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蘇生の章2nd第八十話 修行二日目 リリシアvsセルフィ

 結界石によって自分の足で歩けるまでに回復したリリシアを見たイオニアは、もう浄化後のアフターケアは必要ないと判断し、リリシアに修行をつけさせることにした。一日目の修行は精神力と集中力を鍛えるべく、イオニアの宮殿で瞑想をするようにと命じられた。イオニアが用事で宮殿を抜けている間、セルフィがリリシアに付き添い、しばらく瞑想に励むのであった……。

 

 一日目の修行を終えたリリシアは、セルフィの宮殿で寝泊まりすることになった。二人が夕食を食べ終えた後、セルフィはヘルヘイムの大戦艦の整備施設の偵察へと向かい、ヘルヘイム側の状況を探っていた。セルフィが一通りヘルヘイムの偵察を終えた後、自分の宮殿へと戻りイオニアに提出する報告書類を書き終え、寝室へと向かい眠りに着いた…。

 

 セルフィはリリシアより早く起き、昨日書いたヘルヘイムに関する報告書類を手にイオニアの宮殿へと向かい、イオニアに報告書類を手渡す。

「イオニア様…昨日のヘルヘイム偵察のレポートを書いてまいりました。」

「うむ…偵察で得た情報をまとめるのが苦手なお前にしては上出来だな。どれどれ、ヘルヘイムの大戦艦は後四日で終了し、テスト飛行を終えてフェアルヘイムを襲撃にかかる…か。大戦艦の設備は大砲のほか、大量殺戮兵器の一つである重力弾を内蔵しているとな。セルフィよ、礼を言うぞ。ヘルヘイムの大戦艦の情報をリークしておけば、大戦艦に関する対処方法がわかるかもしれぬからな。」

イオニアがセルフィの報告書類を読み終えた後、宮殿の中にエンプレスガーデンの術者たちが集まってくる。イオニアはセルフィの書いた報告書を懐に収めた後、宮殿に来た術者を集めて修行を始める。

 「うふふ…イオニア様から誉められちゃったわ。さて、そろそろリリシアを起こしにいかなくちゃ!!

イオニアの宮殿を後にしたセルフィは自分の宮殿へと戻り、寝室で眠っているリリシアを起こしにいく。

「リリシア、そろそろ朝食にするから起きてちょうだい!!

セルフィに起こされたリリシアは、まだ眠たい目をこすりながらベッドから離れ、宮殿の一階へと向かっていく。

「おはようリリシア…朝食まであと少し時間があるから、すこし広間で待っててね。あ…そうそう、昨日洗濯したドレスと手袋が乾いたので渡しておくわ。」

「ありがとうございます。セルフィ様、今日は私に何を教えてくださるんですか?

セルフィが昨日洗濯したリリシアのドレスと手袋を手渡した後、リリシアは身に纏うバスローブを脱ぎ捨て、深紅のドレスに身を包む。リリシアの服を手渡した後、セルフィは再び朝食の準備に取り掛かる。

 「今日は術と体術を混ぜた戦闘訓練よ。こう見えても私は体術と魔術のエキスパートよ…たとえ修行といえど、決して手は抜かないわよ。さて、そろそろ朝食にしましょう♪」

リリシアにそう告げた後、セルフィは出来上がった料理をテーブルに置き始める。セルフィはリリシアをテーブルへと招き、朝食を食べ始める。

「食事が終わったら戦闘訓練を始めるわよ。ジャンドラ率いるヘルヘイムの兵士たちは徐々に力をつけているみたいだから、あなたも力をつけないとね。」

リリシアは朝食を食べ終えた後、セルフィとともに宮殿の地下室へと向かっていく。セルフィの宮殿の地下は鍛錬場となっており、ヴァルハラの鍛錬場に比べて小規模だが訓練のための設備が整っていた。

「うわぁ…セルフィ様の宮殿の地下って、鍛錬場だったのですね。」

「ここは私がヘルヘイムの偵察の任務がないときに使っている地下鍛錬場よ。まずは体術から訓練を始めるわ…体術とは己の体を使い悪しき者を倒す術よ。体術を極めれば、非力な女性でも男性と互角に戦えるだけの力を手にすることができるのよ。さて、そろそろ訓練を始めるわよ。」

セルフィがリリシアに体術とは何かを伝えた後、セルフィは倉庫の中からヘルヘイムの兵士を模した人形を用意し、リリシアに訓練内容を告げる。

「さて、ここに用意したのはヘルヘイムの兵士を模した人形よ。この人形に魔力を込めれば…思うがままに操ることができるのよ。あなたには人形に込められた魔力が切れるまで体術のみでこいつの相手をしてもらうわよ。もちろん武器や魔法の使用は禁止よ…相手は木の棒と鍋の蓋を身につけているから、たとえ訓練でも油断は禁物よ。」

訓練内容を告げた後、セルフィはヘルヘイム兵の人形に魔力を込めはじめる。するとヘルヘイム兵の人形はひとりでに動き出し、木の棒を振り回しながらリリシアの方へと向かってくる。

 「セルフィ様の言うとおり、体術で戦うしかないってことね。よし、どこからでもかかってきなさいっ!!

リリシアは髪飾りを外し、襲い来るヘルヘイム兵の人形へと攻撃を仕掛ける。しかし体術が不慣れなのか、相手の攻撃をかわすことで精一杯であった。

「ただ相手の攻撃をかわすばかりではダメよ!!蹴りでもパンチでもいいから…隙を狙って相手に一発あびせてやりなさいっ!!

逃げ回っているだけではダメだとセルフィから指摘を受け、リリシアは隙を見つけてヘルヘイム兵の人形に蹴りを繰り出すが、鍋の蓋で防御されてしまい木の棒の一撃をくらってしまう。

「くっ…僅かな隙を見つけては攻撃するが、すぐに相手に防御されてしまうわ!!

「今の一撃は惜しかったわね。でもこれが本物のヘルヘイム兵が相手だったら死んでるわよ。まずは相手の行動をよく見て、素早い連続攻撃で攻めることが重要よ。」

またもセルフィから指摘を受けたリリシアは逃げるのをやめ、ヘルヘイム兵の人形の懐へと入り連続攻撃を繰り出す。リリシアの連続攻撃を受け続けるヘルヘイムの兵士は鍋の蓋を構え、防御の体勢を取る。

 「奴が防御しているときは足を狙い…転倒を狙うしかないわね。」

リリシアは足払いを仕掛け、ヘルヘイム兵の人形の態勢を崩す。リリシアの足払いが決まった瞬間、ヘルヘイム兵の人形に込められた魔力が切れ、動かなくなる。

「足払いを仕掛けて相手を転ばせるのは良い作戦ね…でも相手は鉄製のグリーブやレギンスをつけている可能性もあるから、実戦ではあまり期待できないわ。さて、そろそろ体術の訓練を終わりにして、少し休憩にしましょう。」

体術の訓練終了をリリシアに伝えた後、セルフィはヘルヘイム兵の人形を鍛錬場の倉庫へと収納する。倉庫へとなおした後、リリシアに休息の時間を与える。

「ふぅ…ほとんど武器で戦ってきたから、体術はあまり不慣れだったがいい経験になったわ。」

「私は武器に頼らず、体術と魔術を掛け合わせた格闘術で戦っているのよ。そうそう、次の訓練は私と組み手をしてもらうわよ。組み手って言うのは私と一通り戦い、あなたの力がどの程度のものかを測定することよ。一応組み手のルールをあなたに伝えておくが、体術と魔術は使用可能だが、武器の使用は禁止よ。」

セルフィが組み手のルールを一通りリリシアに伝えた後、二人はしばらく話し合いながら休息を楽しむ二人が休息をとっている中、イオニアが鍛錬場を訪問する。

 「セルフィよ、修行の方はうまくいっているかね。まさかとは思うが、戦闘訓練と称してサボってはいないだろうな。」

突然鍛錬場に現れたイオニアの言葉に、セルフィは驚きの表情でこう答える。

「イ…イオニア様っ!!私はちゃんとリリシアに稽古をつけさせてますわ。リリシアも頑張って私の修行に励んでいるし、特に言うことはありません。」

「サボらずにちゃんと稽古をつけさせているのならよいが…セルフィよ、リリシアを頼んだぞ。私は他の者の修行で忙しいので、そろそろ自分の持ち場へと戻る。」

セルフィにそう伝えた後、イオニアはセルフィの宮殿を後にする。休息を終えた二人は鍛錬場の中央に集まり、訓練を再開する。

「さて、そろそろ組み手を始めましょうか。最初に言っておくが、私は組み手といえども一切容赦はしないわよ。死にたくなかったら本気でかかってくることね…。」

「望むところよセルフィ様…わたくしが本気で相手して差し上げますわっ!!

両者一歩も譲らぬ状況の中、リリシアが身構える前よりも早くセルフィが攻撃を仕掛ける。セルフィは高速の連打を繰り出し、リリシアを追い詰めていく。

 「くっ…セルフィ様の攻撃を防御するだけで精一杯だわ。でも、ここは反撃の隙を見つけて攻撃を与えていくしかな…きゃあぁっ!!

反撃の態勢に出ようとした瞬間、セルフィの回し蹴りがリリシアの鳩尾に炸裂する。セルフィの強烈な蹴りを受けたリリシアは大きく吹き飛ばされ、その場に崩れ落ちる。

「まさか私の回し蹴りを喰らっただけで終わり…だとは言わないよね。その程度で気絶なんてされたら、憎きジャンドラは倒せないわよ!!

リリシアは大きなダメージを受けたが、すぐに態勢を立て直しセルフィに立ち向かっていく。

「まだよ…私はまだ戦えるわっ!!今は勝てなくとも…あなたに一発食らわせられればそれでいいわっ!!

「そうよ…その意気よ。倒れても立ちあがるあなたのその不屈の闘志…認めてあげるわ。だが、私には指一本触れることはできないわっ!!

リリシアはまだ不慣れな体術でセルフィに連続攻撃を仕掛けるが、いともたやすくセルフィにかわされてしまい、反撃の拳の一撃をくらってしまう。

「ただ拳を振るい蹴りを放つだけじゃ、いつまでたっても私にダメージは与えられないわよ。体術の基本は…相手の技をいかに盗めるかよ!!それができればあなたはもっと強くなれるはずよっ!

「相手の技を盗む…か。ここはセルフィ様の言うとおりにやってみる価値はありそうね。」

セルフィの使う技をひとつでも盗むべく、リリシアはセルフィと戦いながら様子をうかがう。

 「やっとリリシアがその気になったみたいね…だがここで潰しておかないとあとあと厄介になりそうだからね…ここは私の足技で一気に攻め落とすっ!!

戦いながらセルフィの様子を見るリリシアをよそに、セルフィは高速の蹴りを繰り出してリリシアに襲いかかる。魔姫はセルフィの高速の蹴りを素早い動きでかわしつつ、セルフィの繰り出す足技を盗んでいく。

「よし…僅かだが方法は分かったわ。ここはセルフィ様の真似をして、同じ攻撃で反撃するわよ!!

リリシアはセルフィの足技を真似をし、高速の蹴りをセルフィに浴びせていく。リリシアの蹴りが炸裂した瞬間、セルフィの周りに魔法陣が発生し、無力化する。

「確かに私の蹴りはセルフィ様に当たったはずなのに…全然効いていないわ!!

「よく私の『狂乱脚』を盗めたわね。しかし私の『女帝の障壁(エンプレス・リジェクション)』は全ての攻撃を一度だけ無力化する障壁よ。一度破壊されても5分経てば復活する便利な盾よ…アムリタ様に女帝因子を埋め込まれたあなたなら、経験を積めば使えるようになるわよ。」

セルフィの使った『女帝の障壁』が気に行ったのか、リリシアはうらやましそうな表情を浮かべる。

「全ての攻撃を無力化する障壁ねぇ、結構便利な能力じゃないの。私も早く使えるようになりたいわね…おっと、そろそろ戦いに戻らなきゃね。」

リリシアは再び戦闘態勢をとり、拳を構えてセルフィに立ち向かっていく。

「以前よりも構えや動きもよくなっているわね…でも、私の波動弾で終わりにしてあげるわっ!!

向かってくるリリシアに対し、セルフィは手のひらに魔力を込めて波動弾を放つ。セルフィの手のひらを離れた波動弾は徐々にスピードを上げ、リリシアの方へと向かってくる。

 「波動弾を放ってきたわね。ここは炎の防壁を張って相殺するしかないわねっ!!

リリシアは素早く赤き炎の魔力を練り合わせ、炎の壁を作り出しセルフィの波動弾を相殺しようとする。しかし波動弾はリリシアの作りだした炎の壁を破壊し、リリシアへと襲いかかる。

「リリシアが放った防壁の術で波動弾のスピードを少し弱められたが、私の放った波動弾はいかなる防壁をも打ち壊す!!さぁリリシア、女帝の障壁を使い私の波動弾を防いでみなさいっ!!

セルフィの言葉のあと、彼女が先ほど放った波動弾に魔力を込め、自分の身長の三倍以上にまで大きくさせリリシアに追い打ちをかける。はたしてリリシアは『女帝の障壁』を発動し、セルフィの波動弾を防ぐことはできるのか……!?

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