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蘇生の章2nd第六十九話 エルーシュ再び!!傲慢VS色欲

 伝説の武具の一つである『サレウスの兜』を手に入れるべくクリスたちがヘルヘイムの宮下町へと向かう中、ヘルヘイムの王宮の牢獄で幽閉中の身であるエルーシュが看守長を殺し脱獄を果たしていた…。

 

 エルーシュの脱獄を受け、王宮の牢獄署長が急いでジャンドラのもとへと駆けより、幽閉中のエルーシュが看守長を殺し脱獄したということを告げる。

「王宮の牢獄で幽閉中のエルーシュが…看守長を殺し脱獄しました!!

「何っ!?あのエルーシュが脱獄しただと!!せっかく我が反魂術で生き返らせて我が手中に収めようとした矢先で逃げられてしまうとは…貴様は何をしていたのだっ!!

エルーシュが脱獄したことに怒り心頭のジャンドラに、牢獄署長はその時は非番だったということを告げる。

「その時私は非番で…宮下町の酒場で休息をとっていました。」

「そうか…では看守長の力が及ばなかったとしてこの事件を揉み消す。ここは牢獄署長である君にエルーシュを捜索し、再びここに連れてまいれ!!

エルーシュを追うようにと命じられた牢獄署長は、ジャンドラに敬礼したあと玉座の魔を去ろうとした瞬間、ジャンドラは牢獄署長を呼びとめる。

 「待て。少しばかり貴様に力を与えよう…少し目をつぶってくれるかな?

王宮の牢獄署長に少し目をつぶるようにと告げた後、ジャンドラは自分の魔力を牢獄署長の体へと注ぎ込む。ジャンドラの魔力が注ぎ込まれていくうち、牢獄署長の体が徐々に怪物のような風貌へと姿を変えていく。

「むむっ!!私の体に力があふれてくるぞ…これなら看守長の仇を討てるぞっ!!ジャンドラ様…このような力を与えてくれてありがとうございます!!

力を得た牢獄署長がジャンドラに一礼した後、ジャンドラはエルーシュを殺さずに私のもとに持ってくるようにと牢獄署長に伝える。

「牢獄から脱獄したエルーシュを殺すでないぞ…生かしたまま捕獲し、私のもとへと持ってくることが貴様の任務だ…ではよろしく頼むよ。あとこいつも持っておけ、看守長が使っていた移動用のポリスバイクだ。水陸両用・空も飛べるという代物だ。看守長は脱獄者を捕まえるためならばこんなものまで改造してしまうとはな…驚きだぜ。」

ジャンドラの言葉の後、牢獄署長は看守長が使っていたポリスバイクにまたがり、アクセルを踏みエンジンを稼働させる。

「看守長が残したこの特製ポリスバイクで…そなたの無念を晴らしてみせますぞっ!!

看守長がポリスバイクを走らせ、玉座の窓を割ってエルーシュの捕獲へと向かっていく。牢獄署長がエルーシュの捕獲へと向かった後、ジャンドラは割れた窓ガラスの破片を拾いながら愚痴をこぼす。

「おいおい牢獄署長さんよう…扉ならまだしも、窓割って外に出ることはないだろう。窓の修理に費用がかかって大変なんだぞ…ここは錬金術の使える者に修理を依頼するしかないな。」

ジャンドラは割れた窓ガラスを掃除した後、ジャンドラに仕える錬金術師に窓ガラスの修理を依頼するのであった……。

 

 一方ヘルヘイム宮下町へと向かうクリスたちは、あたり一面毒草が生えている黒き草原地帯を越えて茨の森へと来ていた。

「ハバネロの奴から奪った地図を見る限り、この荊の森を抜ければヘルヘイム宮下町だな。ここはそのまま通れば大きなダメージを受けてしまうので、ここは俺が火炎弾であの荊を焼いて道を作るしかないな。」

クリスたちの目の前には、巨大なトゲの生えた荊が行く手をふさいでいた。そのまま進むのは危険だと判断したディンゴは、火炎弾を用いて荊を焼き払う作戦にでる。

「俺が邪魔な荊を焼き払うから、クリスたちは俺の後についてきてくれ!!

ディンゴが火炎放射で行く手を阻む荊を焼き払う中、クリスたちはディンゴの後へと続く。荊の森を歩き続けること数分後、クリスたちは危険な荊の森を抜けることに成功した。

 「やっと荊の森を抜けれたわ…これでヘルヘイム宮下町まであと一息…っ!?

クリスがそう呟いた瞬間、何者かの気配を感じクリスは天帝の剣を構えて戦闘態勢に入る。ただならぬ気配を感じたクリスが気配のした方に振り返ると、見覚えのある聖と魔の翼を携えた男の姿が目に映る。

「ま…まさか奴は!!フェルスティア七大魔王最強の存在…エルーシュっ!?

「確かにエルーシュは私とクリスがアンダーグラウンドで葬ったはず…!?

リリシアの言葉の後、目の前に見覚えのある金髪の男が目に映る。そう、彼こそフェルスティア七大魔王最強の存在である堕天使・エルーシュであった。

「やっと見つけたぞリリシアよ…今度こそ私の手で葬り去ってくれるっ!!

エルーシュはリリシアを睨みつけた後、有無を言わさず襲いかかってきた。クリスが武器を構えてエルーシュに立ち向かおうとした瞬間、リリシアが戦闘態勢に入るクリスに手出しはするなと諭す。

 「クリス…これは私の戦いよ。クリスは下がっていなさい。」

リリシアに諭されたクリスは武器を収め、仲間たちのもとへと戻っていく。クリスが戦線を離脱した後、リリシアは髪飾りを鉄扇に変え、エルーシュを迎え撃つ態勢に入る。

「意外なところでこんにちは…になるかな?エルーシュ。フェルスティア七大魔王最強の存在であるあなたは確かに私が倒したはずなんだけど…どうして生きているのかな?

「フン…私は確かに一度アンダーグラウンドで死んだ。だがヘルヘイムの死霊王ジャンドラが使う反魂術によって地獄の底から呼び戻された。そう、全ては忌々しい貴様を倒すためだっ!!

ジャンドラの反魂術によって蘇ったということを告げると、

「まさかあなたのバックにはジャンドラがかかわっていたとはね…ならばここであなたを完膚無きまでに倒しますわよっ!!

リリシアがエルーシュにそう告げた後、鉄扇を構えて先制攻撃を仕掛ける。しかしエルーシュはリリシアの攻撃をかわし、体術のラッシュでリリシアを徐々に追い詰める。

「ほほう…七大魔王の下位クラスの者が最強の存在と呼ばれる私に再び刃向かうというのか。よかろう、我が堕天幻魔拳で貴様を地獄へと送ってやろう…堕天使百烈拳っ!!

エルーシュは両手に力を込め、リリシアの鳩尾に拳の連打を叩き込む。エルーシュの猛攻を受けた魔姫は大きく吹き飛ばされ、その場に倒れる。

 「私は強くなったのだ…貴様には一度負けたが、その敗北が私を強くしたのだ!!さて…そろそろ忌まわしきあの小娘の息の根を止めてや…ぐおぉっ!!

エルーシュがリリシアにとどめの一撃を放とうとしたその時、リリシアは手のひらから赤き炎の火球を放ちエルーシュを攻撃した後、再び立ち上がり戦闘態勢に入る。

「さすがに今の一撃は効いたわ…だが私も七大魔王の一人だから、一筋縄では倒れないわよ!!

「我が堕天使百烈拳を受けてなお立ちあがるというのか…よほど私に消されたいようだな。私は貴様の弱点である聖なる魔力を扱える…我が聖なるブレスでたたみかけてくれるわっ!!

エルーシュは大きく息を吸い込んだ後、口から神々しい光のブレスを吐き出しリリシアを襲う。

「奴め…いつの間に光のブレスを習得したのよ!!だが…私の鉄扇の舞であなたにそっくりそのまま返して差し上げますわよっ!!

鉄扇を構えたリリシアは大きく円を描いた瞬間、あらゆるブレス攻撃を弾き返す風のバリアが魔姫の体を包み込む。

 「フハハハハ…邪悪なるものよ、聖なる光に焼かれ…ぐおおっ!!

エルーシュの口から放たれたブレスはリリシアの風のバリアにはじき返され、そっくりそのままエルーシュの体に降りかかる。聖なる光に焼かれたエルーシュが痛みのあまり蹲っている隙に、リリシアは大火球の術を唱えエルーシュにとどめの一撃を放つ。

「赤き炎よ…煉獄の火球となりて対象を跡形も無く焼き尽くさんっ!!赤炎究極炎熱術…殲滅の獄炎球!!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、エルーシュの頭上に巨大な煉獄の火球が生成される。リリシアが手を下した瞬間、巨大な煉獄の火球はエルーシュめがけて急降下する。

「き…貴様っ!!このような隠し技を持っていたのかぁっ!!だが私もここで負けるわけにはいかん…邪悪なる術で貴様の術を打ち破ってやろうぞっ!!

リリシアの放った煉獄の火球を打ち破るべく、エルーシュは両腕に魔力を込めて巨大な闇のエネルギー体を放つ。二つの巨大なエネルギー体がぶつかり合い、凄まじい突風が発生する。

「くっ…詠唱無しで巨大な闇のエネルギーを放つとは厄介な能力ね…だが、私の赤き炎の火球は魔力を込めれば込めるほどさらに強さを増す!!

リリシアが煉獄の火球に魔力を注ぎ込み、徐々にエルーシュの闇のエネルギー体を相殺していく。エルーシュも負けじと闇のエネルギー体に魔力を注ぎ込もうとした瞬間、リリシアの放った煉獄の火球がエルーシュの闇のエネルギー体を相殺し、エルーシュに炸裂する。

「この私がリリシアごときにやられるわけにはいか……ぐわあぁっ!!

煉獄の火球がエルーシュに直撃した瞬間、天を焦がすほどの火柱が上がる。

 「やったわ!!さすがにあの巨大な大火球の術をまともに受けたんですものね。だが安心できないわ…奴はリリシアと同じフェルスティア七大魔王。また立ちあがってくるかもね。」

カレニアがリリシアの勝利を確信したその時、エルーシュは魔姫の放った大火球を受けてもなお立ちあがり、傷を押さえながらリリシアの方へと向かってくる。

「うぐぐっ…ふ、ふざけるなぁっ!!なぜ七大魔王最強の存在であるこのエルーシュが…リリシアごときにここまでやられなければならんのだっ!!だがもう終わりにしてやる…我が本当の力で貴様を闇へと葬ってくれるわっ!!

リリシアにそう言い放った後、エルーシュは膨大な闇の魔力を集め魔竜の姿へと変貌を遂げる。エルーシュが魔竜の姿となった瞬間、看守長が使っていた改造ポリスバイクに乗ったヘルヘイム王宮の牢獄署長が二人の戦いに割って入る。

 「やっと見つけたぞエルーシュっ!!ジャンドラ様から貴様を捕獲しろとの命令でここにやってきた。貴様が殺した看守長の仇…今ここで取らせてもらうぞっ!!

魔竜の姿へと変貌を遂げたエルーシュは血走った眼で牢獄署長を睨みつけた後、口から闇の炎弾を吐き出し、牢獄署長へと襲いかかる。

「ほう…私に牙を向けるというのなら、こちらとて手段は選ばん。我が軍刀の錆にしてくれるっ!!

「グギギ…私がこの手で殺したいのはあの女だけだが、貴様には用はない…跡形も無く滅びるがいいっ!!

牢獄署長は軍刀を構え、エルーシュの闇の炎弾をはじき返そうとする。しかし魔竜と化したエルーシュの力はあまりにも強大で、牢獄署長はそのまま後ろへと吹き飛ばされてしまう。

「なんて奴だ…直撃は免れたが私の軍刀が折れてしまった。だが私にはどんな凶暴な魔物でも眠らせることができる強力な麻酔薬がある。奴を眠らせた後で捕獲すればよ……!!

ポケットから強力な麻酔薬を取り出そうとした瞬間、魔竜と化したエルーシュは禍々しい口を開けて牢獄署長の首を食いちぎる。エルーシュは牢獄署長を丸飲みにした後、再びリリシアの方へと向かってくる。

 「邪魔な者は消えた…リリシア…次はお前だっ!!私が七大魔王のナンバーワンだということを、貴様の魂に永遠に刻みつけてくれようぞっ!!

エルーシュが翼を大きくはばたかせ、リリシアの方へと向かってくる。

「私に一度負けた者が…そのような大きな口を叩くのは許せないわ。なら再びあなたに敗北の烙印を押してあげ……きゃあっ!!

リリシアが鉄扇を構えた瞬間、エルーシュの腕がリリシアを鷲掴みにする。魔姫を鷲掴みにした後、大きく空中へと上昇する。

「フハハハハハ…貴様ら、リリシアの最期をよく見ておくのだぞっ!!!

エルーシュがリリシアを鷲掴みにしている手を離した後、口から闇の炎弾を放ちリリシアに止めを刺そうとする。しかしリリシアは急いで翼を生やし、エルーシュの放った炎弾を回避する。

「これしきのことでくたばる私ではないわよっ!!クリスたちの前ではこの姿に変身したくないが、エルーシュを倒すためには魔王になるしかないわね。」

リリシアがそう呟いた後全身に闇の魔力を集め、混沌と色欲の魔姫へと変身する。

「リ…リリシアッ!!貴様、今まで仮初めの人の姿の状態で戦っていたのか!?ほう、これでお互い同等の力で戦えるというわけだ…徹底的に討ち滅ぼしてやるぞっ!!

「私のこんな姿をクリスたちに見られてはまずいわ。とりあえずクリスたちのいる場所から少し離れた所へ移動するしかないわね。」

リリシアがクリスたちのいる場所から離れ黒き草原へと戦いの場所を移した後、エルーシュは翼を大きく羽ばたかせてリリシアを追跡する。

 「ほう…貴様の仲間に犠牲が出ないよう、場所を移動したか。では戦闘再開と行こうか!!

エルーシュは天を衝くほどの雄たけびを上げた後、魔姫形態となったリリシアを迎え撃つ態勢に入る。フェルスティア七大魔王同士の人智を超えた激しい戦いが、今まさに始まろうとしていた……。

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