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蘇生の章2nd第九十四話 潜入、地下水路!!

 クリスたちがヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラと対峙する中、リリシアはエンプレスガーデンの者たちとともにヘルヘイムの王宮前へと来ていた。リリシアたちが王宮内に突入しようとした瞬間、ブリスベン要塞での戦いで死んだと思われていたイングリッドがウイングデーモンの群れたちを率いて襲いかかってきたが、セルフィとリリシアの連携攻撃で打ち倒すことに成功した。リリシアが再び王宮に近づこうとした瞬間、ヘルヘイムの巨大兵が王宮の周囲の大地を隆起させ、窓や扉からといった通行手段を封じられてしまい、エンプレスガーデンの者たちは足止めを食らってしまった。セルフィからヘルヘイム宮下町の中央広場の噴水前のマンホールから入れる地下水道なら王宮に通じているということを知ったリリシアは、ヘルヘイム王宮を離れ中央広場へと向かうのであった……。

 

 ヘルヘイム宮下町の中央広場へと来たリリシアは、噴水前のマンホールを開けて地下水道へと足を踏み入れる。地下水道の中は真っ暗闇で、明りがないと進めない程であった。

「真っ暗で何も見えないわね…ここは炎の球をランプがわりにしたほうがよさそうね。」

リリシアは周囲を明るく照らす炎の球体を生み出し、地下水道の中を進んでいく。しばらく地下水道を進んでいると、突如水の底から触手が現れ、リリシアを襲う。

 「はぁはぁ…あと少し回避するタイミングが遅かったら水の中に引きずり込まれ……きゃあっ!!

リリシアは一度は謎の生物の触手の攻撃をかわしたものの、再び襲いかかってきた触手に絡め捕られてしまう。リリシアは触手から逃れるべく、全身に赤き炎の魔力を纏わせ反撃に出る。

「汚らわしい触手め!!私の体から離れなさいっ!!

必死に触手を振りほどこうとするリリシアをよそに、謎の生物の触手はリリシアを水の底へと引きずり込もうとした瞬間、何者かが投げたスパナが触手を切り裂き、リリシアを救出する。

「君…大丈夫かっ!?

謎の生物は痛みのあまり、地下水道の奥へと逃げ去って行った。リリシアは自分を助けてくれた人に感謝の言葉を述べた後、軽く自己紹介を行う。

「助けてくれてありがとうございます…私の名はリリシアと申します。私はヘルヘイム王宮へ突入するためにこの地下水道を進んでいたら、あの触手に襲われたのよ。」

「私は通りすがりの配管工だ…よく覚えておきな。私は数名の配管工たちとともに地下水道の点検に来たのだが、点検を終えてヘルヘイム王宮に通じるマンホールへと帰ろうとした際に他の奴らがあの触手に襲われたのだ。俺はただ一人の生き残りってわけよ。君は確かヘルヘイム王宮に行きたいと言っていたようだな。だったら私と一緒に行かないか?

一緒に行かないかとの配管工の男の言葉に、リリシアは頷きながらその要求を了承する。

「そうね…この地下水道の内部構造を知っている人がいれば、迷わずにヘルヘイム王宮に行けるかもしれないわね。わかったわ、一緒にヘルヘイム王宮へと向かいましょう。」

一緒にヘルヘイム王宮へと向かおうとのリリシアの言葉の後、配管工の男が水路の見取り図を広げ、ヘルヘイムの王宮へと通じている場所を指差しながらリリシアに教える。

 「うむ…私たちが今いる場所は中央広場の噴水前だ。ヘルヘイム王宮は北の方角だが、そこに向かうためには水の中を通らなければならない…しかし地下水路の水は汚染されており、生身の状態で水路を進めば毒にやられてしまう。しかも先ほど私が追い払ったあの触手の化け物もこの水路の中に潜んでいるので、水路を渡るには多くの危険がつきまとうというわけだ。この場は水の中を避け、遠回りして王宮へと向かおう。」

配管工の男とともに地下水路の奥へと進むリリシアは、ただならぬ魔物な気配を感じていた。

「ここから先に魔物の気配を感じる…しかもこちらに向かってくるわ!!

「くそっ!!どうやら私たちの匂いを嗅ぎつけてきやがったらしいなここは急いで王宮の方角へと走るぞ!!もし奴が襲ってきたときには全力で立ち向かい、撃退に持ち込む!!

二人は魔物の気配から逃げるべく、急いでヘルヘイム王宮へと続く通路へと走っていく。謎の魔物は水の底から無数の触手を伸ばし、リリシア達の行く手を阻む。

「くっ…どうやら回り込まれてしまったみたいね。通りすがりの配管工さん、一緒に戦いましょう!!

「殺された仲間たちの仇を討つためにも…ここは俺たちがなんとかするしかないな!!そこの小娘、くれぐれも足を引っ張るような真似するなよっ!!

足を引っ張る真似はするなとリリシアに告げた後、配管工が工業用カッターを構えて触手に立ち向かっていく。リリシアは配管工の男の助太刀に入るべく、髪飾りを鉄扇に変えて触手へと向かっていく。

 「ここは奴の触手を切り落とし…本体を引きずり出すっ!!

二人が水の底から襲ってくる触手を全て切り落とした瞬間、水面から触手を失った巨大な竜の姿をした魔物が姿を現す。

「とうとう触手の持ち主が出てきやがったか…こいつはヘルヘイムの水棲生物のスーアサーペントだ。奴は下水道に住みつき、首周りに生えている無数に生える触手を伸ばして獲物を水に引きずり込んで捕食するという凶暴な奴だ。お前が殺した仲間の仇…討たせてもらうぜ!!

仲間たちを殺した仇敵を前に、配管工は溶接用のバーナーを構えてスーアサーペントに攻撃を仕掛ける。

「出力全開…お前の顔を真っ黒焦げにしてやるぜっ!!

配管工の男は溶接用のバーナーの出力を最大にまで上げ、スーアサーペントに超高温の熱線を放つ。しかしスーアサーペントはバーナーから放たれた炎を受けてもなお、無傷であった。

「キシャアアアアアァッ!!!

スーアサーペントは尻尾を振り回し、配管工の男を大きくはじき飛ばす。配管工の男はすぐさま態勢を立て直したものの、武器であるバーナーが水の中に落ちてしまい戦う術を失ってしまう。

「しまった…唯一の武器であるバーナーが水の中に落ちてしまいやがった!!

「配管工さん、この場は私に任せてくださいっ!!

配管工にそう伝えた後、リリシアは手のひらに雷の魔力を集めてスーアサーペントの前に立つ。

 「さて…先ほどの借りもあるし、雷の魔力で焼き尽くしてあげるわ!!

リリシアは水棲生物の弱点である雷の術を唱えるべく、精神を集中させて早口で詠唱を始める。怒り狂うスーアサーペントは口から汚水弾を吐き出し、リリシアに襲いかかる。

「残念だけど…あなたの攻撃は私には当たらないわっ!!

リリシアは精神を集中させた状態で、スーアサーペントの口から放たれる汚水弾を回避していく。魔姫が詠唱を終えた瞬間、スーアサーペントの頭部へと飛び移り雷の術を唱える。

「荒れ狂う雷よ…邪悪なる者を貫かんっ!!スタティック・デスボルトっ!!

リリシアの手のひらから放たれた雷は、凄まじい速さでスーアサーペントの体を駆け抜けていく。リリシアがスーアサーペントに止めの一撃を放った後、大きく宙を舞いながら着地する。

「ふぅ…あの魔物のせいでまた無駄に魔力を大きく消費してしまったわ。ジャンドラとの決戦のために温存しておきたかったのに…まぁいいわ、とにかく先を急ぎましょう!!

スーアサーペントを退けたリリシアたちは、ヘルヘイムの王宮へと続く通路へと向かっていく。先を急ぐリリシア達の前に、別の魔物の影が目に映る。

「前方に魔物がいるわ…ここはしばらく様子を見て、隙を見つけたら移動しましょう。」

二人の目の前には、パイプから漏れ出す地溝油を長い舌を使って旨そうに舐める獣の姿がいた。

「おっと…あの魔物はベノムサッカーといって、自分の身長の倍以上ある長い舌を使って、好物である地溝油を食べる魔物だ。もちろんその長い舌には地溝油に含まれる猛毒が含まれていて、その舌に触れると毒にやられてしまうので危険な生物なんだ。俺たち配管工は奴らの毒を受けたらすぐに対応できるよう、強力な解毒剤を常に十本程持っているんだ。むむ…また来やがった!!

好物である地溝油の匂いを嗅ぎつけ、パイプの周りにはベノムサッカーが群がってくる。彼らはパイプから漏れ出す地溝油を貪り、周りのことなど気付いていないようだ。

「あの魔物…パイプから漏れ出す油に夢中みたいね。ここは音を立てないようにすれば、奴らに見つからずに進めそうね。進むチャンスはいましかないわ…急ぎましょう。」

「あんたの意見に賛成だ…だが奴らに見つかった時はあんたがなんとかしろよな!!

リリシア達は音を立てないよう、地溝油を貪り食うベノムサッカーを横切る。

 「よし…無駄な戦いを避けることができたわ!!ヘルヘイム王宮に通じている水路へと向かうわよ!!

二人はヘルヘイム王宮へと向かうべく、地下水路の奥へと進むのであった……。

 

 一方ジャンドラと戦うクリスたちは、邪悪な竜の姿と化したジャンドラと対峙していた。ジャンドラは甲殻に覆われた尻尾を振り回し、クリスたちに襲いかかる。

「まだ諦めぬというのか…この一撃でくたばりやがれっ!!

ジャンドラの巨岩のごとき尻尾の一撃を、クリスは大きく飛び上がり回避する。クリスがジャンドラの攻撃を回避し、再び天帝の剣を構えてジャンドラの方へと向かっていく。

「私たちは絶対に諦めないわ…覚悟しなさいジャンドラっ!!

クリスは自分の魔力を剣に注ぎ、ジャンドラに天帝の斬撃を放つ。しかしジャンドラの堅い甲殻にはクリスの天帝の斬撃は通用せず、尻尾の一撃を受けてしまう。

 「ほう…天帝の剣でこの私を倒せると思っていたのか!!だがもう終わりだ消えろっ!!

ジャンドラの尻尾の一撃を受けたクリスは大きく地面に叩きつけられ、その場に倒れる。ジャンドラは傷つき倒れたクリスに自分の体内の死霊を送り込もうとしたその時、怒りの表情のエルーシュがジャンドラに拳の一撃を浴びせる。

「き…貴様っ!!リリシアだけでなくクリスまでも手に掛ける気かっ!!

エルーシュの拳の一撃を受けたジャンドラは、攻撃の対象をクリスからエルーシュへと向ける。

「ちっ…邪魔が入ったようだな!!よかろう、では貴様から葬ってやろうっ!!

ジャンドラは巨大な拳を振り下ろし、エルーシュに襲いかかる。エルーシュはジャンドラの攻撃をかわし、光と闇の魔力を込めて反撃に出る。

「私の妻であるリリシアを痛めつけた以上、私は貴様を許さん…堕天邪砲っ!!

エルーシュは両腕に集めた魔力を解き放ち、高出力の波動砲をジャンドラに放つ。エルーシュの放った波動砲の一撃はジャンドラを大きく吹き飛ばし、大きなダメージを与える。

「がはぁっ!!!

ジャンドラが大きく態勢を崩している中、カレニアが剣を構えてジャンドラに向かっていく。

「ゲルヒルデ…クリスを安全な場所に避難してちょうだい!!

「わかりました。クリスを安全な場所に運んだ後、私はクリスの治癒に入ります。」

ゲルヒルデに傷つき倒れたクリスを安全な場所に避難させるようにと命令した後、カレニアは炎の剣技でジャンドラに攻撃を加えていく。カレニアがジャンドラと戦っている間、ゲルヒルデはクリスを安全な場所へと運び、クリスの治癒を行う。

 「うぐぐ、おのれ貴様ら…貴様らだけは絶対に地獄に葬ってやる!!

エルーシュの波動砲を受け態勢を崩していたジャンドラは態勢を立て直し、怒りの表情を浮かべながらクリスたちの方へと向かってくる。

「奴が立ちあがったわ…みんな、この場はジャンドラに攻撃を加えつつクリスが復帰するまで時間を稼ぐわよっ!!

カレニアの言葉の後、仲間たちはクリスが回復するまでの時間を稼ぐべく行動を開始するのであった……。

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