蘇生の章2nd第九十七話 希望の光
玉座の間で熾烈な激闘を繰り広げるクリスたちは、完全体と化したジャンドラが吐き出す死霊の集合体に苦戦されるが、仲間との連携によって困難を突破していく。ジャンドラがカレニアとエルーシュの攻撃を受けて態勢を崩している中、クリスは天帝の斬撃を放ちジャンドラを葬り去った。クリスたちが勝利を確信したその時、死んだと思われたジャンドラが再びクリスたちに襲いかかってきた。仲間たちが次々と倒される中、クリスは最大級の天帝の斬撃でジャンドラに立ち向かうも、ジャンドラの放った巨大な闇の球体によって押し返され、クリスは大きなダメージを受けてその場に崩れ落ちた……。
クリスが戦闘不能に陥り絶体絶命のピンチの中、ジャンドラの放った爆発を受けて倒れていたエルーシュが立ち上がり、拳を構えてジャンドラに立ち向かっていく。
「よくも仲間たちを痛めつけてくれたな…ジャンドラァッ!!」
「懲りぬ奴だな…私に逆らう不届き者にはお仕置きが必要みたいだな。ではひと思いに殺してやるとするかっ!!」
拳を構えてジャンドラの方へと向かってくるエルーシュに対し、ジャンドラは口から死の魔力を束にして放ち、エルーシュを迎え撃つ。エルーシュは素早い動きでジャンドラの攻撃を回避し、一気に懐へと潜り込む。
「貴様は腹部が弱点と言ったな…なら遠慮なく行かせてもらうぞっ!!」
ジャンドラの懐へ潜り込んだエルーシュは、両手に魔力を込めて連打の一撃を繰り出す。エルーシュの拳が腹部に炸裂するたび、ジャンドラは口から死霊を吐き出しながら苦痛の表情を浮かべる。
「うぐおぉっ!!おのれ貴様…こざかしい真似をしよってっ!!」
ジャンドラは棘のついた巨大な尻尾を振りまわし、腹部を攻撃するエルーシュに襲いかかる。しかし危険を察知したエルーシュは攻撃の手を止め、一気にジャンドラの尻尾へと近づく。
「おっと、奴には尻尾があったか。厄介な尻尾から先に叩き切っておいた方がよかったな…まぁよい、邪魔な尻尾さえ切り落とせば攻撃手段が減らせるからな。」
ジャンドラの尻尾に近づいたエルーシュは右手に魔力を込め、尻尾を叩き斬る態勢に入る。魔力が込められたエルーシュの右手には巨大な刃が形成され、あらゆる物を叩き斬る闘刃と化す。
「はあああぁぁっ!!」
雄たけびとともに放たれた闘刃の一振りは、ジャンドラの巨大な尻尾をいとも容易く切断する。尻尾を斬られたジャンドラはその激痛のあまり、雄たけびを上げながらのたうちまわる。
「グギャアアアアアァァッ!!!」
「これで貴様はもう尻尾を振り回して攻撃することはできない…さて、そろそろ止めといこうかっ!!」
尻尾を斬られたジャンドラが激痛に悶え苦しむ中、エルーシュは止めの一撃を放つべくジャンドラの腹部に手を当て、高圧縮の魔力を解き放つ。
「死霊王ジャンドラよ、この一撃で終わりにしてやろう…ギガリジェクションっ!!」
手のひらから凄まじい衝撃が放たれ、エルーシュの体の内側に大きなダメージを与える。強烈な一撃を受けたジャンドラは口から血と死霊を吐き出しながら、うめき声をあげて苦しむ。
「グギャアアアアァァッ!!おのれ…おのれぇっ!!この私が…ヘルヘイムの将であるこの俺が……お前らごときに倒されてたまるかぁっ!!」
エルーシュに追い詰められ怒りに震えるジャンドラは、両腕に死の魔力を込めて爆発を起こす態勢に入る。
「はぁはぁ…そうはさせないわっ!!ここは私の炎の秘奥義である爆炎殺(ブラスト・バーン)で奴を消し去るしか爆発を止める方法はないわっ!!」
「カレニアっ!!無茶はよせ…その奥義は反動が凄まじく、下手をすればお前の体が蒸発してしかねないっ!!」
カレニアはエルーシュの制止を振り切り、ジャンドラを葬り去るべく炎の魔力を解放し秘奥義を放つ態勢に入る。
「我が身に眠りし炎の魔力よ…強大な爆発となりて全てを焼き尽くさんっ!!炎熱究極秘奥義…爆炎殺(ブラスト・バーン)っ!!」
カレニアが詠唱を終えた瞬間、体から溢れだす膨大な炎の魔力が爆発を起こす。爆発と同時に巻き起こる炎の波動が、ジャンドラの体を焼き焦がしていく。
「ぐおぉっ!!おのれ小娘…こんな大技を隠し持っているとはぁっ!!だが…この程度の術で私を倒せると思ったら大間違いだ…がはぁっ!!!」
その言葉の後、ジャンドラは爆発の一撃を受け大きく吹き飛ばされる。数分間にも及ぶ爆発と熱波が止んだ瞬間、カレニアは魔力を使い果たしその場に崩れ落ちる。
「はぁはぁ……エルーシュ…奴を葬るまでには至らなかったが、大きなダメージを与えてやったわ。」
「カレニアよ、自分の命を賭した無謀な行為であったが…よく頑張ってくれた。奴の体内の死霊はカレニアの放った術によって大分減ってきているが…だがまだ油断は禁物ってところだな。」
カレニアの爆発を受けたジャンドラは大きなダメージを受けたが、再び立ち上がりエルーシュの前に現れ、怒りの形相で彼らを睥睨する。
「うぐぐ…あの小娘のおかげで大きく態勢を崩されたうえ、全身に大火傷まで負ってしまった。まぁよい、この私が受けた痛みは……倍にして貴様らに返すだけだっ!!」
カレニアの秘奥義を受けて大きなダメージを受けたジャンドラは闇の魔力を集め、クリスたちを完全に葬り去るべく術の詠唱を始める。
「死の魔力よ…荒れ狂う黒き雷となれっ!!デッドリー・スパ……ぐおぉっ!!」
ジャンドラが詠唱を終えようとした瞬間、どこからともなく放たれた光の矢がジャンドラに突きささり詠唱が中断される。弱点であるの光の属性を受けたジャンドラは、痛みのあまり悶え苦しむ。」
「はぁはぁ…なんとか奴の詠唱の妨害に成功したわ。ディンちゃん、今のうちに奴を攻撃するのよっ!!」
「わかった…ここは限定解除(リミットカット)で一気に攻めるぜっ!!」
ジャンドラに光の矢を放ったのは、先ほどの爆発を受けて傷つき倒れたと思われたゲルヒルデであった。
ディンゴはジャンドラがゲルヒルデの放った光の矢を受けて態勢を崩している隙に限定解除を行い、一気に攻める態勢に入る。
「俺のボウガンから放たれる連射で、お前をハチの巣にしてやるぜっ!!限定解除(リミット・カット)…極限連射(アルテマショット)!!」
限定解除を行ったディンゴは自らの魔力を弾丸に変え、魔力弾の連射をジャンドラに撃ち込んでいく。ジャンドラは両腕で防御の構えをとるが、その凄まじい連射によって徐々に後ろへと後退していく。
「うぐぐぐ…防御していてもここまで押されるとはっ!!」
「どうだジャンドラ…俺の極限連射(アルテマショット)は俺の魔力をボウガンに注ぎ込むことによって発動される怒涛の魔力弾の超速射だっ!!」
容赦なく放たれる超速射を一撃を防御するジャンドラは、両腕に蓄積されたダメージによって強制的に防御の構えが解かれ、一時的に無防備な状態となる。
「よしっ!!防御の構えが解かれた…そろそろ決めるとするかっ!!バースト・ショット!!」
ジャンドラが防御の構えを崩している隙に、ディンゴは持てる魔力を全てボウガンに注ぎ込み最大級の一撃を放つ。ボウガンの発射口から放たれた膨大なる魔力の弾丸がジャンドラの体に命中した瞬間、大きな爆発とともにジャンドラの体を大きく吹き飛ばす。
「痛ぇ…痛えよおぉっ!!貴様…よくも私の体を吹き飛ばしてくれやがったなぁっ!!だが、私がひとたび目を閉じて瞑想をすれば、私の体力は完全に回復するっ!!」
ディンゴの最大級の一撃によって下半身を吹き飛ばされたジャンドラは、目を閉じて静かに瞑想を始める。すると見る見るうちに吹き飛ばされた下半身が徐々に元通りに復元され、体力が完全に回復する。
「う…嘘だろ!!奴の体が…完全に元通りになってしてしまいやがった…。せっかくクリスたちが頑張ってあれだけ弱らせたのが一瞬にして水の泡だっ!!」
「フハハハハッ…どうだ、悔しいだろうっ!!貴様らがどう足掻いてもヘルヘイムの将であるこの私には勝てん…名残惜しいがそろそろ終わりにしてやろうっ!!」
瞑想によって完全回復を果たしたジャンドラを前に、ディンゴはただ驚きのあまり茫然となる。
「くそっ…なんて奴だ。あれだけの致命傷を一瞬にして回復してしまうとは!!だがここで諦めてはみんなの頑張りを無駄にしてしまう…この場はなんとしてでも私が持たせるっ!!」
エルーシュは仲間たちにそう伝えた後、拳を構えてジャンドラに攻撃を仕掛ける。
「ほう…絶望的な状況になってもまだ立ち向かってくるか。よかろう、二度と歯向かえぬようにしてやろうっ!!」
ジャンドラは口から死霊の集合体を吐き出し、エルーシュに襲いかかる。エルーシュは六枚の翼を広げて回避の態勢に入るが、数匹の死霊の集合体が背中に纏わりついたことによりバランスを崩し地面に激突する。
「くそっ…しまったぁっ!!」
「どうだ、苦しいだろう。このまま死霊たちにエネルギーを吸い尽くされ、生ける屍となるがいいっ!!貴様を生ける屍にした後、貴様の仲間たちも生ける屍に変えてやろう……。」
死霊にエネルギーを吸い取られながらも、エルーシュは歯を食いしばって立ちあがる。ふらふらになりながらもなんとか立ちあがったエルーシュは死霊を払いのけるべく、ディンゴに閃光弾を放つようにと命じる。
「まだだ…ここで倒れるわけにはいかんっ!!ディンゴぉ…閃光弾を放てぇっ!!」
「俺は魔力を使いはたして動けんが…閃光弾を放つぐらいはできるぜっ!!」
ディンゴは鞄の中からポケットの中から閃光弾を取り出し、ジャンドラの方へと投げつける。ジャンドラの近くに転がった閃光弾は強烈な光を放ち、エルーシュの体にまとわりついている死霊の集合体が離れていく。
「よし、ディンゴのおかげで死霊の集合体が私の体から離れた…ここで一気に集合体を消し去るっ!!ホーリー・スパークっ!!」
エルーシュは体から聖なる雷を放ち、再びエルーシュの方へと近づいてくる死霊の集合体を消し去っていく。死霊の集合体を全て消し去った後、エルーシュは両手に魔力を込めてジャンドラの方へと振り向き術を放つ態勢に入る。
「いくぞジャンドラ…ここからが本当の勝負だっ!!堕天邪砲っ!!」
「望むところだ…我が死の魔力で全てを滅ぼしてくれるわっ!!ヘルズ・ブラスター!!」
両者が同時に最大級の術を放ち、術同志の激しいつばぜり合いへと発展する。最初はエルーシュの術がジャンドラの放った術を押して優勢であったが、ジャンドラは体内の死霊を消費して術を強化し、エルーシュの術を徐々に押し返していく。
「フハハハハハッ!!貴様の術など…私の死の魔力の前には無力に等しいっ!!」
激しい術同士の鍔迫り合いの末。ジャンドラの放った膨大な死のエネルギーの波動が競り勝ち、エルーシュは大きく吹き飛ばされてしまう。大きく態勢を崩し動けないエルーシュの前に、ジャンドラは両腕に死の魔力を込め、クリスたちを葬り去るべく術の詠唱を始める。
「ほう…なかなかしぶとい奴だったが、これで終わりだ。我が死の波動で全てを葬り去ってくれるわ!!」
ジャンドラが死の波動を放つべく詠唱に入ろうとしたその時、何者かが扉を開けて玉座の間の中へと入ってくる。
「ジャンドラっ!!あなたを討ち滅ぼしにきたわよっ!!」
扉を開けて玉座の間に現れたのは、エンプレスガーデンでの修行を終えたリリシアであった。魔姫の後ろには戦乙女のオルトリンデとシュヴェルトライテ、そしてエンプレスガーデンの女帝の一人であるセルフィが臨戦態勢に入り、ジャンドラを迎え撃つ。
「お…おのれえぇぇぇっ!!貴様…貴様はミリアゴーシュ神殿での戦いで死んだはずでは!?」
「確かに…私はあなたの死霊の術を受けて死の淵に立たされた。だがエンプレスガーデンの女帝の治療を受け、私は完全な復活を遂げたわ。さて、無駄な時間は食いたくないわ…さっさと始めましょうか?」
リリシアは髪飾りを鉄扇に変え、傷つき倒れたクリスのもとへと近づき労いの言葉をかけた後、戦乙女たちとセルフィにクリスたちを安全な場所に避難させるようにと命じる。
「クリス…そしてみんな。私が来るまでよく頑張ってくれた…みんな、負傷した者を安全な場所に避難させてちょうだいっ!!」
リリシアの命を受けた戦乙女とセルフィは負傷した仲間たちを安全な場所へと避難させた後、二人の戦乙女は武器を構え、戦いの準備を済ませていた。
「リリシア…傷ついたお前の仲間たちを安全な場所へと移動した。そろそろ行くか?」
「みんな、準備は万端よ。仇敵であるジャンドラを打ち倒し、クリスたちの仇を討ちましょう!!」
リリシアと戦乙女たちはクリスたちの仇を討つべく、ジャンドラに立ち向かうのであった……。