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蘇生の章2nd第五十四話 ブリスベン要塞破壊指令!!

 オルトリンデとリリシアが練習試合を行っている最中、ヴァルハラがヘルヘイムから砲撃を受けた。鍛錬場にやってきた衛兵からヴァルハラが襲撃されたとの事実を聞き、練習試合を中断し一行は謁見の間に集まり、急遽対策会議が行われた。ヴァルハラを襲撃したのは死の山にあるブリスベン要塞であると判明し、オーディンはブリスベン要塞の破壊の任に行ってくれる勇気ある者を募る中、クリスは手を挙げてブリスベン要塞の破壊の任を受けると名乗り出た。ブリスベン要塞へと赴くクリスのために、オーディンは緊急時の通信手段として使えるテレパシーストーンを手渡し、明日の朝に謁見の間に集まるようにと告げた後、クリスたち明日の出撃に備えるべく、自室へと向かい休息を取るのであった……。

 

 クリスたちが寝静まった頃、ブリスベン要塞ではイングリッドが部下たちを集め、ヴァルハラに放つ大砲の弾を作るようにと命令する。

「さて…ヴァルハラに一発大砲をぶちかましてやったわ。部下どもよ、次の大砲の弾を作る準備に取り掛かるのだ!!部下たちよ、大砲の弾ひとつ生産するのに何分ぐらいかかる!!

「えーと、三人がかりで作業すれば早ければ30分…遅くて一時間ぐらいで生産可能です。」

部下たちの言葉に苛立ちを感じたイングリッドは、怒りの表情を浮かべながら部下たちを怒鳴りつける。

 「バカがっ…!!これだけ時間をかけていてはヴァルハラは陥落できんわっ!!いいか…人数を増やし大砲の弾の生産時間を少しでも早めろっ!!ジャンドラ様の理想郷実現のために……っ!!

イングリッドの逆鱗に触れてしまった部下たちは、大慌てで大砲の弾の生産に取り掛かる。

「わ…分かりました!!お前ら、急いで大砲の弾の生産だっ!!これ以上イングリッド様を怒らせれば我々は

制裁を受けてしまうから、急いで作らなければっ!!

これ以上イングリッドを怒らせてはいけないと肝に銘じた部下たちは、急いでヴァルハラ襲撃用の大砲の弾の生産に取り掛かるのであった……。

 

 ヴァルハラで一晩を過ごしたクリスたちは謁見の間へと集まり、ブリスベン要塞に出撃するべく準備を始めていた。

「回復道具の調合素材…よしっ!!弾丸の調合素材…よしっ!!五人分の一週間分の水と食料…よしっ!!これでブリスベン要塞に出撃するための準備は完了したぜ。」

ディンゴが持ち物のチェックを終えた後、オーディンが謁見の間にいる者たちに出撃開始の声を上げる。

 「これよりブリスベン要塞の破壊と、ヘルヘイム大監獄の探索を執り行う。まずは ブリスベン要塞破壊の任を命じられた者たちよ、前に出て皆の者に挨拶するのだ。」

オーディンの言葉を受け、クリスは謁見の間にいる者たちに一礼する。

「私たちはこれより、ブリスベン要塞の破壊へと向かいます。皆さまも、任務の方頑張ってください。」

クリスが出撃前の言葉を述べた瞬間、戦士たちが声をあげてブリスベン要塞へと向かうクリスたちを見送る。

「あなたたちこそヴァルハラを救う最後の希望だ…。絶対にブリスベン要塞を破壊して生きてここに戻ってくるんだぞっ!!

「ブリスベン要塞に赴く勇気ある者に…幸多からんことをっ!!

戦士たちに見送られ、クリスたちは謁見の間を去り、ヘルヘイムへと続くヴァルハラの西出口へと向かっていく。クリスたちが謁見の間を去った後、オーディンは西出口の扉を開放する。

「西出口の扉を開けておいた…地上界の者たちよ、無事で任務を遂行するのだぞ……。なおこの西出口の扉はそなたたちがヴァルハラを出た瞬間閉鎖する。瘴気にまみれたヘルヘイムの奴らがこの神聖なるヴァルハラに忍び込んでは一大事だからな…。」

クリスが鞄の中に入れておいたテレパシーストーンが光り輝き、西出口を開けておいたとのオーディンの言葉が再生される。

 「ここから先はフェアルヘイムの西側、死霊王ジャンドラが支配するヘルヘイムよ。みんな、ここから先は凶暴な魔物がいるかも知れないから、用心していかなくちゃね……。」

クリスたちは仲間たちに気をつけるようにと告げた後、ヴァルハラを後にしヘルヘイムの大地を踏みしめる。クリスたちがヴァルハラを出た瞬間、西出口の扉が大きな音を立てて閉ざされた……。

 

 クリスたちがヴァルハラを出た後、オーディンが謁見の間にいる戦乙女と戦士たちにヘルヘイム大監獄へと向かうようにと命じる。

「クリスたちがブリスベン要塞の破壊へと向かった。ヘルヘイム大監獄の探索の任務を命じられた者たちよ、速やかに西出口へと移動したまえ。オルトリンデよ、西出口に到着したら、テレパシーストーンで私に連絡したまえ。」

オーディンの言葉の後、戦乙女と戦士たちはヴァルハラの西出口へと向かっていく。一行が西出口に到着した後、オルトリンデは鞄の中からテレパシーストーンを取り出し、オーディンに西出口の扉を開けるように要求する。

「こちらオルトリンデ…オーディン様、西出口の開放をお願いします!!

「連絡御苦労…ではこれから西出口を開放する。オルトリンデ、全員がヴァルハラを離れた後、通信は切らずに再び私に連絡するように…。」

オーディンがオルトリンデにそう伝えた後、全員をヴァルハラの外へと案内する。戦乙女と戦士たちをヴァルハラから連れ出した後、オルトリンデは折り返しオーディンにその旨を伝える。

 「全員をヴァルハラの外に連れ出しました。オーディン様、西出口の閉鎖をお願いします。」

オルトリンデがテレパシーストーンを通じてオーディンに西出口を閉鎖するようにと伝えた後、西出口の扉が音を立てて閉ざされる。ヘルヘイムに降りたった戦乙女と戦士たちは、ヘルヘイム大監獄のあるほうへと歩き始める。

「うむ…ヘルヘイムの瘴気が私たちの体に突きささるようだ。死の山から吹く風が体を通り抜けるたび、体力が奪われるような感覚に襲われるようだ…。」

「フェアルヘイムの人間にとって瘴気は毒だ。早いとこヘルヘイム大監獄に到着しなければ我々は瘴気によって体力を奪われ、大監獄に到着する前に倒れてしまうっ!!

死の山から風と共に吹くヘルヘイムの瘴気が、徐々に戦乙女と戦士たちの体力を奪っていく。一行はヘルヘイムの瘴気から逃れるべく、戦乙女と戦士たちの足取りが徐々に急ぎ足になる。

「大監獄の中なら瘴気の影響は受けない…急ぐぞっ!!

オルトリンデの言葉の後、戦乙女と戦士たちは急いでヘルヘイム大監獄へと向かうのであった……。

 

 戦乙女と戦士たちがヘルヘイム大監獄へと向かう中、死の山へと続く道を歩き続けていた。

「目の前に山が見えてきたわ…見て、山の中腹あたりに大きな建物があるわ。あれがブリスベン要塞みたいね。砲台はヴァルハラの方角…つまりここから攻撃しているってことよ。」

この要塞からヴァルハラを攻撃していると察したリリシアが仲間たちにそう伝えた瞬間、ブリスベン要塞の砲台から大砲が放たれ、ヴァルハラのある方角へと向かっていく。

 「またヴァルハラを襲撃するつもりだわ…だがそうはさせないっ!!

要塞の砲台から放たれた砲弾を破壊すべく、リリシアは赤き炎の魔力を集め大砲の弾へと放つ。リリシアの手のひらから放たれた炎弾は大砲の弾に直撃し、空中で爆発する。

「ふぅ…危うくヴァルハラを攻撃されるところだったわ。私たちも急ぎましょう…早くブリスベン要塞に辿りつかなければヴァルハラが危ないからね。さて、ここからは死の山…ここから先に強大な力を持つ魔物の気配を感じるわ。みんな、ここから先は油断禁物よ。」

リリシアの言葉の後、クリスたちは目的地であるブリスベン要塞を目指すべく死の山へと向かう。クリスたちが死の山に足を踏み入れた瞬間、強烈な寒さがクリスたちを襲う。

「山に入った途端に寒くなったわ…このままでは凍え死んでしまいそうだわ。しかしここで負けるわけにはいかない…ここは寒さを我慢して進むしかないわね。」

身を切るほどの寒さをこらえつつ、クリスたちは死の山の中を進んでいく。そんなクリスたちを見かねたリリシアは少しでも寒さを和らげるべく、赤き炎の魔力を集め始める。

 「さすがにこれじゃあ寒くて一歩も動けなさそうね…なら私が寒さを少し和らげてあげるわ。」

リリシアがクリスたちにそう言うと、赤き炎の魔力をクリスたちに分け与える。赤き炎の魔力を分け与えられたクリスたちは、炎の加護を受け寒さを感じなくなる。

「あれ…寒気がしなくなったわ。ありがとうリリシア。」

「これで寒さは少し和らぐはずよ…では先に進みましょう。」

クリスたちが先に進もうとした瞬間、突如一行の目の前に死の山に住む氷でできた見事な角を持つ獣、スノーライノスが現れる。スノーライノスはクリスたちを見るなり、大きな唸り声をあげて威嚇を始める。

「ゴオオォォォォッ!!!

「くっ…こんなところで敵に襲いかかられてしまうとはね。ここはできるだけ連続攻撃を仕掛けて短期決戦に持ち込まないと、またブリスベン要塞から大砲が発射されてしまうかもしれないわ。」

クリスたちは武器を構え、目の前に立ちはだかるスノーライノスを迎えうつ態勢に入る。戦闘態勢に入ったクリスたちを見た瞬間、スノーライノスは鼻息を荒くする。

 「さて…一気に決着をつけましょうかっ!!

クリスたちよりも先に戦闘態勢に入ったカレニアは、サンブレードに自らの炎の魔力を注ぎ込む。カレニアの剣に炎の魔力が注がれるたび、刀身が徐々に炎を帯び始める。

「さて、私から攻めさせてもらいますわよっ!!フレイム・ランスっ!!

カレニアが素早い動きでスノーライノスの懐へと移動した後、剣を構え連続で突きを繰り出す。突きを繰り出すたび、刀身に込められた炎の魔力が爆発を起こし、スノーライノスの体を焦がしていく。

「ゴ…ゴオオォォッ!!!

カレニアの炎の連続突きを喰らったスノーライノスは、最後の雄たけびを上げながらその場に崩れ落ちる。凶暴な死の山の魔物を一撃で仕留めたカレニアの勇姿に、クリスたちは賞賛の言葉を投げかける。

「鍛錬場での練習試合の成果が出ているわ…隙のない動きだったわ!!

「まさかあの連続攻撃だけで倒してしまうとは……カレニアはまだまだ成長しそうな予感ね。」

仲間たちの言葉を受け、カレニアは顔を赤くしながら嬉しそうな表情を浮かべる。

「そんなこと言われると照れてしまいますわ…でも。嬉しかったわ。さて、邪魔な敵はいなくなったし、早くブリスベン要塞へと向かいましょう!!

スノーライノスを倒したクリスたちは、再びブリスベン要塞へと向けて足取りを進めるのであった……。

 

 クリスたちがブリスベン要塞へと向かう中、ブリスベン要塞の内部では部下たちが双眼鏡を使って見回りをしていた。部下たちが要塞周辺を見回っている中、巨大な動物が部下の目に映る。

「むむ…あそこにスノーライノスがいるぞ!!

「どこだどこだ…今すぐにでも殺して今日の晩御飯にでもするのか?

発見した部下の一人は、双眼鏡の倍率を拡大しスノーライノスの方へと目を向ける。スノーライノスの体は何者かによって切り刻まれ、動く様子はなかった。

 「奴は死んでいるようだ…何者かによって殺された後だ。一体誰があの凶暴なスノーライノスを仕留めたんだ。もしかすると戦乙女が……っ!?

戦乙女が倒したのではないかと思った部下たちは、急いでイングリッドのもとへと向かいその旨を報告する。

「イングリッド様…戦乙女がここに来ているようです!!ヴァルハラを砲撃したことによる報復だと思われます!!

「報告ありがとう…私たちが迎え撃つ必要はない。報復に来る戦乙女は直々にこのブリスベン要塞を訪れだろう…そのときに奴らを殺せばよい。それ以前にも不可解なことが起こる…先ほどヴァルハラへ放った大砲の弾が空中で爆発したのだ。部下たちが手を抜いて作っているとしかもしれんので、少し作業の様子を見てきてはくれないか……。」

イングリッドから大砲の弾を作っている部下たちが手を抜いていないかを見て来るようにとの命を受けた部下は、大砲の弾を作っている部下たちのもとへと向かうのであった……。

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