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蘇生の章2nd第七十二話 恋に落ちた魔王

 フェルスティア七大魔王最強の存在であるエルーシュとの長く熾烈なる戦いは、リリシアの勝利によって幕を閉じた。リリシアがクリスたちのもとへと戻ろうとした瞬間、エルーシュは卑劣にも背後からリリシアに攻撃を仕掛けたが、エルーシュの魔力を察知したリリシアの最後の一撃によってエルーシュは倒れた……。

 

 戦いに敗れたエルーシュはリリシアを呼び止め、自らが持つ『フェルスティア七大魔王最強の存在』の称号をリリシアに譲り渡した後、リリシアのことが好きだと告白する。リリシアはエルーシュの告白を素直に受け止め、魔界に帰ったらエルーシュの妻となると告げた後、クリスたちのもとへと戻るのであった……。

 

 リリシアとエルーシュの長き戦いが終わった後、両者の戦いを水晶玉で見ていたエンプレスガーデンの者たちは、歓喜の声をあげてリリシアの勝利を祝っていた。

「あの紫の髪の娘さん…脱獄したエルーシュを完膚なきまでに打ちのめしたわ!!これで天界が少し平和になったようですが、ヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラがいる限り天界は……。」

「そうね…ジャンドラは最上級危険人物だからいつかフェアルヘイムを侵略するつもりだから、常にヘルヘイム側の動向に気を配らないといけないわ。ヘルヘイムの者たちに偵察を強化してもらうしかないわね。」

エルーシュが倒れたことを祝う中、エンプレスガーデンの者たちは残る危険人物のジャンドラを警戒していた。不穏な空気が流れる中、イオニアが前に出て演説を行う。

 「皆の者静かに…ヘルヘイムの者たちによって盗まれた伝説の武具たちの気配が一つの少女に集まってきています。その武具を装備できる者があの少女ならば、ジャンドラを打ち倒せるかもしれません。もしものときは私たちも戦地へと赴きましょう。」

イオニアの言葉を聞いたエンプレスガーデンの者たちは口々にイオニアを称え、共に戦うという決意を固める。

「イオニア様…万歳っ!!あなたのようなお方とともに戦えるならば、私は全力を尽くします!!

「あなたのような異端禁術師(ルーンメイガス)がいれば、必ずやヘルヘイムの兵たちを一掃できるわ!!まぁ私は天地雷鳴士(アースマスター)の卵ですが、戦地へと向かうときは私もご一緒しますわ!!

イオニアは戦う意思を伝えた者たちを集め、これからのことについて話し始める。

「おお…数名の勇気ある者が私とともに戦うと言ってくれたか。まずは天地雷鳴士の卵のミリアよ…そなたにひとつアドバイスを送ろう。天地雷鳴士とは大地の力をフルに使う職業だ。経験を積めば煉獄の炎や地獄の雷…果ては強力な『幻魔』と呼ばれる異世界の魔物を召喚することができるぞ。次に光槍騎士(ヴァナディース)のエリスよ。まだまだ修行中の身のようだが、光槍騎士のスキルは確実に上がっている。あと少し経験を積めば一騎当千の実力を持てるようになるぞ。さて、そなたたちよ…そろそろ修行に向かうがよい。今のうちに力をつけておかないとヘルヘイムの兵には勝てないぞ!!

イオニアが二人に職業についての説明を終えた後、ミリアとエリスは修行へと向かっていく。彼女たちが修行へと向かった後、イオニアは残りの者たちを集め

「さて…残りの者は来るべきヘルヘイム侵攻に向けて回復薬や魔力弾といった物資の製造をする。まずは調合するための素材を調達してくるのだ。ヘルヘイムの者はヘルヘイムの宮下町で、フェアルヘイムの者はヴァルハラの宮下市場で買い物を済ませた後、私のもとに戻ってきたまえ。」

イオニアが残りの者たちにそう告げた後、調合素材の調達へと向かうのであった……。

 

 一方リリシアの帰りを待つクリスたちの前に、エルーシュとの熾烈なる戦いを終えたリリシアが戻ってきた。しかしリリシアはエルーシュとの戦いで大きなダメージを負っており、いつ倒れてもおかしくない状態であった。

「みんな…ただいま。エルーシュの奴を完膚なきまでに叩きのめしてやりましたわ。うぐっ…あの戦いで骨が3本ぐらい折れてしまったみたいね…ゲルヒルデ、回復をお願い!!

「リリシア様…長き戦いで疲れたでしょう。私が今から回復してあげるわ。」

ゲルヒルデは静かに目を閉じ、リリシアの体に手を当て傷の治癒を行う。ゲルヒルデの手がリリシアの体に触れた瞬間、彼女のてから迸る癒しの魔力がリリシアの傷をみるみるうちに塞がり、体力が完全に回復する。

「ありがとうゲルヒルデ…おかげで体がよく動くわ。それにしてもエルーシュの奴、戦いが終わった後『お前のことが好きだ』って告白してくるので驚いたわ。まぁエルーシュはあの戦いで改心してくれたから、魔界に帰ったらエルーシュの妻になるって決めたのよ。」

エルーシュの妻になるとの言葉を聞いた仲間たちは、驚きのあまり声をなくす。

「リ…リリシア!!本気でエルーシュの妻になるつもりなの!?エルーシュはあなたをこの世から消そうとしている存在なのに…どうして!?

「確かにエルーシュは一度私を消そうとしたわ。でも私との戦いで改心したのよ。そんな話はさておき…私はエルーシュの妻になるわ。この戦いが終わって魔界に帰ったら、王宮で永遠の愛を誓うつもりよ。その時は…ご祝儀お願いね♪」

リリシアがクリスたちにそう告げた後、クリスたちの目の前にかつての敵であるエルーシュが現れ事の真相を話し始める。

 「君たちには私の話など信じてくれそうにないが…私はリリシアを心の底から愛している。私はあの戦いでリリシアに負けたことで、愛とは何かを知ることができた。戦いが終わった後、リリシアは傷つき倒れた私に手を差し伸べ、今まで私が行ってきた無礼を許した上…私の妻になると言ってくれたのだ。私が言えることはそれだけだ。私の愛するリリシアよ、この戦いが終わったら二人でこれからの人生を共に歩もう…。」

リリシアに愛のメッセージを告げた後、エルーシュは異空間の中へと消えていく。エルーシュから愛のこもった言葉を聞いたリリシアは、顔を赤くしながら恥ずかしがる。

「うふふふっ…エルーシュの愛のこもった言葉を聞くたび、恥ずかしさのあまり顔が赤くなっちゃうわっ!!これが…これが恋というものなのねっ!!

エルーシュの声を聞き顔を赤くするリリシアを見たクリスたちは、魔姫に祝福の言葉を投げかける。

「いいお婿さんができてよかったわね…リリシア。末永くお幸せに…。」

「よかったわね…リリシア様。魔界に帰ったら私と一緒に人並みの幸せを手に入れましょうね!!

仲間たちから祝福の言葉を受け、リリシアは恥ずかしさのあまり両手で顔を隠しながら照れ始める。

「そんなに言われると私さらに恥ずかしくなっちゃうわ。確かに私は魔界に帰ったら…エルーシュを夫として迎えるつもりよ。さて…長話は終わりにしてヘルヘイム宮下町へと向かうわよ。」

長話を終えたクリスたちは、ミリアゴーシュ神殿のあるヘルヘイム宮下町へと向かうのであった……。

 

 クリスたちがヘルヘイム宮下町へと足取りを進める中、ヘルヘイム王宮の玉座の間ではジャンドラが焦燥しきった表情を浮かべながら、玉座に腰かけていた。

「うぐぐっ…エルーシュの捕獲へと向かった牢獄署長がやられた…それにエルーシュも何者かによって倒された。私の反魂術で蘇らせたというのに…死ぬとは実に情けない。しかし私には狂王ラダマンティスがいる…紫の髪の小娘に一度は倒されたが、我が反魂術で蘇らせ新たな力を与えたのだ!!ラダマンティスよ…私のもとへと来たまえっ!!

ジャンドラはラダマンティスに玉座の間に来るように命じた瞬間、血ぬられた利刀(サングゴム)を携えた男がジャンドラのもとへと現れる。その男はかつてヘルヘイム大監獄でリリシアと戦乙女たちによって倒された狂王ラダマンティスであった。

 「お呼びですか…ジャンドラ様。」

ラダマンティスは利刀に滴る血を舐めながら、ジャンドラに挨拶する。ラダマンティスの利刀は何人もの罪なき人や魔物の血で染まり、刀身が赤く輝いていた。

「今日もまた派手にやりすぎたな…ラダマンティスよ。この近辺の魔物を斬り捨てるのはいいが、俺の王宮兵たちに手を出すのだけは勘弁してくれよな。兵士を殺しちまったらいざヴァルハラへに侵攻する要員が減っちまうからな。お前には王宮の見回りをしてもらおう。誰一人王宮に入れさせるな…侵入する者は容赦なく斬れいっ!!

ジャンドラがラダマンティスに見回りをするようにと命令した後、ラダマンティスはジャンドラに敬礼した後、玉座の間を後にし王宮内の見回りへと向かう。

 「わかったぜ。侵入者は斬るが…王宮の兵士には手を出さねぇから安心しろ。とりあえず一通り見回りが終わったら報告する。では俺は見回りに行くとするかぁ……。」

ラダマンティスが見回りを始めようとした瞬間、彼の目の前にニルヴィニアの部下であるマグマ・レンソンが現れ、ラダマンティスの顔を見るなりそう言い放つ。

「おうおうおう!!お前は確かヘルヘイム宮下町で罪なき者たちを大虐殺したという重罪でヘルヘイム大監獄の最下層に囚われていた狂王ラダマンティス!!貴様がなぜこの王宮の中にいるんじゃあっ!!

「おっと…お前はニルヴィニアとやらに仕える部下の灼熱王マグマ・レンソンじゃねぇか。俺がなぜここにいるかって?俺はジャンドラの部下になったんだよ…だが今はジャンドラ様の命令で見張り中だ。」

その言葉を聞いた灼熱王はラダマンティスにそう告げた後、ニルヴィニアのいる自室へと向かっていく。

「ほう…ジャンドラとやらがお前を選んだということか。悪いが今お前と戦うつもりはない…今からニルヴィニア様の世話をしなくてはならないからな…。では見張りのほうよろしくな!!

灼熱王がニルヴィニアの世話へと向かった後、ラダマンティスは王宮の見張りへと戻るのであった…。

 

 そのころクリスたちは、荊の森を抜けついに目的地のミリアゴーシュ神殿のあるヘルヘイム宮下町へと辿りついた。ジャンドラの本拠地ではあるが宮下町は市場が充実し、天界と変わらぬにぎわいをみせていた。

「ここがヘルヘイムの中心みたいね…ここから北にある王宮がジャンドラの本拠地のようね。だが私た血が今やるべきことはミリアゴーシュ神殿にいる暴虐皇帝ジョロキアを倒し、伝説の武具の一つである『サレウスの兜』を手に入れることよ。さて、手分けして情報収集しながらミリアゴーシュ神殿を探しましょう。」

クリスたちは宮下町の人々に聞き込みをしながら、ミリアゴーシュ神殿に関する情報を集めていく。住人から得た情報によると、ヘルヘイム宮下町の東に位置するミリアゴーシュ神殿は一見普通の神聖な神殿だが、ヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラが頻繁に出入りしているということなので、恐怖のあまり住人が近寄らない、高貴な外観とは裏腹に不吉な感じを漂わせる神殿であった。

 「ミリアゴーシュ神殿にジャンドラが頻繁に出入りしている…しかしなぜヘルヘイムの将がわざわざ玉座を離れこんな人の近寄らない神殿に毎日のように訪れているなんて…あいつもさぞかし変わり者ね。さて、そろそろ神殿へと向かいましょう。」

情報収集を終えたクリスたちは、暴虐皇帝ジョロキアの待つミリアゴーシュ神殿へと向かうのであった。はたしてクリスたちはジョロキアを倒し、サレウスの兜を手に入れることができるのか!?

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