たちは攻撃の手を休めず、攻めに力を入れるのだっ!!

リリシアたちにそう告げた後、ファルスはマンハンターのリーダーの胸部に向かい、槍を構えて止めの一撃を放つ態勢に入る。

「我が槍の一突きで、貴様の心臓を貫いてくれるっ!!

ファルスは両腕に力を込め、マンハンターのリーダーの胸部に槍の一閃を食らわせる。胸部に突き刺されたファルスの槍はマンハンターのリーダーの心臓を貫き、死に至らしめる。

「ふぅ…多少手こずったが何とか討伐完了だ。どうやらこの魔物たちはニルヴィニアが収容所から脱獄した俺たちを葬り去るために送り込まれたのかもしれんな。」

「確かに将軍様の言葉は正しいのかもしれないな。先ほどの戦いで多少の犠牲者が出てしまったが…魔物の群れはこれで全て片付いたようだな。さて、第三収容所へと向かおう。」

マンハンターの群れを撃破したリリシア達は、地上界から連れてこられた囚人たちを解放するべく第三収容所へと向かうのであった……。

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