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蘇生の章2nd第八十二話 迫りくる恐怖

 セルフィとの組み手を終えたリリシアは、セルフィとともにフェアルヘイムの聖なる森で飛行訓練に励んでいた。リリシアがセルフィとともに修行をしている中、鍛錬場で修行中のクリスたちの前に大臣が現れ、宮殿の前に魔物が現れたということを告げられる。大臣の言葉を聞いたクリスたちは宮殿前へと向かい、ヴァルハラを襲撃しようとする魔物たちに攻撃を仕掛け、一匹残らず一掃することに成功した。

 

 ヴァルハラでの一件の後、ヘルヘイムの王宮で玉座に腰かけるジャンドラのもとに大臣が現れ、ヴァルハラに送り込んだ召喚士が倒されたということを知らされる。

「ジャンドラ様…先ほどヴァルハラに送り込んだ召喚士が倒されました!!

「天界大戦の前にヴァルハラを攻め落とそうと思ったが…やはりそうはいかなかったな。だが、私にはフェアルヘイムを壊滅させるほどの設備を持つ大戦艦がある!!

ジャンドラの言葉の後、ヘルヘイムの大臣は大戦艦の整備の件について話し始める。

「ジャンドラ様、私は大衆酒場で宮下町の住人たちに募集をかけ、急遽整備要員を増やし整備を進めています。その結果、三日後に行う飛行テストの時期が短縮され、後五時間あれば飛行テストを行える予定です。」

予定されていた時期より早く飛行テストを行えるとの朗報を受け、ジャンドラは狂気じみた不気味な笑みを浮かべながら、喜びのあまり狂気乱舞する。

 「はははははっ!!後五時間だ…後五時間すればフェアルヘイムを第二のヘルヘイムにすることができるぞっ!!礼を言うぞ大臣よ…もう下がってよいぞ!!

ジャンドラから下がるように言われた大臣は、そそくさと玉座の間を去っていく。ジャンドラが高笑いを浮かべる中、リリシアとの修行で手が離せないセルフィの代わりに偵察に来るように言われたセルフィの部下が二人の会話を盗み聞きしていた。

「ふむふむ…後五時間で大戦艦の整備が完了ですって!?どうやら整備員を増やして進捗率を上げているみたいね…そのことを早くイオニア様に伝えなきゃっ!!

大事な話の内容をメモに記した後、セルフィの部下は王宮を後にしエンプレスガーデンへと戻っていく。セルフィの部下は急いで先ほどの内容をレポートにまとめた後、イオニアの宮殿へと向かう。

 「イオニア様…修行で手が離せないセルフィ様の代わりに、ヘルヘイムの偵察をしてきました!!

セルフィの部下がまとめたレポートを手渡した後、イオニアは驚きのあまり言葉を失う。

「何っ…大戦艦の整備が予想していた時期より早くなっているだと!?ヘルヘイムの大臣の話によると後五時間で整備を終え、飛行テストに入る…か。セルフィが修行を終えて帰ってきたら、そのことを伝えておくので、そなたはもう下がってもよいぞ。」

セルフィの部下に下がるようにと告げた後、イオニアは宮殿の中へと戻り術者の訓練へと戻っていった……。

 

 一方セルフィとリリシアは飛行訓練の中級コースである『ヘルヘイムの荊の森』に来ていた。

「中級コースの舞台は先ほど飛行訓練を行った聖なる森とは違い、この森は全て毒の荊が広がっているから、一回でもバランスを崩せば荊に体を切り裂かれてしまうわよ。荊をよけながら飛行する能力が問われるわよ。では早速はじめるわよ!!

リリシアに飛行訓練の開始を告げた後、セルフィは背中に翼を生やし荊の森の奥へと飛んでいく。リリシアは無数に生える毒の荊に苦戦しながら、セルフィを追うべく飛行を始める。

「荊に触れれば確実にバランスを崩してしまいそうね…でもそれを恐れればスピードが落ちてセルフィ様を見失ってしまいそうだわ。ここはセルフィ様に追いつけるだけのスピードと荊に触れないようにするためのバランスが要求されるコースね。」

毒の荊に触れないよう注意深く森の中を進むリリシアは、少しでもスピードを上げるべく翼を折りたたみ滑空を試みる。魔姫はなんとかセルフィに追いつくことができたが、すぐに距離を引き離されてしまう。

 「どうしたの…毒の荊を恐れるがあまりスピードが落ちているわよ。翼をもつ者はどんなに危険な場所でもバランスを崩さず、早いスピードを維持することが大事よっ!!リリシア、早くしないと私を見失うわよ。」

セルフィから指摘を受けたリリシアは、毒の荊をかわしつつセルフィに追いつける方法を考えていた。

「考えるのよ…スピードとバランスの両立できる飛行方法をっ!!今のままじゃダメ…もっと飛び方に一工夫しないと…セルフィ様には追いつけないっ!!

リリシアは背中に生える六枚の翼を大きくはばたかせ、翼の位置を水平に保ちながら滑空する。飛びながらリリシアの頑張りを見ていたセルフィのもとに、突如イオニアから伝令がかかる。

「よしよし…うまく荊をかわしながら飛べているようね…あれ、イオニア様から伝令が届いているようね。」

セルフィは鞄の中に入れていた通信石(テレパシーストーン)を取り出し、イオニアからの伝令を効き始める。セルフィが伝令を聞いているその間。リリシアは速度を上げてセルフィに近づいてくる。

 「イオニアだ…セルフィよ、今すぐリリシアの修行を中断しエンプレスガーデンへと戻ってくるのじゃ!!お前の部下の偵察によると、ヘルヘイムの大臣が大衆酒場で整備員を雇ったおかげで大戦艦のテスト飛行の開始が後五時間になったのじゃ。そのことを受け、今私の宮殿で緊急会議を行っておるので、至急戻ってくるのだっ!!

セルフィは飛行訓練に励むリリシアを呼び止め、エンプレスガーデンへと戻るようにと告げる。

「リリシア…さっきイオニア様から伝令があって、エンプレスガーデンに戻ってこいと言われたのよ。だからここで修行を中断し、エンプレスガーデンに戻るわよ。」

「もしかしてヘルヘイム側で何かあったのかしら…?

ヘルヘイム側で何かあったとのリリシアの言葉の後、セルフィはイオニアの伝令の内容を告げ始める。

「そのとおりよ。ヘルヘイムの大臣が大衆酒場で臨時整備員を呼び掛け、大戦艦の整備を早めてきたのよ。これも第二次天界大戦(スカイマキア)を起こすつもりなのよ。一応手が離せない私の代わりに、部下に偵察を任せておいてよかったわ。さ、そろそろ帰るわよ。」

セルフィは転送の術を唱え、リリシアとともにエンプレスガーデンへと戻っていく。エンプレスガーデンへと帰還した二人は急いでイオニアの宮殿に向かい、緊急会議の席に座る。

 「イオニア様…遅れて申し訳ございません。リリシアの修行に付き合っていてちょっと手が離せなかったのよ…。」

遅れてやってきたセルフィが緊急会議に遅れた理由を告げると、イオニアはアムリタの隣の席に座るように命じる。

「セルフィよ、リリシアの修行に付き合っていて遅くなったのだな…ならば許す。アムリタの隣の席が空いているからここに座れ。リリシア、そなたはセルフィの隣だ。」

セルフィとリリシアが会議の席に座った瞬間、イオニアが前に出てヘルヘイムで今起こっている状況を話始める。

「うむ…たった今セルフィの部下が持ってきた報告書によると、ヘルヘイムの大臣が大衆酒場で整備員を急募し、大戦艦の整備を急ピッチですすめているということがわかった。整備完了まで後5時間だ…それが終われば飛行テストを経て、大戦艦がフェアルヘイムへむけて発進するだろう。そこでだ、君たちにしてもらいたいのは飛行テストの段階で潰すことだ…そうすれば事故に見せかけて大戦艦を破壊することができ、ヘルヘイムに多大なるダメージを与えることができる。説明しよう…大戦艦は風力と火力で稼働する巨大な動く兵器だ。まずはプロペラ部を破壊し、その次に突入用の穴をあけて内部に侵入することが先決だ。そのためには、急いで支援物資を調達せねばならない。まずは対戦艦爆弾が必要だ。対戦艦爆弾とは大戦艦の強固な外壁を打ち破る威力を持つ特別な爆弾だ。それを作るためには炸裂岩と火竜草を錬金すれば作れるはずだ。必要な数は最低でも100個だ…戦闘能力の無い者たちは材料調達へと行ってまいれ!!おっと、言い忘れていたことがあった。その二つの素材はどちらもヘルヘイムの宮下町で売っているぞ。もし店で売っている分だけでは足りない場合はヘルヘイム宮下町の東に位置する火山地帯・ヴォルケーン城周辺で採取できるので、採取係と買付係を決めて行動したまえ。私はそろそろオーディンに伝令を書かねばならんから、これにて緊急会議を終了する……。」

イオニアがオーディンに伝えるための伝令を書くべく宮殿の二階へと向かった後、材料調達係の者たちは急いで炸裂岩と火竜草を調達するべく、転送の術でヘルヘイムへと移動を開始する。

 「飛行テスト開始まで残り5時間…か。材料調達〜爆弾の錬金する作業を終えるにはかなりの時間がかかる。早くても6時間ほどかかりそうだな。支援物資が100個完成するまでには飛行テストが終わっておる。セルフィよ、お前にひとつ命令を与える…フェアルヘイムの者に5時間後安全な場所に避難するように呼び掛けるのだ。リリシア、お前もセルフィの任務についてもらうぞ。」

アムリタからフェアルヘイムの者たちに避難を呼びかけろとの名を受けたセルフィは、アムリタに深く頭を下げて敬礼する。

「アムリタ様…フェアルヘイムの者たちに避難するようにと呼びかければよいのですね。しかしなぜリリシアを無理矢理私の任務に同行させるのですか?

「えーとなんと言うか…戦力は一人よりも多い方がいいだろう。リリシア、貴様も町の人たちにそのことを呼び掛けるのだ。セルフィが隠し撮りした大戦艦の整備風景を写したレポート書類だ。それを町長や村長に渡し、少しでも貢献するのだ。私が刷ってきたレポートだ…では行ってまいれ!!

アムリタは二人に数枚の大戦艦に関するレポートを手渡し、二人に。

「セルフィ様…この風景は一体何なのですか?

「これは私が隠し撮りしてきたヘルヘイムのとある整備工場と王宮の風景よ。とりあえずアムリタ様の言うとおり、私が偵察で得たヘルヘイムの情報をいかにフェアルヘイム側に伝え、大戦艦発進で出るであろう多くの死者を未然に防げるかが重要よ。私たちがフェアルヘイムのために一役たてば点数稼げるからね。さて、準備ができたらフェアルヘイムに向かうわよ。まずはシャオーレの町へと向かい、長老にそのことを伝えに行くわよ。」

リリシアに任務の内容を告げた後、セルフィはシャオーレへと続く転送陣を描き、ヘルヘイムがフェアルヘイムを滅ぼそうとしているということを呼び掛けるべく、リリシアとともにシャオーレの町へと向かうのであった……。

 

 セルフィとともにシャオーレの町へと来たリリシアは、早速町長のいる宮殿へと向かい、衛兵に町長様にあわせてもらえないかと交渉する。

「私はエンプレスガーデンからヘルヘイムに関する伝令を届けに来たセルフィと申します。シャオーレの町長様はいらっしゃいますでしょうか?もしいれば会わせていただけませんか?

「町長様ですか…確かに宮殿にいます。どうぞお入りください。」

セルフィの言葉を受け、衛兵は扉を開けて二人を宮殿の中へと招き入れる。宮殿の中へと来た二人は町長のいる部屋へと向かい、アムリタがこれまでの偵察内容を数枚にまとめたレポートをシャオーレの町長に手渡したあと、町長に町の人々に避難するようにと告げる。

「あなたがシャオーレの町長様ですか?私はエンプレスガーデンからヘルヘイムに関する伝令を伝えに来たセルフィと申します。実は…ヘルヘイムではフェアルヘイムを滅ぼすために大戦艦という兵器を作っていて、後四時間で飛行テストを終えてフェアルヘイムに向けて飛び立つ予定です。そこで…多くの死者を未然に防ぐため、町の人々に避難するようによびかけてください…。」

「まさか…私たちの知らない間にヘルヘイムでそんなことが行われていたとは!?にわかに信じがたいことですが…早速町の人たちに避難するようにと呼び掛けてきます。」

シャオーレの町長との話を終えた後、宮殿から出た二人は背中に翼を生やし、シャオーレを後にし次の町へと向かう。

 「よし、シャオーレの町長への報告完了よ。さて、この調子でマジョラス…イザヴェルの町へと向かい、みんなに避難するよう呼び掛けるわよ。私たちの行いがアムリタ様に認められれば、かなり女帝としての点数が稼げるからね!!さて、次行くわよっ!!

シャオーレを後にしたセルフィとリリシアは翼をはばたかせ、次なる目的地であるマジョラスへと向けて飛び立つのであった……。

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