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蘇生の章2nd第九十五話 反撃の狼煙

 王宮へと通じている地下水路へと足を踏み入れたリリシアは、突如水の底から伸びてきた触手に絡まれ、水中へと引きずり込もうとするが、間一髪のところで通りすがりの配管工が投げたスパナが触手を切り裂き、リリシアは触手から解放される。リリシアは道中で出会った配管工とともに王宮へと通じる道を探していると、再び二人の前にリリシアを襲った触手が現れる。二人は武器を構えて触手を全て切り落とした瞬間、触手の主であるスーアサーペントが水の底から現れた。リリシアはスーアサーペントの口から放たれる汚水弾を回避しつつ頭部へと飛び移り、雷の術を唱えスーアサーペントを仕留めることに成功した。魔物を退けた二人は、ヘルヘイムの王宮へと通じる道へと急ぐのであった……。

 

 一方ジャンドラと戦うクリスたちは、戦力であるクリスを失い苦戦を強いられていた。ジャンドラの尻尾の一撃を受け大ダメージを受けたクリスは、ゲルヒルデによって安全な場所へと運ばれ治癒を受けていた。ジャンドラの尻尾の一撃で大きなダメージを受けたクリスが戦線復帰するまで、カレニアが指揮をとり仲間たちを統率しジャンドラを迎え撃つ。

「クリスの傷が回復するまで、ここは私たちで何とか持たせるしかないわ!!

カレニアが仲間たちにそう伝えた後、剣を構えてジャンドラに立ち向かっていく。ディンゴとエルーシュはカレニアをサポートするべく、ジャンドラに攻撃を仕掛ける。

「ここは大きなダメージが期待できる雷光弾を発射し、一気に攻めるっ!!

「私は肉弾戦で奴を攻める…ディンゴ、援護射撃をよろしく頼む。言っておくが、くれぐれも味方に命中しないように気をつけてくれよっ!!

二人が援護に入る中、カレニアは自らの剣に炎の魔力を込めてジャンドラに斬撃を食らわせる。しかしカレニアの一撃は堅い甲殻によって弾かれ、傷一つつけられなかった。

「効かぬわ効かぬっ!!そんなぬるい斬撃など我が強固な甲殻の前には無に等しいわ!!さて…貴様もあの小娘同様、地獄へと送ってくれ…ぐわぁっ!!

ジャンドラの尻尾がカレニアに襲いかかろうとしたその時、ディンゴが放った雷光弾がジャンドラの腕に命中し、直撃を免れる。

 「ありがとうディンゴ!!あなたのおかげで助かったわ。」

カレニアは自らの窮地を救ってくれたディンゴに感謝の言葉を述べた後、ディンゴはジャンドラに追撃を加えるべく、破壊力の高い弾丸である徹甲榴弾をボウガンに装填し、ジャンドラの胸部に狙いを定める。

「俺のボウガンでは奴の動きを妨害するのでやっとだ…クリスが戻ってくるまで、俺とエルーシュがあんたをサポートするぜ!!

カレニアは炎の剣技でジャンドラに立ち向かう中、ディンゴは確実に狙った場所に命中するため、全神経を集中させ、引き金に手をかける。

「よし…狙いは定まった!!カレニア、ジャンドラから離れろ!!

カレニアに離れるように命じた後、ディンゴは引き金を引き徹甲榴弾を発射する。ボウガンの発射口から放たれた弾丸はジャンドラの胸部に突き刺さると同時に爆発し、ジャンドラを大きく吹き飛ばす。

「うぐぐ…おのれ、往生際の悪い奴らめ…まだ足掻きよるかっ!!

徹甲榴弾の爆発によって態勢を崩すジャンドラに、エルーシュが両手に魔力を集めてジャンドラの方へと向かっていく。

「お前のおかげで奴を攻撃できる隙ができた…今度は私が奴を攻撃するっ!!

エルーシュは両手に集めた魔力を拳に込め、ジャンドラに連打の一撃を放つ。

 「私の光と闇の魔力で貴様を完全に葬ってくれるわ…マーブル・バースト!!

ジャンドラに高速の連打を浴びせた後、エルーシュは両手に光と闇の魔力を暴走させ大きな爆発を起こす。しかしジャンドラはエルーシュの最大級の術を受けてもなお、再び立ちあがりカレニアの方へと向かってくる。

「おのれ貴様らぁ…今の一撃は流石に効いたぞ。だが…私を倒すには至らなかったようだな。もう遊びは終わりだ…死ねぃっ!!

怒れるジャンドラは口から死の魔力を含む黒炎を吐き出し、カレニアたちを襲う。カレニアは仲間たちに自分の後ろへと来るようにと伝えた後、早口で炎の防壁の術を唱え始める。

「みんな、私の後ろに集まってちょうだい!!ファイア・ウォール!!

詠唱を終えたカレニアは炎の壁を作り出し、ジャンドラの死の黒炎を防御する。ジャンドラの口から吐き出された死の黒炎を押し返すべく、炎の壁に魔力を注ぎ込む

「くっ…このままじゃ打ち負けてしまうわ。だが私たちはこんなところで負けるわけにはいかない!!

炎の壁に魔力を込めた瞬間、炎の壁が死の黒炎を相殺しつつジャンドラの方へと向かっていく。炎の壁がジャンドラのそばまで来た瞬間、炎の壁は熱風となってジャンドラの体を焼き尽くす。

「よし…これならいける!!

カレニアが勝利を確信したその時、ジャンドラは受けてもなお無傷の状態であった。

 「ほう…ミリアゴーシュ神殿で初めて出会った時とは大違いだな。よかろう…ここまで私を痛めつけたのは初めてだ。貴様らに言っておくが、これは私の本気の姿ではない…この姿以上に恐ろしい真の力と言うものを見せてやろう!!

ジャンドラはカレニアにそう言い放つと、ジャンドラはさらに巨大な黒き竜の姿へと変貌を遂げる。真の姿となったジャンドラはおぞましい咆哮を上げ、カレニアたちを威嚇する。

「こ…これが奴の真の姿なのっ!!

「奴の叫び声を聞いた瞬間、体が震えてきちまいやがった!!

そのおぞましい咆哮を受けたカレニアたちは、恐怖のあまり体が凍りつく。ジャンドラは咆哮を受けて動けぬカレニアたちへと歩き出し、巨大な爪を振り上げて襲いかかる。

「これが完全体となった私の力だ…おとなしく私の生贄となれっ!!

ジャンドラの巨大な爪がカレニアに振り下ろされようとしたその時、傷が完全に回復したクリスが天帝の剣を構えてジャンドラの前に立つ。

「クリスっ!!もう戦線復帰して大丈夫なの…?

「もう体力は十分回復したわ。カレニア、私のために戦ってくれてありがとう。」

戦線に復帰したクリスはジャンドラの爪の一撃を押し返した後、戦いの態勢に入りジャンドラを迎え撃つ。

「伝説の武具を持つ適応者め…また立ちあがってきやがったなぁっ!!!だが完全体となった私の敵ではないわっ!!

怒りの表情を浮かべるジャンドラは口から黒炎を吐き、クリスを焼き尽くそうとする。だがクリスはアストライアの盾を構え、防御の構えをとる。

 「アストライアの盾よ…あらゆる災厄から私を守りたまえっ!!

クリスが強く念じた瞬間、アストライアの盾は聖なる光を放ち広範囲に見えない防壁を作り出す。アストライアの盾が作り出した不可視の防壁はジャンドラの死の黒炎を完全に防ぎ、無効化する。

「伝説の武具に秘められた力を引き出すとはな。だが最後の笑うのはヘルヘイムの将であるこの私だっ!!

「私は…絶対に負けない。必ずあなたを倒すっ!!

戦線復帰したクリスは天帝の剣を構え、完全体へと変貌を遂げたジャンドラに立ち向かうのであった……。

 

 クリスたちがジャンドラと戦いを繰り広げる中、通りすがりの配管工とともに地下水路の中を進むリリシアは、ヘルヘイム王宮へと通じているマンホールを見つけ、ヘルヘイム王宮へと突入する。

「ふぅ…なんとかヘルヘイム王宮に突入できたわ。案内ありがとう…配管工さん。」

「礼を言うのはお互い様だ。俺は君に助けられた…君がいなきゃあの触手の魔物の餌食にされていたところだったぜ。さてと、俺の役目はここまでだ。じゃあなっ!!

配管工はリリシアにそう告げた後、そそくさとその場を去っていく。道案内をしてくれた配管工と別れたリリシアはクリスたちと合流するべく、玉座の間へと続く階段を目指し廊下を駆けていく。

「みんな…どうか私が来るまで死なないでっ!!

リリシアがヘルヘイム王宮の正面玄関まで来た瞬間、セルフィがリリシアの目の前に現れる。

「セ…セルフィ様っ!!どうやって王宮の中にっ!?

「私たちが巨人兵と戦っているとき、ちょうどいいタイミングで戦乙女たちが来てくれたのよ。正面玄関の邪魔な岩はシュヴェルトライテが斬ってくれたおかげで突入できたのよ。」

セルフィの言葉の後、三人の戦乙女が王宮の中に入ってくる。

 「お前の仲間が一足先にジャンドラと戦っているとイオニア様から聞いたので、我々もクリスたちの助太刀に来た。そうだ…オーディン様より役に立つ物を持ってきたので受け取ってくれ。」

オルトリンデが鞄の中から古びた札を取り出し、それをリリシアに手渡す。

「そいつは伝説の武具の一つである『麒麟の護符』だ…かつて先代のヘルヘイムの将であるジャンベールを打ち倒した魔導士が持っていたと言われる護符だ。手にするだけでジャンドラの死霊を遠ざけるだけでなく、強く念じれば死霊に蝕まれた者の死霊を消し去る力を持っているのだ。私たちでは拒絶されてしまったが、お前になら使いこなせるはずだ。」

リリシアが麒麟の護符を手に取った瞬間、護符は聖なる光を放ち始める。

「どうやらあなたに貰った護符が私を適応者として認めてくれたみたいね…さて、そろそろジャンドラのいる場所へと向かうわよっ!!

リリシアは三人の戦乙女とエンプレスガーデンの者たちを引き連れ、ジャンドラの待つ玉座の間へと向かっていった……。

 

 一方その頃、クリスは完全体となったジャンドラと対峙していた。ジャンドラは口から死霊の集合体を吐き出し、おぞましい雄たけびを上げながらクリスたちに襲いかかる。

「おお…肉体だ…っ!!

「そこの小娘ども…肉体をよこせ!!ジャンドラの体の中はもうこりごりだぁっ!!

ジャンドラの口から吐き出された死霊の集合体はうめき声を上げながらクリスの周囲を漂い、クリスの肉体を奪うチャンスを狙っていた。

「な…何なのよこの不気味な魔物はっ!!

クリスは剣を振るい、ジャンドラの口から次々と吐き出される死霊の集合体を切り裂いていく。しかし死霊の集合体の一つがクリスの背後に回り、クリスの体にまとわりつく。

「な、何が起こったのよ!!体の力が……抜けていくっ!!

死霊の集合体の一つがクリスに纏わりついた瞬間、複数の死霊の集合体がクリスのもとへと集まり肉体を奪おうとする。

「どうだ…苦しいだろう。私の放った死霊は徐々に貴様の体力と魔力を奪い…生ける屍となる。貴様も磁気にあの紫の髪の小娘のもとへと送ってやろう……。」

その言葉の後、ジャンドラはさらに口から死霊の集合体を吐き出し、クリスを生ける屍にしようとする。クリスの体にまとわりつく死霊の集合体は全身を覆い尽くし、クリスの生体エネルギーを吸い尽くす。

 「うぐぐ…まだよ!!こんなところで…負けたりはしない……っ!!

生体エネルギーを失い薄れゆく意識の中、クリスは僅かに残った魔力で聖なる光を放ち死霊の集合体を遠ざける。クリスはふらふらになりながら仲間たちのもとへと戻ろうとした瞬間、死霊の集合体が再びクリスに襲いかかってくる。

「聖なる光よ…一筋の閃光となって悪しき者を焼き尽くさんっ!!ホーリー・レイっ!!

死霊の集合体が再び生体エネルギーを吸い尽くすべくクリスの体に纏わりつこうとしたその時、ゲルヒルデが光の術を唱えて死霊の集合体を焼き尽くす。

「ありがとうゲルヒルデ…あなたのおかげで助かったわ。」

「間一髪のところだったわ…ここは私が失った体力を回復してあげましょう。ジャンドラに対抗できる唯一の戦力は伝説の武具を持つあなただけだから…私があなたを守ります。」

ゲルヒルデはクリスの体力を回復させた後、クリスは天帝の剣を構えて再びジャンドラに立ち向かっていく。カレニアはジャンドラと戦うクリスを援護するべく、仲間たちを集めて作戦を立て始める。

 「ゲルヒルデはジャンドラの口から吐き出される死霊の集合体を集中的に光の術で狙い、クリスの体力を奴に奪わせないように気をつけて。万が一死霊の集合体がクリスに纏わりついたらディンゴの閃光弾で奴を遠ざけてから攻撃し、誤ってクリスに命中しないように心掛けること。ディンゴは奴の弱点である炎の弾丸で援護射撃を…また死霊の集合体については閃光弾または光属性の弾丸で対処すること。エルーシュは私とともに前衛でクリスのサポートをお願いっ!!

カレニアが仲間たちに命令を与えた後、エルーシュとともに完全体となったジャンドラを迎え撃つ。死霊の力で完全なる存在となったヘルヘイムの将が、クリスたちに牙を剥くのであった……。

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