蘇生の章2nd第七十九話 恐怖の戦艦のうまれるところ
クリスたちがヴァルハラの鍛錬場で戦闘訓練に励む中、エンプレスガーデンではリリシアの体をむしばむジャンドラの死霊の浄化が完了した。しかし、魔姫の体は浄化の代償によって全身の筋肉が削がれ、まるで老婆のような姿となってしまっていた。その姿では少し可哀相だと感じたイオニアはリリシアに自分の魔力を与え、僅かだが元の姿へと戻すことに成功した。しかしリリシアはまだ自分の力で歩くことはできず、イオニアによる浄化後のアフターケアをすることになった……。
アムリタの宮殿で一晩を過ごしたリリシアは、結界石による回復効果により自分で歩けるようになるまでに回復し、宮殿の一階へと降りてきた。
「やっと起きたか…イオニアは宮殿の外で待っている。おっと…まだそなたの名前を聞いてなかったのだが、名は何というのだ。」
「私の名はリリシアと申します。アムリタ様…ジャンドラの死霊を浄化していただき、ありがとうございす。」
リリシアがアムリタに一礼した後、アムリタは第二次天界大戦の事を話し始める。
「リリシア…か。ところで、イオニアから話は聞いていると思うが、第二次天界大戦まで残り二週間だ。そこでだ、そなたには第二次天界大戦がはじまる前に力をつけ、ジャンドラ率いるヘルヘイムの軍たちと戦わなければならない。君はまだイオニアのアフターケアの途中だから、アフターケアが終わり次第修行に励んでもらうぞ。」
アムリタが話を終えた後、リリシアは宮殿の外に出てイオニアのもとへと向かいアフターケアを開始するようにと告げる。
「イオニア様、浄化後のアフターケアのほうよろしくお願いします。」
「結界石の効果もあり、一人で歩けるまでに回復したようだな。まずは回復状況を見て、アフターケアが必要かどうかを判断するので、。」
イオニアは静かに目を閉じ、手のひらをリリシアの肩に当てて回復状況を測定する。測定の結果、魔姫の筋肉が浄化前と同じ状態となっていた。
「むむ…全身の筋肉が完全に戻っているな。その様子だと、もう私のアフターケアの必要は無いと判断した。そうと決まれば修行開始だ。リリシアよ、私についてまいれ。」
アフターケアの必要はないと判断したイオニアは、リリシアを自分の宮殿へと案内する。イオニアの宮殿の中では術者たちが魔術書を読んだり、瞑想に励んでいた。
「ここが私の宮殿だ。ここでは来るべきヘルヘイム軍との戦いに備え、術者たちが数多く集まっている。リリシアよ、まずは魔力を鍛えるのだ。私は他の用事があるのでここでお別れだ。セルフィよ、その者に稽古をつけてやってくれ!!」
イオニアからリリシアに稽古をつけさせてくれとの命を受けたセルフィがリリシアのもとへと現れ、修行の内容をリリシアに伝える。
「私はセルフィと申します。イオニア様の命令であなたに稽古をつけるために来たのよ。あなたにやってもらうことは瞑想よ。静かに目を閉じ、魔力を高めることは術者の基本よ。さぁ、やってごらんなさい。」
セルフィの言葉を受け、リリシアは静かに目を閉じて瞑想を始める。リリシアが瞑想を始めてから数十分後、それを見ていたセルフィが不満を感じたのか、リリシアの瞑想を指摘する。
「ふ〜ん。あなたの瞑想を見させてもらったけど、全然ダメね。魔力のシンクロ率が全然合わさっていないわ…まずは私が手本を見せてあげるわ。あなたのやり方と私のやり方がいかに違うか見せてあげるわ!!」
セルフィは静かに目を閉じて瞑想を始めた瞬間、セルフィの魔力が徐々に上昇を始めていく。
「セルフィ様の魔力の波長が…徐々に上昇を始めているわ!!一見ただの瞑想だが、セルフィ様の場合は私よりも魔力を練り上げるのが早く、より強大な魔力を生み出せるんだわ!!」
セルフィの瞑想をじっくりと見ていたリリシアは、セルフィの瞑想方法は魔力の練り上げが早く、より強大な魔力を生み出せることに気付いた。
「その通り…よくそれが気がついたわね。瞑想とは精神を集中させ魔力をいかに早く練り上げることができるかで決まるってことよ。さて、私のやったとおりにしてみなさい。」
セルフィからのアドバイスを受けたリリシアは、再び目を閉じて瞑想を始める。瞑想を始めてから数十分後、リリシアの魔力の波長が以前にも増して上昇していく。
「いいわよ…その調子!!その調子で素早く魔力を練り上げれば…強大な魔力を自分の物にすることができるわよ!!そのままペースを崩さず…さらに精神を集中させて魔力をどんどん練り上げてっ!!」
リリシアはその後もペースを崩さず、さらに魔力を練り上げて魔力を生み出していく。そして瞑想開始から二時間後、用事で宮殿を離れていたイオニアが宮殿に戻り訓練終了の報告を行う。
「皆の者よ…今日の訓練はここまでだ。各自宮殿へと戻り、明日に備えて体を休めるがいいっ!!」
イオニアが訓練終了を告げた後、訓練を終えた術者たちが次々と自分の宮殿へと戻っていく。一方訓練を終えたリリシアは、セルフィとともに宮殿の外で話し合っていた。
「ふぅ…長時間の瞑想で疲れたけど、魔力が以前より上がったような気がするわ。セルフィ様、今日は私の修行に付き合ってくれてありがとうございます。」
リリシアの修行に付き合ってくれたセルフィに感謝の言葉を告げるた後、セルフィは明日の訓練内容をリリシアに話した後、自分の宮殿に泊まっていかないかと交渉する。
「さて、明日はあなたに実戦訓練の極意を教えてあげるわ。そうだ…これからは私の宮殿で泊まっていかない?いつまでもアムリタの宮殿で寝泊まりするわけにもいかないしね。」
「確かに…アムリタ様にこれ以上迷惑はかけられないからね。セルフィ様、部外者の私に寝泊まりする場所を与えてくれてありがとうございます。」
リリシアが感謝の言葉を告げた後、イオニアはリリシアを自分の宮殿へと案内する。セルフィの宮殿はヘルヘイムの建築物をイメージして造られており、高貴な雰囲気を漂わせていた。
「ここが私の宮殿よ。自分の家だと思ってゆっくりしていってね〜♪今日は精神集中の修行で汗かいちゃったし、ご飯の前に風呂に入りましょうよ。」
「た…たしかに今日は修行で汗をかいちゃったし、先に風呂に入っておかないとすっきりしないからね。」
リリシアの言葉の後、セルフィはリリシアを連れて浴場へと向かっていく。脱衣所へと来た二人は身につけているものを全て脱ぎ捨てた後、浴場の中へと入っていく。
「ここが私の浴場よ。面積は小さいけれどまぁまぁ豪華よ〜♪まずはシャワーで体に着いた汚れを洗い流しましょう。」
セルフィはリリシアを連れ、浴場の隅にあるシャワールームへと案内する。シャワールームへと来たセルフィは石鹸をこすり、自らの体に泡を纏わせる。
「うふふ…二人でお風呂なんて初めてだから緊張しちゃうわ。さて、そろそろ体を洗いましょうね♪」
セルフィが微笑みを浮かべた後、泡まみれの全身を使いリリシアの体を洗っていく。二人の体が触れ合う度、リリシアは気持ち良さそうな表情を浮かべる。
「ちょっとぉ…くすぐったいわ。じゃあ今度は私の番よっ!!」
リリシアは負けじと石鹸を泡だて、全身を使ってセルフィに反撃する。自分のしたことをそのままやり返されたセルフィはリリシアの乳房を掴み、乳頭を指で揉み始める。
「やったわね…じゃあこれならどうかしら!!」
「あははははっ…セルフィ様ったら!!」
一糸まとわぬ二人は浴場の中でひとしきりふざけあった後、湯船につかり一日の疲れを洗い流す。二人が入浴を終えた後、セルフィは夕食の準備に取り掛かる。
「リリシア、夕食ができるまでちょっと休んでいてちょうだいね。あ…そうそう、あなたの着ていたドレスと手袋、洗濯しておいたわよ。今日は洗濯日和だから、明日には乾くわよ〜。」
夕食ができるまでの間、リリシアはクリスたちのことを思いながら大広間で寛いでいた。
「クリスたちは今、何をしているのかな…?」
その数十分後、夕食を作り終えたセルフィがテーブルに出来上がった料理を置きはじめる。セルフィはリリシアをテーブルへと招いた後、二人はテーブルに置かれた料理を食べ始める。
「セ…セルフィ様っ!!私に寝る場所を与えてくれた上に、おいしい料理までいただいてしまっていいんですか!?」
「うふふっ…いいってことよ。そうそう、私は夕食が終わったら二時間ほどヘルヘイムの偵察に行かなきゃいけないから、リリシアは二階のベッドで休んでね〜。」
二人が夕食を食べ終えた後、セルフィはヘルヘイムの偵察のために宮殿を後にする。リリシアは宮殿の二階にある寝室へと向かい、就寝のための準備をする。
「今日はいろいろと疲れたわ…とりあえずベッドで寝ましょう。」
リリシアがそう呟いた後、ベッドに寝転がり眠りについた……。
リリシアが眠りについているころ、偵察のためにヘルヘイムへとやってきたセルフィは整備員の服装に着替え、ヘルヘイム王宮のとある整備施設へと来ていた。
「よし、今日もヘルヘイムの内部調査に励むわよっ!!」
セルフィは整備員にまぎれ、整備をながら大戦艦の情報を盗んでいく。
「ここで働いている整備員の情報によると、大戦艦はフェアルヘイムを完全に崩壊させるほどの設備を持っているわ…この調子で内部調査を続けていけば、何か手掛かりをつかめるかもしれないわね。」
セルフィが整備を続けていると、ヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラが整備施設の視察に訪れた。
「むむっ…その禍々しい死のオーラ!!名乗られなくても分かる…こいつが死霊王ジャンドラ!!リリシアをあんな目にあわせた張本人がなぜ整備施設にっ!!」
セルフィが心の中でそう呟いた後、ジャンドラは整備施設の社長を呼び出し整備の進捗状況を問いかける。
「社長よ…大戦艦の整備は捗っているか?」
「募集で来てくれた整備員のおかげで、だいぶ大戦艦の整備が捗っているよ。ジャンドラ様、この調子で整備を続けていけば、後4日で飛行テストを行えます。」
整備施設の社長が整備の進捗状況を伝えた後、ジャンドラは嬉しそうな顔で整備施設を後にする。
「後4日で整備が完了する…か。テスト飛行が終われば第二次天界大戦(スカイマキア)を起こせる!!その時は真っ先にフェアルヘイムの象徴…ヴァルハラを沈めてやろうぞっ!!」
ジャンドラが整備施設を後にしてから数時間後、二時間の労働を兼ねた内部調査を終えたセルフィは社長から給料の入った袋を貰い、整備施設を後にする。
「さて、そろそろ偵察の終了時刻だが…少し透明になってヘルヘイムの王宮に忍び込んじゃおうかな♪」
セルフィはインビシブルの術で自らの気配を消し、ヘルヘイム王宮へと潜入する。彼女は謁見の間に忍び寄り、ジャンドラの演説を盗み聞きする。
「皆の者よく聞け!!第二次天界大戦でおおいに活躍してくれる大戦艦の整備が予想以上に捗り、あと四日後にはテスト飛行を行えるとのことだ。大戦艦は大砲の他、周囲を一掃する重力弾をも内蔵しておる。こいつさえあればフェアルヘイムを陥落させられるぞっ!!」
ジャンドラが演説を終えた後、王宮兵たちは口々に歓喜の声をあげる。大戦艦の設備を知ったセルフィは、調査を終えて人目のつかない場所へと移動する。
「あれだけ巨大な戦艦が動き出せば…確実に天界は戦火に包まれるわね。さて、そろそろエンプレスガーデンに帰ろうかな。」
大戦艦に関する大きな手掛かりを得たセルフィは王宮を後にし、宮下町の人目のつかない路地裏で転送術を唱え、エンプレスガーデンへと帰還するのであった……。
偵察を終えてエンプレスガーデンへと帰還したセルフィは自分の宮殿へと戻り、イオニアに提出するためのヘルヘイム偵察の結果に関する書類を書き始める。
「今回のヘルヘイムのとある整備施設への内部調査の結果は…大戦艦は後四日で整備完了し、飛行テストに入る。大戦艦の設備は大砲のほか、大量殺戮兵器の一つである重力弾を内臓しているとのこと。よし、これでイオニア様に提出する書類が書き終わったわ。今日は偵察と労働で疲れたし、早く寝ましょう。」
イオニアに提出するための報告書を書き終えたセルフィは二階の寝室へと向かい、ベッドに寝転がり眠りに着くのであった…。恐怖の大戦艦の整備完了まであと四日と迫る中、エンプレスガーデンの者たちはどう動くのか!?