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蘇生の章2nd第百十七話 神の力

 最後のニルヴィニアの配下である鎧覇王グラヴィートを苦戦の末撃破したクリスたちは、ついに黄金郷の最上階にある聖域へとたどり着いた。クリスたちはフェルスティア侵略の野望を打ち砕くべくニルヴィニアに立ち向かうが、創造神であるクリュメヌス・アルセリオスを飲み込み比類なき力を得たニルヴィニアの圧倒的な力の前になす術なく蹂躙され、クリスの仲間の一人であるカレニアがニルヴィニアによって生きたまま石に変えられてしまった……。

 

 カレニアを石に変えられ怒りに燃えるクリスはニルヴィニアの攻撃をかわし、天帝の剣を構えてニルヴィニアの方へと駆けていく。

「わらわの放った聖なる刃を全てかわしきるとは…さすがはわらわの配下を倒しただけあって戦闘スキルは持ち合わせているようだな。だが神の力を得た私は全ての属性を操ることができるのだよ…スパーク・チェイサー!!

ニルヴィニアが光輪に込められた雷の魔力を解放した瞬間、光輪から雷の球体がクリスめがけて飛んでいく。クリスは素早い身のこなしで飛んでくる雷の球体を回避するが、逃げても逃げても雷の球体は軌道を修正してクリスのほうへと追いかけてくる。

「しつこいわね…あの電撃はわたしの後ろを追いかけてくるわっ!!

「わらわの放った雷の球体は狙った者を執拗に追い回し、焼きつくす閃電の魔力だ。貴様がいくら逃げようが盾を使って防ごうが…私の放った雷の球体は確実に貴様を焼きつくす!!

雷の球体に執拗に追いかけられているクリスは天帝の剣を振りおろし、ニルヴィニアの放った雷の球体を真っ二つに両断する。

 「逃げても防いでもダメなら、真っ二つに斬るまでよっ!!

対象をどこまでも追尾するスパーク・チェイサーが破られたニルヴィニアは、驚きのあまり言葉を失っていた。

「な、なんということだっ!!わらわの放った雷の球体があの小娘に破られただとっ!?

「これでも…喰らいなさいっ!!覇王天帝斬(エクセレス・レギンレイヴ)」

クリスは一気にニルヴィニアの懐へと詰め寄り、天帝の斬撃をニルヴィニアに食らわせる。しかしニルヴィニアは咄嗟に肉質硬化を発動させ、クリスの放った天帝の斬撃を完全防御する。

「くっ…私の天帝の斬撃が弾かれるなんてっ!!

クリスの放った天帝の斬撃はニルヴィニアに弾かれたものの、わずかだがダメージを与えていた。

「貴様、なかなか強い技を持っているな。貴様の放った天帝の斬撃が直撃する瞬間に肉質硬化を発動させたとはいえ、私の体にダメージを負わせるほどの威力だったぞ。しかし残念だがわらわを倒すには至らなかったな!!いずれにせよ、創造の神であるわらわに逆らった者には罰を与えねばならんな……。」

その言葉の後、ニルヴィニアは光輪から重力の塊を上空に飛ばす。上空に放たれた重力の塊は徐々に巨大な重力場となり、周囲一帯を吸い寄せる磁場に変わる。

「奴の光輪から放たれた黒い塊は…カレニアの重力の術と同じ波長!!まさか見ただけで覚えたとでもいうのっ!!このような重力の術は相殺するのが難しいから…私の術でも相殺しきれないかもしれないがやるしかないわっ!!

上空に放たれた黒い塊を見たリリシアは、カレニアが先ほど唱えた重力の術と同じ波長だという事を感じ取り、すぐさま巨大な重力場を相殺するべく術の詠唱を始める。その頃クリスは全てを吸い寄せる重力に耐えながら、ニルヴィニアのほうへと少しずつ歩いていく。

「重力の術まで使ってくるとは厄介な相手ね。だが…ここで負けるわけにはいかないっ!!

「クックック…わらわが放ったのは先ほど石に変えた小娘の使っていた双極磁場(アーラ・マグネルガ)だ。わらわは見ただけでその術を記憶し、より強力な術として自分のものにすることができるのだ。さて、私の重力にどこまで耐えられるかな?

聖域の上空に発生した強力な双極の磁場は、クリスの体は徐々に重力場へと吸い寄せられていく。クリスは重力場を破壊するべく、魔力相殺の術を唱え始める

「うぐぐ…重力が強すぎてまともに動けないわ。もしあいつの言葉通りあの重力の術がカレニアの術と同じだとしたら、私の魔力相殺(ディスエンチャント)でも相殺しきれないが、ここは無茶でもやるしかないっ!!

クリスは魔力相殺の術を発動させ、聖域の上空に発生した重力場を相殺しようとする。しかしクリスの魔力は重力場に数い込まれ、無効化されてしまった。

「無駄なことを…そんな低級の術でわらわの双極の磁場を相殺できるとでも思っていたのか!!虫けらがいつまでも足掻く姿を見ているのはいい加減飽きてきた…そろそろ止めを刺してやろう!!

ニルヴィニアはさらに魔力を込め、重力に耐えながら進むクリスを重力場の中心へと吸い寄せようとする。一方術の詠唱を終えたリリシアは重力場の中心へと吸い寄せられていくクリスを助けるべく、手のひらに闇の魔力を集め、術を放つ態勢に入る。

「闇の魔力よ…あらゆる魔力を消しさる波動となれ!!凍てつく波動(コールド・ウェイブ)!!

リリシアの手のひらに集められた闇の魔力は、全ての魔力を消しさる波動となって重力場へと放たれる。

手のひらから放たれた凍てつく波動はニルヴィニアの重力の勢いを弱め、クリスは重力場の中心に吸い込まれる寸前で解放される。

 「はぁはぁ…あと少しで重力場の中心に飲まれるところだったわ。ありがとうリリシア!!

クリスは急いで重力の影響を受けない安全な場所へと移動した後、リリシアに感謝の言葉を述べる。

「クリス、無事でよかったわ!!私が先ほど術で重力の勢いを弱めているが、完全に相殺しない限りはまた吸い寄せてくるわ。先ほど仲間にクリスの加勢をするようにと言っておいたから、すぐにあなたのもとに駆け付けるわ。」

リリシアの言葉の後、苦戦を強いられるクリスのもとにディンゴとエルーシュとセルフィが加勢に駆けつけた。

「リリシアから加勢してくれと言われたんで、俺も協力するぜ。」

「奴の体から凄まじいまでの邪悪なる魔力を感じる。皆の者、一瞬でも気を抜けばやられてしまうぞっ!!

「ニルヴィニア…あなたを倒し創造神を、いや…アルセリオス様を解放するっ!!

セルフィの気配を感じ取ったニルヴィニアは、不敵な笑みを浮かべながら彼女のほうへと振り返る。

「クックック…そこにいる小娘は確かエンプレスガーデンの女帝の一人であるセルフィではないか。確かにわらわが創造神クリュメヌス・アルセリオスを飲み込み、創造の神の力を手にした。もはやエンプレスガーデンの女帝ごときに止められるものではない…今のわらわは全てを創り出す比類なき力を得たのだからなぁっ!!

ニルヴィニアは光輪から聖なる刃を生み出し、セルフィに襲いかかる。しかしセルフィは素早い身のこなしで飛んでくる聖なる刃をかわし、ニルヴィニアの懐へと潜り込む。

「私の怒りの拳の威力を…あなたの体で思い知るがいい……っ!?

セルフィが拳の一撃を食らわせようとした瞬間、ニルヴィニアは吸い寄せる磁場から反発する磁場に変えてセルフィの自由を奪う。その強力な磁場はクリスたちにも及び、まともに立っていられないほどであった。

 「ハハハハッ!!吸い寄せる磁場を引き離す磁場に変えれば…貴様らは動けまいっ!!どうだ…これが神の力だ。力なき虫けらどもはわらわが速やかにあの世に送ってくれるわっ!!

クリスたちが反発する重力のせいで再び劣勢に立たされる中、リリシアはニルヴィニアの操る重力場によって動くことができないクリスたちを助けるべく、ゲルヒルデに協力を要請する。

「くっ…あいつ、カレニアの重力の術を完全にコピーしているわっ!!ゲルヒルデ、合体術を唱えてクリスたちを助けるわよっ!!

「わかりました…では急いで詠唱に入りましょう!!

ゲルヒルデの言葉の後、二人は合成術を放つべく詠唱に入る。ニルヴィニアは重力で身動きが封じられているクリスたちに追撃を加えるべく、光輪に魔力を集め始める。

「どうだ…この凄まじい重力の中では動けんだろう。所詮虫けらの力などその程度だ…死ぬがいいっ!!

ニルヴィニアがクリスたちにそう言い放った後、光輪から無数の光の刃を放ちクリスたちを襲う。クリスたちが重力によって動くことができない中、エルーシュは強力な魔力相殺の術を放ち、光輪から飛んでくる光の刃を相殺する。

「うぐぐ…重力で体が動かなくとも、腕さえ動かせれば術などいくらでも放てる。だがその重力場では攻撃系の術が貴様に届かないのが厄介だな。」

「おのれ…おのれ貴様っ!!虫けらの分際でこの私の術を相殺するとは生意気なことを!!もう許さぬ…わらわの力の前に屈するがよいっ!!

ニルヴィニアは重力場にさらに魔力を込め、クリスたちを押しつぶす。一方そのころ合体術の詠唱に入っていたリリシアとゲルヒルデは詠唱を終え、クリスたちの身動きを封じる重力場を相殺するべく合体術を発動させる。

「相反する光と闇の波動よ…いま一つとなり全てを打ち消す波動とならんっ!!合成術(スペルフュージョン)・黄昏の波動(トワイライト・ウェイブ)!!

二人が同時に術を発動させた瞬間、全てを打ち消す黄昏の波動が迸る。光と闇が混ざり合った波動は聖域の上空に発生した重力場を完全に消し去り、クリスたちは重力による拘束が解除される。

 「な、何が起こっているというのだ…わらわが発生させた重力場が一瞬にして消えただと!?いや、あの重力場は並大抵の術では相殺でき…ぐおぉっ!!

ニルヴィニアが驚きの表情を浮かべる中、ゲルヒルデは聖なる鎖を放ち奇襲攻撃を仕掛ける。聖なる鎖に束縛されたニルヴィニアは鎖を引きちぎろうとするが、動けば動くほど聖なる鎖がニルヴィニアの体を締め付け、じわじわとダメージを与えていく。

「確かに創造神を飲み込み力を得たあなたから見れば私たちは虫けら同然だが…力をひとつにすれば強大な力を生み出すことができるのよっ!!

ゲルヒルデが聖なる鎖でニルヴィニアを縛り付けている隙に、クリスたちは攻撃を仕掛けニルヴィニアの体力をじわじわと削っていく。リリシアはゲルヒルデにニルヴィニアがこちらの使った術をコピーできるという旨を伝えた後、ゲルヒルデとともにクリスたちの加勢へと向かう。

「ゲルヒルデ…ひとつ私から忠告しておくわ。奴は見ただけでこちらの術をコピーし、自分の物にできる能力を持っているわ。最悪さっき二人で放った黄昏の波動も…あなたの聖なる鎖もコピーされる可能性も高いわ。私はクリスたちの加勢に入るから、あなたは回復とサポートをお願いっ!!

「わかりました…治癒術師(ヒーラー)としてクリスたちを全力でサポートします!!

リリシアとゲルヒルデがクリスたちの加勢へと向かう中、聖なる鎖によって動けないニルヴィニアにクリスたちは次々と攻撃を加え、追い詰めていく。

「リリシアとゲルヒルデのおかげで、なんとか態勢を持ち直すことができたぜ。創造の神と名乗る大バカ者に鉄槌を下してやるぜ!!

「聖なる鎖で身動きを封じられているとはいえ油断は禁物だ…奴は本気を出せばそんな鎖など簡単に引きちぎり、反撃を仕掛けてくる。ここはいかに奴にダメージを与えられるかが重要になってくる…鎖を引きちぎられてしまえば一気に窮地に立たされる可能性が高いからな。」

クリスたちに助言を伝えた後、エルーシュは拳に魔力を込めてニルヴィニアに拳の連打を食らわせる。エルーシュの拳の一撃を受けたニルヴィニアは大きく吹き飛ばされ、大きく壁に叩きつけられる。

「おのれ…このわらわが虫けらごときにここまで追い詰められるとは!!貴様らぁ…どこまでも創造の神であるわらわに逆らうと言うのかっ!!ならば容赦はせぬ…この私の力で葬ってくれ……ぐおぉっ!!

ニルヴィニアが光輪に魔力を込めて術を放とうとした瞬間、ディンゴの放った炸裂弾が着弾し大爆発を起こす。ディンゴは炸裂弾を放ち終えた後、竜の頑丈な甲殻をも貫くほどの貫通性能を持つ突貫弾を放ちニルヴィニアに追い打ちをかける。

 「たとえ俺たちが虫けら以下の存在でも、仲間たちの持つありったけの力でお前の野望を打ち砕く!!たとえ相手が神だろうが、俺たちは貴様を倒す!!

熾烈を極める戦いの末、クリスたちはついにニルヴィニアをあと少しで倒せるところまで追い詰めることに成功したのであった……。

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