蘇生の章2nd第十七話 対決!!グレイトワイバーン@

 

 クリスたちがアトラの村へと向かっている中、黒き戦乙女たちは他の参加者と混じり、闘技場の中でワータイガーと一対一で戦う闘技訓練にいそしんでいた。凶暴な力を持つワータイガーに数多くの参加者が敗れ去って行ったが、黒き戦乙女の三人と他数名の参加者のうちの約10名がワータイガーを討伐し、見事闘技訓練をクリアすることに成功した。教官による厳しい訓練を終えた黒き戦乙女たちが休息を取る中、クリスたちはイザヴェルへと向かう途中にあるアトラの村に到着し、宿屋探しをかねての散策をしていた。一行はまず武具屋に立ち寄り、武器や防具を見定めていた。さまざまな防具が立ち並ぶ中、カレニアはふと紅い色の盾が欲しくなったのか、店主に売ってくれるようにと頼み込むが、しかしその盾は35000SG(スカイゴールド)と高額だったため、今の所持金では買うことができなかった。しかし、店主の依頼をクリアできればその盾を成功報酬として貰えると聞き、クリスたちは快く依頼を請け負った……。

 

 武具屋の店主の依頼とは、アトラの村の北にある鉱脈に巣くうヘルヘイムの魔物の討伐であった。かつてこの村の鉱脈からは加工もしやすく、汎用性に優れた鉱石が採れる事で有名であった。だがある時ヘルヘイムの魔物がこの鉱脈の中に住み着き、鉱石掘りに来る人々を次々と帰らぬ人になっていった。その事件以来、鉱石掘りに来る人は減少し、だれも鉱脈へと近づかなくなったという……。

「鉱脈へと続く檻は開けておいた。君たち、鉱脈の中に巣くう魔物の討伐…よろしく頼むよ。では私はそろそろ店の中へと戻るから、依頼を終えたら私の元に戻ってくるようにな。」

店主がクリスたちにそう告げた後、武具屋の店主は再び店へと戻っていく。

「さて…鉱脈の中にいる魔物をすべて討伐し、何としてでもあの紅い盾をもらってやるわよっ!!そうときまれば、みんなで協力してサクッと終わらせちゃいましょうっ!

カレニアの言葉の後、クリスたちは鉱脈に巣くうヘルヘイムの魔物を討伐するべく、大きく口を開けた洞窟の奥へと向かっていく。しばらく洞窟を進んでいると、青色や赤色に光り輝く鉱石がクリスたちの目に映る。

 「綺麗な鉱石がたくさんあるわね。どれも光り輝いているわ…。しかしこの先になると真っ暗になるわ。真っ暗の中を進むのは危険だから…私の光の術で照らして差し上げますわ。」

鉱脈の奥へと進むにつれ、徐々に光のない暗闇の世界になっていく。暗闇の中を進むのは危険だと判断したゲルヒルデが光の術を唱えた瞬間、彼女の手のひらから光の球体が現れ、暗闇を照らしていく。

「ありがとうゲルヒルデ…これで先に進めるわ!!

「待ってカレニアさん…さっきこの辺りで魔物の気配を感じたわ。そろそろ武器を構えたほうが…!?

ゲルヒルデがそう呟いた瞬間、彼女の目の前に鋭い爪を持つヘルヘイムの魔物がそこにいた。クリスたちは急いで武器を構え、魔物を迎え撃つ態勢に入る。

「ヘッヘッヘ…また鉱石を掘りに来た人がいるぜ。」

「うまそうな人だぜ。鉱石を掘る者はこの俺の爪で串刺しにしてやるぜっ!!

クリスたちの前に現れたのは、ヘルヘイムの低級魔物であるシザーネイルとロックイーターであった。魔物たちの気配を察知したカレニアは刀身に炎を宿す細身の剣であるサンブレードを手に、魔物のほうへと向かっていく。

 「あなた達がこの鉱脈に巣くう魔物ね……私が相手してあげるわっ!!

クリスたちよりも早く魔物のほうへと向かったカレニアはシザーネイルのほうへと近づき、炎の一撃をくらわせる。シザーネイルは爪を交差して防御の態勢を取るが、切れ味の鋭い一振りから放たれる斬撃に耐えられず、交差した爪が折れ大きく態勢を崩す。

「ぐおおっ!!ロックイーター、背後からあの小娘を羽交い絞めにしろっ!!

シザーネイルの命令を聞いたロックイーターは、カレニアの背後に回り込み、羽交い絞めにする。

「放せっ!!下賤な魔物めっ…!!今すぐその手を放せば痛い目を見なくて済むわよ……。」

「シザーネイルっ!!奴を殺すチャンス到来だ……ぐわぁっ!!

ロックイーターがシザーネイルにカレニアを殺すようにと命令しようとしたその瞬間、ロックイーターは背後から何者かによって攻撃され、その場に倒れる。カレニアが振り返った瞬間、そこには槍を構えたゲルヒルデがそこにいた。

 「カレニアさん…私も助太刀するわっ!あなたを羽交い絞めにしていた魔物は私が片づけたわ。後はあの爪の魔物だけね……。」

ゲルヒルデの加勢によって難を逃れたカレニアは、再び剣を取り戦いに復帰する。

「ありがとうゲルヒルデ…またあなたに助けられたわ。後は私に任せてちょうだい。」

ゲルヒルデにそう告げた後、カレニアはサンブレードに自らの炎の魔力を込め始める。サンブレードに魔力が込められるたび、刀身が太陽のように赤く輝き、徐々に熱を帯びていく。

「太陽のごとき熱を帯びし我が剣よ……悪しき者を焼き尽くさんっ…烙焔斬っ!!

カレニアの放った爆熱の斬撃が、シザーネイルの体を斬り裂く。斬り裂かれると同時に灼熱の炎が噴き出し、シザーネイルの体を跡形もなく焼き尽くす。

 「まずは二体討伐完了ね。みんな、その先にもヘルヘイムの魔物がいるかもしれないから、気を引き締めていきましょう!!私は絶対にあの盾を手に入れるんだから…誰一人として戦闘不能になったら許さないわよっ!

襲いかかって来た二体の魔物を倒した一行は、鉱脈のさらに奥へと進んでいく。しばらく進んでいると、

明かりのついた詰め所らしき部屋を見つけ、クリスが中へと向かうようにカレニアにそう言う。

「鉱脈の中は真っ暗だけど、あそこだけ明かりがついているから、人がいるかもしれないわ。カレニア、さっそく明かりのあるほうへと向かうけどいいかな?

「それはいいけど…見るからに敵の罠かもしれないから、とりあえず、みんな武器を構えて中に入ったほうがいいわ。」

カレニアの言葉の後、武器を構えたクリスたちが詰め所らしき部屋へと向かい、中へと入る。部屋の中には魔物の気配はせず、採掘道具を携えた村人が一人いるだけであった。

 「ま…魔物だっ!!

村人はピッケルを構え、クリスたちを威圧する。その様子を見たリリシアは、私たちが魔物ではないことを伝え、採掘にきた村人を諭す。

「私たちは魔物ではありません。私たちは武具屋の店主から鉱脈の中に巣くうヘルヘイムの魔物の討伐の依頼を受け、この鉱脈へとやって来たのです。」

「あ…あんたの言うことは分かったぜ。要は鉱脈にいる魔物をすべて倒してくれるって話だな。俺は今までこの詰め所でずっと魔物の手から逃れていたんだ。だが君たちが魔物を倒してくれるというのなら、俺も力を貸してやろう。少し待っていてくれ…。」

採掘に来ていた村人はクリスたちにそう告げたあと、採掘に用いられる道具がある倉庫へと向かっていく。その数分後、たいまつと対魔物用に作られた特殊ピッケルを手に、村人が戻って来た。

「これでよし…と。こいつは戦うために作られたピッケルだ。まさかこいつを引っぱり出すことになるとはな…。威力は低いが、これで少々君たちの役に立てるはずだ。後たいまつも用意しておいた。真っ暗な鉱脈を照らすことさえできれば魔物を発見できるはずだ。足手まといになるかも知れんが、できる限り君たちの役に立てるように頑張るぜ。」

準備を終えた村人が仲間に加わり、クリスたちは魔物討伐を再開する。村人の手に持ったたいまつとゲルヒルデが生み出した光の球体のおかげで、鉱脈の中がより一層明るく照らされる。

「さて、魔物討伐を再開するわよっ!!

魔物討伐を再開したクリスたちは、次々と鉱脈に巣くうヘルヘイムの魔物たちを倒しながら奥へと進んでいく。最奥まで来たクリスたちは、巨大な魔物の気配を感じ戦闘態勢に入る。

 「ここに巨大な魔物の気配を感じるわっ!!みんな、武器を構えてっ!!

その言葉の後、クリスたちの目の前に鉱石を纏った巨大な竜の目が妖しく輝き、クリスたちを睨みつける。巨大な竜の背には大きな水晶が生え、神々しいまでの輝きを放っていた。

「こいつはヘルヘイムの上級魔物のグレイトワイバーンだが、私が見た魔物図鑑に載っているやつとは違うわ…。どうやら奴はこの鉱脈で鉱石を食べているうちに、鉱石が外殻として発達した変異種よ。見た目からして防御力が高そうだから、気をつけて!!

セディエルの言葉の後、カレニアはクリスたちにそれぞれの役割を説明したあと、討伐作戦の実行に移る。

「セディエルの言うとおり、奴は鉱石でできた強固な甲殻のおかげで防御力が高そうね。奴は雷に弱く、炎に強いみたいだから、私の持つサンブレードじゃ大したダメージを与えられなさそうね。一応話しておくけど、竜の姿をした魔物はだいたい雷に弱いっていう噂もあるから、雷の術を使えるクリスとリリシアは術で攻め、あとは武器での攻撃班に分かれましょう。では作戦開始よっ!!

カレニアの言葉の後、クリスたちはグレイトワイバーン変種を迎えうつ態勢に入る。クリスとリリシアは術を唱えるべく、手のひらに雷の魔力を集め始める。

 「ここは私とリリシアが雷の術で攻めるから…奴から少し離れてて。」

クリスの言葉を聞いた他の仲間たちはグレイトワイバーン変種から離れた瞬間、術を放つべく詠唱を始める。二人が術を唱えている中、クリスたちの気配に気づいたグレイトワイバーン変種は大きく目覚めの咆哮をあげる。

「ゴオオオオオォォォッ!!!

耳を劈く轟音にも似た咆哮が、鉱脈の中に響き渡る。その咆哮を受けたクリスとリリシアは詠唱が途切れ、耳を押えながら大きく態勢を崩す。咆哮を受けたのはクリスとリリシアだけでなく、他の仲間たちも耳をふさぐほどであった。

「な…なんという凄まじい咆哮なんだ!!俺は耳栓つけていたおかげで何とか動けるが、咆哮で動けない隙に追撃をくらわされればひとたまりもないぞ……。」

仲間たちが耳をふさぐ中、耳栓のおかげで咆哮の影響を受けなかったディンゴはボウガンに雷の力を宿す電撃弾を装填し、グレイトワイバーン変種に照準を合わせる。

「俺の考えでは…まずはどこを狙うかが重要だな。とりあえず背中に生えている水晶を狙うっ!!

その言葉の後、ディンゴはボウガンの引き金を引き装填されている電撃弾を放つ。ディンゴの放った電撃弾はグレイトワイバーン変種の背中に生えた水晶へと着弾し、弾丸から強烈な雷が発生する。

「グ…グオオオッ!!

グレイトワイバーン変種の背中に生える水晶に着弾した電撃弾は、雷のエネルギーがグレイトワイバーン変種の体を駆け巡り、その巨体を麻痺させる。

「クリス!リリシアっ!!奴は俺の放った電撃弾で麻痺させておいたから、今が詠唱のチャンスだ!

「ありがとうディンゴ!!あなたのおかげで何とか奴に邪魔されずに詠唱できるわ。クリス、急いで詠唱を始めるわよっ!!

グレイトワイバーンが麻痺して動けない間に、クリスとリリシアは雷の術を唱えるべく詠唱を再開する。

「荒れ狂う雷よ……全てを焼き尽くさんっ!!ボルテージ・バースト!!

「聖なる雷よ…悪しき者を滅せよ!!波導究極雷撃術・裁きの雷っ!!

クリスとリリシアが詠唱を終えた後、二人の放った雷の術が混ざり合い、鉱脈に大きな雷雲が立ち込め、周囲に稲光が走る。

 「ちょっと待ったぁっ!!俺も加えさせてもらうぜっ!!

グレイトワイバーン変種に合体雷撃術の一撃をくらわせようとした瞬間、ボウガンを構えたディンゴが電撃弾を数発装填し、雷雲のほうへと発射する。ボウガンから放たれた数発の雷撃弾が雷雲の中へと吸い込まれた瞬間、青白い雷がグレイトワイバーン変種の背中の水晶に炸裂する。

「俺達三人の雷の力……受けてみろぉっ!!

雷雲から降り注ぎし青白い雷は、次々とグレイトワイバーン変種の体を貫いていく。雷の蓄積によりで背中の水晶にヒビが入り、今にも割れそうな状態であった。

「ここは俺に任せろっ!ヒビを見つけたら採掘人の血が騒いでくるぜっ!!

鉱脈のなかに立ち込める雷雲が消えた後、ピッケルを構えた村人がグレイトワイバーン変種の背中にのぼり、渾身の力を込めて水晶に走ったヒビめがけて振り下ろす。

 「採掘人の意地ってもんを見せてやるぜっ…ふんっ!!!

――カキィンッ!!という快音の後、グレイトワイバーン変種の背中に生える水晶に亀裂が走り、水晶の大きな破片が周囲にはじけ飛ぶ。水晶を破壊されたことにより、グレイトワイバーンの甲殻から鉱石がはがれおち、徐々に元の姿へと戻っていく。

「な…何が起こっているんだ!?奴の体から鉱石が剥がれていくわ……。」

「背中の水晶が破壊されたことにより、元の姿であるグレイトワイバーンへと戻ったんだわ。さて、ここからが本当の勝負よ。奴は高い脚力を生かした突進と高熱のブレスを持つ強力な相手よ。先ほどの雷の術でまだ体の痺れが抜けていないけど、気をつけて戦うのよ。」

セディエルがそう言った瞬間、グレイトワイバーンは怒りの眼でクリスたちを睨みつけ、威嚇する。はたしてクリスは鉱脈に巣くう飛竜を倒すことができるのか!?

 

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