蘇生の章2nd第六十三話 CHURCH
OF DEMON
魔物との熾烈な戦いを終え、伝説の剣と盾の回収を終えた戦乙女と戦士たちはヘルヘイム大監獄を後にし、ヴァルハラへと帰還した。しかし回収した剣と盾は長い年月を経て錆びてしまっており、このままでは使えない状態であった。この錆びた剣と盾に元の輝きを取り戻せないかと思ったオーディンは、オルトリンデに伝説の勇者の武具を鍛えなおしたといわれる鍛冶職人を尋ねるようにとの指示を出し、彼女に宮下町の武器屋へと向かわせるのであった……。
クリスたちがエスカデの村を後にしレオニダス大聖堂へと向かう中、宮下町の武器屋を訪れたオルトリンデは鍛冶職人ルドルフに剣と盾の鍛冶を依頼し、武器屋の中で休息をとっていた。
「懐かしいな…この剣と盾を見ると、伝説の勇者がわしの鍛冶屋に訪れた時のことを思い出すな。あの頃はよかったよ。しかし今は勇者を殺し伝説の武具を奪ったジャンドラとかいう奴がこの天界の平和を脅かしている現状だ…ああ、だれかわしが鍛えた伝説の武具を使い、ジャンドラを倒せる者がいないのかねぇ…。」
ルドルフはひとり呟きながら、伝説の剣と盾についた錆を落としていく。こびりついた錆を落とした後、
刃毀れした天帝の剣を大型の研磨機で磨いていく。
「この天帝の剣の斬れ味は紙でも斬れぬほどに劣化しているようじゃ。この大型の研磨機を使えば斬れ味を回復するどころか、斬れ味をアップさせることができそうじゃな。」
大型研磨機のグラインダーに天帝の剣の刃に当てた瞬間、刃毀れした部分が徐々に鋭利となり斬れ味が回復していく。試しに鉄鉱石で試し斬りをしたところ、鉄鉱石が真っ二つになるほど斬れ味が回復していた。
「これで斬れ味は回復したな…。後は陽煌石を加えて叩けば完成じゃ!!」
切れ味を回復させた後、ルドルフは陽煌石を取り出し天帝の剣の鍛冶を行う。刀鍛冶の工程を行うこと数十分後、錆ついていた天帝の剣は完全に元の輝きを取り戻し、まぶしいほどの白銀の輝きがよみがえる。
「ふぅ…やっと完成だ。店主よ、そこの娘さんに渡してやれ。」
鍛冶を終えたルドルフが店主に剣と盾を託した後、オルトリンデに渡してくれと告げる。
「剣と盾の鍛冶が終わりました…どうぞ。」
「おお…流石は伝説の勇者の武具たちを鍛えた鍛冶職人の腕だけあって、あれほど錆びて見る影もなかった天帝の剣とアストライアの盾が元の輝きを取り戻しているではないか。店主よ、鍛冶の代金だ。」
オルトリンデから代金を受け取った武器屋の店主は、
「確かに代金は受け取ったぜ。後でルドルフさんにもお礼を言っておいてくれよな…。」
店主の言葉の後、オルトリンデは鍛冶の準備をするルドルフに深く頭を下げて一礼する。
「ルドルフ殿…伝説の武具を鍛えなおしてくれてありがとう。私はこれにてヴァルハラへと戻る。」
ルドルフにそう告げた後、オルトリンデはルドルフの手によって元の輝きを取り戻した剣と盾を手にヴァルハラへと戻り、オーディンに任務完了の旨を伝える。
「オーディン様、宮下町にいる武器屋の鍛冶職人の手により、天帝の剣とアストライアの盾が元の輝きを取り戻しました。」
剣と盾が元の輝きを取り戻したことを知り、オーディンは嬉しそうな表情を浮かべる。
「うむ…後はこの剣と盾を身につけられる適合者を見つけるのが先決だな。伝説の武具を身につけることのできる適合者こそ、この天界を救える最後の希望となるのだからな…。オルトリンデよ、試しにこの剣を手に持ち、構えるがいい。」
オーディンに言われるがまま、オルトリンデは天帝の剣を構える。しかし、天帝の剣はオルトリンデを拒絶し、強制的にオルトリンデの手から離れる。
「ダメだ…剣が私を認めてくれなかったようだ。剣がダメなら、盾なら身につけられるはず!!」
盾なら適合者として認められるかと思ったオルトリンデはアストライアの盾を構え、精神を集中させる。
「アストライアの盾よ…私を認めてくれっ!!」
オルトリンデは必死にアストライアの盾に問いかけたが、天帝の剣と同様彼女を拒絶する。
「くっ…盾すらも私を認めてくれぬか。どうやら私は伝説の武具たちに嫌われてしまったようだな…ははは。」
「オルトリンデよ、これはそなたが身につけられるような代物ではない。適合者が現れる時を待つのだ。」
その言葉に苛立ちを感じたオルトリンデは、伝説の武具を手に謁見の間を後にする。
「オーディン様、適合者が現れるまで待てません!!オーディン様、私は単身ヘルヘイムへと向かい、クリスたちの捜索へと向かいます!!あの娘になら伝説の武具を身につけられる」
「待てオルトリンデよ…ヘルヘイムの瘴気に触れればいくら聖なる魔力を持つ戦乙女でも体力を消耗され、行き倒れてしまうぞっ!!」
クリスたちの捜索のためにヘルヘイムに向かうのをやめるようにと告げるも、オルトリンデの意思はゆらぐことはなかった。
「オーディン様…どうしても行かなければならないのだ。わがままを言ってすまないっ!!」
そうオーディンに告げた後、オルトリンデはヴァルハラの西出口へと走っていく。しかし西出口の扉は閉ざされており、ヘルヘイムへと向かうことができなかった。
「クリスたちを探しにヘルヘイムに向かおうとしているだろう…ならば私もご一緒させてはもらえないか?」
ヘルヘイムへと続く扉の前で立ち往生をしているオルトリンデがふとその声のほうに振り返った瞬間、そこにはシュヴェルトライテの姿がそこにあった。
「そ…その声はシュヴェルトライテっ!!そなたもヘルヘイムに向かうのか!?」
「オルトリンデだけでヘルヘイムに向かうのは危険だとのオーディン様からの伝令で、私も一緒に行けと言われたのだ。西出口の扉はオーディン様が開けてくれるので、しばし待てば開くだろう…。」
シュヴェルトライテがそう告げた後、オルトリンデはシュヴェルトライテの手を堅く握りしめながらこう答える。
「我が同志よ…共にヘルヘイムへと向かい、クリスたちを追うぞ!!」
西出口の扉が開いた瞬間、二人はクリスたちを追うべくヘルヘイムへと突入するのであった……。
オルトリンデとシュヴェルトライテがクリスたちを追う中、レオニダス大聖堂へと向かうクリスたちはデッドスノー雪原を抜け、草原地帯へと足を踏み入れていた。
「目の前に大きな教会の建物が見えてきたわ…あと少しで目的地に到着よ。」
一行が草原地帯を歩くこと数分後、クリスたちはついに目的地であるレオニダス大聖堂へと到着する。クリスたちが大聖堂に一歩足を踏み入れた瞬間、フードの男たちがクリスたちを出迎える。
「レオニダス大聖堂へようこそ…底の者たちよ、くれぐれも聖堂内では無礼のないような。」
黒いフードの男の言葉の後、クリスたちから離れひそびそと会話を始める。
「うむ…女が四人か。こりゃあいい生贄になりそうだぜ。」
「とりあえず、奴らが大聖堂の中に入った瞬間パプリカ教徒どもに招集をかけ、女四人を取り押さえ牢へとぶち込んでおけ。男は殺せ…いいな。」
黒いフードの男が去った後、クリスたちは扉を開き大聖堂の中へと足を踏み入れる。一行が大聖堂の中へと足を踏み入れた瞬間、黒いフードの男たちがクリスたちを取り囲む。
「美しい女を発見…直ちにこいつらを地下牢にぶち込み、今日の夜に行われる儀式の生贄にしろ!!そのむさくるしい男の方はその場で殺せっ!!」
黒いフードの男たちがクリスたちを牢へと連れて行こうとした瞬間、ディンゴがボウガンを構えて黒いフードの男たちを威嚇する。
「おっと、女を破壊神とやらの生贄に捧げているというのはお前らのことだな。悪いが、俺たちはパプリカっていう奴を倒すためにここに来たんだからな。いいか、ここは俺が時間を稼ぐから、お前たちは牢に閉じ込められた女たちを解放した後でパプリカのもとへと向かうんだっ!!」
ディンゴの言葉を受け、クリスたちは大聖堂の地下へと続く階段へと駆け降り、牢に囚われている女たちの救出へと向かっていく。
「さてと…クリスたちは去ったことだし、俺はしばらく奴らと遊んでいるとするかっ!!お前ら、かかってこいよぉっ!!」
クリスたちが大聖堂の地下へと向かった後、ディンゴは襲いかかってくるパプリカ教徒と戦うのであった。
ディンゴがパプリカ教徒たちと戦う中、大聖堂の地下へと来たクリスは女たちが囚われている牢へとやってきた。クリスたちが来た時にはすでに女たちは牢の中にはいなかった。
「一足遅かったか…女たちはパプリカの奴に連れて行かれちゃったみたいね。」
クリスがそう呟いた後、パプリカ教徒の一人がクリスたちに早く儀式の間へと向かうようにと声をかける。
「まだここに女がいたのか…破壊神への生贄の儀式はもうすぐ始まるので、早く儀式の間へと向かえ。儀式の間ならこの先の階段を下りたところにあるから、早く行けっ!!」
パプリカ教徒がクリスたちにそう言った後、クリスたちは階段を下り儀式の間へと向かう。クリスたちが到着したときには、レオニダス大聖堂の主であるパプリカがすでに儀式の準備を進めていた。
「破壊神デストラスよ…そなたのために今ここに美しき女とうまい酒を用意した。聞け、我が教徒たちよ…たとえ大帝ゴーヤが滅びようとも、このパプリカがいる限りパプリカ教は滅びぬっ!!」
パプリカが後ろで儀式の様子を見ている教徒たちにそう告げた後、教徒たちはパプリカの名を口にする。
「パプリカ様…万歳っ!!パプリカ様…万歳っ!!」
「早く…早く美しき女の魂を破壊神に捧げるのだっ!!」
教徒たちが叫び声をあげる中、破壊神の生贄にされるのを待つ女たちは恐怖のあまり体を震わせ、助けを求める。
「いや…まだ死にたくない。誰か…助けてっ!!」
命乞いを続ける女たちを見たパプリカは、不気味な笑みを浮かべながら女たちに近づく。
「フハハハハッ!!貴様らがいくら命乞いをしようと助けなど来ない…。貴様は破壊神の生贄にされる運命だからな。さぁ…我がパプリカ教徒たちよ、この女たちの肉体と魂が破壊神の生贄になるところをとくと見ておくがいいっ!!」
パプリカが儀式を始めようとしたその時、武器を構えたクリスたちはパプリカ教徒たちを蹴散らしながら、パプリカの前へと現れる。
「あなたが邪聖太后パプリカね…その女たちを破壊神への生贄にはさせないわよっ!!」
「ほほう…大聖堂の牢の中にいる女は全員ここに集めたはずだが、まだ女がいたとはな。新しい生贄として来たのかは知らんがまあよい。まずは貴様らから破壊神への生贄にしてくれるわっ!!」
生贄の儀式を妨害され、怒りに震えるパプリカがクリスたちにそう言い放った後、槍を構えてクリスたちに襲いかかってくる。
「我が儀式の邪魔はする者は…何人たりとも生かしてはおけんっ!!煉獄大車輪っ!!」
パプリカは炎の魔力を槍に込めた後、槍を大きく回転させて炎の刃を発生させる。クリスたちはパプリカの放った炎の刃をかわしつつ、一気にパプリカの近くへと詰め寄る。
「貴様ら、私の煉獄大車輪をかわしここまで来るとは敵ながら見事だな。だが、私は女に負けるほど弱くはないわっ!!」
その言葉の後、パプリカは強烈な突風を発生させてクリスたちを大きく吹き飛ばす。クリスたちを吹き飛ばした後、パプリカはクリスたちの妨害によって中断した儀式を再開する。
「破壊神デストラス様…この女どもの魂をあなたに捧げ……ぐおっ!!」
パプリカが儀式を再開しようとしたその時、クリスたちよりも早く態勢を立て直したリリシアが投げた鉄扇がパプリカの頭部に命中し大きく態勢を崩す。
「リリシアのおかげで、奴は大きく態勢を崩したわ!!しかし奴は突風を纏っている状態だから、できるだけ武器での近接攻撃は避け、術での遠距離攻撃で攻めるわよ!!」
クリスたちが仲間たちに近接攻撃は避けて術で攻めるようにとそう告げた後、クリスたちは術を放つ態勢に入りパプリカを迎えうつ。はたしてクリスたちはパプリカを倒し、囚われている女たちを救うことができるのか…!?