蘇生の章2nd第四十四話 熾烈激突!!召喚獣バトル

 

 リリシアの活躍により、ラダマンティスを退けることに成功した。強敵を倒したが、一行はラダマンティスとの戦いで戦闘不能となったリリシアを背負いながら、地下牢獄の地下十一階へと足を踏み入れた瞬間、イザヴェルの工房の親方の気配を感じたヴァネッサは倒れたリリシアを二人に託し、親方の囚われている牢獄へと向かい工房の親方の救出に取り掛かろうとした瞬間、背後から黒き戦乙女の一人であるオルトリンデの奇襲攻撃を受け、その場に倒れる。窮地に立たされた戦乙女の二人はオルトリンデに対抗するべく、二人の魔力を半分ずつリリシアに分け与え、リリシアを戦線に復帰させる。戦乙女の二人の魔力を与えられ戦線に復帰した魔姫は戦闘態勢に入り、オルトリンデとの最終決戦に望むのであった……。

 

 緊迫した表情の中、リリシアとオルトリンデは一歩も譲らぬ戦いを繰り広げていた。オルトリンデはリリシアと戦う前に、シュヴェルトライテがオーディンとゲルヒルデを抹殺するためにヴァルハラへと向かっているということを告げる。その言葉に魔姫は少々動揺したが、私と同じほどの強さを持っているクリスがいれば大丈夫だとオルトリンデにこう言葉を返した後、リリシアは戦いへと戻る。二人の戦いは熾烈さを極めた。術の打ち合いが続いた後、テレポートでオルトリンデの懐へと来たリリシアは赤き炎をまとった突進・激昂炎舞(フレア・ドライブ)の一撃を食らい、オルトリンデはその場に倒れるのであった……。

 

 リリシアの必殺の一撃によって二人の熾烈な勝負に決着がついたと思われたが、オルトリンデは再び立ち上がり最後の切り札である召喚術(サモン・スペル)を唱え、恐竜型の大魔獣であるアロダイタスを召喚し、リリシアに攻撃を仕掛ける。オルトリンデの召喚獣に対抗するべく、リリシアも守護獣(ガーディアン)を召喚するべく魔力を高めた詠唱を始める。

「魔界の守護獣よ……悪しき者に制裁を与えよっ!!闇の海より出でし海の覇者よ…荒れ狂う水流とともに悪しき者を闇渦に飲み込まん……出でよ、リヴェリアス!!

詠唱を終えた瞬間、地面に現れた黒き渦から大きな海竜が姿を現す。その海竜の正体はかつてリリシアと激闘を繰り広げた七大魔王の一人、リヴェリアスであった。

「私を召喚したのは貴様か……私の名はリヴェリアス…七大魔王の一人だ。むむ…貴様のその紫の髪といい特徴のある髪飾りといい……どこかで見たような気がするのは気のせいか……。」

召喚術によって呼び出されたリヴェリアスはリリシアを見るなり、忘れていた何かを思い出すような素振りを見せる。

 「私のことを忘れたとは言わせないわよリヴェリアスっ!!我が名はリリシア…かつて七大魔王と呼ばれた女よ!!まぁ今では魔界の王だけどね……。」

リリシアが魔界の王となっていることを知ったリヴェリアスは、驚きの表情でこう答える。

「な…何っ!!貴様が魔界の王だと!?まさか貴様が魔界王メディスを倒したというわけなのかっ!?

「そうよ。私は確かにメディスを倒し、魔界の王になったわ……。さて、そろそろ戦闘開始よ、あの銀色の髪の小娘が召喚した恐竜をやっつけるのよ。ひとつ言っておくけど、下手な真似したらただじゃおかないわよ…リヴェリアスっ!!

リリシアがリヴェリアスにオルトリンデの召喚獣を攻撃するように命令すると、リヴェリアスは咆哮をあげながら戦闘態勢に入る。

「ほう…貴様もなかなかいい大魔獣を持っているではないか。私と貴様の戦いは、このくらい刺激が強くなきゃだめだ。いくぞアロダイタス、奴の召喚獣を打ち倒すのだ!!

オルトリンデの命令を聞いたアロダイタスは、牢獄中に響き渡るほどの咆哮をあげてリヴェリアスを威嚇した後、巨体を生かした突進を繰り出す。

 「リヴェリアス!!奴が突進してくるわ…ここは水流で押し流すわよっ!!

突進を繰り出すアロダイタスを水流で押し流すように命令した後、リヴェリアスは口から激しい水流を放ち、アロダイタスを徐々にオルトリンデのほうへと押し流していく。

「ぐっ…水流が邪魔で突進の威力が弱まったか…。まぁいい、奴もそこそこ戦闘力がある大魔獣ということは確かだ。アロダイタス、こちらも全力でいくぞっ!!

オルトリンデの言葉の後、アロダイタスは両足に力を込め、水流を押しのけてリヴェリアスのほうへと突進する。

「くっ…奴め、スピードを上げたわね。リヴェリアス、水流の放出をやめて放電攻撃よっ!!

リリシアの命令を聞いたリヴェリアスは水流の放出を止め、電撃を放つべく充電を開始する。数十秒の充電が完了した瞬間、リヴェリアスの体が雷のオーラに包まれる。

「充電完了…そこの大魔獣…これでも食らって痺れていなさいっ!!エレクトロン・ブラスター!!

息を大きく吸い込んだ後、リヴェリアスは強烈な電撃をアロダイタスに放つ。先ほどの水流で体が濡れており、電撃のダメージはさらにアップする。

 「グオオオオオオォォッ!!!

リヴェリアスの放った電撃を受け、アロダイタスは体が麻痺しその場にうずくまる。

「あの小娘の召喚獣…水棲の魔物のくせに弱点属性である電撃まで放てるとは……っ!?くそっ…もう魔力が少ししか残っていない…。だが最後の最後まで、私は諦めるわけにはいかないっ!!アロダイタス…最後の切り札…ドラゴンクラスターを放つぞっ!!

オルトリンデの命令の後、アロダイタスは口から龍の魔力を含む赤黒いブレスを吐き出してリヴェリアスを襲う。龍の魔力が込められたブレスを受けたリヴェリアスは少し怯んだが、またすぐに態勢を立て直し攻撃態勢に入る。

「ぐおおっ……龍の魔力かっ!!だが私の力もなめないでいただこうか…最大出力で放電し、貴様を灰燼に帰してやろう!!エクストリーム・ボルテージっ!!

リヴェリアスは全身に力を込め、全身に蓄えられた電気を最大出力で放電する。体から放たれた膨大な量の電気のエネルギーはアロダイタスの体を貫き、体の内側から破壊する。

「グオオオオォォッ……!!

激しい電撃によって体を貫かれたアロダイタスは、轟音とともにその場に倒れ消滅する。アロダイタスが倒れた瞬間、オルトリンデは魔力を失いその場に倒れる。

 「くっ…魔力が尽きた……!!もはや…ここまでなのか……。」

オルトリンデとの戦いを終えたリリシアはリヴェリアスを封印し、戦乙女たちのもとへと戻る。

「はぁはぁ…再び立ち上がってこないでよ……私はもう体力、魔力ともに限界よ。奴がもし立ち上がったときは、援護をお願いっ!!

リリシアの言葉の後、ヴァネッサはオルトリンデの魔力と体力を探り、リリシアにそれを伝える。

「いや、オルトリンデはもう戦闘不能状態よ。戦いで著しく体力を失った今なら、オルトリンデにかけられたジャンドラの洗脳術を解くことが可能ですわ。ジーグルーネ、ヘルムヴィーゲ!!解呪術(ディスペル)の準備をっ!!

ヴァネッサの言葉を受け、戦乙女の二人はオルトリンデに近づき、ジャンドラの洗脳術の解呪にとりかかる。二人の戦乙女は目を閉じて精神を集中させ、解呪の術の詠唱を始める。

「聖なる祈りよ…忌まわしき呪いを打ち砕かんっ!!

「光よ…闇に堕ちた者を救いたまえ……。解呪術(ディスペル)…ホーリー・シャイン!!

二人が祈りを込めて解呪術を詠唱した瞬間、聖なる光がオルトリンデの体を包み込む。オルトリンデが聖なる光に包まれた瞬間、漆黒の兜は元の輝きを取り戻していく。

 「うぐぐっ!!闇の力が…消えていくっ!!このままでは…ジャンドラ様に申し訳がたたぬっ……!!

この言葉を最後に、オルトリンデの体から闇の魔力が消えていった……。

 

 戦乙女の二人によってジャンドラの洗脳術から解け正気を取り戻したオルトリンデは、しばらくあたりを見回した後、リリシアとの戦いで受けた傷が疼き、その場にうずくまる。

「私は今まで何をしていたのだ……うぐっ!!

傷口を押さえてうずくまるオルトリンデの前に、ヴァネッサが駆け寄り傷の手当てを行う。

「あなたは先ほどまでリリシアと戦っていたのよ。ジャンドラの洗脳術はあの二人が解いてくれたわ。さて、傷の手当てを始めるわよ…痛いけど我慢してちょうだい。」

「そなたはヴァルトラウテ様…それにジーグルーネにヘルムヴィーゲまで……!!なぜそなた達がヘルヘイム大監獄に潜入しているのだ?

オルトリンデになぜ大監獄に潜入したかとの旨を聞かれ、リリシアはその経緯を話し始める。

 「経緯は私が説明するわ。オーディンの妻のエルザ様があなたとシュヴェルトライテによって囚われの身にされてしまい、エルザ様を救出するため、ジーグルーネ様とともにこの大監獄に潜入したのよ。途中イザヴェルの工房の親方を救うべく大監獄に潜入したヴァネッサと出会い、先ほどまであなたと戦っていたのよ。」

エルザと工房の親方を大監獄に投獄したことを知り、オルトリンデは自らの犯した罪を後悔する。涙を流しながら自分の罪を謝罪するオルトリンデを見たヴァネッサは、肩に手をかけて彼女を慰める。

「そうか…私が洗脳されている間、そのような大罪を犯してしまっていたのか…。皆の者、すまないっ!!エルザ様は地下牢獄の最下層にいるから……私も連れて行ってくれ!!

「あなたは悪くないわ…悪いのはすべて死霊王ジャンドラよ。あなたはそいつに洗脳されて、今まで悪いことをさせられてきたのよ。親方様を救出した後、あなたも一緒にエルザ様の救出に向かいましょう。」

ヴァネッサは牢獄に閉じ込められている工房の親方様を救出する。工房の親方はヴァネッサに一礼したあと、自分もエルザ救出のために同行する

 「礼を言うぞヴァネッサ…事情は先ほど紫の髪の娘から聞いた。天界王オーディン様の妻のエルザ様がこの牢獄に囚われているようだな…だったら俺も同行させてもらうぜ!!

戦乙女に戻ったオルトリンデとイザヴェルの工房の親方とも加わり、リリシアたち六人はエルザの待つ最下層へと向かうのであった……。

 

 リリシアがオルトリンデとの戦いを繰り広げている中、謁見の間でリリシアの帰りを待つクリスのもとに一人の衛兵が現れ、ヴァルハラがシュヴェルトライテに襲撃されていることを告げる。

「オーディン様っ!!黒き戦乙女のシュヴェルトライテが…ヴァルハラを襲撃しています!!奴は宮殿の庭を抜けて、謁見の間へと向かっています。このままではこの宮殿は壊滅してしまいます!!オーディン様、援護のほうをお願いします。」

「くっ…黒き戦乙女め、このヴァルハラを攻め落とすつもりだな!!そこの者達よ、衛兵とともにシュヴェルトライテの奴を食い止めてくれっ!!

オーディンからシュヴェルトライテを食い止めるようにとの命を受けたクリスは、了承の言葉をオーディンに告げた後、衛兵とともに謁見の間を去る。

 「わかりました…オーディン様!!必ずやシュヴェルトライテを食い止めて見せます!!

クリスの言葉の後、一行は衛兵とともにヴァルハラの廊下を抜けて広場へと向かう。広場へと来た瞬間、そこには切り捨てられた数人の衛兵の死体が転がり、鼻を突くほどの血腥い匂いが漂っていた。

「な…何なのよこの地獄絵図は……。まさかシュヴェルトライテとかいう奴に殺された衛兵たちの死体なのっ!?

広場の悲惨な光景を目にしたクリスが驚きの表情を浮かべる中、血塗られた刀を構えたシュヴェルトライテがクリスたちの前に現れる。

「ほう…そこの衛兵どもは雑魚ばかりで手ごたえが無い…ん?そこにいるのはいつぞやの小娘らとゲルヒルデ……ちょうどいいところにのこのこやってくるとは好都合…なら遠慮なくいかせてもらうぞっ!!

シュヴェルトライテは凶悪なほどの斬れ味を誇る黒刀・ペインヘルブレイドを構え、クリスたちに襲い掛かってきた。唯一便りになるリリシアを欠いたクリスたちは、シュヴェルトライテを倒すことができるのであろうか……。

 

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