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蘇生の章2nd第百十八話 終わりなき絶望・創造再生

 チームの策士であるカレニアを失ったクリスたちは、ニルヴィニアが操る創造の神の魔力の前にただ苦戦を強いられていた。クリスは天帝の剣を構えて奮闘するが、ニルヴィニアはカレニアの重力の術を意のままに操り、クリスの身動きを封じる。聖域の上空に発生した強力な重力場に吸い寄せられていくクリスであったが、リリシアが魔力を打ち消す波動を放ったことで難を逃れ、加勢に来た仲間たちとともに反撃に出る。しかしニルヴィニアは吸い寄せる磁場を反発する磁場に変え、クリスたちは再び身動きを封じられ、手も足も出せない状況となってしまった。

 

 クリスたちが強力な重力の影響で一歩も動くことができない中、リリシアとゲルヒルデはクリスたちを助けるべく、合体術を放ちニルヴィニアの放った重力場を完全に消し去ることに成功した。重力から解放されたクリスたちは一斉攻撃を仕掛け、ニルヴィニアをあと一歩のところまで追い詰めるのであった……。

 

 ニルヴィニアをあと一歩まで追い詰めたクリスは最後の一撃を放つべく、天帝の剣に持てるだけの魔力を注ぎ込み、最大級の天帝の斬撃を放つ態勢に入る。

「ニルヴィニア…これで終わりにしてあげるわっ!!

クリスは魔力によって巨大な光の剣と化した天帝の剣を振り降ろし、ニルヴィニアに天帝の斬撃を食らわせる。しかしクリスの天帝の斬撃が炸裂する寸前、ニルヴィニアは魔力の防壁を全身に纏わせ、クリスの攻撃を防いでいた。

「くっ…あれだけのダメージを負いながら、私の天帝の斬撃を防ぐだけの魔力があったなんてっ!!

「フハハハハハッ!!これで終わりとは笑わせる…確かにわらわは貴様らによって致命傷を負わされたが、創造神から奪った魔力を使えばどんな傷でも一瞬にして回復することが可能だ!!創造の秘術・創造再生!!

ニルヴィニアが静かに目を閉じた瞬間、クリスたちから受けた傷が見る見るうちにふさがっていく。ニルヴィニアは創造の秘術で失った体力を回復させた後、背中の光輪に魔力を集め術を放つ態勢に入る。

「少しばかり手こずったが、これで貴様がわらわに与えたダメージは全て帳消しだ。さて…そろそろ止めにしてやろうっ!!

ニルヴィニアが詠唱を始めた瞬間、光輪から無数の光の剣を生み出されていく。ただならぬ気配を感じたクリスはアストライアの盾に魔力を込め、防御の体勢に入る。

 「光の剣よ…神に逆らう愚かな者を貫かんっ!!裁きの光殺剣(ソード・オブ・ジャッジメンテス)っ!!

詠唱を終えた瞬間、光輪から生み出された光の剣が烈火のごとくクリスに降りかかる。クリスは魔力が込められ防御範囲が高められたアストライアの盾を構え防御するも、無数に飛んでくる光の剣の連続攻撃に耐えきれず魔力が解け、大きく吹き飛ばされる。

「ぐ…ぐはあぁっ!!

「ほう、まだ足掻く気か…どのみち貴様は神であるわらわには勝てん!!地獄の審判(ヘルズ・ジャッジ)!!

その言葉の後、無数の光の剣がクリスの体を貫く。ニルヴィニアは致命傷を負ったクリスに近づき、石化の術の詠唱に入る。

 「創造の神であるわらわに逆らったことをあの世で悔やむがいいっ!!石の棺(ペトロナス・コフィン)!!

ニルヴィニアの光輪から放たれた不気味な光を浴びたクリスは徐々に体が石化し、生きたまま石に変えられてしまった。その一部始終を見ていた仲間たちは、恐ろしさの余り戦慄する。

「くっ…クリスまでもが石に変えられてしまったか!!

「これで残る戦力は5人…クリスとカレニアが石に変えられた以上、私たちだけでやるしかないっ!!

エルーシュの言葉の後、セルフィとディンゴは戦闘態勢に入りニルヴィニアを迎え撃つ。

「貴様らまでわらわに逆らうと言うのか…まぁよい、あの小娘同様痛めつけて生きたまま石に変えてやろう。言っておくが貴様らがいくらわらわをあと一歩まで追い詰めようが、創造の魔力で何度でも死の淵から復活することができる。つまり何度やっても無駄だという事なのだ…フハハハハッ!!

ニルヴィニアが高笑いを浮かべる中、ディンゴはボウガンに相手を蝕む劇毒弾をボウガンに装填しニルヴィニアの体に狙いを定める。

「いくら神でも…毒を喰らえば少しずつでもダメージは期待できそうだ。この劇毒弾は魔界に生息する地獄蠍から抽出された毒のエキスから作られた弾丸…この蠍の毒は神経と体に作用し、毒のダメージと麻痺を同時に与える速効性の混合劇毒だ!!

ディンゴはニルヴィニアの首に十分に狙いを定めた後、ボウガンの引き金を引き劇毒弾を発射する。ボウガンの発射口から放たれた劇毒弾はニルヴィニアの首に命中し、着弾した個所から毒が染み込んでいく。

 「うぐぐっ…体が動かぬっ!!まさかこれは…強力な神経毒か!!だがわらわはそんな毒など効かな…ぐおぉっ!?

ニルヴィニアが毒を回復するべく魔力を集めようとした瞬間、突如全身から血を吹き出しながらその場に蹲る。どうやらディンゴの放った劇毒弾の毒の成分が全身に回り、ニルヴィニアの体の内部を破壊していた。

「どういうことだ…わらわの体に一体何が起こっているのだ!!神経毒の後に凄まじい劇毒か襲いかかってきたか……早くこの劇毒を回復しなければ今度こそ…がはぁっ!!

「どうやら毒がじわじわと効いてきているようだな!!さっきはあと一歩のところでで回復されたが…必殺の排熱弾で今度こそお前を葬ってやるっ!!

ディンゴはボウガンに蓄積された熱を解放し、強力無比の威力を誇る排熱弾を放つ態勢に入る。ボウガンに込められた熱は発射口に集められ、凄まじい炎のエネルギーが発生する。

「蓄積熱量充填完了…排熱弾…放射ッ!!

ディンゴがボウガンの引き金を引いた瞬間、ボウガンの内部に込められた熱が熱線となってニルヴィニアの体を焼きつくす。しかしニルヴィニアは毒に苦しみながらも肉質硬化を発動させ、ディンゴの排熱弾を完全に防ぎきる。

 「あいつ、俺の必殺の排熱弾を受けたがまったくダメージを受けていないっ!!

ニルヴィニアはディンゴの排熱弾を受けてもなお、無傷の状態であった。

「そこの貴様、凄まじいまでの熱線を放つ武器を持っているようだな。お前の排熱弾は炎の属性だな…わらわの光輪はこの世の全ての属性の魔力が込められておる。つまり、全ての属性の攻撃に対してはほぼ軽減できるというわけだ。さらにそれに肉質硬化をプラスすればあらゆる攻撃を完全に無効化できる!!さて…今からお前の排熱弾とやらをそっくりそのまま返してやろうっ!!

ニルヴィニアが口を大きく開けた瞬間、あらゆるものを焼きつくす熱線が吐き出される。

「何て野郎だ…俺の必殺の排熱弾を見ただけで覚えやがった!!やばい…早く回避しなきゃ丸焦げになってしまうぜっ!!

ニルヴィニアの口から放たれる熱線の直撃を避けるべく、ディンゴはボウガンを納めて回避の態勢に入る。ニルヴィニアは首を横に振り、逃げ回るディンゴを焼き尽くそうとする。

「くっ…この場は熱線を回避し、反撃のチャンスを練らないと……ぐわあああぁぁっ!!

回避に専念するディンゴであったが、回避が追い付かず熱線の直撃を受けてしまう。ニルヴィニアの放った熱線に体を焼きつくされたディンゴはその場に倒れ、ぴくりとも動かなくなる。

「これで三人目だな…神に逆らう者には罰を与えねばならんなっ!!石の棺(ペトロナス・コフィン)」

ニルヴィニアは傷つき倒れたディンゴに近づき、石化させる不気味な光を浴びせ生きたまま石へと変える。その凄惨な光景を目の当たりにしたゲルヒルデは、目に涙を浮かべながら石に変えられたディンゴのほうへと走っていく。

「ディ…ディンちゃんっ!!ディンちゃぁぁぁんっ!!

「待ってゲルヒルデ…迂闊に近づいたらあなたまで石にされてしまうわっ!!

リリシアの制止も振り切り、ゲルヒルデはディンゴのほうへと走っていく。ゲルヒルデがディンゴに近づこうとしたその瞬間、非情にもニルヴィニアの光輪から放たれた光の剣がゲルヒルデの体を貫く。

 「ディ…ディンちゃ……んっ!!

光の剣に貫かれたゲルヒルデは、腹部から血を流しながらディンゴのほうへと這い寄る。しかしニルヴィニアは最後の力を振り絞ってディンゴのほうへと這うゲルヒルデの体を踏みつけ、身動きを奪う。

「ディンちゃん…ディンちゃ……ぎゃああああぁぁっ!!

「クックック…まったくもって面白い。愛する彼を想ういとおしい心は…いつ見てもよいものですね。でも心配はいらない…貴様も今すぐ愛する者のもとへと連れて行ってやろうっ!!石の棺(ペトロナス・コフィン)っ!!

ニルヴィニアはゲルヒルデを踏みつけたまま、光輪から不気味な光を放ちゲルヒルデを生きたまま石に変える。ゲルヒルデが石に変えられたことにより、リリシアたちは失った体力を回復する手段を失ってしまった。

「くっ…唯一の回復役であるゲルヒルデが石にされた以上、ダメージを回復する手段を失ってしまったわ。これで残る戦力は私とエルーシュとセルフィだけ…この三人でなんとしてでも奴に勝たなければ…この世界に未来は無いっ!!

リリシアの言葉の後、エルーシュとセルフィはニルヴィニアに詰め寄り拳の連打を繰り出す。しかしニルヴィニアは肉質硬化を発動させ、二人の攻撃を無力化する。

「ほう…何度私に立ち向かおうが無駄だ。創造の神の力の前では貴様らなど蟻同然にすぎん…この私が軽く蹴散らしてくれ……がはぁっ!!

ニルヴィニアは肉質硬化を発動していたが、身を蝕む恐るべき劇毒により強制解除され大きなダメージを受ける。セルフィはニルヴィニアの体を大きく空中へと蹴りあげた後、流星のごとき蹴りを放ちニルヴィニアを大きく地面に叩きつける。

「ぐ…がはぁっ!!あの小僧が放った猛毒のせいで肉質硬化が強制解除されてしまった…ここは創造再生で回復せねば確実にやられ……うぎゃああぁぁっ!!!

ニルヴィニアが創造再生を発動しようとしたその時、背後からエルーシュがニルヴィニアに拳の一撃を食らわせ、回復行動を阻止する。

「回復の隙など与えん…私の拳の一撃で貴様を葬るっ!!堕天烈火拳っ!!

エルーシュはニルヴィニアに追撃を食らわせるべく、拳に闇の魔力を集めてニルヴィニアに必殺の一撃を放つ。身を蝕む激しい劇毒に加え、エルーシュの烈火のごとき拳の連打を受けたニルヴィニアはもはや虫の息であった。

 「まずい…このままでは本当にやられるっ!!だがわらわはここで負けるわけにはいかん…小娘どもは我が計画を邪魔する存在だ、消し去らなければならぬ相手だっ!!裁きの奔流(パニッシュメント・カルドロニクス)っ!!

リリシアたちの猛攻から逃れるべく、ニルヴィニアは光輪を回転させて裁きの嵐を巻き起こす。その凄まじい嵐はリリシアたちを吹き飛ばし、大きく距離を離されてしまう。

「くっ…距離を大きく離されてしまったわ!!このままじゃまた回復されてしまうわっ!!

「これだけ距離を離せば誰も妨害など出来ぬ…創造の秘術、創造再生っ!!

リリシア達が裁きの嵐のせいで一歩も動くことが出来ない中、ニルヴィニアは静かに目を閉じて瞑想を始める。ニルヴィニアが目を閉じた瞬間、体を蝕む劇毒が消えこれまで受けたダメージがみるみるうちに塞がっていく。

「フハハハハハハッ!!いくらわらわをあと一歩まで追い詰めたとしても…この創造再生さえあれば何度でも死の淵から復活するっ!!さて…貴様らと遊んでいるのはいい加減飽きてきた…もう、消えろっ!!

死の一歩手前で創造再生を発動させ全快を果たしたニルヴィニアは自らの計画を邪魔する存在であるリリシアたちを消し去るべく、神の裁きを発動させる態勢に入る。四人の仲間が生きたまま石に変えられ劣勢に立たされた三人に、勝ち目はあるのか……!?

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