蘇生の章2nd第四十六話 出現!!死霊王ジャンドラ
リリシアとオルトリンデが激戦を繰り広げる中、クリスたちのいるヴァルハラではゲルヒルデとオーディンを抹殺するべくシュヴェルトライテがヴァルハラに現れた。クリスたちはシュヴェルトライテを食い止めるべく戦いを挑んだが、その圧倒的な力の前に傷つき倒れてしまった。オーディンはセディエルに傷つき倒れたクリスたちを回復の泉に転送させるようにと命じた後、セディエルは転送術を使いクリスたちを回復の泉へと転送するのであった……。
クリスたちを転送した後、オーディンがセディエルにヘルヘイム側の動向を調べるようにと命じる。
「シュヴェルトライテの反応は消えたが、まだ安心はできない。奴はまた光の魔力を持つ女と私を狙ってくるだろう…セディエル。しばらく衛兵とともにヘルヘイムの動向を調べてくれ。」
「わかりました。では私はヘルヘイム側の様子を調べてまいります。オーディン様、先ほどヘルヘイムの西部にある死の山の中腹にある巨大なブリスベン要塞から何か異様な魔力を感知しました。ヘルヘイムが本格的にフェアルヘイム侵略を狙っているとのことです。では私はこれで……。」
セディエルがオーディンにそう伝えた後、オーディンは深刻な表情で考え込む。
「う〜ん…ヘルヘイムの奴らがついに動き出したか。今こそフェアルヘイムの全都市に注意喚起をしなければならん。もし光と闇との全面戦争に発展すれば、フェアルヘイムは確実に壊滅してしまうっ!!さて、今からヴァルハラの修復作業に入るとしよう。衛兵たちよ、ヴァルハラの修復作業を始めるぞっ!!」
オーディンはそう呟いた後、衛兵を集めシュヴェルトライテの襲撃で損傷したヴァルハラの修復作業に入るのであった……。
ヘルヘイムの王宮へと戻ってきたシュヴェルトライテは、クリスとの戦いで受けた傷を回復するべく、回復の泉へと向かい治癒を行う。
「くっ…奴らから受けたダメージが以外と重くのしかかってくるな。」
回復の泉で傷を回復したシュヴェルトライテは、鎧を身にまとい再び王宮の広場へと戻る。彼女が広場へと来た瞬間、赤い髪の女がシュヴェルトライテの前に現れる。
「へぇ…シュヴェルトライテ様が深手を負うとは…フェアルヘイムにも強い奴はいるもんだねぇ…。」
「き…貴様は死霊王ジャンドラ様の直属の部下のイングリッド様では…!?貴様はブリスベン要塞を管理するものであったが、なぜこの王宮を訪れたのだ…?」
シュヴェルトライテになぜヘルヘイムの王宮を訪れたということを聞かれ、イングリッドはその目的をシュヴェルトライテに話した後、ヘルヘイムの王宮を後にする。
「王宮から兵器を作るための材料を調達していたのだ。その材料を使い、ブリスベン要塞の強化及びフェアルヘイム侵略兵器の作成に使うのだ。王宮の倉庫から魔力燃料と希少金属のアラゴナイトを拝借させてもらうぞ…では私はブリスベン要塞へと戻るとしよう。シュヴェルトライテ、貴様もフェアルヘイム侵略のためにも頑張ってくれたまえっ!!」
イングリッドが王宮を去った後、シュヴェルトライテは一人考え込む。
「イングリッドの奴も何かと忙しいものだな…さてと、そろそろ鍛錬に向かうとするか……。」
その言葉の後、シュヴェルトライテは訓練場へと向かい鍛錬を始めるのであった……。
一方そのころエルザ救出のために動くリリシア達6人は、看守たちを次々と薙ぎ払いながら最下層へと目指して階段を駆け下りていた。
「エルザ様の反応がだんだんと近くなっています!!あと少しで最下層ですっ!!」
「気をつけろ紫の髪の小娘…いや、リリシアよ。最下層には何が待っているか分からんからな。最下層には凶悪な重犯罪者どもが囚われているので、檻を壊して脱走するかもしれぬからな…。」
オルトリンデの助言を受け、リリシアは仲間たちに気をつけるようにと連絡する。
「分かったわ。最下層に続く階段についたら、全員武器を構えて行かなきゃね。現在地下15階…最下層への階段はあと少しよ…。」
リリシアの言葉の後、全員は最下層へと続く階段へと目指して走っていく。最下層へと続く階段へとたどり着いた瞬間、そこには看守たちの死体がごろごろと転がっていた。
「な…なによこれ!!看守たちの死体が山積みですわ…一体誰がこんなことをっ!!」
「そのことについては私が話そう。最下層に投獄されたラダマンティスが脱走した際、奴を取り押さえるために駆け付けた看守たちの死体だろう…。それにしても鼻を突くほどの血の匂いだな…。」
オルトリンデがラダマンティスのことを話し始めた瞬間、ヴァネッサがラダマンティスがどうやって脱獄したかの真相を話し始める。
「ラダマンティスを脱走させたのは死霊王ジャンドラよ。ジャンドラがラダマンティスを脱獄させたに違いないわ。この地下牢獄の中に、わずかだが奴の魔力を感じたわ…。」
ヴァネッサの話の後、銀色の髪の男が看守たちの死体が転がっている階段を上がり、リリシア達の前に現れる。
「その通りだ…私が狂王ラダマンティスを脱獄させたのだよ……。まぁ誰かさんが倒してしまったんで計画は狂ったが、反魂術を駆使すればまた元通りに復活できる……おや、そこにいるのは戦乙女たちではないか…あの時私の一撃で死んだと思われたが、なぜ生きていたのかが不思議でたまらんよ…。」
銀色の髪の男は戦乙女たちを見るなり、不気味な笑みを浮かべながら近づいてくる。
「貴様は死霊王ジャンドラっ…今度こそ貴様の息の根を止めるっ!!我々戦乙女を傷つけた恨み、今ここで晴らさせてもらうぞっ!!」
「ほう…貴様は私と互角に渡り合ったといわれる戦乙女、ヴァルトラウテではないか…。悪いが今は貴様と戦う気はないが、貴様がその気なら容赦はしない…かかってくるがいいっ!!」
鉄甲弓(ボウアームド)に矢を装填し、臨戦態勢に入ったヴァネッサはジャンドラを血走った眼で睨みつけた後、ジャンドラに照準を合わせ引き金を引く。
「今こそ忌々しき諸悪の根源を倒すとき…皆、相手はヘルヘイムの将だ。心してかかれぇっ!!」
ヴァネッサの言葉の後、リリシア達は武器を構えてジャンドラを迎え撃つ。武器を構え戦闘態勢に入るリリシア達を見たジャンドラは、自らの体に宿る死の魔力を解放させてリリシアたちに襲いかかる。
「ヘルヘイムの将の力…貴様らの体で味わうがいいっ!!」
ジャンドラは全身に死の魔力を集め、ヴァネッサの方へと向かってくる。
「まさかこちらから来るとはね…私の鉄甲弓の餌食にしてあげるわっ!!」
「バカがっ…!!私の死の魔力はすべての属性をねじ伏せる魔力…貴様ら光の魔力を持つ戦乙女などひとひねりにしてくれるわっ!!」
ヴァネッサの方へと向かってくるジャンドラは死の波動を放ち、ヴァネッサを攻撃する。しかしヴァネッサはジャンドラの行動を先読みし、ジャンドラの背後に回っていた。
「甘いわね…私から先に攻撃させてもらうわよっ!!」
ジャンドラの背後に回ったヴァネッサは、鉄甲弓の引き金を引き装填された矢をジャンドラの背中に放つ。矢の一撃を受けたジャンドラは背中に刺さった矢を引き抜いた後、ヴァネッサの方へと振り返る。
「先読みの能力を使って私の背後に回ったのは誉めてやろう…さて、そろそろ反撃といこうか……!!」
ジャンドラは術の詠唱をすることなく死の魔力を放ち、ヴァネッサを攻撃する。死の魔力を受けたヴァネッサは態勢を崩したが、またすぐに態勢を立て直しジャンドラを迎え撃つ。
「うぐっ……いつの間に『詠唱破棄』という卑怯な能力を!!だがこのくらいの術で倒れる私ではないぞ…さすがはヘルヘイムの将、一筋縄ではいかない相手だ。見せてやろうではないか…我が弓術の極みというものをっ!!」
ヴァネッサが構えた鉄甲弓に魔力を込めた瞬間、ヴァネッサの持つ鉄甲弓が光の弓へと変貌を遂げる。
「な…なんだその武器はっ!?昔貴様と戦ったときはそのような武器は使っていなかったはず!!」
「これが私の鉄甲弓のもう一つの姿……光弓【荒神】だ…この弓は私の魔力を矢に変えて悪を討つ光の弓だ……。ジャンドラよ、貴様はここで倒すっ!!」
ジャンドラが驚きの表情を見せる中、ヴァネッサは自分の魔力を矢に変えてジャンドラに狙いを定める。
「ほほう…その弓で私と勝負するつもりかね。よかろう…死の魔力の恐ろしさをとくとご覧にいれようではないか…!!」
その言葉の後、ジャンドラは再び死の魔力を集め始める。彼の手のひらに集まった死の魔力は徐々に巨大な大きな剣の形となり、禍々しい雰囲気を放つ剣となる。
「奴が生み出した剣…禍々しい程の死の魔力を放っているわ。だが私の光の魔力のほうが上よっ!!」
ヴァネッサは精神を研ぎ澄ませてジャンドラに狙いを定めた後、弓を引き絞り光の矢を放つ。光の矢がジャンドラに命中しようとした瞬間、ジャンドラは構えた剣で防御する。
「くっ…防御されてしまったわ!!だが私の魔力が尽きぬ限り光の矢の弾数は無限よっ!!」
「ふはははははははっ!!私の心臓を狙ったつもりが、少々詰めが甘かったようだなっ!!今度は私の番だ…我が死霊の剣技でねじ伏せてくれるわっ!!邪導怨恨剣っ!!」
ヴァネッサが魔力を光の矢に変える中、ジャンドラは剣を地面に突き刺し、怨念の波動をヴァネッサに向けて放つ。ヴァネッサは回避の態勢をとりジャンドラの剣から次々と放たれる怨念の波動をかわし、光の矢を放つ。
「今度こそ終わりよジャンドラ……これでも喰らいなさいっ!!シャイニング・スプレッドっ!!」
ヴァネッサが天に向かって矢を放った瞬間、無数の光の矢の雨となりジャンドラを襲う。剣では防ぎきれないほどの光の矢の雨を受け、ジャンドラは一気に窮地に陥る。
「うぐぐぐ…ヴァルトラウテめ…このような技を隠し持っていたとはなっ!!このままでは私の命が危ない…ここは戦略的撤退だ。ヴァルトラウテめ、この借りは必ず返してやるから覚悟するがいいっ!!」
光の矢の一撃を受けたジャンドラはヴァネッサにそう告げた後、闇の回廊を使いヘルヘイム王宮へと戻っていく。ヴァネッサは逃げるジャンドラに矢を放つも、闇の回廊で逃げられた後であった。
「くっ…あと一息で忌々しきジャンドラを仕留められそうだったのに逃げられてしまったわ!!」
オルトリンデが悔しがるヴァネッサの肩に手をかけ、よくやったとの言葉を告げる。
「そう気を落とすなヴァルトラウテよ。今回は逃げられてしまったが、ジャンドラをここまで追い込んだのはいい成果だ。さすがは戦乙女の知恵袋の二つ名をもつだけあるな。久々にそなたの腕を見させてもらったぞ。」
オルトリンデの励ましの言葉の後、全員は最下層へと続く階段を駆け下りていく。
「ヴァネッサがジャンドラと戦ってくれたおかげで、邪魔な奴は去ったわ。さぁみんな、最下層はもうすぐよ…。早いとこエルザ様を救出してこんなところからおさらばしましょう!!」
最下層へと来た一行はエルザが囚われている牢を見つけたが、牢には鍵がかかっていた。
「鍵がかかっているなこの扉…私の怪力でこじ開けてやる…ふんっ!!」
イザヴェルの工房の親方が怪力を発揮し、エルザが囚われている牢の扉を破壊する。エルザの体にはめられている枷を外した後、リリシア達のもとへと歩き出す。
「リリシア…私を助けに来てくれたのですね。もう助からないと思っていたわ。」
「エルザ様、ご無事で何よりです。さぁ、私たちと一緒に大監獄から脱出しましょう!!」
リリシアがエルザに大監獄から脱出するようにと伝えた瞬間、オルトリンデがエルザにこれまで自分が行ってきた無礼を謝罪する。
「エルザ様…シュヴェルトライテと共にそなたに行った無礼をお許しください……。」
オルトリンデの謝罪の言葉の後、エルザはそっとオルトリンデの肩に手をかけて慰める。
「あなたに罪はありません…オルトリンデ。さぁ、私とともにこの大監獄から脱出し、ヴァルハラへと戻りましょう。みなさん、最下層の看守室に大監獄の一階へと続く転送陣がありますので、それを利用して外に出ましょう。」
リリシア達はヴァルハラへと戻るべく、看守室にある一階へと続く転送陣へと向かい大監獄の一階へと移動するのであった……。