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終章第十七話 溶岩洞の戦い

 フレイヤードの港町を後にしたセルフィたちは採掘場に関する新たな情報を手に入れるべく、フレイヤードの城下町を目指していた。しかしその道中、ニルヴィニアによって生み出された人型の生命体であるヘルズヒューマノイドがフレイヤード大陸に降り立ち、兵装の強化及び魔物の製造のために良質な鉱石を奪おうと暗躍していた。フレイヤードの城下町に到着した一行は酒場で情報収集を始めようとしたその時、クリスたちの活躍によって蘇ったブレアがマスターと話し合っていた。その様子を見ていたレナードは中央大陸に行くことができないと知り酒場を後にしようとしたブレアに事情を話すと、快くセルフィ達に同行してくれるとの返事がきた。ブレアを加えた一行は採掘に行ったまま戻ってこない燃料屋の店主を探すべく、溶岩が流れる火山群へと足を踏み入れるのであった……。

 

 灼熱の溶岩の流れる溶岩洞の中へと足を踏み入れたセルフィたちは、燃料屋の店主を探すべく溶岩洞の奥へと進んでいく。洞窟の壁には無数の採掘された跡が見られ、鉱石が一つ残らず掘り尽くされていた。

「なんてことだ…何者かによって溶岩洞の壁が削られている。いくら鉱石を掘るためとはいえ、わざわざ壁を掘る必要なんてないはずだ……一体誰がこんな事を!!

「犯人はわかってる…フレイヤード城下町に行く前に出くわしたあの変な生き物だ!!奴は地上界の鉱石を全て奪うためにここに来たと言っていたようだ。となれば燃料となる鉱石も奴に奪われる可能性が高いな。みんな、一刻も早く燃料屋の店主を探しに行くぞ!!

セルフィたちが溶岩洞の広い場所へと来た瞬間、数名のヘルズヒューマノイド達が鉱石を掘るべく、洞窟の壁にピッケルを振るい採掘作業に入っていた。

「掘ッテ掘ッテ掘リ抜イテ…ニルヴィニア様ノ手土産ニスル鉱石ヲ手ニスルマデ、俺タチハガンガン鉱石ヲ掘ルゾ!!

「鉄鉱石…銅鉱石…銀鉱石ニ燃焼石。ドレモ良質ナ鉱石バカリダ…ココハマサニ鉱石ノ宝石箱ダナァッ!!コノ調子デ鉱石ヲ掘リ尽クシテヤロウゼェー!!

一心不乱にピッケルを振い続けるヘルズヒューマノイドの様子を見ていたブレアは、拳を握りしめ怒りの表情を浮かべながら、採掘にいそしむヘルズヒューマノイド達を睨んでいた。

「あいつらめ…フレイヤード炭鉱連盟の許可を得ずに鉱石を採掘しているとは許せない!!これ以上このフレイヤードの鉱山資源を奪われるわけにはいかん!!この僕が懲らしめてやる!!

ブレアは鞘から細身の剣を引き抜き、ヘルズヒューマノイドの方へと向かっていく。

 「お前達…これ以上フレイヤードの鉱山資源を荒らすのは止めろ!!

気配に気づいたヘルズヒューマノイドたちは、ピッケルを振るう手を止め、武器を構えて臨戦態勢に入る。

「人間…人間ノ気配ダ!!俺タチノ邪魔ヲシニココマデヤッテキヤガッタカ!!

「ニルヴィニア様ノ話デハ…地上界ノ人間ノ骨コソ最高ノ素材ダト聞イタ…特ニ腕ヤ脚ナドノ骨ガ需要ガ高イトノ噂ダ。マタ人肉ハ我々ノ潜在能力ヲ底上げスル食材ニナル上、人型ノ知的生命体ノ錬成スルノニ役立ツカラナ。ナラバオ前ヲ殺シテ貴重ナ人骨ヲ手ニ入レテヤル!!

ヘルズヒューマノイドの言葉の後、ブレアはニルヴィニアが何者なのかを問いかける。

「ニルヴィニア様…聞いた事がない名前の人物だがそいつは一体何者なんだ?

「聞イテ驚ケ…偉大ナルニルヴィニア様ハ新タナル世界ノ創造主ダ!!コノ地上界ノ上空ニ新世界ヲ創リ…2ツノ世界ヲ統ベル女帝トナル偉イオ方ダ!!俺達ハニルヴィニア様ニヨッテ目的ノ為ダケニ生ミダサレタ知的生命体…ヘルズヒューマノイドダ!!資源回収ノ工作活動ノ為ニ地上界ニ降リ立ッタノダガ…人間ニ見ツカッテシマッタ以上…オ前タチニハココデ消エテモラウシカアルマイ!!

工作活動の邪魔をされ怒り心頭のヘルズヒューマノイドたちは武器を構え、一斉にブレアに襲いかかる。

「こんな魔物…僕が一人で片付けてやる!!

武器を構えてこちらのほうへと向かってくるヘルズヒューマノイドを前に、ブレアは炎の魔力を全身に集め、身体強化を施す。燃え盛る炎のオーラを纏ったブレアは剣を構えてヘルズヒューマノイド達の方へと走り、目にもとまらぬ速さで斬りつけていく。

 「ウググ…人間ノ癖ニナンテ強サダ!!援軍ダ…タダチニ援軍ヲ呼ベ!!

その言葉に反応したヘルズヒューマノイドの一人が、コーリングベルを鳴らし援軍を呼び寄せる。鈴の音が洞窟中に響き渡ったその時、近くにいた数名のヘルズヒューマノイドが採掘の手を止め、戦いの場へと集まってくる。

「近クデコーリングベルノ音ガシタトイウコトハ…コノ溶岩洞ニ侵入者ガ入リ込ンダトイウワケカッ!!

「シカシ時スデニ遅シ…スデニ採掘中ノ数名ガ侵入者ニヨッテ倒サレタ模様。犯人ハ剣ヲ持ッタ赤イ髪ノ男ト断定、タダチニ迎撃ノ準備ニ入ルノダ!!

これほどの軍勢を一人で相手にするのは危険だと判断したブレアは、セルフィ達に援護を要請する。

「援軍を呼ばれてしまいましたね…これでは一人では歯が立ちませんね。セルフィさんと言いましたね…僕一人では相手にできないので、援護を頼みます!!

「この軍勢を潰せばいいのね。この戦い、私たちも協力します!!

セルフィ達が戦いに加わり、四人は武器を構えてヘルズヒューマノイドを迎え撃つ。

「タッタ四人デコノ軍勢ヲ相手ニシヨウッテノカ!!面白イ…オ前ラヲ殺シテ貴重ナ人骨ヲニルヴィニア様ニ献上サセテモラウゼ!!皆ノ者、ヤッチマエッ!!

ヘルズヒューマノイドの一人が突撃の号令の声を上げた後、ヘルズヒューマノイドたちは武器を構えてセルフィ達の方へと向かってくる。

 「さて…派手に暴れるとしましょうか!!レナード…ミシュリア、戦いの始まりよ!!

セルフィの掛け声の後、セルフィとミシュリアは襲ってくるヘルズヒューマノイド達に立ち向かっていく。

「品のない奴らが束になってもこの私に勝つことはできんよ…私の糸術で華麗に仕留めてあげよう!!

「ケッ…カッコツケヤガッテ!!ソウイウ調子ニノッテル奴ガ一番最初ニ死……グワァッ!!

ヘルズヒューマノイドの一人がレナードに襲いかかろうとしたその時、ヘルズヒューマノイドの両腕が一瞬のうちに切断され、地面に転がる。

「悪いな…私の操る糸は強度が高くて切断能力も高い不可視の糸だ。一度捉えた相手は見えない糸によって切り刻まれ、肉片と化すのさッ!!もうひとつ教えてやる…その糸を束ねて自らに纏わせることにより、身体能力を強化する事も出来るのさ!!ま、もっとも魔物であるお前らには物事を理解する頭など持ち合わせていないかもしれぬがな!!

レナードは束ねられた糸を両手に纏わせて不可視の爪を作り、ヘルズヒューマノイド達の方へと向かっていく。鋭さと素早さを兼ね備えた不可視の糸で作られた爪の一撃が、ヘルズヒューマノイドたちを次々と斬り伏せていく。

「さてと…レナードさんもセルフィさんも戦っているから、私も頑張らなきゃね。」

「誰ガ相手ト思エバ弱ソウナ小娘カ…コイツハ楽勝ダゼ!!悪イガ、ソノ首頂クゼッ!!

剣を構えてミシュリアの方へと向かってくるヘルズヒューマノイドであったが、突如何かの魔力によって大きく吹き飛ばされ、体勢を崩しその場に倒れる。

「悪いけど、私の首はそう簡単には討ち取れないわよ!!凍てつく氷の魔力よ…礫の嵐となりて悪しき者を切り裂かん!!ヘイル・ストーム!!

ミシュリアが詠唱を終えた瞬間、荒れ狂う氷の礫の嵐がヘルズヒューマノイドたちを次々と切り裂いていく。仲間の二人が戦いを繰り広げる中、セルフィは雷帝の爪を構え、ヘルズヒューマノイドを次々と撃破し、大勢いたヘルズヒューマノイド達の軍勢を壊滅に追い込む事に成功した。

 「さて、これであいつらは全てやっつけたようね。」

深い傷を負ったヘルズヒューマノイドが負傷した足を引きずりながら溶岩洞を後にしようとしたその時、剣を構えたブレアに阻まれ、退路を断たれる。

「クソ…クソォッ!!ココハ一時撤退シテニルヴィニア様ニ援軍要請ヲ…!!

「一人たりとも逃がすわけにはいかないよ。今逃がせば奴はまたこのフレイヤードで略奪行為を行うので、決して生かしてはおけないよ!!

その言葉の後、ブレアは剣をヘルズヒューマノイドの背中に突き刺し、止めの一撃を食らわせる。ヘルズヒューマノイドとの戦いを終えた後、ブレアはセルフィ達に感謝の言葉を述べる。

「一緒に戦ってくれてありがとう…君たちは強いんですね。鉱石を奪う奴らも倒した事だし、この溶岩洞の奥へと進みましょう。」

 

「そうだな。危険な場所にこそ良質な鉱石があるという話を信じて採掘に来る採掘人もいるからな。一刻も早く燃料屋の店主を探して、船の燃料をもらわないとな。」

ヘルズヒューマノイドたちを蹴散らした一行は燃料屋の店主を探すべく、溶岩洞の奥へと進むのであった……。

 

 時を同じくして、溶岩洞の奥地では数名のヘルズヒューマノイドが採掘に来ていた燃料屋の店主を拉致し、鉱床の場所を聞き出そうとしていた。

「貴様のような得体の知れない魔物に何度脅されても…溶岩洞の良質な鉱石が取れる鉱床を教えるつもりは一切ない!!

「何度脅サレテモ答エナイノナラ…強硬手段ニデルシカナイナ!!

武器をちらつかせて燃料屋の店主を脅すヘルズヒューマノイドの一人が指を鳴らした瞬間、突如両腕に採掘用とは思えない大きさのピッケルを装備した巨大兵器が燃料屋の店主の目の前に現れる。

「クックック…コイツハニルヴィニア様ガ地上界ノ良質ナ鉱石ヲ奪ウ為ニ造ラレタ掘削兵器『ダンジョンクラッシャー』ダ!!モウ貴様カラ鉱床ノ在処ヲ聞キダスマデモナイ。コイツデ片ッ端カラ鉱石ヲ掘リ尽クシテヤル!!

「やめろ!!そんな機械で鉱石を掘り出せば溶岩洞自体が崩落してしまう!!

「ウルセェ!!オ前ハ黙ッテ良質ナ鉱石ノ取レル鉱床ノ在処ヲ案内スレバイインダヨォッ!!

巨漢で大柄のヘルズヒューマノイドは燃料屋の店主を縄で締めあげ、無理やり鉱床のある場所へと案内しろと命じる。

 「うぐぐ…わしは絶対にお前らに鉱床は教えたりはせんっ!!例え口が裂けても言わぬっ!!

ヘルズヒューマノイドたちが燃料屋の店主を連行しようとしたその時、セルフィ達が彼らの前に現れる。

「侵入者ガココマデ来タトイウ訳ハ…中間地点デ工作活動ヲシテイタ採掘部隊ヲ全テ倒シタノカッ!?マァヨイ、ニルヴィニア様ニヨッテ造ラレタ掘削兵器『ダンジョンクラッシャー』ト巨漢ノ戦闘部隊デ、貴様ラヲ葬ッテクレル!!

「ちょっと!!そこの小娘や…この得体の知れない奴らを倒してわしを助けてくれ!!わしはフレイヤードの港町で燃料屋の店主をしている者じゃが、燃料となる灼炎岩(フレアロック)と呼ばれる鉱石を採掘するためにフレイヤードの溶岩洞でいつものようにピッケルを片手に採掘をしていたのじゃが…突如得体の知れん奴らが攻めてきて、わしによい鉱石が取れる鉱床の在処を教えろとうるさくて困っていたところじゃ。もしこいつらを倒してわしを助けてくれたら、それ相応のお礼はするぞい!!

ヘルズヒューマノイドによって囚われの身となっている燃料屋の店主の言葉の後、レナードはあなたを助けに来たという事を店主に告げる。

「安心してくれ…決して私たちは敵ではない。あなたがフレイヤードの港町の燃料屋の店主だな、私たちは行方知れずの店主を探すためにこの溶岩洞まで来た。それにしてもあの人型の魔物は溶岩洞の最奥に巨大な採掘兵器を使い、この溶岩洞の鉱石をねこそぎ奪おうとしていたとはな!!ならば私たちが相手になってやる!!

「ケッケッケ…無駄話ハソコマデニシテモラオウカ。ダンジョンクラッシャーヨ、アノ人間共ヲ殺シテ貴重ナ人骨ヲ採取スルノダ!!

セルフィ達を殺して人骨を採取するようにとの命令を与えられたダンジョンクラッシャーは、大きなピッケルを備えた両腕を振り回しながら目の前にいるセルフィ達に襲いかかってきた。果たしてセルフィ達はフレイヤード大陸の鉱石の略奪を目論むヘルズヒューマノイド達を殲滅し、燃料屋の店主を救出することができるのか……!?

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