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蘇生の章2nd第八十六話 大戦艦を撃沈せよ!!

 クリスたちがヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラの待つヘルヘイム王宮へと向かう中、クリスたちを先に行かせるべくヴァルハラに残ったディンゴはジャンドラの部下の一人であるベン・ザ・エースと対峙していた。ベン・ザ・エースの操る二丁の銃と影を操る能力に苦戦させられたが、ディンゴのことが心配でヴァルハラに戻ってきたゲルヒルデの加勢もあり、ジャンドラの部下の一人であるベン・ザ・エースを打ち倒すことに成功し、クリスたちと合流するべくヴァルハラを後にするのであった……。

 

 一方その頃ヘルヘイムの王宮では、ジャンドラの部下の一人であるバロールがベン・ザ・エースが倒されたということを告げる。

「オーディンを抹殺するために送り込んだベン・ザ・エースの生体反応が消えました。」

「なんだと…ベン・ザ・エースがやられただと!!まぁいい…狂王ラダマンティスがいる限り奴らは絶対に王宮の中には入れん。なんせ今回奴には生体改造を施してあるからな…。」

ジャンドラがそう呟いた後、ラダマンティスが玉座の間に現れる。ラダマンティスはジャンドラによって生体改造を受け、二本の腕が四本に増え、さらに凶暴性を増していた。

 「ジャンドラ様…お呼びですか。私は今猛烈に王宮に入ろうとする侵入者を切り刻みたい気分だ…ああ、早くこの剣を振り下ろしたくてうずうずしているぜっ!!

ジャンドラによって生体改造を受けたラダマンティスを一目見たバロールは、拍手をしなあらジャンドラを賞賛する。

「むむっ…腕を四本に増やし手数を増やす作戦にでたか。さすがはジャンドラ様。」

「死体の腕をくっつけただけだが、外れることなくうまく動かせているようだ。これで四刀流の構えをとることができるぞ。四本の腕から繰り出される剣技は…まさに強力無比だ…ハッハッハッ!!

ジャンドラが高笑いを浮かべる中、バロールは何者かがこちらに向かっていると告げる。

「ジャンドラ様…何者かがこちらに向かってきます。茶色の髪の小娘と赤髪の小娘…ジャンドラ様、見覚えがありませんか?

「茶色と赤髪の小娘…まさかミリアゴーシュ神殿のときに出会った奴だっ!!まさか…私があの時葬った紫髪の小娘の仇でもとりにきたというのか!!まぁよい、この場はラダマンティスに任せる。私は大戦艦のテスト飛行を行わなければならないので、バロールはしばらくここで見張りを続けろ!!

見張りを続けろとの言葉を受け、バロールは王宮の見張りに向かっていく。一方ジャンドラから侵入者の排除を命じられたラダマンティスは、剣を振り回しながら玉座の間を後にする。

「ふはははははっ!!久々に人間に肉を斬れるぜ…早く侵入者来ないかなぁっ!!

ジャンドラは狂気の笑みを浮かべながら、武器を舐めながら侵入者が来るのを待つのであった。一方その頃ヘルヘイムのとある整備工場では、ついに大戦艦は整備を終え、テスト飛行の準備を始めていた。

 「大戦艦はたった今整備を終え、これよりテスト飛行を開始します。では…ジャンドラ様からありがたおご挨拶があります…。」

整備工場の社長の言葉の後、ヘルヘイムの将であるジャンドラが整備員たちの前に現れる。ヘルヘイムの将の姿を見た整備員たちは、拍手と歓声を上げてジャンドラを賞賛する。

「我こそはヘルヘイムの将…死霊王ジャンドラであるぞっ!!君たちが汗水を垂らしながら大戦艦の整備をしてくれたおかげで、待ちに待った飛行テストの日が来た!!この大戦艦さえあれば…フェアルヘイムを滅ぼし…第二のヘルヘイムに変えてしまうことも可能なのだ。では私はこれにて失礼する……。」

ジャンドラが整備員たちに挨拶を行った後、ヘルヘイム王宮の兵士たちは次々と大戦艦の中へと乗り込んでいく。ジャンドラは兵士たちを笑顔で見送った後、整備工場を後にする。

「そろそろ大戦艦の飛行テストが開始されるようね…みんな、作戦開始よ。」

物陰に隠れて様子を窺っていたセルフィの部下がそう告げた後、大戦艦は大きなエンジン音とともに上昇を開始する。上空で待ち構えていたエンプレスガーデンの者たちは対戦艦爆弾を抱え、来るべき作戦決行を待っていた。

 「さて…そろそろヴァネッサが運搬用フリゲートに乗ってここに現れるわ。みんな、大戦艦の姿を確認したらこの爆弾を設置してちょうだい!!

セルフィの命を受け、爆弾を抱えたエンプレスガーデンの者たちは大戦艦を撃ち落とすべく作戦を決行する。他の者たちが向かった後、セルフィとリリシアは宮下町付近を捜索していると、ヘルヘイムの大戦艦の姿が二人の目に映る。

「こちらセルフィ!!宮下町の前方に大戦艦の姿を確認…対戦艦爆弾を設置するチャンスよ!!

セルフィの命を受けたエンプレスガーデンの者たちは次々と大戦艦へと接近し、対戦艦爆弾を設置する。他の者たちが設置を終えた後、セルフィはリリシアに起爆を要請する。

「対戦艦爆弾設置完了…リリシア、起爆はあなたに任せるわっ!!あ…ひとつ言っておくがあの爆弾は魔力に反応して爆発するようになっているから、少し手加減して起爆した方がいいわ。」

セルフィの命を受け、リリシアは手のひらに魔力を込めて大戦艦に放つ。大戦艦に設置された対戦艦爆弾が次々と爆発し、大戦艦の外壁が外されていく。

「あれだけの爆風を受けながら、大戦艦はまだ機能しているわ。」

大戦艦のボディはレアメタルを配合して作られているせいか、対戦艦爆弾だけでは撃沈には至らず外壁を破壊するだけで精一杯であった。

 「対戦艦爆弾で大戦艦の外壁は破壊できても…ボディはレアメタルを含有した鉄板で作られているから撃沈までには至らなかったようね。だが、ここは無理かもしれないけど…雷帝の爪で攻撃を仕掛けるっ!!

セルフィは両手に雷帝の爪を身につけ、対戦艦爆弾の爆風によってむき出しになったボディに攻撃を仕掛けていく。セルフィが身に付けた雷帝の爪の一撃が炸裂するたび、紫色の電撃が迸る。

「この雷帝の爪は『ゼオライト鉱石』と呼ばれるレアメタルで作られた爪…落雷に匹敵するほどの雷のエネルギーを含有する希少鉱石から作られたこの爪は…たとえ爪の一撃が弾かれようとも、その雷は相手の体を突き抜けるっ!!

セルフィの爪から放たれる電撃を受け、大戦艦の内部では電気系統のトラブルが発生していた。

 「電気系統に異常発生…誰でもいいから原因を突き止めるんだ!!

電気系統に異常が発生したとのパイロットの命を受け、乗組員の一人が点検へと向かう。乗組員の一人が大戦艦の通路へと来た瞬間、強烈な磁気嵐が発生していた。

「うっ…どうやらこの磁気嵐が電気系統のトラブルの原因だったか。ここは磁気キャンセラーがあれば、電気系統のトラブルは一発解消だな…。」

乗組員の一人は鞄の中から磁気キャンセラーを取り出し、通路に発生した磁気嵐を除去する。しかしいくら取り除いても磁気嵐が発生し、磁気キャンセラーでも除去し切れないほどの磁気嵐が発生し乗組員を襲う。

「くっ…いくら除去しても磁気嵐が出てきやが……ぐわあぁぁぁっ!!

磁気嵐に巻き込まれた乗組員は、強烈な磁気によって心臓をやられその場に倒れる。磁気嵐は徐々に大きくなり、メインコントロールの近くまで迫りつつあった。

 「電気系統の異常が広がっている…操縦室とメインコントロールルームがやられれば致命的だ!!この場は磁気防御シールドを張り、なんとか操縦を再開するっ!!

大戦艦のパイロットは磁気防御シールドを展開させ、迫りくる磁気嵐を防御する。磁気を防御するシールドは最高級の希少なゴムで作られており、いかなる磁気や電気を遮断する。

「よし…これで操縦が再開できそうだ、何としても飛行テストを終わらせて帰還してやるっ!!

磁気防御シールドを展開し、大戦艦は再び態勢を立て直し上昇を始める。大戦艦が発進しようとしたその時、目の前にヴァネッサが操縦する運搬用フリゲートが現れる。

「前方に正体不明機を確認…一体だれが操縦しているんだっ!?

「ヴァネッサ…少し遅かったけど来てくれたわ!!さぁ、あの大戦艦をぶっ潰してちょうだい!!

少し遅れて現れたヴァネッサを見たセルフィは、大戦艦を潰すようにと命令する。

「ごめん…すこし武器の製造で手が離せなくて遅くなってしまったけど、今から作戦を開始するわっ!!

ヴァネッサがそう呟いた後、フリゲートに搭載されたバルカン砲で射撃を行う。バルカンの連射は大戦艦の左の翼に炸裂し、完全に破壊される。

「左翼損傷…飛行バランス低下!!

「うぐぐ…左翼を破壊されたか!!ここは何かあった時のために用意された重力弾を使い、反撃を行うっ!!

パイロットは運搬用フリゲートを撃沈させるべく、もしもの時のために2〜3個ほど準備しておいた重力弾を放つ。砲台から放たれた重力弾は運搬用フリゲートに着弾した瞬間、強烈な重力場が発生しフリゲートが徐々に降下し始める。

 「しまった!!奴が放ったのは重力弾…フリゲートが徐々に降下し始めているわっ!!親方様、ここはエンジン全開でいってもいいかな?

エンジン全開でいってもいいかとのヴァネッサの交渉に、イザヴェルの工房の親方がどうするかは自分次第だと告げる。

「うーん…重力場の中でエンジン全開で上昇すれば機体に大きな損傷を受けるが、そうしなければフリゲートは地面に激突しちまうからな…するかしないかはお前の決断に任せるぜ!!

親方の言葉の後、ヴァネッサはフリゲートのエンジンを全開にして重力場を離脱する。その代償として、フリゲートの外壁が大きく損傷し、はがれた外壁がヘルヘイムの宮下町へと落下していく。

「重力場から脱出完了…しかし機体が大きく損傷を受けてしまったわ。こりゃ修理費が高くつきそうね…。さて、そろそろ一気に撃ち落とすとしましょうかっ!!

「フリゲートの修理費ならセルフィって奴に払わせればいいってことよ。そもそもあいつが計画したことだろう、だから修理費はきっちりと払ってもらわないとな。ヴァネッサ…大戦艦が前方へと逃げた。さっさと追撃を加えないと逃げられちまうぞ!!

重力場を抜けたフリゲートは整備工場へと戻ろうとする大戦艦を追い、一発の威力が大きいマグナム砲弾を大戦艦めがけて発射する。マグナム砲弾は大戦艦の外壁に着弾した瞬間、膨大な爆発が巻き起こり大戦艦のボディに大きな風穴を開ける。

 「うぐぐ…ボディがやられた!!これ以上は持たん!!

その言葉の後、フリゲートが止めのバルカンの掃射を行い大戦艦の右の翼を撃ち抜く。両方の翼を失った大戦艦は完全にバランスを失い、宮下町へと墜落していく。

「ヴァネッサのおかげで、大戦艦は完全にバランスを崩したわ…さて、対戦艦爆弾を投下するわよ!!今度は私たちが大戦艦に止めの一撃を放ってやるわよっ!!

セルフィの号令を聞いたエンプレスガーデンの者たちは次々と対戦艦爆弾を墜落していく大戦艦へと投下していく。対戦艦爆弾を投下し終えた後、セルフィは両腕に魔力を込めて波動弾を放つ態勢に入る。

「これで…終わりにしてあげるわっ!!

その言葉の後、セルフィは自らの覇気を込めた波動弾を大戦艦に放つ。セルフィの波動弾が大戦艦に命中した瞬間、投下された対戦艦爆弾が次々と爆発を起こす。

「やった!!これでフェアルヘイム侵攻のための兵器である大戦艦は完全に葬り去ったわ。みんな、私たちの勝利よっ!!

セルフィが勝利を宣言した瞬間、エンプレスガーデンの者たちは歓喜の声を上げてセルフィを褒め称える。エンプレスガーデンの者たちが勝利の余韻に浸る中、大戦艦は宮下町に墜落し大爆発を起こす。

「これでフェアルヘイムの脅威は去ったわ…だがジャンドラがいる限り安心はできないわ。ジャンドラさえ倒せば全てが終わる。その時まで我々はエンプレスガーデンで力を蓄えなければならないわ。さて、そろそろエンプレスガーデンに戻りましょ……!!

セルフィが仲間たちとともにエンプレスガーデンに戻ろうとした瞬間、ヴァネッサが操縦する運搬用フリゲートがセルフィのもとに近づき、親方がセルフィにフリゲートの修理費を請求する。

 「おっと、お前にはフリゲートの修理費を請求してもらうぜ…この作戦を立てた張本人だろう。まぁ修理費は最低でも250万SG(スカイゴールド)だな。払えない場合は借金を返済するまで俺の工房で働いてもらうぜ…。」

親方から膨大な修理費を請求され、セルフィの表情が徐々に曇り始める。

「に…250SGですって!!そんな大金払えないわ。でも、私は人以外の物体の時間を戻す秘法をイオニア様から教えてもらったので、フリゲートの修理は可能ですわ。」

親方に伝えた後、セルフィは重力弾によって損傷したフリゲートに手を触れ、何やら呪文を呟き始める。するとフリゲートの損傷した箇所が元通りになり、元の輝きを取り戻す。

「大戦艦の攻撃でボコボコになってしまったフリゲートが…一瞬にして新品同様になっちまった!!

セルフィの時間歪曲の秘法を目の当たりにした親方は、驚きのあまり言葉を失くしていた。

「これで修理完了…さて、私はそろそろエンプレスガーデンに戻るわね。ヴァネッサ、今日は本当にありがとう。あなたのおかげでヘルヘイムの大戦艦を破壊することに成功したわ。私はイザヴェルの王様に報告しなきゃいけないから、私もフリゲートに乗せてくれないかな。」

大戦艦の破壊の任務を終えたセルフィは他の者たちに先にエンプレスガーデンに向かうようにと命じた後、セルフィとリリシアはフリゲートに乗り込みイザヴェルへと向かうのであった。大戦艦という一つの脅威は去ったが、ヘルヘイムの将であるジャンドラがいる限り安心はできない状況なのだ……。

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