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蘇生の章2nd第九十八話 魔姫の帰還

 完全体となったジャンドラの圧倒的な力の前にクリスとカレニアが傷つき倒れている中、エルーシュは仲間たちのためにジャンドラに立ち向かっていた。エルーシュは魔力を込めた拳の一撃でジャンドラを追い詰めていく。猛攻撃でジャンドラを追い詰めるエルーシュを葬り去るべく、ジャンドラは再び死の魔力を解き放ち巨大な爆発を起こそうとした瞬間、カレニアは最後の力を振り絞って炎の秘奥義を放ち、詠唱の態勢を崩すことに成功した。

 

 カレニアの炎の秘奥義の後、仲間たちはさらなる追撃を加えジャンドラに致命傷を負わせることができたが、ジャンドラの瞑想によって完全に回復し戦況はジャンドラ側に形勢逆転した。エルーシュは最大級の術を放ち善戦するも、ジャンドラの強大な死の魔力の前に敗れ去ってしまった。エルーシュが倒れ絶望的な状況に陥る中、エンプレスガーデンで体内の死霊の浄化と修行を終えたリリシアが二人の戦乙女とセルフィを連れ、ジャンドラを倒すべく玉座の間に現れた……。

 

 オルトリンデとシュヴェルトライテが傷ついたクリスたちを安全な場所へと避難させた後、リリシアは自ら指揮をとり三人に攻撃の指示を与える。

「シュヴェルトライテとオルトリンデはスピードでかく乱しつつジャンドラを攻撃し、セルフィ様と私は術で二人を援護するわ!!

「良き判断だ…近距離攻撃は私に任せてくれ。そなたたち、援護を頼むぞっ!!

そう伝えた後、オルトリンデとシュヴェルトライテは剣を構えジャンドラに向かっていく。リリシアとセルフィは二人を援護するべく、魔力を集め術を放つ態勢に入る。

 「さて、私たちは戦乙女を援護するわよ…。セルフィ様、全力で行くわよっ!!

リリシアの言葉の後、二人は魔力を集め詠唱を始める。二人が詠唱を始める中、シュヴェルトライテとオルトリンデによって攻撃を受けるジャンドラは、口から死霊の集合体を放ち二人に襲いかかる。

「貴様らはかつては黒き戦乙女として我に忠誠を誓っていたのに裏切りよって!!生かしてはおけん我が死霊に蝕まれ死ぬがよいっ!!

ジャンドラの口から吐き出された死霊は、オルトリンデとシュヴェルトライテの体に纏わりついて体の自由を奪う。二人の体に纏わりついた死霊の集合体は身動きを封じると同時に、生体エネルギーを吸い尽くす。

「うぐぐ…しまったっ!!リリシア、麒麟の護符を使えっ!!

シュヴェルトライテの言葉を聞いたリリシアは術の詠唱を止め、懐に忍ばせた麒麟の護符を取り出し強く念じ始める。

「護符に込められし麒麟の力よ…体を蝕む死霊を祓いたまえっ!!

リリシアが念じた瞬間、手に握られた麒麟の護符が光り輝き、オルトリンデとシュヴェルトライテの体にまとわりつく死霊が消え去っていく。

 「ま…まさかあれは!!死霊を討ち祓うと言われる『麒麟の護符』!!まさかあの護符を扱える者がいたとはな!!

ジャンドラの死霊を討ち消す麒麟の護符を持つリリシアを消すべく、ジャンドラは口から闇の球体を吐き出してリリシアを襲う。しかしリリシアは次々と吐き出される闇の球体をかわし、鉄扇の一振りを繰り出すが、鋭く堅い甲殻のせいで弾かれてダメージを与えられなかった。

「くっ…堅い甲殻のせいで私の鉄扇では弾かれて攻撃が通らないわ。やはりここは術で攻撃した方がよさそうね。」

「その通りだ。奴は生半可な剣戟では倒せない…奴にダメージを与えるには斬れ味の良い武器を持ってしても厳しい。ここは術で奴の甲殻を剥がすことが先決だ!!

オルトリンデの言葉を受け、リリシアは再び術を放つべく詠唱を始める。二人の戦乙女によってかく乱されているジャンドラは、再び口から死霊の集合体を吐き出して襲いかかる。

「くそっ…戦乙女めっ!!ちょこまかとこざかしい奴だな。だが私の死霊の前には無力全員まとめて生ける屍にしてくれるわぁっ!!

ジャンドラの口から放たれた死霊の集合体が二人の戦乙女に近づこうとした瞬間、死霊の集合体は一瞬にして消滅していく。その間にも二人の戦乙女はジャンドラに攻撃を仕掛け、僅かだがダメージを与えていく。

「これが麒麟の護符の力…ひとたび強く念じれば周囲一帯に死霊をかき消す空間を作り出せる能力を持っていると聞いたが、まさにその伝説は本当であったか。」

「あいつのおかげで死霊に体力と魔力を吸われずに済む…後は我々の頑張り次第という所だな。オルトリンデ、ここは私が奴をひきつけるから…閃光の剣技で奴を攻めろっ!!

シュヴェルトライテが閃光の剣技で攻めろとオルトリンデに告げた後、黒刀を構えてジャンドラを迎え撃つ。

 「ほう…オルトリンデだけでなく貴様も私に反旗を翻すというのか。まぁよい、我が死の魔力でねじ伏せてくれようぞっ!!

ジャンドラは鋭い棘の生えた尻尾を振りまわしシュヴェルトライテに襲いかかる。しかしシュヴェルトライテは尻尾の一撃をかわし、ジャンドラの懐へと忍び寄り居合の構えに入る。

「死霊王ジャンドラ!!…私はかつて貴様の死の魔力の前に屈し黒き戦乙女に堕ちた。だが、次は負けるわけにはいかんっ!!黒死邪刀術・特式十五ノ型神王黒雷斬ッ!!

シュヴェルトライテは黒刀を振り下ろし、黒き雷の斬撃を放つ。放たれた黒き雷は凄まじいスピードでジャンドラの体を駆け抜け、大きなダメージを与える。

「ぐおおっ…体が動かぬっ!!貴様この私に何をしたぁっ!!

シュヴェルトライテの黒き雷の斬撃を受けたジャンドラは、体が痺れ動けなくなる。体が麻痺し体の自由を奪われているジャンドラに、オルトリンデが背後から閃光の剣技でジャンドラを攻撃する。

「よくやったシュヴェルトライテよ…そなたのおかげで奴を攻撃するチャンスができた!!皆の者よ、奴が動けない隙に一斉攻撃を仕掛け、できるだけジャンドラにダメージを蓄積させろっ!!

オルトリンデが全員にそう伝えた後、閃光の剣技を放ちジャンドラを攻撃する。オルトリンデの攻撃の後、リリシアとセルフィが術で追撃を加えジャンドラに追い打ちをかける。

「赤き炎よ…荒れ狂う炎の渦となりて邪悪なる者を焼き尽くさんっ!!スパイラルブレイズっ!!

「我が体に流れる波導の力よ…一点に集め解き放たんっ!!

リリシアとセルフィは同時に術を放ち、ジャンドラに集中攻撃を仕掛ける。二人の術をまともに受けたジャンドラは甲殻のいたるところが剥がれ、生身の肉体が露わとなる。

「グギャアアァッ!!

二人の術の攻撃を受けたジャンドラはうめき声を上げながら、痛みにもだえその場に倒れ込む。

 「よし…二人の攻撃で奴の甲殻が剥がれた!!シュヴェルトライテここは斬撃で一気に攻めるぞっ!!

ジャンドラが態勢を崩す中、二人の戦乙女は次々と斬撃を加えていく。ジャンドラの体を覆う鋭く堅い甲殻が剥がれたことにより、剣戟が通りやすくなりダメージが倍増する。

「うぐぐぐ…この俺が小娘ごときに倒されてたまるかぁっ!!

追い詰められたジャンドラは全身から闇の波動を放ち、ジャンドラに攻撃を仕掛けるオルトリンデとシュヴェルトライテを吹き飛ばす。しかし二人はすぐさま態勢を立て直し、再びジャンドラの方へと向かっていく。

「オルトリンデよ…ここは連携技でジャンドラを討ち滅ぼすっ!!

「シュヴェルトライテよ、持てる力を全て出し切り…諸悪の根源を断つっ!!

オルトリンデとシュヴェルトライテは武器を構えてジャンドラの懐へと来た瞬間、連携技を放ちジャンドラの腹部を十字に斬り裂く。

「これが戦乙女の結束の証…聖烙印斬(セイント・ブランディング)だっ!!

二人の連携技によって腹部を切り裂かれ怒りの表情を浮かべるジャンドラは体内の死霊を燃やし、大爆発を起こすべく、両手に死の魔力を込め始める。

 「ぐ…ぐおぉっ!!おのれよくもやってくれたな。ならば死の魔力の爆発で貴様らを吹き飛ばしてくれるわっ!!

ジャンドラが爆発を起こす構えをとる中、セルフィは落雷以上の電気エネルギーを含有する鉱石であるゼクロナイト鉱石から作られた雷帝の爪を身につけ、ジャンドラの態勢を崩すべく立ち向かっていく。

「ジャンドラにダメージを与えられなくても…態勢を崩すことはできるわっ!!

セルフィは爪を交差させ、ジャンドラの胸部を切り裂く。セルフィの爪の一撃はジャンドラの鋭く堅い甲殻のせいで弾かれたが、爪から放たれた蒼白い雷がジャンドラの体を駆け抜け、体の内側からダメージを与えていく。

「うぐぐぐ…おのれ小娘らがっ!!さっさとくたばりやがれぇっ!!

セルフィの爪から放たれた蒼白い雷によって体が麻痺し自由を奪われたジャンドラは口から凄まじい死の息吹を吐き、リリシアたちに襲いかかる。その高圧縮の死の息吹はあらゆる物を吹き飛ばし、リリシア達は大きく後ろへと吹き飛ばされていく。

「くっ…ジャンドラの口から放たれた風圧のせいで奴との距離が大きく離されてしまったようだ。流石はヘルヘイムの将…なかなか倒れてはくれないな。」

「オルトリンデ…奴がまた瞑想の態勢に入っているようだ。ここで体力と魔力を完全に回復されるとまずい。ここは私が気配を殺して奴に近づき、我が黒刀の一太刀をお見舞いしてやるしかないな。」

シュヴェルトライテは気付かれないよう摺り足で瞑想中のジャンドラのもとへと近づき、瞑想を中断させるべく刀術を放つ態勢に入る。

 「奴に大きなダメージを与え、瞑想を中断させる!!黒死邪刀術・妨式壱ノ型、脳削斬っ!!

シュヴェルトライテが黒刀を振り下ろした瞬間、黒刀の先から不可視の闇の波動がジャンドラの頭部をかすめる。刀術を放ったシュヴェルトライテがそそくさとその場を去った瞬間、ジャンドラは瞑想の手を止めてあたりを見回し始める。

「むむむ…雑念のせいで瞑想に打ち込めぬ。あと少しで体力と魔力が回復できる所で雑念が入ってしまったおかげで回復ができんっ!!

ジャンドラが回復動作を封じられ苛立つ中、セルフィは爪に魔力を込めてジャンドラに攻撃を仕掛ける。

「よし…シュヴェルトライテのおかげで瞑想を妨害できたわっ!!ここは私が奴の動きを封じるから、リリシアは術の詠唱をお願いっ!!

リリシアにそう伝えた後、セルフィは帯電し蒼白く光り輝く爪を交差させて衝撃波を放ちジャンドラを攻撃する。ジャンドラは両腕で防御の体勢をとり、セルフィの爪から放たれる衝撃波を防ぐ。

「ほう…なかなかいい攻撃ではないか。雷の攻撃で俺を痺れさせようという作戦であったがそうはいかんぞ。私は一度貴様の攻撃を受けて麻痺状態になった…だがその経験が麻痺に対する耐性を生み出した。故に貴様の雷の攻撃を受けて麻痺状態にはならない。さて、今度はこちらから行かせてもらうぞっ!!

「くっ…今ので麻痺に対する耐性がついてしまったみたいね。リリシア、この場は私が奴をひきつけるから、あなたは術の詠唱に専念してっ!!

詠唱に専念するようリリシアに伝えた後、セルフィは拳に魔力を込め次々と波導弾を放ちジャンドラに攻撃を仕掛ける。

 「雷の攻撃がダメなら、この場は波導弾の連打で押すっ!!

セルフィの拳から放たれた無数の波導弾は、次々とジャンドラの体に命中しダメージを与えていく。波導弾の怒涛の連打を受け続けるジャンドラは、その威力によって徐々に後ろへと後退していく。

「うぐぐ…小娘め、波導弾の連打で足止めをするつもりだなっ!!まぁよい、まずは貴様から我が闇の魔力で葬ってやろうっ!!

セルフィの波導弾で足止めを受けているジャンドラは、防御の構えを解き術を放つ態勢に入る。

「我が強大なる闇の力…その身で思い知らせてやろうっ!!ダーク・ブレイクっ!!

ジャンドラが詠唱を終えた瞬間、セルフィの周囲に膨大なる闇の魔力が発生する。セルフィが波導弾の放出を止めて回避しようとするが、間に合わず直撃を受けてしまう。

「うぐぐっ…まだまだぁっ!!エンプレスガーデンの女帝の力をなめるんじゃないわよっ!!

セルフィは膨大なる闇の魔力の直撃を受けたが、素早く態勢を立て直し再び戦いの構えをとりジャンドラを迎えうつのであった……。

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