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蘇生の章2nd第九十話 イザヴェルを解放せよ!!

 ヴァルハラの西出口に攻めてきたヘルヘイム軍の殲滅を完了した戦乙女たちは、オーディンからイザヴェルに送り込んだヘルムヴィーゲとヴァルハラ兵たちの様子を見てきてくれとの命を受け、三人の戦乙女は転送術を使いイザヴェルへと向かった。三人がイザヴェルに来た時には、イザヴェルではヴァルハラの兵士とヘルヘイム軍が戦いを繰り広げており、市街地は戦場と化していた。ヘルムヴィーゲ組の助太刀に入った戦乙女たちは敵を蹴散らしながら先をイザヴェルの町の中を進んでいると、彼女らの目の前にヘルヘイム軍の大将クラスである暗殺兄弟(アサシンブラザーズ)がヘルヘイム兵と魔物たちを引き連れ三人の前に立ちふさがった。

 

 シュヴェルトライテが暗殺兄弟の背後にいる軍勢を相手にする中、オルトリンデは息の合った連係プレーに苦戦を強いられるも、彼女の持つ閃光の剣技によって暗殺兄弟を葬り去ることに成功した。戦乙女たちがイザヴェルの王城に到着した時には、重装兵たちを束ねる重装兵曹長・ガロンが王城を攻め込もうとしていた……。

 

 イザヴェルの王城を攻め込もうとする重装兵曹長のガロンを倒すべく、シュヴェルトライテは黒刀を構え、ガロンとつばぜり合いを繰り広げていた。彼の武器である巨大な斧は黒刀と比べ重量が重く、ガロンがシュヴェルトライテを押していた。

「つばぜり合いに持ち込むか…だが無駄なこと!!我が斧の一閃で弾き返してくれるわっ!!

「くっ…さすがは重装兵を束ねる者だな。だがこれならどうだっ!!

つばぜり合いを制するべく、シュヴェルトライテは黒刀を握る腕に渾身の力を込めガロンを徐々に押し返していく。

 「なっ…何ぃっ!!この俺が…小娘ごときに押し返されているとは!!き…貴様ぁっ…どこにそんな力があるというのだっ!!

シュヴェルトライテに押し返されていくガロンはさらに力を込めるも、鬼神のごときシュヴェルトライテの気迫と力に負け、競り負けてしまう。つばぜり合いに競り負けてしまったガロンは大きくはじき飛ばされ、大きく壁に激突する。

「オルトリンデ…ヴァルトラウテよっ!!奴が大きく態勢を崩しているうちに術を放つんだっ!!

シュヴェルトライテの言葉の後、オルトリンデとヴァルトラウテは早口で術を詠唱し賢さの低いガロンに術の一撃を浴びせる。

「闇を焼き尽くす一筋の閃光よ…邪悪なるものに制裁を与えよっ!!ギガ・レイっ!!

「聖なる光よ…炎となりて悪しき者を焼きつくさんっ!!セイント・ブレイズ!!

二人の戦乙女が詠唱を終えた瞬間、二つの聖なる光の魔力がシュヴェルトライテとのつばぜり合いにせり負け態勢を崩しているガロンに襲いかかる。

「うぐぐ…重装兵曹長であるこの俺がこれしきの術で負けるわけにはいか……ぐわあぁっ!!

二人の聖なる術を受け、ガロンの頑丈な鎧にヒビが入る。シュヴェルトライテは黒刀を突き出し、ヒビが入った個所に狙いを定め、貫きの一突きを放つ。

 「奴の頑丈な鎧さえ壊せば…重装兵の売りである守備力がかなり減らせるっ!!

シュヴェルトライテの狙いすませた黒刀の一突きが炸裂した瞬間、頑丈なガロンの鎧が砕け散り生身の肉体が露わとなる。鎧を失ったガロンはすぐさま

「ぐっ…私の鎧がっ!!重装兵よ…私が予備の鎧を身につけている間、時間稼ぎを頼むっ!!

ガロンが予備の鎧に着替え終わるまでの間、ガロンの命を受けた重装兵が戦乙女たちの前に現れる。

「予備の鎧に着替え終わるまでの時間稼ぎと言うわけか…ここは私とオルトリンデが重装兵たちを相手にするので、ヴァルトラウテは遠隔射撃でガロンを狙えっ!!

シュヴェルトライテとオルトリンデが差し向けた重装兵たちを相手にする中、ヴァルトラウテは重装兵たちに気づかれぬよう、忍び足でガロンのもとへと忍び寄る。

「二人のおかげでなんとか奴の近くまで来れたわ…さて、気付かれないように仕留めないとね。」

草むらに隠れたヴァルトラウテは鉄甲弓に貫通性能に優れている金の矢を装填し、予備の鎧に身を包もうとするガロンに狙いを定める。

「金の矢は貫通性能に優れる分、一本あたりの単価が高いので外せば財政的にも痛いから必ず命中させないと…。」

ガロンの胸部に狙いを定め、ヴァルトラウテは鉄甲弓の引き金を引き金の矢を放つ。草むらから放たれた金の矢はガロンの心臓を貫いた後、空の彼方へと消えていった。

「な…何が起こった…んだ……ぐふっ!!

金の矢によって心臓を貫かれたガロンは、胸から血を流しながらその場に倒れる。ヴァルトラウテはガロンを仕留めた後、重装兵たちと戦うオルトリンデとシュヴェルトライテの助太刀をするべく急いでその場を後にする。

 「ふぅ…なんとか大将クラスの撃破完了。さて…と、シュヴェルトライテたちの助太刀に入ると…あらら、二人だけで重装兵たちをやっつけちゃってるわね。」

ヴァルトラウテが助太刀異に入ろうとしたその時、重装兵たちはすでにシュヴェルトライテとオルトリンデによって倒されていた。

「ヴァルトラウテよ、助太刀はいらんぞ。襲ってきた重装兵たちなら私とオルトリンデで全て倒した。オルトリンデよ、まだヘルヘイムの奴らがいないか探ってはくれんか?

「むむっ…まだイザヴェルの町の中に強い気を持つ者がこの近くに一人いる…!!私の能力では奴のいる場所までは特定できない…。」

オルトリンデがそう呟いたその時、ヘルヘイムの軍と戦っていたヘルムヴィーゲが兵たちを引き連れ、最後の大将がイザヴェルの王城の中にいることを兵たちに伝える。

「最後のヘルヘイムの大将クラスはイザヴェル王城の中にいます!!皆の者、戦いの構えをっ!!

ヘルムヴィーゲたちがイザヴェル王城の内部へと入ろうとしたその時、オルトリンデが一緒にヘルヘイムの大将と戦うようにとヘルムヴィーゲに交渉する。

「おお…いいところに来た。私たちも今先ほど大将クラスのガロンを倒したところだ。ヘルムヴィーゲよ、私たちも助太刀しよう!!

「王城の中にいるヘルヘイムの最後の大将は…禍々しいまでの闇のオーラを持つ者です。あなた方が一緒にいてくれると助かります!!みんな、最後の大将を打ち倒しイザヴェルを解放しましょう!!

ヘルムヴィーゲの言葉の後、ヘルヘイムの最後の大将を倒すべく四人の戦乙女とともにイザヴェル王城の中へと入るのであった……。

 

 一方エンプレスガーデンのイオニアの宮殿では、武器を構えた者たちがジャンドラを討つべくヘルヘイム王宮へと乗り込む準備を整えていた。

「セルフィ様、こちらも出撃準備は万端よ。早くクリスたちと合流し、ジャンドラを倒さなきゃね。」

「ええ…こちらも完了よ。先ほどアムリタ様からジャンドラの部下であるラダマンティスとベン・ザ・エースが倒れたとの一報を聞いたわ。」

セルフィからジャンドラの部下が二人倒れたということを聞いたリリシアは、嬉しそうな表情を浮かべながら、心の中でそう呟く。

 「ジャンドラの部下が二人倒れた…ということは、クリスもヘルヘイム王宮に向かっているということね。早くヘルヘイム王宮に向かいたいところだけど…イオニア様の出撃命令がなきゃ動けないわ。」

全員がヘルヘイム襲撃のための準備を終えた後、イオニアが現れフェアルヘイムで今起こっている出来事を話したあと、エンプレスガーデンの者たちにヘルヘイム壊滅を命じる。

「うむ…準備が終わったようだな。アムリタから聞いていると思うが、ヘルヘイム軍が五人の大将を引き連れ、ついにフェアルヘイムの大都市であるイザヴェルに攻撃を開始した。戦乙女たちは兵士たちを引き連れイザヴェルへと赴き、ヘルヘイム軍の殲滅およびイザヴェルの防衛活動を行っている。ジャンドラを打ち倒さない限り、また次なる被害がでるかわからぬ。だからこそヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラを打ち倒し、ヘルヘイムという国を壊滅させてほしいのだ!!

イオニアの言葉を受けたエンプレスガーデンの者たちは、拳を天に上げてイオニアを賞賛する。

「イオニア様、私たちとともにヘルヘイムを滅ぼしましょう!!

「ヘルヘイムの将を討ち滅ぼし、混沌としたヘルヘイムに光を取り戻しましょう!!

イオニアを支持する者たちの歓声が響く中、イオニアは手に持ったチョークを使い、宮殿の床に転送陣を描き始める。イオニアは転送陣に魔力を込めた後、準備ができたら私のもとに来るようにと伝える。

「うむ…これよりヘルヘイム王宮への出撃命令を出すっ!!準備ができ次第私のもとに集まるがいい。そうだ、この転送陣はヘルヘイムの王宮の内部に繋がっている。セルフィの部下が私の計画に手伝ってくれたおかげで、ヘルヘイム王宮へと続く転送陣を作ることに成功した。」

イオニアがエンプレスガーデンの者たちにそう伝えた後、エンプレスガーデンの者たちは次々と転送陣に乗りヘルヘイム王宮へと向かっていく。

「さて…ヘルヘイムの軍を完膚なきまでに叩きのめすわよっ!!リリシア、この転送陣に乗りヘルヘイムへと向かうと、これから先は避けられない戦いの連続よ…。」

「私はすでにヘルヘイムに乗り込む準備はできているわ。セルフィ様、私たちもそろそろ出発しましょう!!私に一度深手を負わせた憎きジャンドラを討つためにっ!!

リリシアがセルフィにそう告げた後、二人は転送陣に乗りヘルヘイム王宮へと向かうのであった……。

 

 一方最後のヘルヘイムの大将を倒すべくイザヴェル王城の内部へと向かった戦乙女たちは、兵士たち異とともにイザヴェル王のいる玉座の間を目指していた。

「玉座の間から禍々しい気を感じます…みんな、急ぎましょうっ!!

戦乙女たちが玉座の間に来た時には、イザヴェル王がヘルヘイムの大将と激しい死闘を繰り広げていた。

「くっ…なかなかの剣技だな。だがヘルヘイムの者にイザヴェルは渡さんっ!!

「フン…おとなしく開け渡せばよいものを。いいだろう、ヘルヘイム騎士団長であるこのベイルが貴様を打ち倒し、このイザヴェルをヘルヘイムの領土にするのだっ!!

イザヴェル王との激しいつばぜり合いを繰り広げるヘルヘイム騎士団長のベイルは手に持った黒剣に闇の魔力を込め、イザヴェル王を大きく吹き飛ばす。ベイルがイザヴェル王に止めを刺そうとした瞬間、黒刀を構えたシュヴェルトライテがベイルの前に立ち、威圧する。

 「イザヴェル王の首を討ちろうとしているようだが…そうはさせんぞっ!!

シュヴェルトライテの鬼神のごとき威圧を受けたベイルは、恐ろしさのあまり後ろへと後退する。

「そ、そなたは剣帝と謳われているシュヴェルトライテ様では…それに後ろには他の戦乙女まで!!まさか、イザヴェルを救うためにわざわざ来てくれたのかっ!!

「いかにも…私たちはオーディン様よりイザヴェルに攻め込んだヘルヘイム軍を倒すように命じられ、オルトリンデとヴァルトラウテとともにイザヴェルへと来た。イザヴェル王…後は私たちにお任せを!!

シュヴェルトライテの言葉を受け、イザヴェル王は玉座の間を後にし安全な場所へと向かっていく。イザヴェル王が去った後、ベイルは血走った眼でシュヴェルトライテを睨みつけながら、戦いの構えをとる。

「ほう…貴様らが戦乙女か。少々骨のある面々だが、この俺の闇の剣技で討ち滅ぼしてくれるわっ!!

ベイルは黒剣を構え、戦乙女たちに襲いかかってきた。果たして戦乙女たちはヘルヘイム軍の最後の大将を打ち倒し、ヘルヘイムの魔の手からイザヴェルを解放することができるのか……!!

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