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終章第十八話 激闘、魔掘機ダンジョンクラッシャー!!

 フレイヤードの火山地帯の溶岩洞の中に足を踏み入れたセルフィ達は燃料屋の店主を探すべく、熱く煮えたぎる溶岩洞の中を進んでいく。しかし溶岩洞の中にも地上界の鉱石を奪うべくヘルズヒューマノイドたちが工作活動を始めていた。一行の行く手を阻むヘルズヒューマノイドたちを蹴散らしながら奥へと進むと、そこにはフレイヤードの港町の燃料屋の店主が巨漢で大柄のヘルズヒューマノイド達によって囚われの身となっていた。ヘルズヒューマノイドの一人が巨大な掘削兵器である『ダンジョンクラッシャー』にセルフィ達を殺して人骨を採取するようにと命令した瞬間、ダンジョンクラッシャーは両腕の巨大なピッケルを振り上げてセルフィ達に襲いかかって来るのであった……。

 

 ヘルズヒューマノイドの命令を受けたダンジョンクラッシャーは、両腕のピッケルを激しく振り回しながらセルフィ達の方へと向かってくる。

「ニルヴィニアの奴め…地上界の鉱石を奪う為に兵器まで使うとは!!みんな、何としてでもあいつらを止めるわよっ!!

「奴らは先ほど戦った奴よりも巨漢で強そうな個体だな。しかし問題なのはあの巨大なピッケルを持つあの巨大な機械だ…奴は装甲が堅く、武器での攻撃ではダメージを与えられないだろうな。まずはあの巨漢の奴らを倒した後で、あの機械を倒す方法を対策を練る!!

レナードが仲間たちに作戦を伝えた後、セルフィ達は巨漢のヘルズヒューマノイドに敢然と立ち向かっていく。

「ケッケッケ…俺達ハ戦闘用ニ特化シタ巨漢型ノヘルズヒューマノイドサ!!俺達ノ役割ハ主ニ人間ノ街ノ襲撃・略奪及ビ占領ダ。コノ筋力ト鋼ノ肉体ヲ持ツ俺ニ勝テルカナ?」

セルフィ達が巨漢のヘルズヒューマノイドに攻撃を加えるも、分厚い筋肉の鎧によって僅かしかダメージを与える事ができなかった。

「くっ…奴の分厚い筋肉のせいで攻撃が入らない!!

「みんな、奴は鎧の如き筋肉を持っていても、魔法の力だけは軽減することはできない。つまり戦う相手に応じて、魔法と攻撃を使い分ける事が大事だよ…うわっ!!

ブレアが仲間たちに助言を告げたその時、ダンジョンクラッシャーがブレアの前に現れる。

「ギギギ…人間ヲ感知。タダチニ人骨ノ採取ニ取リ掛カリマス!!

「僕の見たところでは、こいつからは鉱物の匂いがするな。そういう堅い魔物は苦手なんだが、ここはやるしかないっ!!

両腕の巨大なピッケルを振り回しながら迫りくる巨大なダンジョンクラッシャーを前に、ブレアは細身の剣に炎の魔力を集めて攻撃の態勢に入る。

 「あの巨大兵器は僕が引き受ける!!君たちはあの巨漢の連中を倒してくれないか!!

ブレアがダンジョンクラッシャーと戦う中、レナードはブレアの話していた巨漢のヘルズヒューマノイドを倒すための助言をセルフィ達に伝える。

「了解だ!!みんな、ブレア君があの巨大兵器をひきつけているが、しかしいつまで持つか分からない。セルフィ…ミシュリア!!奴には物理攻撃で攻撃してもあまり効かない…つまり、ブレア君の言うとおり魔法で攻めるほうが効果的だ!!

レナードの助言を聞いたセルフィとミシュリアは手のひらに魔力を集め、術を放つべく詠唱を始める。二人が詠唱に集中する中、巨漢のヘルズヒューマノイドは拳を振り上げ、術の詠唱で無防備になっている二人に襲いかかる。

「ケッケッケ…術ノ詠唱デ無防備ニナッテイル隙ニ一気ニ畳ミカケテヤルゼェ!!

「おっと、詠唱の邪魔をしてもらっては困るな。私が美しく縛りあげてくれる!!縛糸(スレッド・チェイン)ッ!!

二人が安全に術の詠唱に専念できるよう、レナードは見えない糸を巧みに操り巨漢のヘルズヒューマノイドたちの体を縛り上げる。一方ダンジョンクラッシャーと戦いを繰り広げているブレアは、両腕から繰り出される重い攻撃をかわしながら、術の詠唱に入っていた。

「威力の弱い低級呪文なら、詠唱しながら敵の攻撃をかわす事が出来る。とりあえずあいつの攻撃をかわしながら低級呪文を奴に当て続け、体勢を崩したときに高い威力の術を放つしかないね。」

ブレアの手のひらから放たれた炎弾は、次々とダンジョンクラッシャーの体に命中する。彼の放つ炎弾の威力は単発では低いが、何度も一点に集中して当て続ける事によってダメージが蓄積し頑丈な装甲の軟化を招き防御力を下げる事を狙っていた。

「よし…奴の装甲が熱で軟化してきたぞ。炎弾を当て続けて柔らかくなった箇所に斬撃を加えれば、少しでも耐久力を下げながら戦うしかなさそうだね!!

炎を纏ったブレアの斬撃が、熱で軟化した箇所を切り裂く。炎を纏った剣の一撃によって体を斬り裂かれたダンジョンクラッシャーは大きく態勢を崩し、地面に崩れ落ちる。

 「先ほどの斬撃で態勢を崩したようだね…ここで一気に高威力の術で葬ってやる!!

態勢を崩している隙に、ブレアはダンジョンクラッシャーに大きなダメージを与えるべく術の詠唱を始める。一方セルフィとミシュリアのサポートに入っているレナードは見えない糸で巨漢のヘルズヒューマノイド達の身動きを封じた後、見えない糸を編み上げて攻撃の態勢に入っていた。

「ブレア君、巨漢の奴らの拘束は完了したよ!!さて…私もそろそろ攻撃に入るとしようか!!糸刃輪(リング・ブレード)ッ!!

ブレアにそう告げた後、レナードは編み上げた見えない糸で刃のついた輪を作り出し、ダンジョンクラッシャー目がけて投げつける。レナードの手から放たれた輪は金属製のダンジョンクラッシャーの体を引き裂くほどの威力であったが、大きなダメージとまではいかなかった。

「くっ…私の糸術では奴の体に傷をつける程度しかダメージを与えられないか!!ここは戦闘はブレア君に任せて、奴の攻撃を妨害する方に回った方がいいな。」

レナードは見えない糸を両腕のピッケルに絡ませ、ダンジョンクラッシャーの攻撃の手を封じる。一方ブレアは詠唱を終え、炎の魔法の発動に取り掛かる。

 「怒れる炎よ…爆発となりて悪しき者を吹き飛ばさん!!ブレイズ・エクスプロドッ!!

詠唱を終えた瞬間、ブレアの集めた炎の魔力が次々と爆発を起こしダンジョンクラッシャーを襲う。巻き起こる爆発は周囲にも拡散し、レナードの手によって身動きを封じられている巨漢のヘルズヒューマノイド達にも飛び火する。

「雷帝の爪に眠る雷よ…白雷の矢となりて射抜かんっ!!ゼオニック・アロー!!

「我が身に眠る聖なる魔力よ…邪悪なるものを焼き尽くす聖なる炎となれ!!シャイン・バースト!!

ブレアの術の発動の後、詠唱を終えたセルフィとミシュリアが術を発動させて巨漢のヘルズヒューマノイド達を攻撃する。レナードの放った見えない糸に縛られ身動きの取れない巨漢のヘルズヒューマノイドは直撃を受け、息絶える。

「セルフィさん、後はあのいかにも守備が堅そうな機械だけです!!一緒に力を合わせて必ず勝ちましょう!!

巨漢のヘルズヒューマノイドたちを一掃した二人はダンジョンクラッシャーを倒すべく、レナード達の戦いに加わる。

「巨漢の奴らを倒してくれたようだな…いいか、奴は装甲が堅く非常に厄介な相手だ!!攻撃するなら強い威力の術か鉄をも砕くほどの衝撃を与えなければダメージは与えられないだろう。」

レナードが助言を二人に伝えた後、セルフィは自信ありげな表情でレナードにそう告げる。

「レナード、私は体術には自信があります。ここは私が体術であの機械を攻撃するので、レナードとミシュリアはサポートをお願いします!!。」

「よかろう…ミシュリアよ、私とともにセルフィのサポートに入るぞ。セルフィ…体術に自信があるとはいえ、くれぐれも無茶はするなよ。」

レナードとミシュリアにそう告げた後、セルフィは両手に身につけている雷帝の爪を外し、生身の拳でダンジョンクラッシャーに挑む。

「前方ニ人間ノ生体反応ヲ確認…タダチニ迎撃態勢ニ入リマス!!

ダンジョンクラッシャーは両腕のピッケルを振り下ろしながら、セルフィに襲いかかる。しかしセルフィは怒涛となって繰り出されるダンジョンクラッシャーのの攻撃をかわしつつ、波動弾を放つべく両腕に力を込め始める。

「くらえっ…波動連弾ッ!!

セルフィは波動弾を連続で放ち、ダンジョンクラッシャーを攻撃する。放たれた無数の波動弾は鋼鉄の装甲を大きく凹ませ、両腕のピッケルをも破壊する威力であった。

「両腕ノピッケル破損…ボディパーツ損傷!!採掘不能状態ニナリマシタノデ、射撃モードニ移行シマス!!

鉱石採掘のピッケルが破壊された事により、ダンジョンクラッシャーの体が射撃に適した姿へと変形する。

「奴め、全身に砲台を備えた姿に変形しやがったか!!私の糸術で何とか砲台の照準をずらす事は可能だが…これだけ多いと手が回らん!!ミシュリア、この場は奴の体の砲台を破壊してセルフィが戦胃に専念できるようにしてくれないか!!

「わかったわ!!できるかどうか分かりませんが、セルフィさんが戦えるよう頑張ります!!

セルフィのサポートをするべく、レナードとミシュリアはダンジョンクラッシャーの動きを封じるべく力を合わせる。

「まずは私が魔力で硬質化させた見えない糸を使って奴の砲台の照準をずらす…ミシュリア、広い範囲を攻撃できる爆発系の術は使えるかい?」

「爆発系の術なら私は使えます!!しかし詠唱には少し時間が必要ですが…その間レナードさんがセルフィさんのサポートをお願いします!!

レナードが見えない糸でダンジョンクラッシャーの行動を妨害している間、ミシュリアは爆発系の術を唱えるべく詠唱に入る。一方セルフィは素早い動きでダンジョンクラッシャーの懐に入り、拳の一撃を食らわせる。

「衝撃をまとわせた我が拳が、鉄の体を持つ悪しき者を破壊する!!破鋼拳ッ!!

セルフィの気合を込めた拳の一撃が、ダンジョンクラッシャーの固い装甲に叩き込まれる。拳の一撃と同時に凄まじい衝撃が巻き起こり、ダンジョンクラッシャーの体が大きく吹き飛ばされる。

 「セルフィの拳の一撃で奴はかなり態勢を崩したようだ。さて、今のうちに奴の体を縛り上げて自由を奪うとするか!!

衝撃をまとったセルフィの拳の一撃を受けたダンジョンクラッシャーが態勢を崩す中、レナードは見えない糸をダンジョンクラッシャーの体に絡ませ身動きを封じる。レナードがダンジョンクラッシャーを縛り上げている中、術の詠唱を終えたミシュリアは魔力を解き放ち、術を放つ態勢に入っていた。

「解き放たれし私の魔力よ、巻き起こる爆発となって対象を爆砕せよっ!!バーン・クラッカーっ!!

ミシュリアは魔力を解き放った瞬間、ダンジョンクラッシャーの周囲に無数の爆発が巻き起こる。休むことなく巻き起こる爆風により、ダンジョンクラッシャーの堅い装甲がはがれ内部構造がむき出しになる。

「ボディ完全破壊・砲台ニ致命的ナダメージ…!!戦闘不能寸前…戦闘不能寸前!!

致命傷を受けたダンジョンクラッシャーは全身から火花を散らしながら、セルフィめがけて大砲を放つ。しかし先ほどの爆発で制御回路が破壊されたせいで狙いが定まらず、大砲の弾はセルフィから大きく離れた場所に着弾し、大きな爆発が巻き起こる。

「先ほどの爆発のダメージを受けた今、奴は完全に平衡感覚を失っているわ…あと一発奴に一撃を食らわせれば確実に倒せるわ!!

セルフィは軽やかな足さばきでダンジョンクラッシャーに近づき、強烈な蹴りをダンジョンクラッシャーの体にお見舞いする。セルフィに蹴り飛ばされたダンジョンクラッシャーは地面にたたきつけられた後、黒い煙を上げながら爆発する。

 「ふぅ…これで溶岩洞の中にいる奴らはすべて倒しましたね。」

ヘルズヒューマノイドから解放された燃料屋の店主は、ダンジョンクラッシャーとの戦いを終えた一行に感謝の言葉を述べる。

「いやぁ、危ないところを助けていただいてありがとうございます。わしはフレイヤードの港町で燃料屋の店主をしている者だ。わしはいつものようにこの溶岩洞で燃料となる鉱石の採掘をしていたのだが、突然あの得体のしれない奴らの襲撃を受け、鉱脈を教えるよう強要されていたのじゃ。そうじゃ、そこの髪の長い兄さんよ、燃料が欲しいと言っていたな…ならこの先に特別大きな灼炎岩(フレアロック)を見つけたので、それをお前さんたちにやろう。」

燃料屋の店主が案内されて溶岩洞の大空洞に来た瞬間、高熱を帯びた岩の塊がセルフィたちの目に映る。

「おお!!これほど大きな灼炎岩なら船の燃料に使えば数十年は動かせそうだな!!本当にこんなすごい物を私たちが貰ってもいいのかい?」

「持って行ってもいいぜ。あんたたちはわしの命の恩人じゃからな!!さて、少しばかり燃料を掘ってから港町に帰るとしよう。港町の連中がわしの帰りを首を長くして待っているからな!!

触れるものを焼き尽くすほどの熱量を持つ灼炎岩を前に、レナードはどうやって船に運ぶかを考えていた。

「うむ…困ったことにこれほどの熱量を誇るあの岩を両腕で抱えて持って運べば大火傷してしまう。ほかに方法はないのだろうか……?

「心配はいらん…耐熱性に優れたわしの荷車がある。わしはこの荷車に掘り出した鉱石を積み、フレイヤード城下町や港町で商売をしているんじゃよ。さて、良質な鉱石がたくさん採取できたことだし、そろそろ港町に戻るとしよう!!ひとつ言っておくが、魔物の相手はお前たちに任せたぞ…わしはここら辺の魔物と戦うほどの力はもっていないのでな。」

溶岩洞に潜伏していたヘルズヒューマノイドとダンジョンクラッシャーとの戦いに勝利し燃料屋の店主の救出に成功したセルフィたちは港町に戻るべく、溶岩洞を後にするのであった……。

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