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終章第十二話 署長の陰謀

 地上界から連れてこられた囚人たちを解放するべく第三収容所へのを試みたリリシア達であったが、運悪く草むらに隠れていた見張り役のヘルズヒューマノイドに見つかってしまい、戦闘を余儀なくされた。次々と襲ってくるヘルズヒューマノイドたちを倒していくリリシア達であったが、其の戦闘の様子を見ていた収容所の署長が巨大な腕で敵味方関係なく粉砕するタイラントクリーパーを放ち、戦場は大乱戦と化した。苛烈なる苦戦の末にタイラントクリーパーを撃破に成功した一行は、囚人たちを解放するべく収容所の内部へと突入するのであった……。

 

 第三収容所の牢獄へと向かう道中で見つけた簡易温泉で体力と魔力を回復したリリシアたちは囚人たちを救出するため、急ぎ足で牢獄へと向かっていく。

「温泉に浸かれたのは少しだけだが、体力と魔力を回復することができたわ。囚人たちを救出し、かならずレミアポリスに戻りましょう!!

「この道をまっすぐ進めば牢獄だ。見張りの奴らの警備も堅そうだから、気を引き締めて出陣するんだ。まぁ魔力を回復しているお前なら得意の術で簡単に蹴散らせるがな。」

リリシアたちが牢獄の入り口に差しかかったその時、目の前には武器を構えた見張り役のヘルズヒューマノイドたちが巡回しており、守りは万全であった。

「流石は牢獄というだけあって、見張りの奴らが多数いるようだ。リリシア、まずはお前が先陣を切って奴らを蹴散らしてはくれないか。」

「お安いご用よ…あの巡回している見張りの奴らを一網打尽にしてやるわ!!

ファルスの作戦に応じたリリシアは、ゆっくりと牢獄の入り口を通過し通路へと向かっていく。通路を歩くリリシアの気配に気づいた見張り役のヘルズヒューマノイドの一人が大声で叫び、他の仲間を呼び始める。

 「侵入者ヲ発見…タダチニ銃ヲ構エテ侵入者ヲ射殺セヨ!!

牢獄中に響き渡るほどの叫び声を聞いて駆けつけた見張り役のヘルズヒューマノイドたちはリリシアに狙いを定め、銃を構えて一斉掃射の態勢に入る。

「一斉掃射で私を射殺するつもりだが…魔力が戻った私の敵ではないわっ!!

リリシアは両手に赤き炎の魔力を集めた後、素早く魔力を練り合わせて詠唱を始める。

「ターゲットロックオン…一斉掃射ッ!!!

「赤き炎よ、荒れ狂う炎の竜巻となりて全てを焼き尽くさんッ!!フレア・トルネード!!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、銃を構えた見張り役のヘルズヒューマノイドたちの周囲に赤き炎の竜巻が巻き起こり、見張り役のヘルズヒューマノイドたちを焼き尽くしていく。銃を持った見張り役を倒した後、立て続けに巨大な盾を持った衛兵役のヘルズヒューマノイドたちがリリシアの前に現れる。

「銃ヲ持ッタ見張リ役ガ倒サレタカ…ナラバ我々衛兵ガ侵入者ノ息ノ根ヲ止メテヤロウ!!我ガ鉄壁ノ護リノ前デハ、貴様ノ攻撃ナド無ニ等シイッ!!

衛兵役のヘルズヒューマノイドが構えている巨大な盾には銃よりも高威力の大砲を放てる砲塔が付いており、守りながら相手を攻めるのに適した作りになっているようだ。

「くっ…いかにも堅そうな相手が現れたようね。そうなると前方の攻撃や術は簡単に無力化されてしまうわ…しかし奴の盾はかなり重量があるから、容易に回りこめるかもしれないわ!!

後ろに回り込もうとしたその時、突如盾の砲塔から大砲の弾がリリシアの方へと飛んでくる。地面に着弾した大砲の弾は大きな爆発を起こし、リリシアは大きく後ろへと吹き飛ぶ。

「な、何なのよあれは!!あいつら…砲台が付いている盾を装備しているなんて聞いてないわよっ!!これじゃあ後ろに回り込もうにも回り込めないわ。大砲の弾を撃ち返して砲塔にぶつければ何とか破壊できそうだが、大砲の弾はかなりの重量があるから、攻撃や術で弾を撃ち返して砲塔にぶつけるのは難しそうね。ならば…盾を操る者を後ろから狙えばよいだけのことっ!!

背後に回って撃破するのは無理だと考えたリリシアは、赤き炎の炎を練り合わせて火球を放つ。魔姫の掌から放たれた火球は大きく弧を描きながら、盾を構えるヘルズヒューマノイドを狙う。

「クックック…アノ小娘、我々ノ巨大ナ盾ニ苦戦シテイルヨウダナ。オ前ラ、モット狙ッテヤ……ギャアッ!!

衛兵役のヘルズヒューマノイドが他の者たちに号令を伝えようとしたその時、リリシアの放った火球が炸裂し、その場に崩れ落ちる。その後もリリシアは盾の後ろにいる操縦者を狙って火球を放ち、次々と撃破していく。

 「巨大な守りを何とか鎮圧完了っ!!しかしこの盾、重いけど何かと使えそうね。うまく使えば背後から襲ってくる奴らに対応できそうかも。」

襲いかかるヘルズヒューマノイドたちを全て撃破したリリシアは牢獄の入り口で待機しているファルスたちを呼び、囚人解放の為に牢獄の内部へと向かう。

「よくやってくれたな。奴が使っていた大砲付きの巨大な盾は囚人たちに操作させれば守りは万全…後は囚人たちを解放し、この収容所を破壊するだけだ!!さぁ…囚人解放作戦を始めるぞっ!!

ファルスの言葉の後、リリシアたちは牢獄を破壊し囚われの身となっていた囚人たちを解放する。助け出された囚人はファルスたちに感謝の言葉を述べた後、収容所の二階にも牢獄がある事を告げる。

「助けていただいてありがとうございます。第三収容所には二階にも牢獄があります。しかし二階には魔物を操る牢獄署長が管轄しています。見張り役の話を聞いていたのですが、署長は気に入らない囚人たちを軍刀で斬り捨てているとの噂ですので、二階にいる囚人たちを助けてあげてくださいっ!!

「大丈夫だ…私たちの力なら署長だって倒せるさ。さて…収容所の二階に向かい、残りの囚人たちを解放しに行くぞっ!!

牢獄に囚われていた囚人の解放を完了したリリシア達は、残りの囚人を解放するべく第三収容所の二階へと向かうのであった……。

 

 リリシア達が二階を目指す中、署長室にいる署長役のヘルズヒューマノイドのもとに傷ついた見張り役のヘルズヒューマノイドが現れ、一階の牢獄が陥落されたという事を報告する。

「タ…大変デス署長!!先程侵入者ニヨッテ一階ノ牢獄ガ陥落サレタ!!今スグ警戒態勢ノ準備ヲッ!!

「ソンナコトハワカッテイル。マダ私ニハ二体ノ魔物ノ他ニモ切リ札ガアルノダヨ…クックック、コイツハニルヴィニア様カラ譲リウケタ美シイ少女ノ石像ダ。私ガ持ッテイル石化ヲ解クゴールドニードルヲ使エバ、石化シタソノ少女ヲ元通リニスルコトガ可能ダ。他ニモ5人グライ石像ガアッタガ、ソレハ地上界攻略部隊ガ持ッテイッタ模様ダ。話ハ以上ダ…全戦力ヲ二階ニ集中サセ、侵入者ヲ排除セヨッ!!

署長役のヘルズヒューマノイドがニルヴィニアから譲り受けた石像は、なんとニルヴィニアによって石に変えられてしまったカレニアであった。収容所の全戦力を二階に集中させるようにと命じられた見張り役のヘルズヒューマノイドは、すぐさま戦力を集中させるべく館内放送で全ての見張り役に連絡する。

「署長ヨリ緊急連絡…署長ヨリ緊急連絡!!巡回中ノ全テノ者ハ侵入者排除ノ為至急二階ニ急行せよ!!

館内放送を聞いた全ての見張り役のヘルズヒューマノイドたちは次々と巡回を止め、二階へと急行していく。

 「サテ…コノ少女ハドウヤッテ遊ンデヤロウカナ?

署長役のヘルズヒューマノイドは懐からゴールドニードルを取り出し石化したカレニアに突き刺すと、カレニアの石化が解け、元の姿に戻っていく。

「ふぅ、やっと石化が解けた…ってここは何処なのよっ!!

「ホウ…気ガツイタヨウダナ。ココハ地上界カラ連レテキタ人間ヲ収容スルタメの収容所ダ。貴様ハ侵入者ヲオビキ出ス為ノ人質トナッテモラオウ。オ前ラ、コノ少女を拘束シロッ!!

石化が解けたカレニアであったが、ニルヴィニア戦で負ったダメージが蓄積しているせいで抵抗できず、すぐさま見張り役のヘルズヒューマノイドたちに羽交い絞めにされてしまう。

「ぐっ…放せっ!!汚らわしいケダモノどもめっ!!

「オット…大キイ声ヲアゲルナ。下手ナ真似ヲスレバ貴様ヲ殺ス。」

署長役のヘルズヒューマノイドは手に持った軍刀でシャツのボタンを一つずつ切り飛ばしながら、カレニアを威嚇する。

「見張リノ者ヨ、コレヨリ私ハ二階ニ向カッタ侵入者ノ排除ニ向カウ。私ガ戻ッテ来ルマデコノ少女ト遊ンデイテクレタマエ…タダシ悲鳴ダケハ上ゲサセルナヨ…牢獄ニ物音ガ漏レナイ程度デ遊ベヨ。ア、ソウダ…戻ッテキタラ俺ニモ遊バセロヨナ。」

カレニアを羽交い絞めにしている見張り役のヘルズヒューマノイドにそう伝えた後、署長役のヘルズヒューマノイドは二階に向かった侵入者を排除するべく署長室を後にする。署長役が去った後、見張り役たちは強引にカレニアを押さえつけ、下劣な笑みを浮かべながら彼女が着ている上着を脱がしていく。

「クックック…俺タチガ満足スルマデ遊ンデヤルゼッ!!

「悪いけど私、あなたたちのような下劣で汚らわしいケダモノどもと遊んでいる暇はないわよっ!!

カレニアは自分の体を押さえつけているヘルズヒューマノイドを振り払い、すぐさま細身の剣を構えて反撃の態勢に出る。

 「オオ…コワイコワイ。ソンナ物騒ナモン振リカザシテドウスルツモリダ?ナラ、コチラ側モ戦闘態勢ニ入ルトシヨウ。万ガ一不意打チヲ食ラワサレテハタマラナイカラナ。」

剣を構えて臨戦態勢に入るカレニアに対し、見張り役のヘルズヒューマノイドは警棒を構えて身構える。

「私が剣を振るう理由はただ一つ!!あなたたちケダモノを葬り去るためよっ!!

「ホウ…戦ウ気満々ッテワケダナ。ヨカロウ、コチラモ全力デ相手ヲシテヤロウッ!!

カレニアが華麗なる剣技で見張り役のヘルズヒューマノイドたちを翻弄するが、ニルヴィニア戦でのダメージが蓄積しているせいか、いつもの調子が出せない状態であった。

「くっ、ニルヴィニアとの戦いで負ったダメージのせいでいつもの力が出せ……きゃあっ!!

数に押されつばぜり合いに持ち込まれ劣勢に立たされたカレニアに、見張り役のヘルズヒューマノイドが背後から警棒の一撃を食らわせる。後頭部に警棒の直撃を受けたカレニアは体勢を崩し、その場に崩れ落ちる。

「ハッハッハ…小娘一人デ俺達ニヲ手スルトハ少々無茶シスギダッタナ!!サテ…オ前タチ、コノ小娘ヲ思ウ存分イタブッテヤレ!!

見張り役のヘルズヒューマノイドの一人が警棒の一撃で気を失ったカレニアに猿轡をかけて身ぐるみをはがした後、椅子に縛りつけて拘束する。

「んーっ!!んんんーーーッ!!!

口をふさがれ悲鳴も上げられない状況の中、カレニアはただ必死に声にならない悲鳴を上げ続けるのであった……。

 

 一方収容所の二階に到着したリリシア達が囚人を解放するべく牢獄へと向かおうとしたその時、署長役の命令を受けた見張り役のヘルズヒューマノイドたちが目の前に現れる。

「ヤット見ツケタゾ侵入者メ…署長役ノ命令デコノ第三収容所ノ全テノ戦力ヲ二階ニ集中サセタ。ツマリ、貴様ラハモハヤココデ終ワリトイウコトダ。」

見張り役のヘルズヒューマノイドたちの言葉の後、軍刀を構えた署長役のヘルズヒューマノイドがリリシア達の方へと向かって来た。

「貴様ラガ第一、第二収容所カラ囚人ヲ次々ト逃ガシタ侵入者ノヨウダナ…マサカ私ガ放ッタタイラントクリーパーヲ倒シテシマウトハ驚イタ。マズハオ手並ミ拝見ダ…見張りノ者共、ヤッチマエッ!!

署長役のヘルズヒューマノイドの号令の後、武器を構えて待機していた見張り役のヘルズヒューマノイドたちが戦いの配置に付き、リリシアたちを迎え撃つ。

 「それにしても、見張り役の数が多いな…砲台付きの盾を持った奴が3名、遠隔射撃できるバリスタ兵が5名、そしてダメージを回復する能力を持つ衛生兵らしき奴が4名…そして残りは役職なしの者が数十名いるようだ。砲台付きの盾を持っている奴を先に潰しておけば、正面突破で蹴散らせるからな。先ほどの戦いで奪った砲台付きの盾を戦闘経験が豊富な囚人二人に持たせてある。こちら側も第一・第二収容所で奪った装備で戦闘経験のある囚人たちの兵装は整えているので攻めと守りは万全だが、少しの油断が命取りになる…決して無茶な行為はするなよ。」

ファルスの号令の後、リリシア達と囚人たちは武器を手に戦いの構えに入る。

「ククク…攻メト守リヲ兼ネ備エタコノ布陣ヲ見事ヤブッテミセタナラ、コノ私ガ直々ニ相手ヲシテヤロウ!!行クゾ者共ヨ…侵入者タチヲ滅ボスノダッ!!

「望むところよ…あなたを倒して囚人たちを解放する!!みんな、かならずこの戦いに勝つわよっ!!

両者緊迫した状況の中、リリシア達は署長役のヘルズヒューマノイド率いる軍団に立ち向かっていくのであった……。

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