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蘇生の章2nd第五十五話 ブリスベン要塞の女帝

 オーディンからブリスベン大要塞の破壊の命を受けたクリスたちは、迫りくる魔物たちを蹴散らしながらブリスベン要塞を目指すべく死の山の中を進んでいた。一方そのころ、クリスたちと同時期にヴァルハラを出発した戦乙女と戦士たちは、ヘルヘイム大監獄へと向けて足取りを進めていた。

 

 ヴァルハラを出発した戦乙女と戦士たちは、急ぎ足でヘルヘイム大監獄へと向かっていく。彼らが急ぐ理由は、死の山から吹きつける瘴気によって体力を消耗してしまうからだ。

「急ぐぞ皆の者…できるだけ早くヘルヘイム大監獄に到着しなければ、到着する前に倒れてしまうぞっ!!

オルトリンデが全員に急ぐようにとそう告げると、全員の足取りが徐々に早足になっていく。急ぎ足で走ること数分後、彼らの前に大監獄の門が見えてくる。

「見えた…あれがヘルヘイム大監獄だ!だが看守が見張りをしています!!

「ここは私が看守たちを相手にする!!他の者たちは門を開けて大監獄の中へっ!!

見張りの看守を退けるべく、シュヴェルトライテが刀を構えて看守たちの前に立つ。

「そ…そなたは黒き戦乙女の一人のシュヴェルトライテ様ではっ!!

「悪いが私は黒き戦乙女ではない…今は戦乙女だっ!!黒死邪刀術…縛鎖壱ノ型、影斬り!!

シュヴェルトライテが鞘を抜いた瞬間、看守たちの影が真っ二つに切り裂かれる。影を切り裂かれた看守たちは、動くことができなくなる。

 「う、動けん…だが生きている!!貴様、この刀で何を斬ったのだっ!!

看守の言葉の後、シュヴェルトライテは刀を鞘に収めながら看守たちにそう告げる。

「何を斬ったと…私は貴様らの影を斬ったのだ。影を斬られた者はしばらく動けなるが、しばらくすれば斬られた影は元に戻る…悪いが貴様たちにはしばらくそこでじっとしてもらおう。」

看守たちを退けたシュヴェルトライテは、先に向かった仲間たちと合流するべく大監獄の門の方へと走っていく。シュヴェルトライテが大監獄の門へとたどり着いた瞬間、オルトリンデが急いで門を閉めるようにと仲間たちにそう告げる。

「シュヴェルトライテ、そなたのおかげで助かったぞ。さぁ門を閉じるぞ…と言いたいところだがこの門は大人一人で動かせるものではない…私たち全員が協力する必要があるぞ。」

「困った時こそ協力するのが仲間だ!!皆の者、戦乙女たちに続けいっ!!

戦士たちの言葉の後、戦乙女と共に大監獄の扉を前へと押していく。戦士たちと戦乙女の力が加わり、大監獄の門は徐々に前へと動き、大きな音とともに閉ざされる。

 「やったぞっ!!これで外にいる看守たちは中に入ることはできん…さて、俺たちは地下の探索に向かうので、戦乙女たちは上層部の探索をお願いする…それでいいかな。」

戦乙女が上層部を、地下の探索は戦士たちが行いたいとの要求に、オルトリンデが待ったをかける。

「ちょっと待て。お前たちの判断で決めることはできん。ここはオーディン様に連絡を取り、どれだけの人数でいけばいいのかを決める必要がある…。皆の者、ヘルヘイムの奴らに見つからぬところへと向かうぞ。」

オルトリンデが全員を人目につかないところへと向かわせた後、彼女は鞄の中からテレパシーストーンを取り出し、ヴァルハラにいるオーディンに連絡を取る。

「こちらオルトリンデ…今ヘルヘイム大監獄に到着しました。今から探索に向かうのですが、上層・地下の探索する人数を決めたいのだが…。」

「おお…無事に目的地に到着できて何よりだ。オルトリンデよ、大監獄の探索に必要な人数の目安を教える。上層部は戦乙女2人・戦士5人、地下牢獄は戦乙女3人・戦士10人で行けば心強いだろう。」

オーディンが探索人数の割り当ての目安を告げた後、オルトリンデはオーディンに感謝の言葉を述べる。

 「ありがとうございます…オーディン様。では私たちはこれからチーム編成に取り掛かります。」

オルトリンデの言葉の後、テレパシーストーンの通信を切断する。オーディンとの会話の後、戦乙女と戦士たちはどこを探索するのかを話し合うのであった……。

 

 一方死の山の中を進むクリスたちは、ブリスベン要塞の扉の前へと来ていた。しかし巨大な鉄の扉が邪魔をし、中へと入れない状態であった……。

「ここがブリスベン要塞か…しかし扉が閉ざされていて入れそうにないな。よし、ここは俺がこの扉を吹っ飛ばしてやるっ!!

鉄の扉を破壊するべく、ディンゴはボウガンに鉛弾を数発装填し扉へと向けて放つ。しかし、鉄の扉は鉛弾の直撃を受けてもなお無傷であった。

「あんたのボウガンじゃこの扉は破壊できないわ…ここは私が一発食らわせてやるわ。」

リリシアは扉に手をかけ、自らの魔力を手のひらに集め始める。

 「闇の魔力よ…全てを排除する一撃とならんっ!!ダーク・リジェクト!!

詠唱を終えた瞬間、リリシアの手のひらから高出力の闇の魔力の衝撃が放たれる。放たれた闇の衝撃は鉄の扉に大きな穴を開け、ブリスベン要塞へと続く道が開かれる。

「やった…これでブリスベン要塞に突入できるぜっ!!

「いよいよ敵の本拠地に突入ね…この基地を破壊してヴァルハラに戻ることが私たちの任務よ。みんな、準備はいいっ!!

リリシアの言葉の後、一行は扉に空いた穴からブリスベン要塞に突入する。クリスたちが内部へと突入した瞬間、入口に仕掛けられている警報装置が作動する。

「侵入者発見…侵入者発見っ!!

要塞中に鳴り響くサイレンに反応するかのように、イングリッドの部下たちが武器を構えてクリスたちの前へと現れる。

 「貴様ら…鉄壁を誇るブリスベン要塞の扉をどうやって破壊したかは知らんが、ここに入り込んだ鼠は行かしてはおけん、死ね!!

武器を構えた部下たちに包囲されたクリスたちは、急いで戦いの構えをとり部下たちを迎えうつ。

「悪いけど、私たちはこの要塞を破壊するために来たのよ…あなたたちなんかに邪魔はさせないっ!!

クリスの言葉の後、武器を構えたクリスたちは一斉に部下たちの包囲網の中へと飛び込んでいく。クリスたちは部下たちの攻撃をかわし、次々と連続攻撃を部下たちに浴びせていく。

「一人ひとりを相手にしていてはきりがないわ。ここは私が術で奴らを一掃するわ!!

次々と現れる部下たちを一掃するべく、カレニアは炎の魔力を集め術の詠唱に入る。カレニアが詠唱に入った瞬間、炎のオーラが彼女の周りを覆う。

「炎よ…荒れ狂う熱風となって周囲を薙ぎ払わんっ!!パイロ・サイクロンっ!!

カレニアが詠唱を終えた瞬間、荒れ狂う炎の竜巻が次々と部下たちを吹き飛ばしていく。竜巻に巻き込まれた部下たちは大きく地面にたたきつけられ、その場に倒れる。

「よしっ!!これで部下たちを一掃できたわ。みんな、先を進むわよっ!!

クリスたちを出迎えた部下たちを一掃した後、一行はブリスベン要塞の中心部を目指すべく先を急ぐ。っしばらく進んでいると、目の前に紅い髪の女がクリスたちの前に現れる。

 「私の部下たちをずいぶんとかわいがってくれたようね…。私はこの要塞を統べる者、イングリッドだ。この鉄壁を誇るブリスベン要塞に侵入したのはオーディンに仕える戦乙女と思っていたが、ただのふつうの人間だったとはな…人間の割にはこの要塞に侵入できるだけの力はあるようだな…。」

目の前に現れたイングリッドの言葉に、クリスは剣を構えてイングリッドにそう言い放つ。

「私たちは…この要塞を破壊するためにここに来たっ!!だからあなたを倒しますっ!!

「クックック…威勢のいい小娘だな。私は死霊王ジャンドラ様に仕える者だ…それなりの戦闘力は持ち合わせておる。私がその気になれば貴様らなどその日のうちに肉の塊…しかし…私は淑女だから無論そんなことはしないが、ジャンドラ様の理想郷実現の邪魔をするのなら、容赦はせんっ!!

その言葉の後、イングリッドは懐からリモコンのようなものを取り出し、スイッチに手をかける。

「出でよ我が対侵入者用兵器…アラゴンギガントよっ!!

スイッチが押された瞬間、イングリッドのもとに巨大な機械の巨人が目の前に現れる。イングリッドは巨大なメカの中の操縦席に入り、クリスたちを迎え撃つ。

「あいつ…巨大な機械の中に入りやがった!!ありゃ俺たちの十倍以上あるぜ。」

「フハハハハハッ!!このアラゴンギガントはヘルヘイムの希少金属であるアラゴナイトを用いられて作られた機械巨兵だ。アラゴナイトはこの世の全ての属性を内に秘める鉱石だ…この鉱石を用いれば全ての属性攻撃を大幅に軽減することが可能だ。さぁ、かかってくるがよい!!

アラゴンギガントに乗り込んだイングリッドがクリスたちにそう言い放った後、巨大な腕を振り回してクリスたちに襲いかかる。しかしクリスは素早い動きでアラゴンギガントの腕の一撃をかわし、イングリッドを倒すための策を練り始める。

 「あの巨体じゃ近接攻撃はほぼ無力…そして全ての属性攻撃も効かない。かくなる上は操縦席を覆うカバーを壊して一気にたたみかけるしかない…!!だがあいつは巨体ゆえ攻撃範囲も広い…無駄に動けば巨大な腕で叩きつけられて大ダメージを受けてしまうわ。一体どうすれば奴を倒せるのかしら……。」

クリスが困り果てた表情を浮かべる中、リリシアがクリスに耳打ちする。

「ずいぶん困っているようね…クリス。ここは私にいい考えがあるわ。巨大な魔物は足を集中的に狙えば転倒を狙え戦況はこちら側に回る。だが相手は私たちの百倍以上はある重量を持つうえ、全ての属性を軽減する鉱石を用いられた作られた機械よ…。当然術を放っても属性による威力は大幅に軽減されるが、巨大な魔物をのけぞらせるほどの術を使えば奴を転ばせるまでとはいかないが、足止めすることが可能よ。その隙に操縦席を守るカバーを壊して中にいるイングリッドを外に放り出せば逆転の余地はありそうよ…。クリス、まずは全員を私のもとに集めてきてくれる?

リリシアから仲間たちを集めてくるようにと頼まれたクリスは、急いでイングリッドと戦っている仲間のもとへと向かっていく。イングリッドは仲間たちの方へと走るクリスに照準を合わせ、小型大砲の発射スイッチに手をかける。

「ふっ…ちょこまかとこざかしいアリだ。私が直々にあの世に送ってやろう…。」

イングリッドがスイッチを押した瞬間、アラゴンギガントの指先から小型の大砲の弾が仲間たちのもとへと走るクリスめがけて放たれる。しかしクリスは素早い身のこなしで大砲の弾をかわすが、爆風によって大きく吹き飛ばされる。

 「くっ…直撃は免れたが爆風で大きく吹き飛ばされてしまったわ。だがここで立ち止まるわけにはいかないわ。早く仲間たちをリリシアのもとへと集めてこなくちゃっ!!

態勢を立て直したクリスは急いで仲間たちのもとへと向かい、リリシアのもとに集まってほしいとの旨を告げる。

「みんな、急いでリリシアのもとへと集まって。奴を倒せる方法がわかったの!

「分かったわ。みんな、奴の攻撃をかいくぐってリリシアのもとへと急ぐわよっ!!

カレニアが全員をクリスのもとへと呼び寄せた後、リリシアのもとへと向かっていく。イングリッドはアラゴンギガントの腕を振り上げ、リリシアの方へと向かうクリスたちを狙う。

「アリどもがあの紫の髪の女の方へと向かっている……!!まさか奴ら、私と戦うつもりだな。だがこのアラゴンギガントを屈することなど誰もできん…我が拳でひねりつぶしてくれるっ!!

イングリッドがそう言った後、アラゴンギガントの振り上げた拳を振りおろし、クリスたちを襲う。

「くっ…奴めあの巨大な拳で俺たちをたたきつぶすつもりだっ!!みんな、俺につかまれっ!!

拳の一撃をかわすべく、ディンゴはクリスたちを集め風の魔力を集め始める。

「ここは俺に任せろ…ここは風の魔力の逆噴射で一気にリリシアの方へと向かうっ!!ウインド・バースト!!

ディンゴが詠唱を終えた瞬間、手のひらに集めた風の魔力を解き放つ。風の魔力が解き放たれた瞬間、ディンゴにつかまっているクリスたちは大きく後ろへと後退し、リリシアのもとへと向けて飛んでいく。

「行ける…このままいけばリリシアのもとへとたどり着けるわっ!!

その言葉の後、全員はリリシアのもとへと到着する。クリスたちがリリシアの方へと集まった瞬間、アラゴンギガントの拳が振り下ろされ、要塞の床にひびが入る。

 「ありがとうクリス。おかげで仲間が全員集まったわ。みんなよく聞いて、見つけたわよ…奴の必勝法をっ!!

リリシアがクリスに感謝の言葉を告げた後、リリシアは仲間たちを集め話し合いを始める。はたしてリリシアの考えた必勝法は、イングリッドを倒す光となるのか……!!

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