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蘇生の章2nd第八十四話 忍び寄る影

 アムリタからフェアルヘイムの者たちに伝令を伝えるようにと命じられたセルフィとリリシアは、ヘルヘイムの大戦艦に関する情報が書かれたレポートを手にフェアルヘイムへと向かった。二人はシャオーレとマジョラスの町長にレポートを手渡した後、ヴァネッサに協力を得るべく天界の大都市であるイザヴェルへとやってきた。リリシアはヘルヘイムの大戦艦に対抗するべく運搬用のフリゲートを戦闘用に改造できるかと交渉すると、ヴァネッサは運搬用フリゲートにはすでに戦闘兵器が搭載されており、ヘルヘイムの大戦艦に十分対抗できるとの答えが返ってきた。ヴァネッサとの交渉に成功した二人は、イザヴェルの王様に交渉するべく中央に位置する王城へと足を踏み入れるのであった……。

 

 イザヴェルの王城の門の前に来た瞬間、門の前には数名の兵士たちが見回りをしておりとても一般人が入れそうな状態ではなかった。

「うわ…この様子じゃ城の中に入れそうにないわね。でもまずは交渉あるのみよ!!

リリシアが頭を抱える中、セルフィが門を守る衛兵に交渉を始める。

「ここはイザヴェルの王城であるぞ…そなたのような者は帰った帰った!!

「すみません…私はエンプレスガーデンより伝令を伝えに来たセルフィと申します。ヘルヘイムに関する情報を伝えにきたので、門を開けてください。」

門を開けてくれとのセルフィの言葉を聞いた衛兵は、槍を構えてセルフィを追い払う。

 「エンプレスガーデンより伝令を伝えに来た…だと。だが何者にもここは通すわけにはいかんな。用がないなら立ち去れぃっ!!

衛兵がセルフィを追い返した後、ひげを生やした老主が王城の中から現れ、門の方へと向かってくる。

「そこのお方よ…そなたがエンプレスガーデンの女帝でございますか。わしはイザヴェル王城の大臣でございます。衛兵よ…その者たちを中に招き入れるのだ。」

「で…でもこのお方たちは下々民、通すわけには……っ!?

拒否しようとした瞬間、大臣は鋭い眼光で不服を訴える衛兵を睨みつける。大臣の鋭い眼光から放たれるその威厳に負けた衛兵は仕方なく門を開け、二人を中へと招き入れる。

「あの者はエンプレスガーデンの女帝だ。通してあげなさい…。」

「くっ…あいつを城に入れさせるのは今日だけだぞ…次からは問答無用で追い返してやるからなっ!!

王城の中へと入るセルフィに愚痴をこぼした後、衛兵は巨大な門を閉めて再び見張りに戻っていく。大臣は二人をイザヴェル王のいる場所へと案内した後、聞いていただけるかと交渉する。

 「イザヴェル王よ…エンプレスガーデンの女帝がそなたに伝令を伝えたいと仰っておるのじゃが、聞いていただけるかな?

エンプレスガーデンの女帝の伝令を聞いていただけるかとの大臣の問いかけに、イザヴェル王はセルフィに伝令を伝えるようにとそう言う。

「むむ…そなたがエンプレスガーデンの女帝となるものか。私も生で見るのは初めてだ…よかろう、そこの者よ、伝令を伝えるがいい。」

セルフィはアムリタがまとめたヘルヘイムに関するレポートをイザヴェル王に手渡した後、目を通すようにと伝える。

「伝令を伝える前に、まずこのレポートに目を通してください。このレポートはヘルヘイムに関する情報がまとめられています。ヘルヘイムでは今、第二次天界大戦(スカイマキア)を引き起こすべく大戦艦が作られています。レポートの一枚目の写真はヘルヘイムのとある某整備工場の風景です。個の整備工場では整備員たちが大戦艦の整備が進められており、後4時間余りで整備が終わり、飛行テストに入ります。飛行手とが終わるとフェアルヘイムに攻め込むための準備を終え、フェアルヘイムへと発進します。私はエンプレスガーデンの長であるアムリタの命を受け、フェアルヘイムの町に大戦艦の危険を呼び掛けてきました…私からお願いがあります。大戦艦のことを町の者たちに呼び掛けてください…一人でも多くの死者を出さないためにも…どうかよろしくお願いいたします。」

セルフィの伝令を聞いたイザヴェル王は、レポートに目を通しながらセルフィに言葉を返す。

 「うむ…ヘルヘイム側がそんな危険な物を作っていたとはな。よし、ここはラジオ・キャピタルを通じてイザヴェルにいる者たちに呼びかけてみよう。エンプレスガーデンの女帝よ、いい情報をありがとう。」

イザヴェル王が感謝の言葉を述べた後、二人は城を後にしエンプレスガーデンへと戻る準備を始める。

「よし…イザヴェル王もなんとか協力してくれるってさ。リリシア、伝令の任務を終えたしそろそろエンプレスガーデンに戻るわよ。」

セルフィは転送術を唱え、リリシアとともにエンプレスガーデンへと帰還する。エンプレスガーデンへと帰還した二人は急いでイオニアの宮殿へと戻り、アムリタに任務完了の言葉を述べる。

「アムリタ様、伝令の任務…完了いたしました。」

「ご苦労だったな…セルフィ、リリシア。たった今イオニアがヴァルハラにいるオーディンに伝令を伝えに向かった。そろそろヘルヘイム側も何かしでかしそうだからな…おっと、そなたは知らぬと思うが、先ほどヴァルハラにヘルヘイムの召喚士が魔物を引き連れて現れたそうだが、そなたの仲間が蹴散らしてくれたそうだ。そなたの仲間は腕っ節の強い者ばかりだな…私からひとつ忠告しておくが、かけがえのない仲間を大切にするんだよ。」

アムリタの言葉に、リリシアの心はクリスたちと再会したい気持ちでいっぱいになる。

「私は早くみんなと合流し、今度こそ死霊王ジャンドラを討つ!!

「リリシアよ…逸る気持ちはわかるが、今は大戦艦のことが先だ。フェアルヘイムの脅威となる大戦艦を撃ち落とすためには、全員の力を合わせなければならんのだからな。さて、大戦艦が飛行テストを開始するまで後三時間だ。残りの者たちは戦いの時が来るまで休息をとるように。」

アムリタに大戦艦のことが先だと諭されたリリシアは、がっかりした表情で休息に入る。

 「はぁ…クリスたちと再会できそうだったのにな。みんな…もう少しだけ待ってて、私は必ずあなたたちと合流して見せる!!

リリシアが休息をとる中、セルフィはヴァネッサに連絡を取り、三時間後にフリゲートを発進させるように手配する。

「こちらセルフィ…ヴァネッサ様、三時間後にフリゲートをヘルヘイムへと発進させてください。大戦艦をテスト飛行の段階で潰したいからね…。」

「了解しました…セルフィ様。三時間後に運搬用フリゲートをヘルヘイムへと向けて発進させます。セルフィ様…必ずやヘルヘイムの大戦艦を撃ち落としましょう!!では私は仕事があるので、これにて失礼しますわ。」

ヴァネッサと連絡を取り終えた後、セルフィは戦いの時が来るまで仮眠をとる。

「これでよし…と。後は戦いの時が来るまで一休みするとしましょう。今日は何かと疲れたから、三時間で体力と魔力を完全回復させなくちゃね…。」

リリシアとセルフィは戦いのときが来るまで、イオニアの宮殿の中で仮眠をとるのであった……。

 

 リリシアがイオニアの宮殿で休息をとる中、玉座に腰かけるオーディンのもとにイオニアが現れ、大戦艦が後三時間で飛行テストを終えるとの伝令を伝える。

「おお…イオニア様ではないか。私に伝令を伝えにきたのだな?

「オーディン様…エンプレスガーデンから伝令を伝えに来たイオニアでございます。今ヘルヘイムでは、フェアルヘイムを滅ぼすために大戦艦が作られ、あと三時間で整備が終了しテスト飛行に入る。テスト飛行が終われば兵器を積み込み、フェアルヘイムへと向けて発進する…そこでだ、私たちエンプレスガーデンの者たちは力を合わせ、大戦艦をテスト飛行の段階で潰すという計画を立てておる。大戦艦を撃ち落とした後、我々はヘルヘイムの王宮を攻め込むつもりだ。オーディン様よ、頼みがある。ヴァルハラの鍛錬場で日々訓練に励んでいるリリシアの仲間たちにも、そのことを伝えておいてくれ…。」

オーディンに伝令を伝え終えた後、イオニアは転送術を使いエンプレスガーデンに帰還する。一方エンプレスガーデンへと帰還したセルフィとリリシアはイオニアの宮殿で休息をとり、アムリタにイザヴェルの工房のヴァネッサが協力してくれると連絡する。

 「アムリタ様…先ほどイザヴェルの工房のヴァネッサに連絡を取りました。イザヴェルの工房では大戦艦に立ち向かえるだけの巨大フリゲートがあるので、ヴァネッサには三時間後発進してくれとの命令しておいたから、後3時間で到着するそうです。」

セルフィがを終えた後、アムリタは小さな爆弾をセルフィに見せはじめる。

「知らぬ間に協力してくれる者を増やしたようだな…セルフィよ。たった今対戦艦爆弾が100個ほど完成した。この爆弾は小さくても大戦艦の外壁を破壊できる威力を持つ強力な爆弾だ。使い方は簡単…大戦艦の外壁にくっつけて強い魔力弾などで衝撃を与えるだけだが、衝撃を与える際は十分距離を離しておかないと爆風に巻き込まれるぞ。素材に使われている炸裂岩は使い方を誤れば大爆発を起こす大変危険な素材なのでな……。」

対戦艦爆弾が100個完成したというアムリタの言葉を聞いたセルフィは、嬉しそうな表情で是非とも大戦艦破壊の任務を私に任せてくれと頼み込む。

「確かに…流石にこれだけの対戦艦爆弾があれば大戦艦は破壊できそうですね。インビジブルで気配を消してから大戦艦の外壁に仕掛けて爆破させれば大打撃を与えられるかもしれないわね。そんで、それを仕掛けるのが私の仕事ってわけね…アムリタ様、私に任せてくださいっ!!

「うむ…その任はお前とリリシアとその他数名でやってもらおうと思っている。空を飛べる者とインビジブルを使える者が任務成功のカギを握っているのだからな…。お前たちには期待しているよ…是非ともその作戦を成功し、フェアルヘイムを守らなければならんからな。私もそろそろ眠りに着くとしよう。」

二人にそう伝えた後、アムリタは体力と魔力を万全な状態にするべく眠りに着くのであった……。

 

 二人がイオニアの宮殿で休息をとる中、訓練に励むクリスたちの前にオーディンが現れ、イオニアからの伝令があったことを伝える。

「皆の者よ、今先ほどイオニアからヘルヘイムに関する伝令があった…イオニアの伝令の内容は、ヘルヘイムの奴らは大戦艦を作り、フェアルヘイムに攻撃を仕掛けようとしているということだ。残り三時間余りで整備を終え、飛行テストを終えてからここにやってくるということなので、エンプレスガーデンの者たちは飛行テストの段階で大戦艦を潰す作戦を練っているようだ。そこで君たちに頼みがある。エンプレスガーデンの者たちが大戦艦を攻撃している間、君たちはヘルヘイム王宮へと向か…うぐっ!!

オーディンが言葉を発しようとしたその時、一発の銃弾がオーディンの体に命中する。銃弾を受け傷ついたオーディンの影から、銃を構えた男がクリスたちのまえに現れる。

 「おっと…お前たちを王宮には行かせやしないぜ。俺の名はベン・ザ・エース、ジャンドラの側近の一人だが、兵士たちの影にまぎれてヴァルハラに潜入したんだぜ。急所を狙撃しても死なないとは、流石は天界の王…俺の銃弾一発だけでは死なないよな…ならばもう一発うけてみるかぁっ!!

オーディンにもう一発銃弾を浴びせようとした瞬間、ディンゴがボウガンを構え威嚇射撃を行う。

「オーディン様を殺そうったってそうはさせないぜ。クリス、この場は俺がなんとかするからクリスたちはヘルヘイム王宮へと向かってくれ!!

「面白ぇ…これまた骨のある奴が現れたな。まぁいい、貴様なんてすぐにハチの巣にしてやるよっ!!

ディンゴがジャンドラの側近の一人であるベン・ザ・エースと交戦している間に、クリスたちは鍛錬場を後にする。はたして鍛錬場に一人残ったディンゴは、ジャンドラの側近であるベン・ザ・エースを倒すことができるのか……!?

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