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蘇生の章2nd第六十二話 錆びた刃と盾

 地下道の先にある祠に足を踏み入れた戦乙女と戦士たちは、祠に祀られている剣と盾を守る魔物と戦っていた。しかし守っている魔物はヘルヘイムの魔物の中でも最も凶暴で、一切の接触を禁じられている接触禁忌魔物であった。戦乙女と戦士たちは剣側と盾側に分担し、魔物と戦うこととなった。剣側は戦士が五名犠牲となったが、魔物たちを倒し祀られている剣を回収することに成功した。剣を守る魔物を打ち倒した後、盾を守るブラックギアと魔竜ベルグと戦っている者たちの援護に入る。剣側の戦乙女たちが応援に駆け付けた時には、盾側の戦士はすでに魔物たちによって倒され、息を引き取っていた。戦士たちを大幅に失い戦力を失ったが、彼らは接触禁忌魔物のブラックギアと魔竜ベルグに辛勝し、盾の回収へと向かうのであった…。

 

 盾を守る魔物との戦いを終えた後、シュヴェルトライテは盾の周りに張られている瘴気の結界を黒刀の一閃で斬り裂き、祀られている盾を回収する。

「魔物に守らせている割には、ずいぶんボロボロではないか…だが表面には模様のようなものが彫られているようだ。」

祀られていた盾はかなりの年月がたっていたのか、見る影もなくボロボロに錆ついていた。シュヴェルトライテの言葉を聞いたオルトリンデは、これがアストライアの盾ではないのかと推測する。

「盾の表面に模様のようなものが彫られていた…となると、これはもしかすると伝説の勇者が身に着けていたと言われている伝説の武具の一つであるアストライアの盾ではないのかっ!!もしそうであれば、ヴァルハラに持ち帰って真贋を確かめる必要があるな。皆の者よ、これよりヴァルハラへと帰還するぞ!!

魔物が守っている剣と盾の回収を終えた後、戦乙女と戦士たちは祠を後にし、地下道を戻り大監獄の最下層へと戻ってくる。

「最下層の看守詰所にある転送陣からヘルヘイム大監獄の上層へと戻り、急いでヴァルハラへと戻るぞ。我々が保有している伝説の武具の匂いを嗅ぎつけて、ヘルヘイムの奴らが襲ってくるかもしれんからな…。」

オルトリンデが伝説の武具を鞄の中へと放り込んだ後、魔力を消すかのように鞄に魔封じの札を張り、伝説の武具の魔力を封殺する。

 「魔封じの札を張って存在を消したか。伝説の武具は神聖な魔力が込められているから鞄の中に入れていても安心はできない…ということだな。」

伝説の武具の持つ神聖な魔力をヘルヘイムの者に気付かれぬようにした後、一行は大監獄を後にしヴァルハラへと戻るのであった……。

 

 戦乙女と戦士たちがヴァルハラへと帰還を始める中、ヘルヘイムの王宮ではジャンドラのもとに再び大司教ハバネロが現れ、今起こっている出来事を告げる。

「ジャ…ジャンドラ様っ!!ヘルヘイム大監獄の最下層にある秘密の宝物庫に配置されている接触禁忌魔物たちの生命反応が消えました!!

「な…なんだと!?確かにあの秘密の宝物庫には私が伝説の勇者を殺して奪った伝説の武具の一つである『天帝の剣』と『アストライアの盾』を祀り、四体の接触禁忌魔物に守らせたが、一体誰があれほど強大な力を持つ魔物を倒したというのだ。ハバネロよ、宝物庫に祀られた剣と盾は無事なのかっ!?

宝物庫の宝は無事なのかとのジャンドラの言葉の後、ハバネロは残念そうな表情でジャンドラにそう告げる。

 「それが…剣と盾は何者かによって盗まれた模様です。しかしその宝の行方も私にもわかりません。盗んだ奴らは伝説の武具の持つ神聖な魔力を闇の魔力で封殺し、どこかへと持ち去った模様です。」

宝物庫に祀った伝説の武具が盗まれたことを知り、ジャンドラは落胆の表情で悔しがる。

「くそっ…!!私が保有していた剣と盾を奪われてしまうとは何たる不覚っ!!おのれ伝説の武具を奪った奴めこのまま逃げられると思うなよっ…!!ハバネロよ、もう下がってもいいぞ。」

伝説の武具を奪われ、怒りに震えるジャンドラはハバネロにそう告げた後、自分の自室へと向かい、ベッドに寝転がり、悔しさのあまりその場にのたうちまわる。

「クソっ…クソっ…クソったれがぁっ!!今日は本当に胸くそ悪い一日だった今日はもう寝るっ!!

ベッドの上でひとしきり怒り狂った後、ジャンドラは怒りを抱いたまま眠りにつくのであった……。

 

 謎の地下道の調査を終えヴァルハラへと帰還した戦乙女と戦士たちは、急いで謁見の間にいるオーディンに地下道の宝物庫で手に入れた剣と盾を見せ、調査の成果を報告する。

「オーディン様。戦士たちが数名犠牲となりましたが、地下道の調査と剣と盾の入手に成功しました。」

「おお…この剣と盾ははまさしく伝説の勇者が身に着けていたという『天帝の剣』と『アストライアの盾』ではないか…しかし悲しいことに、長い年月にさらされて錆ついているな。そうだ…このヴァルハラにはかつて伝説の勇者の武器を研いだことのあるという鍛冶職人がこの宮下町で武器屋を営んでいるという噂を聞いたことがある。その者に会えば、きっと錆ついた伝説の武具を元の姿に戻せるはずだ。オルトリンデよ、今からそなたたちに任務を与える。ヴァルハラの宮下町の武器屋にいる鍛冶職人を捜し、伝説の武具を元の姿に戻すよう頼んでくるのだ。」

伝説の勇者の武器を鍛えたという鍛冶職人を探すようにとオーディンから命じられたオルトリンデは深々と頭を下げ、了承のサインを送る。

「わかりました。オーディン様…その鍛冶職人とやらはこの宮下町のどこかにいるというわけだな。」

「そうだ…確かに私の知っている限りではあの武器屋で鍛冶職人として働いていることは確かだ。だが今の時間帯では武器屋は閉店しておる。オルトリンデよ、今日は魔物との戦いで疲れたであろう…今日はゆっくりと休み、明日その武器屋にいる鍛冶職人を尋ねるがいい。」

オーディンから一晩休むようにとの言葉を受け、謁見の間を後にしたオルトリンデは接触禁忌魔物との激しい戦いで疲れた体を癒すべく、休息を取るのであった……。

 

 戦乙女たちが任務を終えて休息をとる中、エスカデの村の宿で一晩を過ごしたクリスたちは宿を後にし、ヘルヘイムについての手掛かりを得るべく情報収集をしていた。しかし聞き込みを続けても有力な情報を得られず、クリスたちは頭を抱えていた。

「なかなかいい情報が得られないわ…リリシア、こっちはどう?

「私は少しだけだがいい情報を見つけたわ。村人の話によると、エスカデの村から南に行ったところにレオニダス大聖堂と呼ばれる聖地があることだけだわ。クリス、さらに聞き込みを続けてみましょう。きっと何か手掛かりがつかめるはずよ。」

リリシアの言葉の後、クリスとともにレオニダス大聖堂についての聞き込みを始める。二人が聞き込みを始めてから数十分後、さらに有力な情報が二人の耳に入る。

 「クリス、村人から聞き出した話を整理するわ。ここから南にあるレオニダス大聖堂は一見神聖な教会だが、裏では破壊神を崇拝する邪悪な教会で、美しい女たちを生贄にに捧げているという噂よ。もしそのことが本当ならば、私としては許せないわ。クリス、今から重要な話をするので、みんなを私のもとに集めてきてくれる?

リリシアがクリスに仲間たちを集めてくるようにと告げた後、クリスは情報収集を続けている仲間たちを呼び、リリシアのもとに集めさせる。

「俺たちを集めさせたということは、何かいい情報が得られたのか?

「いい情報手に入れたわよ。この村から南の方角にあるレオニダス大聖堂という場所があるという情報を得たのよ。そこでさらに聞き込みをしたところ、パッと見は神聖な教会だが、裏では綺麗な女たちを生贄にしているというひどい事をしているって話よ。ねぇ、私たちでその大聖堂の悪事を暴くってのはどうかしら?

レオニダス大聖堂の裏で行われていることを聞いたディンゴは、リリシアの意見に賛成する。

「俺はその意見に賛成だな。そりゃあ女どもを生贄に捧げていると聞けば俺だって許せないな。レオニダス大聖堂に行って悪事を暴けば、何かしらの褒美がもらえるかもしれないからな…。」

ディンゴの言葉の後、目の前にフードをかぶった男たちがクリスたちを取り囲む。

 「この村にはもう綺麗な女どもがいないと思ったがまだいたとはな。私と一緒にレオニダス大聖堂に来てもらうぞ。」

フードの男の一人が強引にカレニアの手を掴んだ瞬間、カレニアは素早く背後に回り込みフードの男を羽交い絞めにする。

「女たちを大聖堂に連れて行き、破壊神とやらの生贄にしているのはあなたたちのようね!!悪いけど、私はあなたたちの思い通りにはならないわよ。痛い目に会いたくなかったらこの村から出て行くことね。」

カレニアはフードの男を解放すると、後ろで待機していたフードの男が武器を構えて戦いの構えを取る。

「ぐぐぐ…こうなりゃ力づくでも連れて行くしかないみたいだな。パプリカ教徒の力、思い知るがいいっ!!

「どうやら話してわかる相手じゃなさそうね。みんな、あいつらを打ちのめしてやるわよ!!

カレニアの言葉の後、クリスたちは武器を構えてパプリカ教徒たちを迎え撃つ。戦闘開始から数分後、パプリカ教徒たちはクリスたちの力の前に敗れ、エスカデの村を去っていく。

「は…歯が立たんっ!!ここは一旦退却だ貴様ら、覚えていやがれ!!

パプリカ教徒らが村から去った後、戦いの一部始終を見ていた村人たちがパプリカ教徒を追い払ったクリスたちに拍手を送る。

 「すごいね君たちは…あのパプリカ教徒を追い払ってくれたんだからね。あいつらはレオニダス大聖堂の邪聖大后パプリカという者の手下で、エスカデの村の女たちが奴らに連れて行かれ、破壊神の生贄にされてしまったんだ。もしそのレオニダス大聖堂に行かれることがあったら、あの憎いパプリカを倒してくれっ!!

レオニダス大聖堂の教主であるパプリカを倒してくれという村人の言葉に、リリシアはレオニダス大聖堂へと向かうという旨を村人に伝える。

「他の村人から聞いたわ。私たちは今からそこに行ってレオニダス大聖堂の悪事を暴いてやろうと思っていたところよ。あなたのその要求、私たちが引き受けるわ。」

リリシアが村人にそう告げた後、クリスたちはエスカデの村を後にする。村人の一人がレオニダス大聖堂へと向かうクリスたちの後を追い、励ましの言葉を贈る。

「パプリカに立ち向かう勇気のある人たちよ、くれぐれもお気をつけてくださいっ!!

村人の声援を受け、クリスたちは邪聖大后パプリカの待つレオニダス大聖堂へと向かうのであった……。

 

 クリスたちがレオニダス大聖堂へと向かう中、オルトリンデは死闘の末手に入れた『天帝の剣』と『アストライアの盾』を元の姿に戻すべく、ヴァルハラの宮下町の一角にある武器屋を訪れていた。

「店主よ、この武器屋に鍛冶職人はいるか?すこし鍛えなおしたい武具があってな。」

「た…確かに私の武器屋に鍛冶職人はいます。今からその鍛冶職人を呼んできますので、少しここでお待ちください。」

オルトリンデに少し待つようにと告げた後、武器屋の店主は鍛冶職人を呼ぶべく武器屋の奥へと向かい、鍛冶職人に交渉を始める。

「ルドルフさーん、そこの娘さんが武器を鍛えてほしいと仰ってますよ。」

「うむ…久々の客人だな。ちょいと一仕事するとするか…。」

武器屋の店主の言葉の後、鍛冶の道具を整理していたルドルフはオルトリンデのもとへと歩いていく。

 「そなたが刀鍛冶の者か。この剣と盾を鍛えなおしてくれないか?

オルトリンデが剣と盾をルドルフに見せた瞬間、ルドルフは驚きのあまり目が点になる。

「こ…こいつはかつて伝説の勇者が装備していたと言われている『天帝の剣』と『アストライアの盾』ではないかっ!!しかし悲しいことに錆びてしまって元の輝きを失ってしまっておる。ところでそこの娘さんよ、そいつをどこで手に入れたんだ!?

「あまり大きな声では言えんが、ヘルヘイム大監獄の最下層の地下道の奥にある祠で手に入れた。ルドルフ殿、早速こいつを鍛えて直してくれぬか…。」

オルトリンデが剣と盾をルドルフに託した後、武器屋の奥へと向かい鍛冶を始める。

「よかろう…今からその伝説の武具とやらを鍛えなおす。鍛冶が完了するまで少しここで休んでいかれるがいい。」

伝説の武具の鍛冶が完了するまで、オルトリンデは武器屋の中で休息を取ることにした。錆ついて輝きを失った伝説の武具は、鍛冶職人の手によって元の輝きを取り戻すことができるのか……。

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