蘇生の章2nd第六十一話 魔竜の咆哮
ヘルヘイム大監獄の最下層にある閉ざされた部屋から続いている地下道を進む戦乙女と戦士たちは、地下道の調査を進めていた。一行が地下道の奥へと進んでいると、巨大な岩が彼らの行く手を阻んでいた。戦乙女たちが力を合わせて巨大な岩を破壊したその先には、誰が建てたのか分からない祠のような建物が建てられていた。彼らが祠の中に足を踏み入れた瞬間、左側には剣が、右側には盾が祀られているが、強力なヘルヘイムの魔物が宝を守っていた……。
戦乙女と戦士たちは剣と盾を手に入れるべく、剣側・盾側に分かれて魔物を迎え撃つ。第二種接触禁忌魔物と特A級接触禁忌魔物が守っている盾側にはジーグルーネ、ヘルムヴィーゲ、そして新入りの戦乙女であるグリムゲルデと戦士7名を、特A級・特S級の接触禁忌魔物が宝を守っている盾側にはオルトリンデとシュヴェルトライテと戦士8名を配置し、剣と盾を手に入れるべく戦いを始める。両サイドで熾烈な戦いを繰り広げる中、剣を守る相手と戦う戦乙女と戦士たちは第二種接触禁忌魔物であるプリズンガーダーを打ち倒すことに成功したが、特A級接触禁忌魔物のスプラッターの鎌の一撃を受け、戦士5名が凶刃の犠牲となってしまった。戦士5名を失い窮地に陥る中、新入りの戦乙女であるグリムゲルデがパルチザンを手に、スプラッターを迎え撃つのであった。
戦士たちを殺され、怒りに震えるグリムゲルデはパルチザンを手にスプラッターに突進する。他の者たちは武器を構え、グリムゲルデの後に続く。
「貴様だけは許さん…倒れていった戦士たちの無念、倍にして返すだけだっ!!」
突進のスピードが加わった槍の一突きが、スプラッターの体を貫く。
「ぐっ…貴様っ!!その華奢な体にどれほどの力があるというのだぁっ!!」
「教えてやろう…私はオーディンのもとで厳しい鍛錬を積んできたからだ。聖なる清き心を持ち、なおかつ武器を用いての戦術に長ける女こそ戦乙女…まぁ私は新入りだからあまり力は出せないが、武器の扱いだけは上手だっ!!」
グリムゲルデのパルチザンの一突きを受けたスプラッターは、体を貫かれた痛みによりその場に蹲る。スプラッターが態勢を崩している隙に、戦乙女と戦士たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
「グリムゲルデ様のおかげで奴が態勢を崩した!!奴が再び態勢を立て直す前に集中攻撃をかけ、一気にたたみかけるぞ!!」
態勢を崩している間に集中攻撃を仕掛けろという戦士の掛け声の後、戦乙女と戦士たちはスプラッターに集中攻撃を仕掛け、ついにスプラッターを打ち倒すことに成功する。
「戦士が五名ほど犠牲になったが、なんとか宝を守る番人を打ち破ることに成功した。私たちはオルトリンデたちの応援に入るので、ヘルムヴィーゲは剣の回収を終えてから応援に入ってく術れ。」
ヘルムヴィーゲに剣の回収を任せた後、グリムゲルデ達は盾を守る番人と戦っているオルトリンデたちの応援に入る。彼女は剣が祀られている牢の扉を開け、早速剣の回収に入る。
「この先に番人が守っていた剣が…しかしヘルヘイムの瘴気の結界が張られていて進めば一気に体力と魔力を奪われるわ。ここは持てるだけの聖なる術をぶつけ、結界を破壊するしかなさそうね。」
ヘルヘイムの瘴気の結界の中をこのまま進むのは危険だと判断したヘルムヴィーゲは、聖なる魔力で結界を破壊する作戦にでる。
「聖なる魔力よ…全てを奪う瘴気を打ち払う光とならんっ!!シャイニング・ブレイク!!」
ヘルムヴィーゲは持てる限りの魔力を込め、聖なる閃光を結界の方へと放つ。放たれた聖なる閃光は瘴気の結界を破壊し、剣の回収が可能となる。
「ふぅ…なんとか結界を破壊することに成功したわ。さて、その先にある剣を回収しましょう。しかし柄と刃の一部分が所々錆ついているわ。そうだ…ここは砥石を使えばすこしばかり使えるようになるかもしれないわ…。」
手に入れた剣はこの祠に祀られてからかなりの年月が経過していたのか、柄や刃の部分が錆ついてボロボロであった。なんとか錆を落として使えるようにできないかと思ったヘルムヴィーゲは砥石を使い刃の部分を研いだ瞬間、刃に着いた錆が取れ白銀の刀身が徐々に姿を現す。
「これで何とか使えそうになったわ。さて、そろそろオルトリンデ様たちの応援に向かわないとね…。」
ヘルムヴィーゲは祀られてた剣を回収した後、盾を守る魔物たちと戦っているオルトリンデたちの応援に入るべく、急いで戦闘態勢を取り戦いの場へと向かうのであった……。
ヘルムヴィーゲが剣の回収を任せた後、剣を守る魔物を倒した戦乙女と戦士たちは盾を守る魔物と戦っているオルトリンデたちの応援へと向かう。彼らが駆け付けた時には、オルトリンデたちとともに戦っていた戦士たちはすでに倒され、息を引き取っていた。
「戦士たちが五名あまり犠牲になったが、剣を守る魔物は片づけた。オルトリンデ様、私たちも応援に入ります!!」
「こちらは戦士たちが魔物たちによって全て倒されてしまった。我々の戦力だけでは特A級クラスの接触禁忌魔物には勝てん…是非ともそなたたちの力を貸してくれっ!!」
力を貸してくれというオルトリンデの言葉の後、グリムゲルデが戦いの構えを取りオルトリンデたちの応援に入る。他の戦乙女たちは武器を構え、グリムゲルデの後に続く。
「皆の者、オルトリンデたちの応援に入るぞっ!!」
グリムゲルデの言葉の後、戦乙女と戦士たちは苦戦するオルトリンデたちの応援に入る。シュヴェルトライテは魔竜ベルグの攻撃をかわしながら、応援に来た者たちに指示を与える。
「ブラックギアは戦士たちの攻撃でだいぶ弱っている。私とオルトリンデで魔竜ベルグと戦うので、残りの者たちは弱っているブラックギアを倒してくれ!!」
シュヴェルトライテの言葉の後、応援に来たグリムゲルデたちは戦士たちの攻撃で大きなダメージを受けたブラックギアに集中攻撃を仕掛ける。戦乙女と戦士たちの連携攻撃により、ブラックギアは力尽き動かなくなる。
「よし…ブラックギアは片づけた。後はあの黒き竜だけだ!!みんな、私に続けっ!!」
ブラックギアを打ち倒した戦乙女と戦士たちは、残り一体の魔物である魔竜ベルグに立ち向かっていく。応援に来た者たちが魔竜ベルグと戦う中、剣の回収を終えたヘルムヴィーゲが遅れて戦いの場へと戻ってくる。
「剣の回収終わりました…。今から応援に入りますっ!!」
ヘルムヴィーゲは叩き斬ることに特化した槍であるコルセスカを構え、魔竜ベルグに立ち向かっていく。魔竜ベルグの口から吐き出されるブレスに苦戦を強いられる中、オルトリンデはジーグルーネに戦う者たちのアシストを行うようにと指示を出す。
「これで戦乙女は全員集合だな。ジーグルーネ、奴の口から吐かれる瘴気のブレスで我々は大きなダメージを受けているので、我々が力尽きないように回復・身体強化といったアシストをお願いする!!」
「分かったわ!!私、傷の回復と身体強化・敵の能力弱体の術に自信があるから、みんなの役に立てるように頑張りますっ!!」
オルトリンデからアシストを行えとの指示を受け、ジーグルーネは魔力を込めて術の詠唱を始める。ジーグルーネが術の詠唱に入る中、戦乙女と戦士たちは魔竜ベルグの攻撃に苦戦を強いられていた。
「ぐっ…あれだけ攻撃を加えたというのにまだ倒れる気配すら見せない。やはり特S級接触禁忌魔物の実力は我々より上手のようだ。皆の者、ここは体を攻撃するよりも比較的肉質の柔らかい尻尾を狙え!!奴の邪魔な尻尾さえ斬り落とせば、少しの間だけだが態勢を崩せそうだ!!」
肉質の柔らかい尻尾を狙えというオルトリンデの言葉の後、戦乙女と戦士たちは魔竜ベルグの尻尾に集中攻撃を仕掛け、尻尾を切断することに成功する。
「奴が態勢を崩した…ヘルムヴィーゲよ、ここはそなたの溜め斬りで奴の頭部を真っ二つにしてやれっ!!」
尻尾を切断されたことにより、魔竜ベルグは痛みのあまり大きく態勢を崩す。魔竜ベルグが痛みのあまりもがき苦しむ中、ヘルムヴィーゲはコルセスカを振り上げ、溜め斬りの態勢に入る。
「これでも…喰らいなさいっ!!」
ヘルムヴィーゲは両腕に力を込めた後、振り上げたコルセスカを魔竜ベルグの頭部めがけて振り下ろす。コルセスカの刃が頭部に突き刺さった瞬間、魔竜ベルグは頭部から血しぶきを上げながらうめき声を上げる。
「グルオオォォッ!!!グルオオォォッ!!」
ヘルムヴィーゲの溜め斬りの一撃を受けた魔竜ベルグは、頭部から血を噴き出しながら怒り狂う。
「奴が怒り状態になった…竜の怒りは恐ろしいものだが、接触禁忌魔物となればなおさらだ。ここは私が奴をひきつけるので、その間に各自回復しろっ!!」
その言葉の後、オルトリンデはレイピアを構えて魔竜ベルグに立ち向かっていく。オルトリンデが魔竜 ベルグをひきつけている間、戦乙女と戦士たちは鞄の中から回復薬を取り出し、応急処置に入る。
「皆の者、回復は済ませたか…今度は私が奴をひきつけるので、オルトリンデを回復させてやってくれ。」
傷の回復を終えたシュヴェルトライテは、魔竜ベルグと戦うオルトリンデのもとへと駆け付け、交代するように伝える。
「オルトリンデ…そろそろ交代だ。今度は私が奴をひきつけるから、傷の回復へと向かうのだ!!」
「ありがとう…では私は回復に向かう。傷の回復が終わったら仲間たちとともに応援に入るっ!!」
オルトリンデが回復へと向かった後、シュヴェルトライテは黒刀を構えて魔竜ベルグを迎え撃つ。一方そのころジーグルーネは詠唱を終え、術を放つ態勢に入っていた。
「聖なる光よ…悪しき者の動きを封じよっ!!セイント・フィクサーっ!!」
ジーグルーネが術を唱えた瞬間、聖なる光の輪が魔竜ベルグの体を締め付ける。ジーグルーネは束縛の術を唱えた後、再び魔力を込めて回復の術を唱え始める。
「癒しの魔力よ…傷つきし者に再び戦う力をあたえよっ!!ヒール・ウインド!!」
ジーグルーネが癒しの術を唱えた瞬間癒しの魔力を含んだ風が吹き荒れ、傷ついた戦乙女と戦士たちの傷が回復する。立て続けに術を放ったせいなのか、ジーグルーネは魔力を大幅に消費し地面に座り込む。
「はぁはぁ…強力な術を二回も唱えたせいで魔力を大幅に消費してしまったわ。もしもの時に備えて、マジックポーションで魔力を回復させなきゃね。」
ジーグルーネは術の詠唱で失った魔力を回復するべく、鞄の中からマジックポーションを取り出し魔力の回復を行う。ジーグルーネの治癒術によって体力が完全回復した戦乙女と戦士たちは、再び武器を構えて魔竜ベルグと戦うシュヴェルトライテの応援に入る。
「ジーグルーネの術のおかげで、体力が完全に回復したぞ。シュヴェルトライテの応援にはい……!?」
オルトリンデたちが駆け付けた時には、魔竜ベルグはシュヴェルトライテによって仕留められ、すでに息絶えていた。
「悪いなオルトリンデよ…応援に駆け付ける前に倒してしまった。そうだ、奴の体を少しばかりはぎ取った結果、黒光りする鱗数枚ときれいな赤い結晶のような物を手に入れたぞっ!!」
魔竜ベルグを仕留めたシュヴェルトライテは、魔竜の体から剥ぎ取った血の結晶のようなものをオルトリンデに見せる。
「おお…これは魔物の体内からごく僅かしか取れない血石よりもさらに希少価値の高い血晶だな。血晶とは魔物の血や不純物が濃縮結晶化した物だ。シュヴェルトライテよ、レア物の自慢よりも盾の回収をしたまえ。」
オルトリンデに諭されたシュヴェルトライテは、いそいそと盾の回収にとりかかるのであった。はたして魔物たちが守っていた剣と盾は、伝説の武具である天帝の剣とアストライアの盾なのか……!?