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蘇生の章2nd第八十三話 伝令を伝えに

 リリシアとともにヘルヘイムの荊の森で飛行訓練に励んでいたセルフィのもとに、イオニアから緊急会議を行うので至急エンプレスガーデンに戻ってきてくれとの伝令が入り、二人は飛行訓練を中止しエンプレスガーデンへと帰還し、イオニアの宮殿へと向かっていく。二人が急いで会議の席に座ると、イオニアはセルフィの部下がまとめたレポートを読み上げ、大戦艦の整備完了まで後4時間ということを告げた後、戦闘に不慣れな者に材料調達に向かうようにと命じる。他の者たちが材料調達へと向かった後、イオニアはヴァルハラにいるオーディンに伝えるための伝令を書くべく宮殿の二階へと向かっていった……。

 

 イオニアが宮殿の二階へと向かった後、アムリタはセルフィを呼び出し、リリシアと共にフェアルヘイムの町の人々に大戦艦がフェアルヘイムに侵攻する前に避難するようにと呼び掛けるようにと命じた後、セルフィとセルフィの部下が偵察で得た情報をまとめたレポートを二人に手渡す。アムリタから町長にレポートを渡すようにと命じられたセルフィとリリシアは、転送術を用いてフェアルヘイムへと向かうのであった…。

 

 ヘルヘイムの大戦艦に関する情報をシャオーレの町長に伝えることに成功した二人は、次なる目的地であるマジョラスへと向かっていた。

「さて、次はマジョラスの町長に呼び掛けるわよ。リリシア、少しスピード上げるわよ。大戦艦の整備が完了するまでの時間は残り僅かだからね…。」

セルフィがリリシアにそう告げた後、二人はスピードを上げてマジョラスを目指す。二人がマジョラスへ向けて移動を続けていると、目の前に神聖なる鳥と呼ばれるセイントバードが翼を広げ、雛とともに二人を横切っていく。

「あっ…今雛を連れたセイントバードが私の目の前を横切っていったわ。ねぇ知ってる、セイントバードは昔はこの天界に多く生息していたが、ヘルヘイムの奴らによって乱獲され数が激減してしまったのよ。」

「ヘルヘイムの奴らがセイントバードを乱獲しているって…でも一体何のために?

リリシアの言葉の後、セルフィはヘルヘイムの人間がセイントバードを乱獲する理由を話し始める。

「何のためにって…奴らが神聖な鳥を狩るには理由があるのよ。セイントバードの羽毛は聖なる魔力を含んでいて、ヘルヘイムの奴らはそれを羽衣にして売りさばいているのよ。また、その肉はヘルヘイムの美食家の間では幻の食材と言われていて、それを一口食べるとほっぺたがとろけて落ちてしまう程おいしいっていう噂よ。」

フェアルヘイムでは聖なる鳥として崇められているセイントバードを食べるという事実を知ったリリシアは、怒りの表情を浮かべながらそう呟く。

「まさか…ヘルヘイムの奴らがセイントバードを食べるとは知らなかったわ。でもそれより憎いのが死霊王ジャンドラ…あんな極悪非道な奴は大嫌い、死ねばいいのに。」

「リリシア…あなたがジャンドラに復讐したい気持ちはわかるわ。しかし今はアムリタ様の任務を終わらせることが先よ…。」

リリシアにそう言った後、二人はマジョラスの町へと到着する。マジョラスの町に来た二人は町長のいる宮殿へと向かい、衛兵に町長に会わせてくれと頼み込む。

 「すみません…こちらはエンプレスガーデンから伝令を伝えに来たセルフィと申します。町長とすこし話がしたいので、宮殿の中に入ってもよいでしょうか?

町長と話がしたいというセルフィの言葉に、衛兵はセルフィの要求を受けいれ二人を宮殿の中へと案内する。

「う〜む。見る限り怪しい者ではなさそうだな…町長は宮殿の中にいます。くれぐれもそそうのないようにな。私が町長のところへ案内いたします…ではついてきてください。」

二人は衛兵に案内され、町長のいる部屋へと案内される。セルフィは町長にヘルヘイムに関するレポートを手渡した後、ヘルヘイムで今起こっている出来事を話し始める。

「おお…私に会いたいとおっしゃっていたようじゃが、何か用ですかな?

「私はエンプレスガーデンからの伝令をつたえるためにこのマジョラスの町を訪れました。まずあなたに手渡したレポートをご覧になってください。今ヘルヘイムでは、フェアルヘイムを侵攻するべく大戦艦が作られ、後四時間で飛行テストを行います。飛行テストが終われば兵器を積み込み、フェアルヘイムへと発進します。もし大戦艦が発進すればフェアルヘイムは壊滅的な打撃と多くの死者がでます…それを防ぐために私たちは伝令を伝えに来たのです。町長様…掲示板にそのレポートを掲載し、町の皆様に避難するように呼び掛けてください。」

ヘルヘイムがフェアルヘイムを滅ぼそうとしているということを告げた後、マジョラスの町長はセルフィの言葉を受け入れ、避難勧告を呼び掛けてくれるという旨を二人に伝える。

 「ふむ…ヘルヘイムがフェアルヘイムを滅ぼそうとしているとは!?セルフィ様…早速町の掲示板に避難勧告の張り紙を貼り、町の人に避難するようにと呼びかけてみます。」

マジョラスの町長との会話を終えた後、セルフィは少し嬉しそうな表情を浮かべながら宮殿を後にし、い次なる目的地であるイザヴェルへと向かっていく。

「なかなかの好感触…これでアムリタ様から女帝としての点数がたくさんもらえることは間違いないわ。リリシア、次は天界の大都市、イザヴェルへと向かいましょう。イザヴェルはシャオーレやマジョラスといった宮殿都市とは違い、巨大な城を中心とした王城都市なのよ。」

マジョラスを後にした二人は、翼をはばたかせてイザヴェルへと向かっていく。二人が大空を舞う中、ヴァルハラ行きの連絡気球が彼らの目に映る。

「ヴァルハラへの連絡気球が飛んでいるわね…ヘルヘイムの魔物の蹂躙巨人アトラスの攻撃で巡礼路が壊滅したが、イザヴェルの工房の人たちが直してくれたおかげで、巡礼に訪れる人が戻ってきているわ。」

セルフィの言葉の後、リリシアはこれまでの旅で起こった出来事を話し始める。

「ヴァルハラに行く途中で襲ってきたアトラスなら私たちが倒したわ。イザヴェルの工房の人たちが直してくれていたのね…ヴァネッサは元気してるかな?

「イザヴェルの工房にいるヴァネッサ…ああ、戦乙女のヴァルトラウテのことね。あの人は戦乙女の一人だが、仕事熱心なお方よ。噂では空を飛ぶ機械を作っているっていう噂よ。」

セルフィがイザヴェルの工房では空を飛ぶ機械を作っているということを聞いたリリシアは、ヴァネッサなら大戦艦に立ち向かえるほどのフリゲートを作れるかもしれないという策を思いつく。

 「セルフィ様、確かにイザヴェルの工房で運搬用フリゲートを作っているのは確かよ。となれば…ヴァネッサに交渉すれば大戦艦に立ち向かえるほどのフリゲートを作れるはずよっ!!

リリシアの策に疑問を感じたセルフィは、それは無理なことだとリリシアを諭す。

「おっと…それは無理な話よ。大戦艦の飛行テスト開始まで残り四時間しかないのよ。イザヴェルの工房の人たちが急ピッチで開発を進めても最低でも約一カ月はかかるわ。でも交渉次第で何とかなるかもしれないわ…リリシア、早速イザヴェルの工房へと向かいましょう。」

イザヴェルの町へと到着し二人は急いで工房へと向かい、工房の親方にヴァネッサはいるかと伝える。

「すみません…この工房で働いている者ですか?私はエンプレスガーデンから伝令を伝えに来たセルフィと申します…そちらにヴァネッサさんはいますか?

「おうおう…俺は確かにこの工房で親方をしている者だ。ヴァネッサなら他の者たちと今ヘルヘイムに対抗するための武器を作っているところだ。俺が案内してやるからついてこい…。」

工房の親方の言葉の後、二人をヴァネッサが働いている仕事場へと案内する。ヴァネッサは黙々と赤く輝く鉄をハンマーで打ち、ヘルヘイムに対抗するための武器を作っていた。

 「ふぅ…なかなかいい大剣ができたわね。さて、今日は30本出来たらヴァルハラに納品するわよ。とにかくヘルヘイムに対抗するためには大量に武器を作って納品するしか道は無し…みんな、ペース上げてちょうだいっ!!

ヴァネッサの言葉を聞いた工房の作業員たちは作業の手を早め、ヴァルハラに納品するための武器を作っていく。

「ヴァネッサ…忙しいところ悪いが、お前に話がしたいという者を連れて来た。」

「ごめん、今私は手が離せない状態なの…親方様が代わりに話を聞いてあげて!!

武器づくりで手が離せないヴァネッサは、親方に代わりに話を聞いてあげてくれとそう言う。工房の親方はヴァネッサに代わり、武器作りの仕事を行う。

「よし、ここは俺に任せろ。ヴァネッサよ、その者の話を聞いてあげてはくれぬか…?

「親方様が代わりに仕事をしてくれるのならいいわよ…あっ、リリシアもここに来てたの。それより、その後ろの人は誰なの?

リリシアの後ろにいるのは誰だとのヴァネッサの言葉の後、リリシアはこれまでの旅のいきさつを話し、セルフィのことについて話し始める。

 「その人はエンプレスガーデンのセルフィ様よ。私は今その人とともに今町の人たちにヘルヘイムの大戦艦名侵攻を開始するということを呼び掛けているのよ。セルフィ様、例のレポートをヴァネッサ様に渡してあげて。」

セルフィは鞄の中からヘルヘイムに関するレポートを取り出し、ヴァネッサにそれを手渡す。

「今あなたに手渡したレポートは、私が直々にヘルヘイムのとある整備工場の偵察で得たものをアムリタ様が数枚のレポートにまとめたものです。さて、レポートの一枚目の写真はヘルヘイムがフェアルヘイムを侵攻するために作られている大戦艦です。今は整備中ですが、後四時間ほどで整備が終わり飛行テストに入ります。飛行テストが終われば兵器を積み込み、フェアルヘイムを攻め込むつもりです。」

セルフィが話を終えた後、リリシアがヴァネッサにヘルヘイムの大戦艦に対抗するために運搬用のフリゲートを戦闘用に改造してくれとの旨を伝え、交渉を始める。

「そこで折り入ってヴァネッサさんにお願いがあります。ヘルヘイムの大戦艦に対抗するため、運搬用のフリゲートを戦闘用に改造することは可能なのでしょうか…?

リリシアの交渉を聞いたヴァネッサは、運搬用フリゲートにはヘルヘイムの大戦艦に対抗できるだけの戦闘兵器を完備していると告げる。

 「何々…運搬用フリゲートを戦闘用に改造してほしいですって。実はね…運搬用フリゲートにはもしもの時のために高出力の熱線や炸裂弾といった戦闘兵器を完備しているのよ。セルフィ様…だったっけ?私の運搬用フリゲートがあれば、ヘルヘイムの大戦艦に対抗することは可能よ。セルフィ様に貰ったレポートによると、後四時間で整備を終えて飛行テストを行うと言っていたわね。わかったわ…武器の納品を終えたら折り返し連絡するわ。」

リリシアにそう話した後、ヴァネッサはセルフィにテレパシーストーンを手渡す。

「ありがとうございます…整備の方は昨日に行ったばかりなので、セルフィ様の命令があればいつでも発進できますわ。では私は仕事の方に戻ります…伝令ありがとうございます。」

セルフィの命令があればいつでもフリゲートを発進できると二人にそう告げた後、ヴァネッサは仕事へと戻っていく。交渉を終えた二人はイザヴェルの工房を後にし、イザヴェルの王城へと向かうことにした。

「なんとか交渉成立ね…あとはイザヴェルの王城にいるイザヴェル王に伝令を伝えたらエンプレスガーデンに帰還するわよ。まぁイザヴェルの中枢だから…セキュリティも万全だから門前払いってこともあり得そうね。でも私とリリシアはエンプレスガーデンの女帝よ。それさえ伝えればきっと衛兵だって許してくれるはずよ!!さて、最後の伝令を伝えに行くわよっ!!

セルフィの言葉の後、二人は最後の伝令を伝えるべくイザヴェルの王城へと向かうのであった……。

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