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蘇生の章2nd第九十九話 さらなる追撃

 ジャンドラを倒すべく玉座の間へと来たリリシアたちは傷つき倒れたクリスたちを避難させた後、完全体となったジャンドラを討つべく攻撃を開始する。オルトリンデとシュヴェルトライテがジャンドラの方へと立ち向かうが、ジャンドラの口から吐き出された死霊の集合体によって身動きを封じられてしまうが、リリシアの持つ麒麟の護符の能力によって死霊の集合体をかき消し事なきを得る。序盤はリリシア側が優勢であったが、ジャンドラは死の魔力で徐々にリリシア達を追い詰め、現在の戦況は互いに譲らぬ状況であった……。

 

 シュヴェルトライテとオルトリンデが剣戟でジャンドラに攻撃を仕掛ける中、ジャンドラの強大な闇の魔力を受け負傷したセルフィは素早く態勢を立て直し、素早い動きでジャンドラに近づいていく。

「よくも…よくもやってくれたわねっ!!この借りは…倍にしてあなたに返してやりますわよっ!!

怒りの表情を浮かべるセルフィは両腕に力を込め、ジャンドラの体に次々と鉄拳の一撃を叩きこんでいく。怒りのこもったセルフィの拳の一撃はジャンドラの鋭く堅い甲殻を破壊し、大きなダメージを与えていく。

「な…なんてパワーだ。素手だけでジャンドラと対等に渡り合っている!!

「あのお方こそ私が言っていたエンプレスガーデンの女帝…セルフィだ。セルフィは魔術だけでなく、体術をも使いこなす万能型だ。」

セルフィの圧倒的な戦闘能力を目の当たりにした戦乙女の二人は、驚きのあまり言葉を失くしていた。セルフィが連続攻撃で徐々にジャンドラを追い詰める中、リリシアは詠唱を終えて術を放つ態勢に入る。

 「赤き炎と闇の魔力よ…闇の炎弾となりて全てを焼き尽くさんっ!!古の魔術(グラン・スペル)・アリュマージュ!!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、手のひらに赤き炎と闇の魔力が集まり巨大な炎弾が形成されていく。しかし二つの魔力が混ざり合っていないのか、炎弾は徐々に歪な形に変形し始める。

「くっ…エンプレスガーデンで何度かこの術の練習をしていたが、何度か制御できず暴発してばかりだったが…今この状況で暴発すればかなり魔力のロスになってしまうわ。ここは精神を集中させて二つの魔力の波長を合わせないと、また暴発してしまうっ!!

リリシアは暴発寸前の闇の炎弾を制御するべく、精神を集中させて急いで魔力を練り合わせる。すると炎弾は徐々に円形の形を取り戻し、魔姫は二つの魔力をコントロールすることに成功する。

「はぁはぁ…制御するだけでも魔力を大幅に使ってしまったわ。ここは何としても奴に命中させるしかないっ!!

そう呟いた後、リリシアは赤き炎と闇の魔力が合わさった炎弾をジャンドラの方へと放つ。リリシアの手のひらから離れた炎弾がジャンドラに命中した瞬間、黒い爆炎となってジャンドラの体を焼き尽くしていく。

「グッ…グアアアァァッツ!!体が…体が焼けるっ!!おのれ貴様…やってくれたなぁっ!!

「よし…この調子よリリシア!!この調子で術を放ち続け、奴にダメージを与え続けるのよ!!

ジャンドラが燃え盛る黒炎に包まれ苦しむ中、セルフィと戦乙女たちは追撃を加えジャンドラを追い詰めていく。リリシア達がジャンドラと熾烈な戦いを繰り広げる中、戦乙女たちによって安全な場所に避難されたクリスは最後の力を振り絞り戦いの場へと戻ろうとする。

 「はぁはぁ…助けに行かなきゃ。こんなところで倒れている場合じゃないわっ!!

歯を食いしばり立ち上がったクリスを見たディンゴは、クリスの無茶な行為を止めるべく説得に入る。

「無茶するなクリス!!こんな状態でいけば足を引っ張るだけだ。先ほどリリシアが戦乙女たちを連れ助太刀に来た…俺たちは戦乙女たちに助けら安全な場所に避難させられた。クリス、無茶なことはやめてここはリリシア達に任せるんだ。」

リリシアが戦乙女とともにジャンドラを倒すために玉座の間に来たというディンゴの言葉を聞いたクリスは、ディンゴにリリシアとともに戦わせてくれとお願いする。

「リリシアが…戦乙女とともにジャンドラを倒すためにここに来たの!?ディンゴ…私をリリシアと一緒に戦わせてくださいっ!!

「お前がそこまで言うなら仕方ない…俺の鞄に強力な回復弾が一発分だけある。それがあればお前の体力を完全に回復させることができる。いいか、これだけは必ず言っておく…絶対死ぬなよ。お前が死んだらリリシアに会わせる顔がないからなっ!!

ディンゴは鞄の中から回復弾を取り出し、ボウガンに装填しクリスに放つ。ボウガンの発射口から放たれた回復弾がクリスに命中した瞬間、弾丸から回復作用のある霧が噴出され傷ついたクリスの体力を回復する。

 「ありがとうディンゴ…あなたのおかげで傷が回復したわ!!これならまた戦えるわっ!!

ディンゴの回復弾によって体力が回復したクリスは天帝の剣を手に、再び戦いの場へと向かうのであった……。

 

 ジャンドラと激しい戦いを繰り広げるリリシアの前に、傷つき倒れていたはずのクリスが現れれ、一緒に戦うという意思を伝える。

「クリス…もう戦闘に復帰して大丈夫なのっ!?

「私はディンゴの回復弾のおかげで体力は回復したわ。だから…私も一緒に戦わせてっ!!

クリスの言葉の後、リリシアは一緒に戦おうとクリスに告げた後、全身に魔力を込めて限定解除(リミット・カット)を発動させる。

 「分かったわ…伝説の武具の適合者であるクリスが来てくれるとかなりの戦力になるわ。さて、私たちの力でジャンドラにひと泡吹かせてやるわよっ!!限定解除(リミット・カット)…魔力大覚醒っ!!

限定解除で魔力を最大にまで高めたリリシアは、ジャンドラに大きなダメージを与えるべく強力な赤き炎の術の詠唱を始める。リリシアが術の詠唱に専念できるよう、クリスは天帝の剣を構えてジャンドラに立ち向かっていく。

「リリシアが詠唱に専念できるよう…ここは私が時間を稼ぎます!!

「よし…ここは私たちも加勢するぞ!!クリス、ここは我々と協力してジャンドラを足止めし、リリシアのサポートを行うっ!!

オルトリンデの言葉の後、クリスたち三人はジャンドラを足止めするべく奮闘する。物陰に隠れジャンドラの様子をうかがっているセルフィは、魔力を練り合わせて波導弾を放つ態勢に入る。

 「あの娘…もしかしてリリシアの言っていた『仲間』みたいね。さて…私は最大出力の波導弾で遠隔射撃といこうかな!!

三人の武器による近接攻撃とセルフィの波導弾を受け、ジャンドラは態勢を崩しその場に倒れる。

「お…おのれぇっ!!この私が…貴様らのような小娘どもに追い詰められてたまるかぁっ!!

ダウンをとられ追い詰められ怒りの表情を浮かべるジャンドラは鋭く堅い甲殻に包まれた尻尾を高速回転させ、死の魔力の竜巻を発生させてクリスたちを大きく吹き飛ばす。

「くっ…まだまだよっ!!こんなところで負けられないわっ!!

ジャンドラの死の竜巻を受けたクリスたちは大きく吹き飛ばされたが、またすぐに態勢を立て直しジャンドラに立ち向かっていく。三人が全力でジャンドラと戦う中、リリシアは詠唱を終えて魔力を練り合わせていた。

 「赤き炎よ…煉獄の柱となりて跡形も無く焼き尽くさんっ!!パーガトリアル・ピラー!!

リリシアが術を発動させた瞬間、ジャンドラの周囲に魔法陣が描かれる。魔法陣が描かれてから数秒後、魔法陣から煉獄の炎の柱がジャンドラの体を包み込み、焼き尽くす。

「グギャアアアアアアアアアァッ!!!

煉獄の炎に体中を焼き尽くされるジャンドラは、うめき声を上げながらもがき苦しむ。

「よし…リリシアがジャンドラを煉獄の炎の柱に閉じ込めてくれたおかげで、しばらく隙ができた。その間に各自傷の回復を行い、戦いに備えるのだ。」

ジャンドラが煉獄の炎の柱に閉じ込められている間、クリスたちは各自回復を行い、これから熾烈なものになるであろう戦いに備える。

「皆の者、体力の回復は済ませたようだな。そろそろ戦闘に戻る……っ!?

オルトリンデがクリスたちにそう告げた瞬間、リリシアの放った煉獄の炎の柱によって動きを封じられているジャンドラは鋭く尖った爪で柱を引き裂き、再びクリスたちの前に現れる。

「うぐぐ…往生際の悪い小娘どめっ!!私を追い詰めたつもりだろうが…貴様らがどれだけ私に攻撃を仕掛けようが、私がひとたび目を閉じて瞑想をすれば私の傷は完全に復活する。つまり…貴様らがどれだけ足掻こうが私は倒せんっ!!

怒りの表情を浮かべるジャンドラはクリスたちにそう言い放った後、口から死の閃光を放ちクリスたちを薙ぎ払う。しかしクリスたちは素早い身のこなしでジャンドラの放った死の閃光をかわし、反撃の態勢に入る。

「奴め…あれだけの深手を負ってもなおここまで動けるとはな。流石はヘルヘイムの将というだけあって、一筋縄ではいかなさそうだな。シュヴェルトライテ、懐に入り一気に蹴りをつけるぞっ!!

「そうだな…ジャンドラは瞑想というとんでもない反則技を持っているからな。使われると一気に戦況がひっくり返されるので非常に厄介だ…ジャンドラは私たちの攻撃でかなりの深手を負っている…最大級の一撃を仕掛け一気に葬り去るしかないっ!!クリス、ここは私たちの助太刀を頼む!!

戦乙女たちとクリスはジャンドラの懐へと駆けより、甲殻が剥がれ斬撃が通り安くなった胸部に剣戟を食らわせる。戦乙女が全力を尽くしてジャンドラに立ち向かう中、リリシアは再び魔力を込めて術の詠唱に入る。

 「さて…私もそろそろ本気を出そうかしらっ!!限定解除(リミット・カット)レベル2…超炎化(オーバードライブ)ッ!!

リリシアが早口で詠唱を終えた瞬間、紫色の髪が赤く輝き始める。それと同時に、強大な炎のオーラが魔姫の体を包みこみ、赤き炎の魔力が格段に上がっていく。

「リリシアの魔力の波長が…かなり上がっているっ!!シュヴェルトライテ…戦闘力でいうと数値はいくらだ!!

「数値で言うと…武器での戦闘力は変化なしだが、術の戦闘力は…2580!!邪光妃ニルヴィニアの側近クラスほどの数値だ。しかしあの小娘の体にこれほどの魔力が秘められていたとはな……。」

リリシアの体から放たれる凄まじいほどの炎の魔力を感じた戦乙女の二人は、その圧倒的な魔力に驚愕していた。超炎化を発動させたリリシアは両手に膨大なまでの赤き炎の魔力を込め、ジャンドラにそう言い放つ。

「先にあなたに言っておくわ。私が今発動させた限定解除レベル2は強力すぎる故に…魔力の消費量が凄まじく、超炎化を維持できる時間は僅か五分間…だからこの場は私の魔力が尽きるまでに決着をつけるっ!!

リリシアが炎の魔力を集め戦闘態勢に入る中、ジャンドラは死の魔力を増幅させて身体強化を図る。

 「よかろう…ならば私も全力で相手をしてやろう。ヘルヘイムの将である私に盾突く貴様には、完全なる死を与えてやろう!!

死の魔力によって身体が強化されたジャンドラの筋肉は徐々に隆起し、体が一回り大きくなりさらに禍々しさを増す。身体強化と同時にジャンドラの皮膚や甲殻の肉質が若干硬化し、クリスたちの剣戟が通りづらくなる。

「くっ…肉質効果のおかげで剣戟が通りづらくなっているようだ。クリス、天帝の剣を天に掲げろ!!

オルトリンデに言われるがまま、クリスは天帝の剣を天に掲げ始める。

「こ…これでいいですか。」

「そうだ…そのまま天帝の剣を天に掲げてくれ。今から私たちの魔力をその剣に注ぎ込む…セルフィっ!!君の魔力も天帝の剣に注ぎ込んでやってくれっ!!

戦乙女の二人が天帝の剣に自分の魔力を注ぎ込む中、オルトリンデはセルフィに天帝の剣に魔力を注ぎ込んでほしいと協力を呼び掛ける。

「わかりました。持てるだけの魔力を…天帝の剣に注ぎ込むっ!!

戦乙女たちの魔力とエンプレスガーデンの女帝であるセルフィの魔力が加わり、クリスが天に掲げた天帝の剣は聖なる光を放ち、刀身が白き光を帯び始める。

「クリス、お前が持っている天帝の剣は仲間たちの魔力を注ぎ込むことによって威力を増す伝説の剣だ。その聖なる天帝の斬撃で…諸悪の根源であるジャンドラを討てっ!!

「ありがとう…あなたたちの魔力、決して無駄にはしないわっ!!果敢に挑み倒れていった仲間たちのために…私はジャンドラを討つっ!!

戦乙女とセルフィの魔力が込められ強化された天帝の剣を構え、クリスはジャンドラに立ち向かっていくのであった……。

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