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蘇生の章2nd第百二十話 蹂躙される地上に悪霊たちは降り立つ

 創造神から奪った魔力でフェルスティアを滅ぼさんと企むニルヴィニアの野望を止めるべく、クリスたちはニルヴィニアに戦いを挑むも、その圧倒的な力の前に劣勢に立たされ5人の仲間が生きたまま石に変えられ、戦いの場に残ったのはリリシアとセルフィだけとなってしまった。リリシアとセルフィは術を放つ態勢に入ろうとしたその時、ニルヴィニアの術を猛攻を受け力尽きてしまった……。

 

 中央大陸に突き刺さった黄金郷から放たれた凄まじい破壊の波動により、フェルスティアの全ての大陸はほぼ壊滅状態であった。ヴィクトリアス城と城下町はほぼ全壊という惨状であったが、地下に納められている二つの宝石は無事であった。中央大陸の北西に位置するエルザディア諸島は津波の影響で島の二分の位置がほぼ水没し、住人達は水神の神殿に避難せざるを得ない状態であった。西部のセルディア大陸は破壊の波動により大陸が真っ二つに裂け、南東のファルゼーレ大陸においては被害は甚大で、エーゼルポリスは全壊、大陸全ての全ての街が一瞬のうちに瓦礫の山と化した。

 「ア…アメリア様っ!!エーゼルポリスの皇帝のエーゼルフィー様から伝令が届いておりますっ!!

全ての大陸が破壊の波動によるダメージを受けたが、中央大陸の被害も尋常ではなかった。レミアポリスの宮下町では建物が崩壊し、賑わいを見せていた街が一転し混乱の渦と化していた。王宮内には宮下町から避難してきた人たちが集まり、いつ終息するかわからない恐怖に怯えていた。

『私のいるエーゼルポリスは突如発生した破壊の波動の影響で全壊し、避難してきた宮下町の人たちと一緒にエーゼルポリスの王宮の地下シェルターに避難しております。一体何が起きたのか分からず私も混乱しています。アメリア様、あの凄まじい破壊の波動の発生源を突き止め、私に知らせていただけないでしょうか? エーゼルポリス皇帝・エーゼルフィー』

エーゼルフィーからの伝令を読み終えたアメリアは兵士たちに宮下町の救済活動に専念するようにと告げた後、レミアポリスの兵たちを束ねる光迅将軍ファルスを呼び、大規模破滅(カタストロフィ)の原因を探るべくレミアポリスを後にする。

「何々、破壊の波動の発生源を突き止めてきてくれ…とな。よし、私はこれよりファルスを連れて謎の現象の発生源を突き止める。他の者たちは救済活動に専念せよっ!!

ファルスとともに王宮を後にしたアメリアは、黄金郷から放たれた破滅の波動によって崩壊した宮下町へと来ていた。二人はレミアポリスを襲った破滅の波動の発生源を探るべく、近辺の調査を開始する。

「宮下町は見る限り酷い有様だな…一通り調査をしてみたところ、どうやら破滅の波動の発生源はレミアポリスではなく、中央大陸の草原付近のようです。アメリア様、何が起こるか分からないので気を付けてください。」

レミアポリスでの調査を終えた後、破滅の波動の発生源と思われる中央大陸の草原へとやってきた。二人が草原に足を踏み入れた瞬間、目の前に巨大な建造物が地面に突き刺さっていた。

 「ま…まさかあれは!?私が上空で見た建造物と同じだ。だとすればこの建造物がここに落下した衝撃であの大規模破滅が引き起こされたというのか…!!

驚きの表情を浮かべるアメリアの言葉の後、中央大陸に突き刺さった黄金郷から種のような物体が四方八方にばら撒かれる。種のような物体が地面に落ちた瞬間、人型の魔物へと変貌を遂げファルスたちに襲いかかる。

「くっ…あの建造物から飛んできた種が一瞬にして魔物になるとは!!アメリア様、私の後ろにっ!!

「ギギギ…地上界ノ人間ハ皆殺シニシテヤル!!

ファルスは槍を構え、襲ってくる魔物の攻撃をかわしつつ攻撃を仕掛けていく。しかしいくら倒しても魔物は次々と現れ、次第に数に押されていく。

「ちっ…次々とわいて出てくるからいくら倒してもきりがないっ!!アメリア様、王宮に戻って援軍をよこしてくれっ!!

アメリアに王宮に戻って援軍を要請するようにと伝えた後、ファルスは華麗な槍捌きで正体不明の魔物を次々と葬っていく。

「シツコイヤツメ…サッサトクタバリヤガラネェカ!!

「それはそっちのセリフだぜ…この俺の槍の一撃で貴様らを葬ってやるっ!!光迅槍術・斬鉄槍(グングニル)ッ!!

ファルスは上空に飛び上がり、神のごとき槍の一撃を魔物たちに放つ。ファルスの放った槍が地面に突き刺さった瞬間、光の衝撃波が放たれ魔物の群れを次々と切り刻んでいく。

 「ホウ…貴様ノ槍ノ一撃ハイイ攻撃ダ…仲間ガ次々ト切リ刻マレテシマッタゼ!!ダガ俺達ハニルヴィニア様ガ存在スル限リイクラデモ生産可能ダ。貴様ガイクラ私ヲ倒ソウガ、代ワリハイクラデモイルノダカラナァッツ!!

人型の魔物の言葉の後、ファルスは魔物にニルヴィニアという人物について尋ねる。

「貴様に一つ聞きたいことがある。お前の言うニルヴィニア様とは一体誰だ?

「ホウ、ニルヴィニア様ノコトカ。アノオ方ハコノ腐リキッタ地上界ヲ浄化スルベク天界カラ黄金郷トトモニヤッテキタ。アノオ方ニトッテ貴様ラノヨウナ人間ナド最底辺ノクズ・虫ケラ以下ダ…ニルヴィニア様ガ望ム世界デハ不必要ナ存在ダッ!!

ニルヴィニアが地上界を浄化するために天界から来たという事を知ったファルスは、魔物の喉元に槍を突き付け、最後の質問を問いかける。

「葬る前に一つ聞いておくが、確かに貴様の言う黄金郷はこの中央大陸に落ちてきたあの建造物のことか?もし貴様の言う事が本当なら、我々はニルヴィニアという者を討ち滅ぼすっ!!

「フン…貴様ノヨウナ虫ケラ如キガニルヴィニアを討チ滅ボストハ笑ワセヤガルゼ!!オ前ゴトキニニルヴィニア様ハ倒セマイ。ナゼナラ創造神クリュメヌス・アルセリオスヲ呑ミ込ミ創造の魔力ヲ手ニシタ…オ前ラノヨウナ虫ケラニ到底勝チ目ナドナ……グワアァァッ!!

魔物からニルヴィニアについての情報を聞き出した後、ファルスは槍の一突きで息の根を止める。

「なるほど…どうやらニルヴィニアとかいう奴がおそらく奴が黄金郷を操り、フェルスティアを侵略しようとしているようだな。おっ、そろそろ援軍が来たようだな!!

ファルスの言葉の後、救援要請を聞いたレミアポリスの兵士たちが加勢に駆けつけた。

「ファルス様…私たちも一緒に戦います!!

「おお…来てくれたか!!皆の者よ、一気に攻めるぞ!!

ファルスは駆けつけたレミアポリスの兵士達と共に、黄金郷から放たれた魔物を殲滅するべく武器を構えて魔物たちに立ち向かうのであった……。

 

 フェルスティアを襲った破滅の嵐の後、黄金郷ではニルヴィニアが高笑いを浮かべながら崩れゆくフェルスティアの光景を眺めていた。

「クックック…わらわの望む世界まであと少しだ。現在黄金郷は地上界の中央大陸に到着し、黄金郷から生み出された増殖生物のヘルズヒューマノイドを地上界の各地に送り込み人間どもの抹殺へと向かわせた。さて、地上界はあらかた破壊したし、創造の魔力を用いて第二のヘルヘイムに変えてやるとするか。」

ニルヴィニアが創造の魔力を集め黄金郷に魔力を送り込んだ瞬間、黄金郷は再びフェルスティア上空へと浮上し、光の鎖を放ちレミアポリス王宮を持ち上げる。黄金郷はレミアポリス王宮を持ちあげたまま天空へと舞い上がった後、王宮を中心に浮遊大陸が形成されていく。

「地上界は黄金郷が生み出した増殖生物ヘルズヒューマノイドが支配する第二のヘルヘイム…そして新たに創り出した浮遊大陸はわらわの新たなる根城だ。地上のゴミどもは創造の神となったこのわらわを崇め称えるほか生きる道はない…逆らう者は皆殺しだっ!!

ニルヴィニアが歓喜の声を上げる中、創造神の裁きを受け大きなダメージを負っていたリリシアは意識を取り戻し、セルフィを起こし伝える。

 「セルフィ、よく聞いて…この黄金郷はもうフェルスティアに上陸してしまったわ。奴は地上界を支配した後邪魔になりうる私たちを殺し、逆らう存在を消すつもりだわ。セルフィ、私は一人でニルヴィニアと戦うわ…あなたは私が戦っている間に地上界へと逃げてちょうだいっ!!

一人でニルヴィニアと戦うというリリシアの言葉に、セルフィは一人で戦うのは無茶だと反論する。

「そんな…一人じゃ無理よ!!あなたの仲間がニルヴィニアの強大な力によって成す術なく石にかえられてしまったのよ。だから私もニルヴィニアと戦うっ!!

「何言ってるのよ!!もしあなたがニルヴィニアと戦って石にされてしまったら…ニルヴィニアに立ち向かる人がいなくなってしまうじゃないっ!!そうすればフェルスティアは完全にニルヴィニアの手に堕ちてしまうわ!!だから…あなたがフェルスティアに降り立ち、戦う仲間を集めていつか諸悪の根源であるニルヴィニアを倒し…石にされた私たちの代わりにあなたが世界を救うのよっ!!

セルフィにそう告げた後、リリシアは身に着けていた蒼いリボンと髪飾りをセルフィに託す。

「そ…その髪飾りはあなたの武器じゃない!!残念だがそれは受け取れないわ。」

「いいわ…私には武器がなくても術で奴と戦うわ。セルフィ…あなただけがフェルスティアを救う最後の希望よ。今までありがとう…セルフィっ!!

セルフィに全てを託した後、リリシアは両手に魔力を集めてニルヴィニアのほうへと向かっていく。

 「ほう…まだ立ち上がるだけの体力は残っていたようだな。よかろう…今度こそわらわが引導を渡してやろう!!

ニルヴィニアが光輪に魔力を集め術を放つ態勢に入る中、リリシアは全身に魔力を集め限定解除を発動させる態勢に入る。

「私は死ぬ覚悟はできているわ…フェルスティアは、あなたの好きにはさせないっ!!限定解除(リミットカット)レベル3・超獄焔化(オーバーバースト)!!

リリシアが限定解除を発動させた瞬間、紫の髪が赤き炎を思わせる深紅の髪に変わり、凄まじいまでの魔力を我がものとする。

「あの小娘の魔力が…どんどん上昇している!!まさかとは思うが…己の生命力を燃やして魔力を精製しているのか。だがそう長く続くものではない…タイムリミットが来ればわらわを倒すどころか、逆に貴様が力尽きるのだからなっ!!

リリシアにそう言い放った後、ニルヴィニアは光輪に集めた魔力を解き放ち全てを破壊する光線を放つ。しかしリリシアは素早い動きで回避し、ニルヴィニアの背後に回り込む。

「超獄焔化を発動させた私をなめないでいただこうかしらっ!!天破炎衝(フレア・リジェクション)ッ!!

背後に回り込んだリリシアは炎の衝撃を放ち、ニルヴィニアの光輪を破壊する。ニルヴィニアの創造の魔力の根幹である光輪が破壊されたことにより、肉質硬化が解除され鉄壁の守りが崩壊する。

 「お…おのれ小娘!!よくもわらわの光輪を破壊してくれたなあっ!!もう許さぬ…致死性の劇毒で生ける屍になるがいいっ!!伏魔の王酸(ヴェノム・レギア)!!

光輪を破壊され怒り心頭のニルヴィニアは口から致死性の劇毒の酸を吐き出し、リリシアを跡形も無く溶かそうとする。しかしニルヴィニアの放った劇毒の酸はリリシアの体に纏う赤き炎のオーラによりかき消され、無力化される。

「さすがに今のはやばかったわ…限定解除を発動させていなかったら確実にあの世行きだったわ。さて、次は私の番よっ!!激昂炎舞(フレア・ドライブ)!!

全身に赤き炎のオーラを纏うリリシアはニルヴィニアに突進を仕掛け、ニルヴィニアに絶大なる一撃を食らわせる。リリシアとニルヴィニアが激しい戦いを繰り広げている中、セルフィはすでに黄金郷から飛び降り、地上界へと向かった後であった。

「はぁはぁ…セルフィはすでにフェルスティアに行ったようね。しかし私の超獄焔化はあと少しで効果が切れてしまうから、効果が切れる前に決着をつけないとっ!!

炎の術でニルヴィニアを追い詰めていくリリシアであったが、超獄焔化の効果が低下し髪の色が紫色へと戻り魔力が通常の数値へと戻りつつあった。

「ほう…限界を超えて上昇していた小娘の魔力が通常の数値に戻りつつあるな。わらわもあの小娘によって深手を負ってしまったが、どの道わらわの勝ちは動かん…ここで一気に葬ってやろうぞっ!!

「望むところよ…この一撃であなたを地獄に突き落としてさしあげますわっ!!

リリシアはニルヴィニアに止めの一撃を放つべく、手のひらに赤き炎の魔力を集めて術を放つ態勢に入るのであった……。

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