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蘇生の章2nd第五十八話 ヴァルハラ襲撃部隊来る!!

 ブリスベン要塞の中心部を破壊し、クリスたちはヴァルハラに帰還するために要塞の入口へと戻ろうとしたその時、気を失っていたイングリッドがクリスたちの前に立ちふさがった。要塞の中心部を破壊され怒り心頭のイングリッドはジャンドラから授かった死霊の力で禍々しい姿に変身しクリスたちに襲いかかってきた。熾烈な戦いの末、クリスたちはイングリッドに勝利したが、イングリッドは膨大な魔力を集め、クリスたちを道連れにするべく自爆の態勢に入る。ジャンドラの魔力の6倍以上の威力を持つ大爆発から身を守るため、ゲルヒルデは結界を張り仲間たちを守るが、爆発の威力は凄まじく結界にひびが入り、今にも破壊されそうな状態であった。その窮地を救うべく、リリシアは鉄扇を羽のバリアに変えてゲルヒルデの張った聖なる魔力の結界に上乗せする。全員の魔力を込められた二重の結界により消滅は免れたが、クリスたちは爆心地であるブリスベン要塞から大きく飛ばされ、一面銀世界の未知なる土地へと飛ばされてしまったのであった……。

 

 一方地下牢獄を進むシュヴェルトライテ率いる地下牢獄攻略隊は、看守たちや武器を持った脱獄囚を退けながら、地下牢獄の最下層へと来ていた。一行は閉ざされた部屋へと続く扉の先へと向かうべく、オルトリンデから教えてもらった解除コードを入力する。

「6…23…50…65…99。よし、これで入力完了だ。皆の者よ、この先に何があるかはわからぬ。心して突入するようにな。」

シュヴェルトライテが解除コードを入力したその時、閉ざされた部屋の扉の鍵が解除される。解除された瞬間、一行は最下層の閉ざされた部屋の中へと突入する。

「な…なんだこの部屋は!?

シュヴェルトライテが閉ざされた部屋の中へと入った瞬間、彼女の目の前には起動していない転送陣と、どこに続くかわからない地下道が広がっていた。

「見るかぎり、起動していない転送陣と地下道が広がっているな。この地下道は一体どこに続いているのか…私にもわから…!?

シュヴェルトライテが呟いた瞬間、起動していないはずの転送陣の一つが光り輝く。

 「シュヴェルトライテ様っ!!転送陣の一つが突然光り出しましたっ!!転送陣の近くに立てられた看板には、『デッドスノー雪原・臨時転送陣_管理者:イングリッド』と書かれていました。」

イングリッドの生命反応が消えたことにより、転送陣のひとつが起動し始めた。

「うむ…看板のとおりの場所に移動するというわけだな。だが一度乗るとどこに飛ばされるかはわからぬ。とりあえず全ての転送陣の看板を見てみよう。ヘルヘイム王宮へと続く転送陣が見つかるかもしれないからな…。」

シュヴェルトライテが戦乙女と戦士たちにそう告げた後、転送陣の前に立てられている看板を調べ始める。しかし王宮へと続く転送陣が一つもなかったため、その近辺に続いている転送陣を調べた結果、三か所の転送陣が見つかった。

『ヘルヘイム法王庁直通転送陣_管理者:大司教ハバネロ』

『ヴォルケーン城直通転送陣_管理者:灼熱王マグマ・レンソン』

『レオニダス大聖堂直通転送陣_管理者:邪聖大后パプリカ』

 「この三つが王宮に近い場所に位置しているが、どの転送陣も機能していない。転送陣を起動させるには看板に書かれている管理者を倒さなければならない。なので我々はどの道ヘルヘイムへと向かわねばならない…ということだな。よし、そろそろ引き上げ…の前にそのことをオルトリンデに報告しよう。」

シュヴェルトライテは鞄の中からテレパシーストーンを取り出し、オルトリンデと連絡を取りはじめる。

「こちらシュヴェルトライテ…応答をお願いします。」

「その声は…シュヴェルトライテだな。閉ざされた部屋の扉の鍵の解除に成功したか!!閉ざされた部屋の中には何があったのだ。今からこちらに向かうので詳しく教えてくれぬか…。」

閉ざされた部屋の内部の情報を教えてくれとのオルトリンデの言葉に、シュヴェルトライテは最下層の閉ざされた部屋の内部には何があるかを話し始める。

「その内部というのは…機能していない転送陣が数か所と、どこに続いているか分からない地下道が続いていた。今こちらに向かうと言ったな。ならオーディン様に一声かけた後で私のもとに来てくれ…。」

オーディンに事情を話した後でこちらに向かうようにとオルトリンデに伝えた後、オルトリンデはシュヴェルトライテにそう告げた後、テレパシーストーンの通信を切断する。

「わかった。ではオーディン様に事情を話した後でこちらに向かうので、ここを離れぬようにな。」

シュヴェルトライテとの会話を終えた後、ヘルヘイム大監獄の門前にいるオルトリンデはテレパシーストーンに再び魔力を込め、オーディンに連絡を取る。

 「オーディン様、これよりシュヴェルトライテ率いる地下牢獄攻略隊と合流し、地下牢獄の最下層にある閉ざされた部屋の調査へと向かいます。なにかあれば折り返しこちら側に連絡します。」

オルトリンデの言葉の後、オーディンは心配そうな表情を浮かべながらその要求を了承する。

「わかった…オルトリンデよ、決して無茶をしてはいかんぞ。シュヴェルトライテ達にもよろしくと伝えておいてくれ…。」

「分かりました。ではそのことをシュヴェルトライテたちにも伝えておきます。オーディン様、心配はいりません。必ずや調査を終えて無事にヴァルハラへと戻ってきます。」

オーディンに無事にヴァルハラに戻ってくると伝えた後、オルトリンデはオーディンとの会話を終える。

「これでよし…と。皆の者、地下牢獄の最下層にある謎の地下道の調査へと向かうぞっ!!

オルトリンデが戦乙女と戦士たちに地下道の調査へと向かうようにと伝えた後、一行は地下牢獄の最下層にいるシュヴェルトライテ達と合流するべく、転送陣のある一階の看守詰所へと向かうのであった……。

 

 一方イングリッドの自爆の爆風によってデッドスノー雪原に飛ばされたクリスたちは、この雪原から東の方角にあるエスカデの村を目指していた。

「さぁて、村に着いたらまずは宿の確保よ。奴との戦いで私たちは大幅に魔力を消耗しているから、次の戦いに備えて一休みしなきゃね。」

「そうね…奴の最後の自爆から身を守るため、全員が大幅に魔力を消費したからね。この状況では強力な上級術は使えないから、敵に出会ったら武器で戦うしかないわね。」

イングリッドとの戦いで魔力を大幅に消耗したクリスたちは、極力敵に見つからないように雪原の中を進んでいく。しばらく進んでいると、クリスたちの目の前に大きな獣の魔物の姿が目に映る。その危険をいち早く察知したリリシアはクリスたちを物陰に集め、魔物が通り過ぎるまでやり過ごす。

 「目の前に魔物がいるわ。みんな、魔物が通り過ぎるのを待ちましょう。武器で戦えばあの魔物を倒せる展望はあるが、今は魔力と体力的にもやばい状況なので、ここでやり過ごすしか方法はないわ。」

クリスたちが物陰に隠れてから数分後、魔物はゆっくりとその場を去っていく。魔物の姿がいなくなったことを確認すると、クリスたちは急いでエスカデの村のある方角へと走り出す。

「あの魔物は去ったけど、まだ過信は許されない状況よ。この雪原に生息している他の魔物が襲ってくる可能性があるから、できるだけ急いだ方がいいわ。」

魔物との遭遇を避けるため、クリスたちは走ってエスカデの村へと向かう。急ぎ足で進むこと数分後、クリスたちは一匹も魔物と遭遇することなくエスカデの村へと到着する。

 「ここがエスカデの村ね…どことなく静かな雰囲気だけど、人がいる気配はありそうね。とりあえず宿屋を見つけて休みましょう。」

エスカデの村に到着したクリスたちはイングリッド戦で消耗した体力と魔力を回復するべく、早速宿屋の中へと入り、交渉を開始する。

「すみません…今日はここに泊まりたいのですが、部屋は空いていませんか?

「君たち、見かけない顔だな。まぁ私は宿を経営している身なので、どなたでも宿代さえ払えば宿を提供してあげるよ。泊まる部屋ならいくらでも空いているよ。まぁ泊まる人なんて今はいませんけどね…あはは。」

宿屋の店主がそう言った後、クリスは全員分の宿代を宿屋の店主に手渡す。

「五人分の宿代、確かに受け取ったよ。では私が部屋に案内しますので、ついてきてください。」

宿屋の店主が代金を確認した後、宿屋の店主はクリスたちを部屋へと案内する。店主に案内された部屋は部屋全体を暖める暖炉と5つのベッドが並べられた簡素なつくりだが、クリスたちは満足げな表情であった。

「ここはいい部屋ね…ベッドも暖炉も付いているわ。この部屋で一晩眠れば体力と魔力を回復できそうね。とりあえずオーディン様に一晩休息を取るとの旨を伝えてから、休息と行こうかしら…。」

リリシアはクリスたちにそう告げた後、鞄の中からテレパシーストーンを取り出し、オーディンと連絡を取る。

「こちらリリシア…オーディン様、今エスカデの村に到着しましたが、イングリッドとの戦いで私たちは体力と魔力を大きく消費してしまったので、ここで一晩休息をとってもよろしいでしょうか?

「うむ…そなたの要求、しかと心得た。君たちはイングリッドとの戦いでかなり疲れきっているようだからな。ならば村の宿で一晩休息を取り、明日この村で情報収集に励むようにな…。」

オーディンが宿で一晩休息を取ってもよいとの言葉のあと、リリシアは感謝の言葉をオーディンに告げた後、オーディンとの会話を終える。

 「オーディン様、ありがとうございます。じゃあそろそろ通信を切断するわ。」

リリシアがオーディンとの会話を終えた後、クリスたちは戦いの疲れを癒すべく眠りに着くのであった……。

 

 一方そのころ、ヴァルハラの北側にある見張りの塔では、兵士たちが双眼鏡を片手にヘルヘイムの見回りをしていた。兵士の一人が双眼鏡でヘルヘイムの方を眺めていると、上空から何かの影が兵士の目に映る。

「ヘルヘイム上空にて謎の飛行生物を確認。これより倍率を上げて正体を調べます。」

他の兵士たちにそう告げた後、双眼鏡の倍率を上げて飛行生物の正体を確認する。謎の飛行生物の正体は、巨大な黒き怪鳥がヴァルハラへと向けて移動していた。しかも、その怪鳥の背中には大勢の武器を構えたヘルヘイム王宮兵士たちがおり、ヴァルハラを襲撃する姿勢を見せていた。

「俺も双眼鏡の倍率を上げてあの飛行生物のほうを見たけど、こいつはやばいぜ!!あれだけの兵士の量がヴァルハラに攻めてきたら、この宮殿は間違いなく陥落してしまうっ!!しかも戦力となる戦乙女たちは全員ヘルヘイム大監獄の調査の任務で出払っている状態だ。俺はオーディン様にそのことを報告してくるから、お前たちは見張りを続けるようにっ!!

他の兵士たちに見張りを続けるようにと告げた後、兵士の一人は急いで見張りの塔を後にしオーディンのいる宮殿のほうへと駆けていく。

 「はぁはぁ…オ、オーディン様っ!!大変です…ヘルヘイム上空に大勢の兵士を乗せた黒い鳥がヴァルハラへと向かっている模様です。戦乙女たちは任務で出払っているので、至急迎撃の準備をお願いしますっ!!

見張りの兵士からヘルヘイムからの襲撃部隊が接近しているとの知らせを受け、オーディンは深刻な表情で見張りの兵士にこう答える。

「見張りの者よ、報告ありがとう。うむ…戦乙女もブリスベン要塞を破壊してくれたあの娘たちがいない中での襲撃…か。ヘルヘイムの奴らめ、ついにフェアルヘイム陥落に本腰になってきたようだな。しかし私はこのような事態が起こることも備え、我が精鋭の部下と数十名の重装王宮兵が待機している。今からここに呼ぶよう伝えておくので、しばらくそこで待機していてくれぬか。」

その言葉の後、オーディンはテレパシーストーンを使い控えの者たちに王座の間に来るようにと連絡を取り始める。唯一の戦力である戦乙女と戦士たちがヘルヘイム大監獄の調査で出払っている中、オーディンが招集した精鋭の部下たちはジャンドラを救う希望となるのか……!?

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