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蘇生の章2nd第六十七話 適合者

 ヘルヘイム法王庁の酒場での聞き込みを終え、元ハバネロ教徒の男からアルバトロス大聖堂へと入る方法を聞き出したクリスたちは、アルバトロス大聖堂へと乗り込む。しかし大聖堂のいたるところに稲妻の結界が張り巡らされ、安易に歩けば致命傷を負いかねない状態であった。クリスは酒場で出会ったハバネロ教徒から教えてもらった地形ダメージを無効にする術を唱え稲妻の結界に足を踏み入れたその時、稲妻の結界に仕掛けられた警報装置が作動し、大勢の武器を構えたハバネロ教徒たちがクリスたちを取り囲む。ハバネロ教徒がクリスたちに襲いかかろうとしたその時、クリスたちを最上階へと案内してやれというハバネロの命令を受け、ハバネロ教徒たちは仕方なくクリスたちを最上階へと案内した…。

 

 アルバトロス大聖堂の最上階へクリスたちを案内した後、ハバネロ教徒たちはハバネロに一礼しその場を去った後、ハバネロは『爆熱の杖』を手にクリスたちに襲いかかる。杖から放たれる火球に苦戦するが、リリシアの術がハバネロに命中しその場に倒れる。先ほどの戦いで爆熱の杖の魔力が尽きたハバネロは教徒たちに伝説の武具である『ディアウスの鎧』を持ってまいれと命令した後、教徒たちはタンスの中に入っているディアウスの鎧をハバネロのもとへと持ってくる。ハバネロは呪術を唱えてディアウスの鎧と一体化を果たし、ハバネロ教徒たちを人柱とする『伝説の鎧を纏いし暴君』へと姿を変えるのであった……。

 

 ディアウスの鎧と一体化を果たしたハバネロは『業炎の剣』を構え、クリスたちに襲いかかってくる。

「フハハハハッ!!私は伝説の鎧と一体化を果たした今、貴様らには勝ち目はないっ!!

ハバネロが業炎の剣を地面に突き刺した瞬間、燃え盛る炎の衝撃波がクリスたちの方に放たれる。クリスたちは間一髪ハバネロの放った炎の衝撃波をかわし、反撃の態勢にでる。

「くっ…奴はハバネロ教徒たちをのみ込んだせいで魔力が格段上がっている…!!しかも奴の体に炎を纏っているから、うかつに近寄ればこちら側にもダメージを受けてしまいそうね。ここは水の術で炎を消してから攻撃に持ち込むしかないが、水の術を使える人がいたらの話だけどね。」

「ここは私に任せてっ!!水の術を扱える私にならハバネロの身に纏う炎を消すことができるわ!!

ハバネロの身に纏う炎を消すには水の術で炎を消すしかないとのリリシアの言葉の後、クリスが水の術を使えると聞き、早速作戦の内容を伝える。

 「そうね…まずはハバネロの頭にあなたの水の術を唱えて炎の勢いを弱めないとね。しかしひとつだけ注意点があるの…ディアウスの鎧には水の術が当たらないようにしてほしいの。熱く熱せられた鉄は水がかかると劣化してしまう恐れがあるからよ。奴の炎の勢いが弱まった後、ゲルヒルデが解呪の術を唱えてハバネロとディアウスの鎧を引きはがしてから一気に本体を攻める作戦よ。」

リリシアが作戦内容を伝えた後、ディンゴが手を挙げてリリシアに質問する。

「一つ質問がある。リリシア、俺の持ってる水冷弾でも代用できないか?

「確かに命中精度の高いボウガンを装備しているあなたなら、奴の脚部を狙って水冷弾を放って攻撃すればいいわ。クリスがハバネロの頭部を、ディンゴが脚部を攻撃をすればなお一層奴の炎を消せるかもしれないからね。では作戦開始よ、みんな急いで配置についてちょうだいっ!!

リリシアの号令の後、クリスたちは配置につきハバネロを迎え撃つ。クリスは水の術の詠唱に入るなか、カレニアとリリシアはハバネロをかく乱する。

「ここはリリシアとともにハバネロをかく乱するから、クリスは術の詠唱に専念してっ!!

カレニアとリリシアは素早い動きでハバネロをかく乱する中、ハバネロは剣を突き刺して衝撃波を放つ。しかし二人の素早い動きによりかわされ、怒りの表情を浮かべる。

 「ぐっ…小娘めこざかしい真似をしよってっ!!ならこれでどうじゃ!!

ハバネロは周囲一帯に爆風を起こし、カレニアとリリシアを大きく吹き飛ばす。二人は大きく態勢を崩したが、またすぐに立ち上がりハバネロの方へと立ち向かっていく。

「カレニア…まだ倒れるのは早いわよ!!

「私は大丈夫…リリシア、共にハバネロを足止めしましょうっ!!

両者は爆風でダメージを受けたが、再びハバネロを足止めするべく行動を開始する。カレニアとリリシアがハバネロを足止めする中、ディンゴは水冷弾をボウガンに装填しハバネロの脚部に狙いを定める。

「二人の足止めのおかげで…だいぶ狙えるチャンスが増えた。ここは速射で攻めるっ!!

ディンゴがハバネロの足に狙いを定めた後、引き金を引き水冷弾を発射する。ボウガンの発射口から放たれた水冷弾はハバネロの足に着弾した瞬間、ハバネロの身に纏う炎の勢いが少しずつ弱まっていく。

「うぐぐ…やめろっ!!炎が…炎が消えてしまうっ!!

ディンゴの攻撃の後、クリスが詠唱を終えて水の術を放つ。

 「水の魔力よ…荒れ狂う水の弾丸となりて炎をかき消さんっ!!アクア・キャノンっ!!

クリスの手のひらから放たれた水の弾丸が、ハバネロの頭部に命中する。苦手とする水の術を受けたハバネロは身に纏う炎が消え、その場にうずくまる。

「クリスの術を受けて奴が膝をついたわ。ゲルヒルデ…解呪の準備をっ!!

リリシアの言葉を聞いたゲルヒルデは聖なる魔力を集め、解呪の準備を始める。ゲルヒルデは呪いをかき消す聖なる札をディアウスの鎧に貼った後、聖なる祈りを込めながら術の詠唱に入る。

「聖なる魔力よ、「体を蝕む呪いを消し去りたまえっ…プリフィケア・インヴォーク!!

ゲルヒルデが詠唱を終え祈りをささげた後、ディアウスの鎧に貼られた聖なる札の魔力が働き、ディアウスの鎧と一体化したハバネロを強制的に引きはがす。ディアウスの鎧の解呪を終えた後、ゲルヒルデはディアウスの鎧を手にクリスのもとへと急ぐ。

「クリスさん…この鎧をあなたに託します!!

ゲルヒルデがクリスにディアウスの鎧を託したその時、ディアウスの鎧が突然光を放ちながらクリスに語りかけてくる。

 「汝…ディアウスの鎧を使いこなせる者と認める。さぁ…今すぐこの鎧を身につけるがいい!!

ディアウスの鎧の言葉を聞いたクリスはディアウスの鎧に手をかけ、鎧に袖を通す。ディアウスの鎧を身に付けた瞬間、クリスは体の中で凄まじい力が沸き起こるのを感じていた。

「伝説の武具の一つである『ディアウスの鎧』を身につけることができた。ということは…私が選ばれし者なの!?

ディアウスの鎧がクリスを認めたという事実に驚く中、リリシアは他の伝説の武具を装備できる可能性があるとクリスに告げる。

「多分…あなたを認めたということは確かよ。鎧を装備できる…ということは剣・盾・兜といった武具も装備できる可能性が出てくるわね。その話は後にして、今はハバネロを倒すことに専念しなきゃね。」

クリスがディアウスの鎧を身につけることができると知ったハバネロは激怒し、全身を激しく燃え上がらせながらクリスたちの方へと向かってくる

 「貴様らぁっ!!せっかくディアウスの鎧の力を手に入れたというのに…貴様らのせいで全てが台無しじゃ!!こうなりゃこの大聖堂ごと焼き尽くしてくれるわっ!!限定解除(リミットカット)…爆炎覚醒(オーバー・ヒート)!!

ハバネロがクリスたちにそう言い放った後、限定解除を行い炎の魔力を解放し全てを灰燼に帰す炎神と化し、大聖堂の最上階を火の海にする。

「ハバネロの奴…私と同じ限定解除を使えるとはね。ならこっちも本気を出そうじゃないの…限定解除(リミットカット)…魔力大覚醒っ!!

ハバネロに対抗するべく、リリシアも限定解除を行い魔力の限界を突破する。限定解除によって魔力を大幅に上げたリリシアは風の術を詠唱なしで唱え、ハバネロの炎の勢いを弱めようとする。

「ぐぐぐぐっ…やめろっ!!炎が…私の炎が消えてしまうっ!!

リリシアの放った強風を受け、ハバネロの身に纏う炎が徐々に弱まっていく。ハバネロの身に纏う炎が消えたことを確認すると、魔姫はクリスに止めの一撃を食らわせるようにと告げる。

 「今よクリス!!ハバネロに止めの一撃を食らわせてやるのよ!!火が消えている時間はほんのわずかしかないから、絶対にはずしちゃだめよっ!!

リリシアの言葉を受けたクリスはディアウスの鎧の魔力を剣に込め、ハバネロの鳩尾に雷の剣技を食らわせる。

「ディアウスの鎧に宿りし雷の魔力よ、相手を貫く稲妻の剣とならんっ…波導雷霆斬!!

クリスの剣技がハバネロの鳩尾に突き刺さった瞬間、強烈な稲妻が体中を走りハバネロの体を焼き尽くす。剣から迸る稲妻がハバネロの身を焦がした後、ハバネロは口から黒煙を吐きながらその場に倒れる。

「く…くちおしや。大司教とあろうこのわしが貴様らのような小娘にやられてしまうは思わなんだ…。だが、貴様がディアウスの鎧を手に入れたところで全ての武具を集めることはほぼ不可能!!おっと、わしからひとついいことを教えてやろう。伝説の武具のひとつであるサレウスの兜は私のさらに上をいく存在である暴虐皇帝ジョロキア様が所有しておる。ジョロキア様はヘルヘイム宮下町にあるミリアゴーシュ神殿を統べる者で…私が師と仰ぐ存在だ…ジャンドラ様…万歳…ぐふっ!!!

ハバネロは意味深な言葉を言い残した後、ハバネロの体が灰となり風に舞っていく。ハバネロの死とともに、法王庁の輝かしい金色の街並みが徐々に朽ち果て、普通の街と化した。

 「大聖堂もこの金色の街も…全てはハバネロが作り出したまやかしというわけだったのね。さて、ディアウスの鎧も手に入ったことだし、暴虐皇帝ジョロキアがいるヘルヘイム宮下町へと向かいましょう。」

クリスたちがヘルヘイム法王庁を後にしようとしたその時、シュヴェルトライテとオルトリンデが伝説の武具を手にクリスたちの前に現れる。

「はぁはぁ…やっとクリスたちと合流することができた。シュヴェルトライテよ、クリスたちに伝説の武具を渡したらヴァルハラに戻るぞ。」

「そうだ、クリスとかいう奴に渡したい者がある。今私たちが持っている剣と盾は伝説の武具の一つである『天帝の剣』と『アストライアの盾』だ。クリスなら装備できるかもしれんと思い、そなたを探してヘルヘイムへとやってきたのだ。ちなみに私たちが剣と盾を構えようとしたところ見事に拒絶された。さぁクリスよ、剣と盾を構えてみせろ。」

シュヴェルトライテの言葉の後、クリスは天帝の剣を握りしめ戦いの構えを取る。しかし天帝の剣はクリスを拒絶する気配もなく、クリスを適任者として認めたようだ。

 「おお…天帝の剣がクリスを適任者として認めたようだな。次はアストライアの盾を構えてみるんだ。盾が拒絶反応を起こさなければ、他の伝説の武具もクリスが身につけられるということだ。」

オルトリンデはアストライアの盾をクリスに手渡し、構えるようにとクリスに告げる。クリスはオルトリンデに言われるがままアストライアの盾を構えた瞬間、天帝の剣とアストライアの盾に秘められた魔力が共鳴し、光り輝きだす。

「こ…これは一体!?剣と盾がいきなり輝きだして…!!

「天帝の剣とアストライアの盾は強大な光の魔力を持つ武具だ。その二つを持つ者はさらに強大なる魔力と力を得られると伝説に残されてあったが、まさに本当の話だとはな…。」

クリスが伝説の武具を身につけられると知ったオルトリンデが驚きの表情を浮かべる中、クリスの鎧を見たシュヴェルトライテは驚きのあまり唖然となる。

「クリスの身につけている鎧はまさか…伝説の鎧である『ディアウスの鎧』ではないかっ!!ディアウスの鎧を身につけし者には雷の魔力が宿り、雷の魔力を自由自在に操ることができると伝承されているとのことだ。」

シュヴェルトライテの驚きの言葉の後、オルトリンデはヴァルハラへと戻る準備を進めていた。

「まさか鎧をも身につけられるとはな…もしかするとクリスは天界を救う救世主なのかもしれぬな。さて、さてと、私たちはやるべきことを果たしたのでヴァルハラへと戻るぞ。」

クリスに伝説の武具を託した後、戦乙女の二人はヴァルハラへと戻るべくヘルヘイム法王庁を後にする。クリスたちは伝説の兜である『サレウスの兜』を保有する暴虐皇帝ジョロキアを倒すべく、ヘルヘイム宮下町へと向かうのであった……。

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