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蘇生の章2nd第五十二話 特別練習試合・カレニア対オルトリンデ

 クリスたちが教官の門下生四人との練習試合を終えた後、オルトリンデがクリスに稽古をつけるべく、鍛錬場を借り、練習試合を執り行う。

「教官の門下生との戦い…見せてもらったぞ。だが貴様らにはまだ何かが足りない…力と立ちまわりは十分だが、相手の動きを読むことに欠けている。そこでだ、私と練習試合を行い…貴様らがどれだけ相手の動きを読むことができるかを試してやろう。門下生と戦った後だから、少し休憩の時間を与えよう。教官、その者たちにしばしの休息をお願いする…。」

クリスたちに休息の時間を与えてくれとの言葉に、教官は首を縦に振りながら了承する。

「わかった…十分なら休息を認めよう。」

「ありがとうございます…教官。貴様ら、十分経ったら呼びに行くので、鍛錬場の控え室で休んでいろ。」

オルトリンデの言葉の後、十分間の休息時間を得たクリスたちは鍛錬場の控え室へと向かい休息をとるのであった……。

 

 一方そのころ、ヴァネッサよりも早く鍛錬場に到着したディンゴであったが、すでに練習試合は終わり、鍛錬場には教官とオルトリンデしかいなかった。

「あれ?ここで練習試合をしていた人たちはどこに行ったのだ?

ディンゴがクリスたちがどこへ行ったのかを教官に尋ねると、教官は物静かな表情で答える。

「貴様は練習試合をしていた者たちの仲間のようだな。先ほど練習試合をしていた人たちなら、鍛錬場の控え室で休息を取っている。その者たちは重分の休憩の後、オルトリンデとの練習試合を控えているので…あまり訓練の邪魔はしないでくれたまえよ。」

教官がそう言った後、ボウガンの試し撃ちをするべくヴァネッサが鍛錬場へと到着する。

 「教官…ちょっとボウガンの試し撃ちがしたいんで、少しの間だけここ貸してくれないかな?

鍛錬場を少しの間だけ貸してくれとの言葉に、教官は少し困惑気味な表情を浮かべながらヴァネッサに答える。

「うーん…控え室で休息を取っている者たちが休憩が終えるのは十分後だ。だがボウガンは発射時に音が出て控え室にいる者たちに迷惑だ。だが心配はいらん…強化寮の地下にはボウガン・弓用の訓練場がある。貴様にはその部屋を貸してやろう…だが他の門下生の迷惑にならないようにするんだぞ…。」

教官から強化寮の地下の訓練場の使用許可をもらったヴァネッサは、教官に一礼した後ディンゴとともに強化寮へと入り、地下へと続く階段を駆け降りていく。強化寮の地下訓練場では、門下生たちが弓やボウガンの訓練に励んでいた。

「おお…この広さなら試し撃ちをするのにもってこいね。ほら、改造が終わったあなたのボウガンよ。」

「ありがとう…では早速試し撃ちといくかっ!!

ヴァネッサがディンゴにボウガンを手渡した後、新たに強化されたボウガンの威力を確かめるべく練習用のダミー弾丸を装填し、数メートル離れた的に狙いを定める。

 「さて…二回目の強化で強くなったボウガンの威力を試してみるか!!

ヴァネッサにそう伝えた後、ディンゴはボウガンの引き金を引く。引き金が引かれた瞬間、ボウガンの発射口から放たれた弾丸はまっすぐに的めがけて飛んでいき、的の中心を貫く。

「こいつはすごいぜ…弾丸の発射速度が上がったうえ、発射時の反動もさらに軽減されている。ヴァネッサ、俺のボウガンに熱がすこしこもってきているんだが、これは先ほどの排熱なんたらとかいう部品にの発射時に発生した熱を蓄えているということなのか?

「そうよ。弾丸の発射時に発生した熱が排熱噴射機構のパーツに熱が蓄えられているってことよ。完全に熱が蓄えられるまでの目安は約30発ぐらいで、強力無比な排熱弾を放つことが可能よ。後29発弾丸を空撃ちして内部温度を上げるのはさすがに面倒だから、あなたのボウガンに無理やり熱を加えて排熱弾を発射可能にするわ。」

ヴァネッサはディンゴのボウガンに手をかけ、炎の魔力を一気にボウガンに注ぎ込む。炎の魔力が注がれるたび、ボウガンは徐々に熱を帯び始める。

「熱っ!!ちょっと、何をするんだヴァネッサ…こんなことをすると俺のボウガンが壊れてしまう!!

「大丈夫よ。あなたのボウガンは熱を吸収する紫水晶でできているから、あなたが感じる温度は火傷しない程度…つまり42度ぐらいの熱さよ。つまりその温度になれば排熱弾を放つことが可能な目安よ。さて、排熱弾の発射テストを行うわよ。排熱弾を放つにはボウガンに弾丸を装填せずに引き金を引けばいいわ…改造の際にボウガンに少し細工をし、弾丸が入っていないときには排熱弾発射モードに自動的に移行するように設計したわ。」

ヴァネッサが排熱弾の発射テストを行うようにとディンゴに伝えた後、ディンゴは装填されているボウガンを全て抜き、ボウガンを排熱弾発射モードへと移行させる。

「移行完了…では始めるぜ!!

ディンゴが引き金を引いた瞬間、ボウガンに組み込まれたパーツに込められた熱が発射口から放たれる。排熱噴射機構の部品に蓄積された熱は熱線となり、遠く離れた的を焼き尽くす。

 「な…なんという威力なんだ排熱弾は…!!遠く離れた的が一瞬にして灰と化してしまったぜ。」

排熱弾の威力を退官したディンゴは、驚きのあまり言葉をなくしていた。排熱弾を放ち終えた後、訓練をしていた門下生たちの視線が、一気にディンゴの方へとあつまる。

「い、今のは一体!?

「あいつのボウガン…まるで火炎放射機じゃないか!!

排熱弾の放射の瞬間を目撃した門下生たちが驚く中、ディンゴは排熱噴射機構のパーツに溜まった熱を全て放出し冷たくなったボウガンを収めた後、ヴァネッサに発射テストの成果を話す。

「ヴァネッサ、俺のボウガンの性能は改造前よりも格段に上がっている…。それに排熱弾もすごい威力だ…こいつをうまく使えば強敵にも勝てそうだ……。」

「強化改造がうまくいってよかったわ。もし失敗して爆発したらどうしようかと思ったわ。まぁ伝えるのを忘れていたけど、弾丸の装填数と速射機能もグレードアップしておいたわ。さて、そろそろ練習試合が始まりそうだから、私先にベンチに戻っておくわ。」

ヴァネッサはディンゴにそう告げた後、クリスたちの練習試合を観戦すべく強化寮を後にする。ヴァネッサが強化寮を去った後、ディンゴは排熱弾を受けて灰になった的の片付けに入る。

「ふぅ…これでよしと。さて、俺もヴァネッサのもとへと向かうとするか。」

その言葉の後、ディンゴはクリスたちの練習試合を観戦するべく強化寮を後にし、鍛錬場へと戻るのであった……。

 

 一方そのころ、鍛錬場の控え室で休息を取るクリスたちのもとにヴァネッサが現れる。

「みんな、練習試合頑張ってる。教官の門下生との戦いは終わって今休んでいるところね…。」

「十分休憩したあと、私たちはオルトリンデと練習試合を行うのよ。門下生との練習試合は私はなんとか勝てたんですが、みんな負けちゃったわ。でもいい経験になっているわ…。」

リリシアがヴァネッサにそう告げた後、ディンゴが鍛錬場に来ているという旨を告げる。

「なるほど…あなたの仲間のディンゴもそこに来ているわ。今ちょうどボウガンの試し撃ちを終えてここに戻っているはずよ…。」

ヴァネッサの言葉の後、休憩中のクリスたちの様子を見に来たディンゴが扉を開けて控え室の中へと入る。

 「練習試合を観戦に来たんだけど、まだ休憩中のようだな。」

鍛錬場の控え室にきたディンゴを、ゲルヒルデが笑顔で迎え入れる。

「あら…ディンちゃんじゃない。後二分ぐらいしたら私たち練習試合に行くので応援お願いね…。」

「わかった…それじゃあ俺は一足先にベンチに向かうよ。ゲルヒルデ、俺が応援送るから練習試合頑張れよ…。」

ゲルヒルデにそう告げた後、ディンゴは控え室を後にし鍛錬場のベンチへと向かい、椅子に深く腰をかける。その二分後、休憩を終えたクリスたちが鍛錬場へと集まってくる。

「うむ…遅刻する者は一人もいないようだな。よし、これからオルトリンデとの特別練習試合を行う。諸君らに相手をしてもらうのは、切先の女王と謳われる戦乙女…オルトリンデだ。怒涛となって繰り出される強力な剣技と、身軽な動きで相手を翻弄することに長けているぞ。その戦闘能力は我が門下生をはるかに超える強敵だ…動きを読み、的確な攻撃をたたき込むことが要求されるぞ!!

教官がクリスたちにオルトリンデの特徴を離した後、オルトリンデはクリスたちに練習試合でも手は抜かないということを伝える。

 「私は練習試合とはいえ、手は抜かぬぞ。さぁ、戦いを挑む者は前にでるがいい。」

戦いを挑む者は前に出るようにとのオルトリンデの言葉に、クリスたちは誰が最初に練習試合を行うかを話し合っていた。しばらく話し合った後、カレニアが手を上げてオルトリンデの方へと向かっていく。

「私でよければ…どうかお手合わせよろしくお願いします。」

「よかろう。では武器を取り前に出るがいい…教官、審判をよろしく頼むぞっ!!

カレニアが武器を手にした後、教官はクリスたちにベンチに向かうようにと指示した後、練習試合の開始の声を上げる。。

「練習試合をする者以外はベンチへと向かい、両者の戦いを見届けるのだ!!戦いに備えてイメージトレーニングするのもよし、応援の言葉を投げかけるのも諸君らの自由だ。これより、カレニアとオルトリンデとの特別練習試合を行う!!

教官が試合開始を告げた後、両者武器を手に取り戦闘態勢に入る。カレニアは武器を構えようとした瞬間、オルトリンデは目にもとまらぬ素早さでカレニアの懐へと移動する。

「身構えるのが少々遅かったようだな…言ったはずだぞ、練習試合でも手は抜かぬとっ!!

オルトリンデは木刀を構え、カレニアに突きのラッシュを繰り出す。カレニアが木刀を盾にオルトリンデの攻撃を防御するも、じわじわと後ろへと追い詰められていく。

 「くっ…目にもとまらぬ素早い動きと手数の多さ…戦闘センスといい、卓越した剣技は私たちが戦ってきた門下生とはまるで違う…このままでは、やられるっ!!

オルトリンデの連続攻撃で不利に追い込まれたカレニアは、防御の構えを解き横へと回避する。不利な状況を抜け出したカレニアの姿に、ベンチで見守る仲間たちが歓喜の声を上げる。

「あれほどの危機的状況を抜け出すとは…門下生との戦いで成長しているわ…しかしまだ安心はできないわ。相手は戦乙女…門下生よりも戦いに長けている存在だから、そう簡単に勝利をもぎ取らせてくれなさそうね…。」

ベンチに座りカレニアの戦いを見守るリリシアがそう呟いた後、オルトリンデから距離を大きく離したカレニアは木刀を構えてオルトリンデの方へと走っていく。

「わるいけど、勝つのは私よ…っ!!

「私の連続攻撃から逃れられたのは誉めてやろう…だが、戦乙女である私の力をあまりなめないでいただこう!!

その言葉の後、オルトリンデはこちらのほうへと向かってくるカレニアを斬りつける。斬撃を受けたカレニアは、痛みのあまりその場に倒れる。

 「うぐぐ…やはり門下生とは格が違いすぎるわ……。」

二人の練習試合が終わり、オルトリンデはカレニアに近づき、労いの言葉を投げかける。

「戦乙女である私が貴様ごときに負けるわけがなかろう…だが貴様は私の連続攻撃を防ぎ、不利な状況を回避できる冷静な判断力を身につけているな。」

カレニアに労いの言葉を贈った後、教官が勝利宣言を行う。

「勝負ありっ!!勝者…オルトリンデっ!!

教官が勝利宣言を行った後、カレニアはクリスたちの待つベンチに戻っていく。カレニアがベンチに戻ってきた瞬間、クリスたちはカレニアの健闘をたたえる。

「試合には負けてしまったが、あなたはよく頑張ったわ。」

「いい戦いだったわ…カレニア。さて、次は私が出ようかしら。」

リリシアはカレニアにそう告げた後、ベンチを後にしオルトリンデの方へと向かうのであった……。

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