蘇生の章2nd第四十三話 最終決戦・オルトリンデ!!

 

 リリシアが三人の戦乙女たちと合流を果たしたが、リリシアの気配を追ってやってきた危険度☆8クラスの重犯罪者であるラダマンティスが利刀を構えてリリシアたちの前に現れた。魔姫と三人の戦乙女は華麗なる連携でラダマンティスを圧倒するが、危機を感じたラダマンティスは全身に力を込め、体に無数の剣のような突起物をはやした巨大なトカゲへと変貌を遂げ、リリシアたちに襲い掛かる。空を切り裂く刃のような尻尾の一撃に苦戦させられるが、リリシアは鉄扇の乱舞でラダマンティスの刃のような尻尾を切断し転倒させた後、ヴァネッサの鉄甲弓(ボウアームド)に装填された麻痺の矢を放ち麻痺させる。ヴァネッサの矢を受けて体の自由を奪われている隙に、リリシアは最大級の術を放ちラダマンティスを撃破することに成功したが、彼女は先ほどの戦いで魔力を大幅に消耗し、その場に倒れるのであった……。

 

 一方ヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラは、リリシアと戦乙女たちによって倒されたラダマンティスの魂を回収するべく再びヘルヘイム大監獄を訪れていた。

「奴の生体反応が消えたのは地下十階のあたりだな…よし、急いで魂の回収に向かうぞ!!

地下十階へと来たジャンドラは牢獄内を歩き回り、ラダマンティスの魂を探す。しばらく牢獄内を探索していると、青白い球体のようなものがジャンドラの目に映る。

 「見つけた…。こいつがラダマンティスの魂…早速回収にとりかかるとするか。」

ラダマンティスの魂を見つけたジャンドラは、魂を回収する道具を用いてラダマンティスの魂を回収する。特殊な箱に入れられたラダマンティスの魂は、常人では聞こえない声でジャンドラに話しかける。

「おお…そこに見えるはジャンドラ様。わざわざ俺の魂を回収しにやってきたのか…!?

「そうだ。このままでは未練が残るからな。魂を回収して我が反魂術を用いて新たな体を与えてやる。そうだな…いまよりずっといい体のほうがいいかな?

新しい体を与えてやるというジャンドラの言葉に、ラダマンティスの魂はうれしそうな表情を浮かべているのか、赤く輝きだす。

「そいつはありがたい……できれば巨大かつ狂暴な魔物を媒体にして蘇らせてくれよな!!できればデスザウラーのような巨大生物とかがいいぜ!!

「よかろう…貴様の望みどおりの体にしてやろう。ラダマンティス、では王宮へと戻るとしよう…。」

ジャンドラはラダマンティスの魂の入ったかごを手に、転送術を用いてヘルヘイムの王宮へと戻るのであった……。

 

 一方その頃、魔力を失い倒れたリリシアを背負いながら先へと進む戦乙女たちは地下牢獄の地下十一階へと来ていた。ヴァネッサが地下十一階に足を踏み入れた瞬間、なにやら気配を感じていた。

「この階層に親方様の気配を感じる……!!ジーグルーネ、リリシアを頼むっ!!

魔力を失い倒れたリリシアをジーグルーネに託すと、ヴァネッサは親方様の気配のあるほうへと走っていく。ヴァネッサがイザヴェルの工房の親方の救出へと向かった後、ヘルムヴィーゲとジーグルーネは急いでヴァネッサの後を追う。

「何があったかは私には知りませんが、急いでヴァルトラウテ様を追いかけましょう。ここは監視の厳しい地下牢獄…看守に見つかれば何がおこるかわからないからね。」

二人が後を追う中、ヴァネッサはついに親方の囚われている牢獄の前へと来ていた。しかし牢には頑丈な鍵がかかっており、ヴァネッサは鞄の中から開錠道具を取り出し、早速牢の開錠に取り掛かる。

「助けに参りました…親方様っ!!今から鍵を開けるから…ちょっと待って……!!

「後ろから何者かが近づいている……ヴァネッサ、気をつけろっ!!

親方の叫び声の後、ヴァネッサは背後から剣の一突きを食らいその場に倒れる。ヴァネッサがふと振り返った瞬間、そこには黒き兜をかぶった銀髪の女がそこにいた。

 「そ……そなたはオルトリンデ!!なぜ私をっ…!?

その言葉の後、ヴァネッサは傷つき地面に倒れる。オルトリンデはレイピアをヴァネッサの頭部に突きつけ、ヴァネッサをにらみつけながらそう言う。

「ほう…貴様の大事な人をこの牢獄に投獄すれば貴様はきっとここへと来る……まさにその予想通りだ。ヴァルトラウテ、貴様はここで消えてもらおう……。」

「き…貴様!!よくもヴァネッサを痛めつけてくれたな……!!

ヴァネッサを傷つけられ、怒りに燃える工房の親方はオルトリンデの方へと向かうが、目の前にある檻のせいでオルトリンデに近づくことはできなかった。

「ほう、ヴァルトラウテは檻の外だ。残念だが貴様には少しばかり気絶してもらおう…。」

オルトリンデの放った闇の魔力を受け、工房の親方はその場に倒れ気絶する。物陰に隠れてその一部始終を見ていた戦乙女の二人は、その光景に驚いていた。

 「ど…どうしましょう!!リリシア様は戦闘不能だし、ヴァルトラウテ様までやられてしまったわ。私達だけで黒き戦乙女の一人であるオルトリンデに勝てるわけがないわ…。」

オルトリンデには勝てないと呟くジーグルーネに対し、ヘルムヴィーゲはある作戦を思いつく。

「いや…諦めるのはまだ早いわ。私の魔力を半分ほどリリシア様に分け与えればいいのですわ。それならリリシア様は再び戦える状態になるかもしれないわ!!

「それはいい考えね。なら私も魔力をリリシア様に送ります!!ヘルムヴィーゲ、早速作戦を開始しましょう!!

ジーグルーネが倒れたリリシアを寝かせた後、二人の戦乙女は自分の魔力を集めてリリシアの体へと送り込む。二人の戦乙女から魔力を与えられ、リリシアは目を覚ます。

「私の体に魔力が戻ってきた……あなた達が私に魔力を分け与えてくれたのね。ありがとう。」

ヘルムヴィーゲが慌てた表情で、リリシアの元へと駆け寄りそう言う。

「ヴァルトラウテ様が…オルトリンデに倒されてしまったんですわ!リリシア様、どうか私達に力をかしてくださいっ!!

オルトリンデの名を聞いた瞬間、リリシアは髪飾りを鉄扇に変えて臨戦態勢に入る。

 「オルトリンデ……私は奴と二度戦ったことがある。今度こそ決着をつけなきゃならないわ……!!

鉄扇を構えたリリシアはオルトリンデの元へと来た瞬間、オルトリンデはレイピアをリリシアに向けながら威圧し、そう言い放つ。

「ん…貴様はいつぞやの紫の髪の小娘…貴様もここに来ているとは知らなかった。だが私にとっては好都合、小娘を葬るチャンスが舞い込んできたというわけだっ!!

「私の事、忘れたとは言わせないわよっ…オルトリンデっ……ヴァネッサの仇討ちもかねて、今度こそ最終決戦よっ!!

リリシアの言葉の後、黒き戦乙女の一人であるオルトリンデとの最終決戦が始まるのであった……。

 

 武器を構えた両者は互いに譲らぬ状況のなか、先に攻撃を加えるべく睨み合っていた。

「ほう…以前戦ったときよりも戦闘力が上がっているようだな。貴様は知らないが、私の相方であるシュヴェルトライテはたった今ヘルヘイム大監獄を後にし、オーディンとゲルヒルデの抹殺のためにヴァルハラへと向かっている。仲間の中で唯一戦闘力の高い貴様を欠いた今、ゲルヒルデはもはやシュヴェルトライテの刀の錆だ…ははははっ!!!

シュヴェルトライテがヴァルハラへと向かっていることを知り、リリシアはすこし動揺したが、クリスたちがいればシュヴェルトライテが相手でも大丈夫だとオルトリンデに答える。

「そ…そんな!!だがヴァルハラには私と互角の力を持つクリスがいるわ。クリスと三人の仲間がいれば、シュヴェルトライテを倒せる可能性はあるわ…。さて、そろそろ勝負といこうじゃないのっ!!

「ほう、言ってくれるな。では始めよう…命を賭けた決戦というものをっ!!私は決して手は抜かん…本気でいかせてもらうっ!!

オルトリンデがリリシアにそう言った瞬間、レイピアを鞘から抜き目にも止まらぬ素早さでリリシアの懐へと詰め寄る。

 「しまった!!一瞬のうちに私の懐まで詰め寄られた……!!このままじゃ危ない…切り抜ける方法を考えなくちゃ!!

リリシアの懐へと詰め寄ったオルトリンデは、レイピアの一閃をリリシアに食らわせる。レイピアの一閃が炸裂した瞬間、そこには魔姫の姿は無かった。

「くっ…今の一撃は確かに紫髪の小娘に当たっていたはずだ……いったいどうやって切り抜けたのだ!?

「教えてあげるわ…私はレイピアの一撃を受ける瞬間、テレポートを使いあなたの背後に移動した。今度は私の番よっ!!

テレポートを使いオルトリンデの背後に移動したリリシアは、オルトリンデの背後から鉄扇の斬撃を食らわせる。切れ味の鋭い鉄扇の一撃を受けたオルトリンデは孤高の精神力で持ちこたえる。

「ぬるい…なんと生ぬるい斬撃だ……!!だが勝負はまだまだ始まったばかりだ…ここで貴様に倒されては戦いは楽しめぬ。全力で来い……紫髪の小娘よっ!!

全力で立ち向かって来いとリリシアに言い放った後、オルトリンデは全身に魔力を込めて身体強化を始める。全身に魔力が込められた瞬間、銀色の髪は白く輝き、全身には光と闇のオーラを纏いだす。

 「くっ…オルトリンデが光と闇の魔力を持つ相手だったとはね…。私の属性は闇・赤き炎・エスパーの三つ。光属性は私の唯一の弱点属性…弱点をつかれれば一気に窮地に追いやられてしまいそうね…。ならば私も身体強化といこうじゃないの…限定解除(リミットカット)魔力大覚醒!!

オルトリンデに対抗するべく、リリシアは限定解除を行い魔力を大幅に上昇させる。リリシアも身体強化が出来ることを知り、オルトリンデは驚きの表情を浮かべていた。

「き…貴様も身体強化を使えるというのか……!?ならばこの戦いはさらに楽しめそうだ!!クライマックスはもうそこまで来ている…さぁ、どちらかの命が尽きるまで戦おうではないかっ!!

オルトリンデは満足そうな笑みを浮かべながらリリシアにそう言うと、光の魔力を集めてリリシアに放つ。オルトリンデの放った光の魔力を前に、リリシアはオルトリンデの魔力を相殺するべく闇の魔力を集め、術の詠唱に入る。

「なかなかいい術を持っているじゃないの…なら闇と赤き炎の合成術で相殺してくれるわっ!!高貴なる闇と赤き炎の魔力よ、荒れ狂う熱線となりて対象を貫かんっ!!闇黒の熱線っ!

ひときわ魔力を込めた詠唱の後、リリシアの手のひらから黒き熱線が放たれ、オルトリンデの光の魔力を打ち消し、相殺する。

「くそっ…私の光の魔力が相殺され……何っ!?

「これで終わりにしてあげるわ…オルトリンデっ!!激昂炎舞(フレア・ドライブ)!!

その言葉の後、テレポートでオルトリンデの懐に移動したリリシアは赤き炎のオーラを纏いながらオルトリンデに突進する。魔姫の炎の突進を受けたオルトリンデは大きく吹き飛ばされ、地下牢獄の壁に激突する。

 「うぐぐ…こんなところで無様な姿をさらしたまま負けられてはジャンドラ様に申し訳が立たぬ!!クライマックスはこれからだっ…紫髪の小娘よっ!!

リリシアの炎の突進で大ダメージを受けたオルトリンデは、レイピアに闇の魔力を集めて最大の術を放つべく詠唱を始める。

「こうなれば召喚術(サモン・スペル)を使うしかない…ここまで本気にさせたのだからなっ!!生きとし生けるものすべてを食らう邪なる捕食者よ…永き時空を超えて今ここに呼び戻さんっ!!出でよ…アロダイタスっ!!

オルトリンデが詠唱を終えた瞬間、地面に大きな魔方陣が浮かび上がり、その魔方陣から巨大な恐竜が召喚される。

「ちょ…召喚術(サモン・スペル)は反則でしょっ!!ならばこちらも守護獣(ガーディアン)を召喚するしかなさそうね…しかし一度も行った試しが無いから失敗するかも知れないが、ここはやるしかないわっ!!

オルトリンデの呼び出した召喚獣に対抗するべく、リリシアは守護獣を召喚するべく詠唱を始めるのであった。クライマックスを迎えた二人の勝負は、もう何者にも止められない……!!

 

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