蘇生の章2nd第十八話 対決!!グレイトワイバーンA
武具屋の店主からアトラの村の鉱脈に住みついたヘルヘイムの魔物討伐してくれとの依頼を受け、クリスたちは鉱脈の魔物を一掃するべく、行動を開始した。魔物討伐の道中で出会った村人の助けもあり、次々とヘルヘイムの魔物たちを蹴散らしながら奥へと進んでいく。坑道での長い戦いの末、鉱脈の最奥へと足を踏み入れた瞬間、巨大な水晶を生やした巨大な飛竜がクリスたちの目に映る。この飛竜はヘルヘイムの上級魔物であるグレイトワイバーンがこの鉱脈の環境に適応し、鉱石が外殻として発達した変種であった。長き戦いの末、グレイトワイバーン変種の背中に生えた水晶が破壊され、グレイトワイバーン変種は凶暴な原種と化し、クリスたちに襲いかかってくるのであった……。
背中に生えた水晶を破壊され、凶暴な原種へと戻ったグレイトワイバーンは怒りの咆哮を轟かせた後、クリスたちのほうへと向かうべく足を動かそうとするが、先ほど受けた雷のせいで体が麻痺し動くことができず、その場でもがき苦しむ。
「まだ体の痺れが取れていないのか、ずいぶんもがき苦しんでいるみたいだぜ。クリス、痺れが消える前に一斉攻撃を仕掛けるぞ……。」
「分かったわ。私たちは分担して脚部と頭部を攻撃しますので、あなたは遠隔射撃で私たちの援護をお長いするわ。私とカレニアが奴の頭部を攻撃するから、残りの二人は脚部のほうを攻撃しましょう。」
ディンゴの言葉の後、武器を構えたクリスたちはそれぞれの部位に分かれグレイトワイバーンのほうへと向かっていく。
「グルオオォォッ!!グルオォッ!!」
体が麻痺して身動きが取れないグレイトワイバーンの頭部と脚部に、クリスたちが次々と攻撃をたたきこんでいく。止むことのないクリスたちの連続攻撃を受けたグレイトワイバーンの頭部の甲殻は破壊され、所々に傷が入る。
「そろそろ奴の痺れが消えるころだな…。奴の頭部に電撃弾をもう一発ぶっ放すから二人とも離れろっ!!」
ディンゴがグレイトワイバーンの頭部を攻撃するクリスとカレニアに離れるよう言った瞬間、弱点属性である電撃弾をボウガンに装填し、二人の攻撃によって破壊された頭部に狙いを定め、引き金に手をかける。
「二人が頭部を攻撃してくれたおかげで、傷が入り属性攻撃が通り安くなった。だが的の小さい奴の頭部にうまく当てるかが重要になってくるな。下手に撃ってかわされたりしたら脚部を攻撃しているリリシアやゲルヒルデに当たりかねない……。俺のポーチに入っている弾丸は電撃弾が2個…紫炎弾が1個、そして威力の小さい通常弾(弾数無限)しか残ってないから、ここは慎重に狙いを定めるのが先決だな…。」
すべての神経を研ぎ澄ませ、ディンゴはグレイトワイバーンの頭部に照準を合わせ力いっぱいボウガンの引き金を引く。引き金が引かれた瞬間、電撃弾がグレイトワイバーンの頭部めがけて照射される。
「頼むっ……奴の頭部に当たってくれっ!!」
ディンゴがそう念じた瞬間、ボウガンから放たれた電撃弾はグレイトワイバーンに着弾する。頭部に着弾した瞬間強烈な雷が生じ、グレイトワイバーンの頭部に雷の洗礼をくらわせる。
「グルオオオォッ!!」
電撃弾の一撃を受けたグレイトワイバーンは、再び体が麻痺しその場に倒れる。ディンゴは麻痺しているうちにグレイトワイバーンに一斉攻撃を仕掛けるよう、仲間たちに呼びかける。
「みんな…奴が麻痺している隙に一斉攻撃を仕掛け、一気にたたみかけるぞ!!麻痺しているうちに倒さなければ、奴が暴れて鉱脈が崩落してしまう危険性もありうるからな……。」
「分かったわ。奴の頭部は破壊したから、リリシア達と一緒に脚部を攻撃するわ。ディンゴは引き続き遠隔射撃でサポートをお願いっ!!」
クリスの言葉を聞いたディンゴは、困惑した表情で言葉を返す。
「すまないクリス。俺も援護したい気持ちはあるが、撃てる弾丸があと少ししか残ってないんだ…。こんな時に役に立てなくてすまない……。ここは威力の低い弾丸での援護になるが、許してくれ。」
その言葉に、クリスは笑顔でディンゴにこう言葉を返す。
「わかったわ。威力の低い弾丸では大したダメージを与えられないかもしれないけど…援護を頼むわ。みんな、麻痺しているうちに討伐するわよ!!」
クリスの言葉の後、仲間たちはグレイトワイバーンの脚部を攻撃する。クリスたちによって脚部を集中攻撃を受けているグレイトワイバーンは、うめき声をあげながらその場に倒れこむ。
「脚部に集中攻撃を受けられたせいで、奴が転倒したぞ!!クリス、止めの雷の術を奴に叩き込んでやれっ!!」
止めの雷の術を放てというディンゴの言葉を聞いたクリスは最大の術を唱えるべく、剣を天に上げて魔力を高め始める。
「聖なる光よ…私の元に集まりたまえ……。」
クリスが詠唱を始めた瞬間、聖なる光がクリスの剣に集まってくる。そのころ体が麻痺して動けないグレイトワイバーンの手足の痺れが取れ、今にも態勢を立て直そうとしていた。
「もうすぐ奴の体が動きそうだ…。みんな、クリスが詠唱を終えるまでなんとか持ちこたえてくれっ!!」
クリスが術の詠唱に入っている中、他の仲間たちはクリスが詠唱を終えるまで脚部に集中攻撃をたたきこみ、さらにダメージを蓄積させる。
「みんな、一気に攻めるわよ!!クリスの詠唱が終わるまで、攻撃の手を休めちゃだめよっ!!」
カレニアの言葉の後、仲間たちは攻撃の手を速める。しばらく攻撃を加えたその時、クリスが詠唱の最終段階に入る。
「聖なる光よ……雷となりて悪しき者を貫かんっ!!波導究極雷撃術…裁きの雷っ!!」
詠唱を終えた瞬間、クリスの剣に集まった聖なる光がグレイトワイバーンの頭上に集まり、聖なる雷と化す。聖なる雷は無数の雷の矢となって、次々とグレイトワイバーンの体を貫いていく。
「グルオオッ!!グルオオオォォッ!!」
クリスの雷の術を受けたグレイトワイバーンは、咆哮をあげながらその場に倒れ、息絶える。最大の術を立て続けに唱えたせいか、クリスはすこしふらつきながら仲間たちのもとへと向かう。
「カレニア……これで依頼達成よ。証拠の品として尻尾を持っていき……。」
その言葉の後、クリスは気を失いその場に倒れる。倒れそうになったその時、カレニアがクリスの体を抱きかかえる。
「お疲れ様…クリス。リリシア、奴の尻尾を切り取ってちょうだい。」
気を失ったクリスを背負うカレニアは、リリシアに尻尾を剥ぎとるようにそう告げると、鉄扇でグレイトワイバーンの尻尾を切り取り、両手で抱える。
「切り取ったのはいいけど、結構重いわね…。ねぇカレニア。ひとつ聞きたいけど、尻尾って何に使うのかしら…。」
「加工のためじゃないわ。奴を討伐した証拠の品よ。あ、そうそう逆鱗は私のものだからね。あれは竜の尻尾にひとつしかないからね……。」
カレニアの言葉の後、リリシアはグレイトワイバーンの尻尾にある逆鱗を剥ぎとり、カレニアに手渡す。グレイトワイバーンの逆鱗を手にとったカレニアは、思わず笑みをこぼす。
「深き森のような輝きを表す緑色の逆鱗……実に美しい♪さて、そろそろ村に帰り、武具屋の店主に依頼完了の旨を伝えに行きましょうっ!!」
グレイトワイバーンの逆鱗を鞄の中に入れた後、クリスを背負うカレニアは仲間たちとともに鉱脈を後にし、アトラの村の武具屋へとむかうのであった……。
鉱脈に巣くうヘルヘイムの魔物の討伐を終え、武具屋へと向かったカレニアは武具屋の店主に依頼達成の旨を伝える。
「魔物討伐の依頼…達成してまいりました。リリシア、早速だけど奴から切り取った尻尾をカウンターの上にのせてちょうだい。」
リリシアは切り取ったグレイトワイバーンの尻尾をカウンターの上に乗せた瞬間、武具屋の店主が驚きの表情を浮かべながら唖然となる。
「ま…まさかあの鉱脈の中に飛竜が住みついていたとは……。凶暴で手がつけられない飛竜を君たちが倒してしまうとは私も驚いた。依頼をクリアしたんだから、この盾は君のものだ。大切に使ってくれよな!!」
鉱脈の魔物を討伐した報酬として、武具屋の店主はクリムゾンシールドをカレニアに手渡そうとした瞬間、カレニアが店主にそう伝える。
「すみません…。今は戦いで疲れているクリスを背負っていて手が離せないの。ゲルヒルデ、私の代わりにあの盾を受け取ってもらえるかしら…?」
カレニアの言葉を聞いたゲルヒルデは、自分の鞄の中に入れてもらえるよう店主にそう言う。
「すみません。わたくしの鞄に入れていただけませんか…?」
「お嬢さんにはその盾を装備できないが…ほらよっ、お嬢さんっ!!」
ゲルヒルデの鞄の中にクリムゾンシールドを入れた後、クリスととともに闘った村人がカレニア達に一礼する。
「これで安心して鉱石を掘ることができる…。君たちのおかげで助かったよ。店主さん、こいつは鉱脈にいた竜からとれた竜水晶だ。ぜひとも加工に役立ててくれ。それと、奴の死体はまだ鉱脈の最奥にいるから、鎧などの防具になる素材が剥ぎとれるかもしれないので、あとで来てくれよな!!おっと、そこのお嬢さん、この竜水晶を受け取ってくれ…。では私はこれで失礼するよ。」
「あ…ありがとうございます。」
ゲルヒルデに竜水晶を手渡した後、村人は武具屋を去って行った。ゲルヒルデは村人から受け取った竜水晶を手に取り、じっくりと見定める。
「この水晶から…わずかですが竜の力が宿っているわ。何に使うのかは不明ですが、いつか役に立つ時がくるかもしれないから持っておくわね……。」
ゲルヒルデは先ほど村人から貰った竜水晶を鞄に入れた後、カレニアたちは武具屋の店主に一礼した後、武具屋を去る。
「武具屋の店主さん……今日はどうもありがとうございました。では私たちは今日の疲れを癒すため、宿へと向かいます。」
武具屋を後にしたカレニア達は、魔物討伐での疲れを癒すべく宿へと向かうことにした。宿屋の店主に宿代を支払ったあと、一行は部屋へと向かい休息を取る。
「今日は山越えと魔物討伐で疲れたぜ。俺は少し寝させてもらうぜ。」
「ふぅ…かなり疲れが溜まっているから、私もちょっとだけ寝ようかな…。」
よほど疲労がたまっているのか、ディンゴとリリシアは一足先にベッドに寝転がり、仮眠を取る。カレニアは気を失っているクリスをベッドに寝かせた後、ゲルヒルデが早速クリスのもとに駆け寄り治癒を行う。
「聖なる魔力よ……傷つきしものに再び戦う力を与えよ……。」
詠唱を終えた瞬間、ゲルヒルデの手のひらから温かく優しい光があふれ出す。あふれ出した光はクリスを包み込み、失った体力を癒していく。
「あれ、ここは一体……?」
「気がついてよかったわ…クリス。カレニアさんが倒れたあなたを背負ってここまで運んでくれたのよ。じゃあ私は一足先に湯浴みに行ってまいりますわ……。」
ゲルヒルデがクリスにそう告げた後、着替えを手に浴場へと向かっていく。ゲルヒルデが部屋を去った後、クリスはカレニアに感謝の言葉を告げる。
「カレニア…私をここまで運んでくれてありがとう……。」
「そんなに改まらなくていいのよクリス。私はあなたの仲間なんだから…助けるのは当然のことよ。部屋で少し仮眠をとった後、私たちも湯浴みに行きましょう。早く眠って今日の疲れを癒したいからね。」
カレニアの言葉の後、二人は疲れを癒すべく仮眠を取るのであった……。