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蘇生の章第六十六話 伝説の鎧を纏いし暴君

 パプリカを倒しレオニダス大聖堂を後にしたクリスたちは、次の目的地であるヘルヘイム法王庁へと辿りついた。クリスたちが訪れたヘルヘイム法王庁は街や教会などが金でできており、豪華な雰囲気を漂わせていた。クリスたちのもとに、金色のローブを着た男が現れ、法王庁を統べる者である大司教ハバネロがいるアルバトロス大聖堂は入口がなく、大聖堂の中に入る方法はハバネロ教徒しか知らないと聞かされた。クリスたちは酒場でアルバトロス大聖堂に入る方法を得るべく、クリスたちは近くの宿で夜を待つのであった。

 

 クリスたちが立ち寄った宿は、一階と二階がハバネロ教徒専用のスイートルームだが、一般人用の地下の部屋は想像を絶するほどの格差であった。ランプ・ろうそくといった照明もベッドもないひどい有様であったが、夜が来るまでクリスたちは夜が来るまで眠りについていた。

「おーい、そろそろ夜が来るぞ!!

明りもない暗い部屋で眠りについていたクリスたちは、隣にいた客人の声で飛び起きる。

「さて、酒場に向かうぞ。この時間帯なら酒場に人が来ているからな。そうときまればこの宿の近く二ある酒場に向かうぞ!!

クリスたちは客人に連れられ、宿を後にし路地裏にある酒場を訪れる。酒場の中では旅の者たちが酒を飲み、大いに賑わっていた。酒を飲む人の中には、僧侶やハバネロ教徒らしき人物の姿もあった。

 「うわぁ…聖職者である僧侶が酒を飲んでいるわ。なぜかしら堕落感が漂ってくるわ。あっ、あそこに金色のローブを着た人がいるわ!!

金色のローブの男を見かけたクリスは、カウンター越しで酒を飲んでいる金色のローブの男に話しかける。

「あの…あなたはハバネロ教徒のようですね。少しお話してもいいですか?

「確かに俺は昔ハバネロ教徒であったが、大司教ハバネロのやることに嫌気がさして教徒を抜けて来たのさ。今は働き口もなく酒を飲むばかりの日々さ…。」

カウンター越しで酒をのんでいた男が元ハバネロ教徒だと知ったクリスは、早速アルバトロス大聖堂に入る方法を教えてくれないかと尋ねる。

「私たちはアルバトロス大聖堂に行きたいので、是非とも入る方法を教えていただけませんか?

大聖堂に入る方法を教えてほしいとのクリスの問いかけに、元ハバネロ教徒の男は酒を飲む手を止めアルバトロス大聖堂に入る方法を教える。

 「アルバトロス大聖堂に入りたい…お前たち、本気で大司教ハバネロを倒すつもりだな…お前のその気力に満ちた目をみれば分かる。よーし、入り方を教えてやるよ。大聖堂の正面で祈りをささげれば大聖堂への入口は現れる。だがここからが問題だ。大聖堂のいたるところに激しい稲妻の結界が張り巡らされていて、むやみに歩けば焼け死んでしまうぜ。地形ダメージを無効にする術さえあれば乗り越えることが可能だが、その術はハバネロ教徒と聖職者にしか使えない。よし、俺がお前にその地形ダメージを無効にする術を教えてやるんで、少し目をつぶってくれないかな。」

クリスがローブの男に言われるがまま目を閉じた後、クリスの頭に手をかけて強く念じ始める。クリスに魔力を注ぎ込んだ後、ローブの男が教えた地形ダメージを無効にする術の詳細を告げる。

「今お前に教えた術は地形ダメージを無効にできる術・アースバリアだ。この術を唱えれば煮えたぎるマグマの中や瘴気のたちこめる場所を完全に無効化できる。どうだ、なかなか便利な術だろう。」

「ありがとうございます。これなら結界を気にせず大聖堂を進めることができるわ!!

クリスが感謝の言葉を告げた後、一行を酒場へと案内した男はカウンターに座り酒を飲み始める。

 「じゃあ俺はここで酒を飲んで君たちがハバネロを倒してくれることを祈っているよ。」

男の言葉の後、クリスたちは一礼してから酒場を後にした…。

 

 酒場を後にしたクリスたちは、法王庁の中心であるアルバトロス大聖堂へとやってきた。クリスは大聖堂の正面で祈りをささげた瞬間、彼女の目の前に転送陣が現れる。

「この転送陣に乗れば、ハバネロがいるアルバトロス大聖堂の内部へと行けるわ。みんな、ここからはいつ敵が襲ってくるか分からないから、常に警戒を解かないようにしなきゃね。」

クリスが仲間たちに警戒を解かないようにと告げた後、クリスたちは転送陣に乗りアルバトロス大聖堂の内部へと乗り込む。内部へとやってきたクリスたちの目の前には、一面稲妻の結界が張り巡らされていた。

「やはりあの人の言うとおり、大聖堂のいたるところに激しい稲妻の結界が張り巡らされているわね。術を唱えずに行けば確実に灰にされてしまうわね…。クリス、ここはあの人から教えてもらった術を唱える時よ。」

カレニアの言葉の後、クリスは酒場で出会った元ハバネロ教徒の男から教えてもらった地形ダメージを無効にする術を唱え、激しい稲妻の結界の突破を試みる。

「大地の魔力よ…行く手を阻む脅威から守りたまえっ!!アースバリアっ!!

詠唱を終えた瞬間、地形ダメージを完全無効化する大地の衣がクリスたちを包み込む。稲妻の結界のダメージを受けなくなったクリスたちが結界の中へと足を踏み入れた瞬間、侵入者を感知する警報装置が作動し、サイレンが鳴り響く。

 「な…何が起こったのよ!!結界の中に足を踏み入れただけなのにっ!!

サイレンの音と同時に、数十人のハバネロ教徒たちがクリスたちを取り囲む。

「貴様のようなみすぼらしい一般人がアルバトロス大聖堂にどうやって侵入したかは知らないが、侵入者を見つけた以上はここで葬り去らなければならん…侵入者め、覚悟しろ!!

攻撃を仕掛けようとした瞬間、どこからともなくハバネロの声が聞こえてくる。

「やめておけ…そいつは私が見込んだ者たちだ。私が戦いたい相手だ…貴様らが殺してはならんっ!!

「その声は、ハ…ハバネロ様っ!?こいつはハバネロ教徒ではない、ただの侵入者だぞ。その者をアルバトロス大聖堂の上層部に行かせるわけにはいきま……っ!?

ハバネロ教徒の一人がハバネロの意見に反した瞬間、どこからともなく現れた火球が意見に反したハバネロ教徒の体を焼き尽くす。

「わしの意見に反するつもりか…愚か者めがっ!!貴様ら、その者たちを私のもとへと連れてまいれっ!!

クリスたちを私のもとへと連れていこいとのハバネロの命令で、教徒たちは仕方なくクリスたちをハバネロのもとへと案内する。

「貴様らをこの大聖堂の主であるハバネロ様のもとへと案内してやろう。ついてくるがいいっ!!

クリスたちはハバネロ教徒たちの後を追い、ハバネロのいる上層へと向かっていく。クリスたちをハバネロのいる最上階へと案内した後、教徒たちはハバネロに一礼してからその場を離れる。

 「ほう、君たちはレオニダス大聖堂で出会った面々ではないか…約束を守り私のもとに来てくれたことは誉めてやろう。どれ…長話はさておき、邪聖太后パプリカを倒した力とやらを見せてもらおうかっ!!

その言葉の後、ハバネロの頭部が燃え盛り戦闘態勢に入る。燃え盛る炎に包まれたハバネロの頭を見たクリスとハバネロ教徒たちは、驚きのあまり言葉を失くしていた。

「ハバネロ様の頭に火がっ!!は…早く消火の準備をっ!!

「消火せずとも大丈夫だ…頭に火がついても死にはせん。わしは感情が高ぶると頭が発火してしまうのでな。パプリカを倒した強い奴と戦えるということなので、少しばかり気持ちが高揚しすぎただけだ…。」

ハバネロは強力な炎の魔力を持つ爆熱の杖を手に取り、クリスたちの方へと向かってくる。

「パプリカを倒した実力、ハバネロに見せつけるわよ!!みんな、戦う準備をっ!!

クリスたちが戦う準備を始める中、ハバネロは杖から炎の弾丸を飛ばしてクリスたちを攻撃する。しかしゲルヒルデが防壁を張り、ハバネロの放った炎弾を防御する。

「みんな、私がサポートに回りますので、あなたたちはハバネロを攻撃してちょうだい!!

「ほう…わしの炎弾を防御するとはなかなかやりよるな。さすがにチームワークも上手だが、次はそうはいかんぞっ!!

その言葉の後、ハバネロは大きく飛び上がり爆熱の杖に魔力を込め始める。ハバネロが杖に魔力が込められるたび、杖の先から炎弾が生成され、徐々に大きくなる。

 「奴はパプリカと違い抜け目がないわね…みんな、ここは私が術でハバネロを撃ち落とすわっ!!

リリシアは両手に魔力を集め、術を放つ態勢に入る。

「ほほう…術でわしに対抗するか!!我が爆熱の杖は炎の魔力を持つ者が使える魔杖…それ以外の者は魔力を制御できず灰となるちょいと玄人好みの武器だ!!

リリシアにそう言い放った後、ハバネロは生成された巨大な炎弾をリリシアに放つ。ハバネロが炎弾を放った瞬間、リリシアは術を唱えてハバネロの炎弾を相殺しようとする。

「怒れる炎と荒れ狂う雷よ、怒りの波導となりて対象を貫かんっ!!フレイム・ボルテージ!!

炎と雷の魔力が合わさった波導が、ハバネロの放った炎弾を相殺しハバネロに命中する。リリシアの術を受けたハバネロは大きなダメージを受け、地面へと落下する。

 「うぐぐ…わしの最大出力の炎弾を相殺するとはな。おかげで爆熱の杖の魔力が底をついてしまったわい。炎弾が使えなくなった以上、ここは奥の手を使うしかあるまいな。我がしもべたちよ、あれをもってまいれ!!

ハバネロが教徒たちにあれを持って来いと伝えた後、ハバネロ教徒たちは急いでタンスの中に入っている鎧を取り出し、ハバネロのもとへと持ってくる。

「ほう…これじゃ!!これが伝説の武具のひとつである『ディアウスの鎧』だ。当然伝説の勇者ではないわしが身につけようとしたら拒絶されたが、今からわしが使う呪術で鎧と一体化する!!

ハバネロがディアウスの鎧に手を触れた瞬間、静かに目を閉じて呪術を唱え始める。ハバネロの呪いの魔力と拒絶する力が反発しあい、鎧の周りに巨大な磁場が生まれる。

「ふはははは…そうだ!!もっと反発しあえ!!この強大な磁場と呪いの魔力を持って、私はディアウスの鎧とひとつになるっ!!

ハバネロが高らかに叫んだ後、ハバネロの体は強力な磁場に吸い込まれ消えていく。ハバネロが磁場に飲み込まれた後、ディアウスの鎧が徐々に禍々しいオーラを纏っていく。

 「おお…成功だ!!これでわしは伝説の鎧とひとつになったのだ!!教徒たちよ…お前らはもう用済みだ。我が計画の人柱となるがいいっ!!

ディアウスの鎧と一体化したハバネロは闇の触手を伸ばし、そばにいたハバネロ教徒たちを次々と飲み込んでいく。闇の触手がハバネロ教徒たちを飲み込むたび、ディアウスの鎧から手足が伸び、やがて頭部があらわとなる。

「ハバネロの奴…相当狂っているわ!!教徒たちをのみこんで自分の体の一部にするなんて!!

「なんとでも言うがいい…私はこの力を手に入れるためならば部下の命など惜しまない。強力感謝するよ…我が教徒たちよ。さて、次は貴様らを我が内に取り込み…完全なる存在となってやるのじゃっ!!

ディアウスの鎧をまとったハバネロが爆熱の杖を『業炎の剣』に変え、クリスたちに襲いかかる。呪術によって伝説の鎧の力を具現化した大司教ハバネロに、クリスたちに打つ手はあるのか……!?

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