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蘇生の章2nd第八十九話 イザヴェル攻防戦

 クリスたちとラダマンティスとの熾烈なる戦いの末、ラダマンティスは全身に無数の角を生やした凶暴な獣へと変身し、クリスたちに襲いかかる。鋭い棘の肩を怒らせた突進に苦戦されるが、カレニアの助太刀もあり、術と剣技でラダマンティスを少しずつ攻撃を仕掛けていくが、クリスたちの攻撃はラダマンティスの堅い肉質には歯が立たなかった。ラダマンティスは鋭い棘の肩を怒らせ防御の構えを取ろうとするクリスに突進を仕掛けようとしたその時、エルーシュが窮地に陥ったクリスの助太刀に入り、ラダマンティスを葬り去ることに成功し、一行はヘルヘイム王宮の中に突入するのであった……。

 

 一方その頃、ヘルヘイムとフェアルヘイムの境目であるヴァルハラの西出口では、戦乙女たちが次々と襲い来るヘルヘイムの軍勢と戦いを繰り広げていた。オルトリンデとシュヴェルトライテがヘルヘイムの軍勢と戦う中、ヴァルトラウテが光弓【荒神】を手に二人の助太刀に入る。

「さぁどこからでもかかってきなさい…私が相手をして差し上げますわっ!!

ヘルヘイムの軍勢を挑発した後、ヴァルトラウテは大きく空中へと飛び上がり光の矢を放つ。放たれた光の矢は無数の光の雨となって、ヘルヘイムの軍勢を次々と射抜いていく。

「さすがは戦乙女の策士…あの一撃だけでヘルヘイムの軍勢の戦力があっという間に弱まった。後は私たちで総攻撃を仕掛け、殲滅するっ!!

ヴァルトラウテの攻撃によってヘルヘイムの軍勢が劣勢を強いられる中、オルトリンデとシュヴェルトライテが残りの魔物と兵たちを一掃し、ヘルヘイムの軍勢を殲滅することに成功した。

 「ヴァルトラウテが来てくれたおかげで、予定よりも早くヘルヘイムの軍勢を片づけることができた。しかしまだ安心はできない、また奴らが来るかもしれないからな。ヴァルトラウテよ、この周辺にまだヘルヘイムの奴らがいるかどうかを確かめてくれぬか?

オルトリンデの言葉の後、ヴァルトラウテは目を閉じてヘルヘイムの者の気配を探りはじめる。

「むむむっ…フェアルヘイムの上空にヘルヘイムの奴らの気配を感じるっ!!奴らめ…飛竜を使いヘルヘイム兵と魔物をフェアルヘイムに送り込み、侵略しようという魂胆だな!!どうやらジャンドラは第二次天界大戦(スカイマキア)を起こすつもりだわ…みんな、引き続きヘルヘイムの軍を討ち滅ぼしに行くわよっ!!

ヘルヘイムの軍勢を討ち滅ぼした戦乙女たちは西出口前を後にし、ヴァルハラへと戻りヘルヘイムの軍勢を殲滅したという旨をオーディンに報告する。

「オーディン様、ヴァルハラ西出口のヘルヘイムの軍勢を殲滅してまいりました。しかし奴らは飛竜を使い、次々とフェアルヘイムに侵入しています。」

「うむ…先ほどから邪悪な気を感じると思ったら、まさかヘルヘイムの奴らだったのか。先ほどイザヴェル王からイザヴェルにヘルヘイムの奴らが攻めてきたとの連絡があってな、少し前にヘルムヴィーゲと数十名の兵士たちをイザヴェルに向かわせたのだが、少し見てきてはくれぬか?

オーディンからイザヴェルに送り込んだヘルムヴィーゲ達の様子を見てきてくれと命じられた三人の戦乙女たちはオーディンにそう告げた後、転送術を使いイザヴェルへと向かっていく。

「オーディン様、私たちはこれよりイザヴェルへと向かいます。」

シュヴェルトライテがオーディンにそう告げた後、闇の回廊を開きヴァルハラを後にする。戦乙女の三人がイザヴェルに来た時には、ヴァルハラの兵士たちとヘルヘイムの軍が戦いを繰り広げていた。

 「どうやらまだヘルヘイム軍との戦いが続いているようだな…よし、ここは私たちも助太刀に入ろう。」

戦乙女の三人はそれぞれ武器を構え、イザヴェルの兵士たちの助太刀に入る。一方ヴァルハラの兵士たちとともにヘルヘイムの軍と戦っていたヘルムヴィーゲは、ヘルヘイム軍の大将と戦っていた。

「ほほう…あれほどの軍勢を一人で倒すとは流石だな。だが私はヘルヘイム軍を束ねるの大将の一人だ…そう簡単には負けませんよ。」

「ヘルヘイムの奴らなんかに…フェアルヘイムは渡さないっ!!

ヘルヘイム軍の大将クラスである魔僧アラモと対峙するヘルムヴィーゲは、コルセスカを構え戦いの構えをとり、アラモへと襲いかかる。

「うむ…たかが小娘でもオーディンに仕える戦乙女となれば危険な存在。ならばこの場で消すしか…っ!!

アラモが全身に魔力を込めようとした瞬間、ヘルムヴィーゲのコルセスカがアラモの心臓を貫く。

「うぐぐ…戦闘スキルは私より上手だったとは!!ジャンドラ様…ばん…ざい……ぐふっ!!

「ふぅ…なんとか大将クラスの奴を一人倒すことができたわ。だがイザヴェルには強い気を持つ者が後4人いる…早く倒しに行かなきゃっ!!

大将クラスの一人である魔僧アラモを打ち倒したヘルムヴィーゲは残りの大将クラスの者を倒すべく、兵を引き連れ再び戦場へと戻るのであった……。

 

 一方その頃、オルトリンデとシュヴェルトライテは卓越した剣技で襲い来る魔物と兵士たちを蹴散らしながらイザヴェルの町の中を進んでいく。

「魔物の数が尋常ではない…ヘルヘイムはどうやら大都市を陥落させるつもりでいるようだな。」

「むむっ…この先に強い気を感じる!!どうやらヘルヘイムの軍を束ねるボスかもしれんな…オルトリンデよ、奴を潰せば戦力はかなり減らせるぞっ!!

魔物たちを蹴散らしながら進む戦乙女の二人の目の前に、爪を構えた強い気を持つ二人が立ちふさがった。二人の背後には数十名のヘルヘイム兵と魔物たちが配置され、鉄壁の守りをなしていた。

 「おっと…ここから先は通さないぜ。この先にはイザヴェルの王城があってな、大将クラスの二人が城を陥落するために向かっている。どうしても通りたい場合は、俺たち暗殺兄弟(アサシンブラザーズ)を倒してからにしなっ!!

暗殺兄弟は鋭い爪を構え、一気に二人のもとに詰め寄る。暗殺兄弟が二人の目の前に移動すると、後ろにいたヘルヘイム兵と魔物が戦乙女の二人を囲み、逃げ場をなくす。

「くっ…挟み撃ちにされたか。まぁよい、お前らもろとも剣の錆にしてくれるっ!!シュヴェルトライテよ…連係攻撃で奴らを討ち滅ぼすぞっ!!

「行くぞオルトリンデ…我が黒死邪刀術の力、とくと奴らに見せてやろうではないかっ!!

戦乙女の二人が剣を構えた瞬間、暗殺兄弟は鋭い爪を突き出して宣戦布告する。

「フヒヒヒヒ…奴ら本気で勝てると思っているらしいぜ!!俺たちで懲らしめてやるぜぃ!!

「兄者…ここは俺たちの連係プレーで奴らをみじん切りにしてやりましょうっ!!

その言葉の後、暗殺兄弟はスピードを上げてオルトリンデとシュヴェルトライテに襲いかかってくる。二人の戦乙女は怒涛となって繰り出される鋭い爪の一撃をかわし、戦いの構えをとる。

 「オルトリンデ、まず私が奴の背後にいる軍勢を打ち倒すので…この場は私が来るまでしばらく一人で戦ってくれ!!

シュヴェルトライテがヘルヘイムの軍勢を相手にする中、オルトリンデはシュヴェルトライテが軍勢を殲滅するまでの間、一人で暗殺兄弟を相手にする。

「わかった…では私はあの兄弟を迎え撃つ!!

オルトリンデは光のレイピアを構え、暗殺兄弟に閃光の剣技を繰り出す。しかし暗殺兄弟は素早い身のこなしでオルトリンデの放った剣技をかわし、連係プレーでオルトリンデを攻める。

「フヒヒヒヒ…弟よっ!!ネイルストームで奴らをひき肉にしてやろうぜっ!!

「いくぞ兄者…俺たちの連係プレーってもんをみせてやるぜっ!!

暗殺兄弟が深呼吸をした後、目にもとまらぬ速さで鋭い鉤爪を何度も振り下ろし衝撃波を放つ。暗殺兄弟のするどい爪が振り下ろされるたびに発せられる衝撃波が、オルトリンデの体を次々と切り裂いていく。

「くっ…なかなか息の合ったコンビネーションだな。だがこれしきの攻撃で戦乙女を倒せると思ってはいないだろうな…!!

オルトリンデは防御を解き、レイピアを天に掲げて聖なる魔力を一点に集め始める。オルトリンデは先端に集められた聖なる魔力を天に向かって解き放った瞬間、天空から無数の光の矢が降り注ぐ。

「そろそろ遊びは終わりだ…シャイニング・レイッ!!

天から降り注がれし光の矢は、暗殺兄弟とヘルヘイムの軍たちを貫いていく。暗殺兄弟は素早い動きで回避の態勢をとるが、暗殺兄弟の兄が光の矢に心臓を貫かれ、息絶える。

 「あ…兄者ーーっ!!き、貴様…よくも兄者を……許さん!!

兄を失い怒りに震える暗殺兄弟の弟は、鋭い鉤爪を突き出してオルトリンデに襲いかかる。しかしオルトリンデは紙一重で攻撃をかわし、すれ違いざまに暗殺兄弟の弟の鉤爪を破壊する。

「お…俺の爪がぁっ!!

「武器である爪を破壊された以上、もう貴様に攻撃の術はない。今すぐにでも兄のもとへと送ってやろうっ!!

オルトリンデは素早い動きで暗殺兄弟の弟の背後へと移動し、レイピアの一突きをお見舞いする。オルトリンデのレイピアの突きを受けた暗殺兄弟の弟は心臓を貫かれ、息絶える。

「ふぅ…暗殺兄弟は仕留めたが、イザヴェル王城に向かった強い気を持つ者を仕留めなきゃならない。シュヴェルトライテよ、暗殺兄弟は私が倒した…イザヴェル王城に向かうぞ!!

オルトリンデがシュヴェルトライテの方に振り返った時には、ヘルヘイムの軍勢は全てシュヴェルトライテによって倒されていた。

 「こちらは殲滅完了だ。さぁ、イザヴェル王城へと向かおうか。」

暗殺兄弟を打ち倒したオルトリンデたちは、イザヴェル王宮へと急いでいく。王城の門前では大将クラスの者が重装兵を引き連れ、イザヴェル王城の門番たちと戦いを繰り広げていた。

「命に代えても貴様らは一歩もたりとも通さんっ!!

「衛兵のくせになかなかやるではないか…だが、ヘルヘイム軍の大将クラスである重装兵曹長・ガロン様の力をなめるなよっ!!

重装兵曹長のガロンは巨大な斧を力いっぱい振り下ろし、門を守る衛兵たちを薙ぎ払う。

「さて…衛兵どもは片づけたことだし、王城へ攻め込むぞ!!皆の者よ、フェアルヘイムの大都市をヘルヘイムの領地にしてくれようぞ!!

衛兵たちを退けたガロンがイザヴェル王城の扉に手をかけようとしたその時、シュヴェルトライテは衝撃波を飛ばし、ガロンを攻撃する。しかしヘルヘイムの重装兵の鎧は頑丈な鉱石で作られており、衝撃波では歯が立たなかった。

「むむ…今俺の鎧に何かあたったような気がしたが…気のせいか。」

「ぐぐぐ…流石はヘルヘイムの重装兵だな。あらゆる攻撃を無にする頑丈さと全てを打ち砕くパワーが売りの軍団だから並大抵の攻撃では歯が立たないようだ。しかし力と身の守りが優れている分賢さはあまり良くないので、術の攻撃にはめっぽう弱い…ということだな。まずは私が奴に攻撃を仕掛けるので、オルトリンデとヴァルトラウテは術で奴を迎え撃ってくれ!!

二人にそう告げた後、シュヴェルトライテは黒刀を構えてガロンの背後に近づこうとした瞬間、その気配を感じたガロンは巨大な斧を構え、シュヴェルトライテの方へと振り向く。

「し…しまった!!

「おっと…背後から襲ってくるとはずいぶん卑怯な真似をしてくれるではないか!!見せてやろうではないか…重装兵曹長の力をなっ!!

ガロンに動きを読まれたシュヴェルトライテは咄嗟に黒刀を構え、つばぜり合いに持ち込む。戦乙女たちはイザヴェルを侵略しようとするヘルヘイムの軍勢を打ち倒し、イザヴェルを救うことができるのか!?

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