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蘇生の章2nd第百十四話 鎧の覇王グラヴィート!!

 零酷妃アイシクルを撃破したクリスたちがニルヴィニアの待つ神殿の最上階を目指す中、ニルヴィニアの浮遊要塞はついにフェルスティア上空に到達していた。一方レミアポリスでは見張りの塔の兵士から未確認物体が上空に浮遊しているとの報告を受け、アメリアはロックバードを使い周囲の調査へと向かった。しばらく調査を進めていくと、フェルスティア上空に現れた未確認物体は地上界を侵略するために天界から降りてきたということが分かり、王宮の兵士たちに警戒を強めるようにと兵士たちに伝えた後、天界へと向かったクリスたちの身の心配するのであった……。

 

 一方その頃、黄金郷の神殿の三階へと到達したクリスたちは、神殿の最上階へと通じる大きな転送陣のある部屋へと来ていた。しかし転送陣は機能しておらず、クリスたちが乗っても反応する気配がなかった。クリスたちが転送陣から離れた瞬間、ニルヴィニアの配下の一人であるグラヴィートが現れ、クリスたちに襲いかかってきた……。

 

 グラヴィートとの激しい戦いの末、クリスたちはグラヴィートの武器である巨大な鉄球を破壊することに成功したが、グラヴィートはゲルヒルデの聖なる鎖を引きちぎりクリスたちの方へと向かってくる。

「鉄球がなくとも…この私の体術で貴様らを葬ってやる!!

グラヴィートはその体格に似合わぬ素早さでクリスたちのほうへと詰め寄り、強烈な回し蹴りを繰り出しクリスたちを大きく蹴り飛ばす。

「くっ…重い鎧を身につけているにも関わらずなんて素早さなのよっ!!みんな、奴は強固な鎧に包まれていて斬撃はあまり効かないから、まずはあの厄介な鎧を破壊するしかないわっ!!

カレニアの言葉の後、クリスたちは術でグラヴィートに攻撃を仕掛ける。しかしクリスたちが放った術は強固な鎧によって無力化され、ダメージを与えられなかった。

「くっ…奴が身につけている堅い鎧のせいで私たちの術が全然通用しないわ!!

「皆さん、あいつの頑丈な鎧を破壊するには…爆発系の術が有効です。爆発系の術なら少しずつでも奴の鎧を剥がすことが可能ですわっ!!

セディエルの助言からヒントを得たカレニアは炎の魔力を両手に集め、爆発の術の詠唱に入る。

 「紅蓮の業火よ…あらゆる物を吹き飛ばす爆風とならんっ!!メガ・グランデ!!

カレニアが詠唱を終えた瞬間、圧縮された炎の魔力が凄まじい爆発となってグラヴィートを襲う。次々と巻き起こる爆風によってグラヴィートの強固な鎧にダメージを与え、徐々に生身の体が露わとなる。

「うぐぐ…私の鎧を壊すとはなかなかやるようだな。だが…この私がこの程度の術で倒されるほど弱くはないわっ!!

グラヴィートは両手に魔力を集め、無数の波動弾を放ちカレニアに襲いかかる。カレニアは両足に炎の魔力を込め、次々とグラヴィートが放った波動弾をかわしていく。

「この場は奴の攻撃を全てかわした上で…上空からの強襲で一気に攻めるっ!!

グラヴィートの波動弾を全てかわしたカレニアは上空に飛び上がり、両手に圧縮された炎の魔力を集め術を放つ態勢に入る。

「この術で…終わりにしてやるわっ!!古の禁術(グラン・スペル)エクスプローズ・バズデオスっ!!

カレニアが両手に圧縮された炎の魔力を解き放った瞬間、創造を絶するほどの大爆発がグラヴィートに襲いかかる。カレニアは術を放った反動で魔力を大幅に消費し、その場に倒れ込み動けなくなる。

「はぁはぁ…古の禁術は程の絶大な威力を誇るが、その代償として魔力と体力を大幅に消費するからあまり使いたくなかったが、使わなければ確実にやられていたわ。」

古の禁術を唱えた反動で体力を消耗したカレニアは僅かに残っている力を振り絞って立ち上がり、ふらふらになりながらも仲間たちのもとへと戻っていく。

 「まさかカレニアがこんな奥の手を隠し持っていたとはね…しかしあれだけの凄まじい爆発を受けてもなお、まだ奴の魔力を感じるわ。カレニア、後は私たちで奴と戦うからあなたはここで休んでいて。」

カレニアにしばらく休むようにと伝えた後、リリシアは他の仲間たちとともにグラヴィートの追撃へと向かおうとしたその時、爆煙の中からグラヴィートが現れる。

「おのれ…おのれ小娘どもめっ!!この私の強固なる鎧を完全に破壊してくれたな…だがここでニルヴィニア様より教えてもらった黄金郷の禁断の術を使うのはまだ早い。今度こそニルヴィニアの邪魔をしようとする貴様らを確実に葬ってくれるっ!!

カレニアの爆発の術を受けたことにより、グラヴィートの体を覆う鎧が無惨に砕け散り生身の肉体が剥きだしとなる。しかし防御力を失ったその半面、グラヴィートの素早さが格段に上昇していた。

「行くわよみんな…カレニアがあいつの鎧を破壊してくれたおかげでかなり下がって…っ!!

「私の力を舐めてもらっては困るな…鎧を失い防御が下がった分、この私には素早い動きが身についたのだっ!!

リリシアが鉄扇を構えようとした瞬間、グラヴィートは素早い動きでリリシアの前に現れ、剛拳の一撃を食らわせる。グラヴィートの鉄拳の一撃をまともに食らったリリシアは大きく吹き飛ばされ、激しく地面に叩きつけられる。

「うぐっ…みんな油断しないでっ!!奴は防御力が下がった分、かなり素早さが上がっているわっ!!

グラヴィートの鉄拳によって負傷したリリシアが仲間たちに油断するなと伝えた後、ディンゴはボウガンに汎用的に使える上に連射が可能な通常弾を装填しでグラヴィートに狙いを定めようとするが、あまりの素早さにより狙いが定まらない状態であった。

「な…なんて奴だっ!!素早さが早すぎるせいで狙いが定まらねぇっ!!

狙いが定まらず怒りの表情を浮かべるディンゴは通常弾を連射し、高速で移動するグラヴィートめがけて乱射する。しかしグラヴィートはディンゴのボウガンの乱射をいとも容易くかわし、ディンゴの目の前まで移動する。

「どうだ…これが私の実力だぁっ!!

ディンゴの目の前にまで移動したグラヴィートは鉄のごとき蹴りを放ち、ディンゴの体を大きく宙へと蹴り飛ばす。グラヴィートに蹴り飛ばされ無防備になっているディンゴに再び蹴りを浴びせ、激しく地面に叩きつける。

「まずは一人…地獄に葬ってくれるわっ!!流星脚(スターダスト・フェムル)!!

無防備な状態からグラヴィートの流星の如き蹴りを喰らったディンゴは絶大なダメージを受けたが、すぐに態勢を立て直し物陰へと移動し、再びグラヴィートに照準を合わせる。

「くそっ…なんて早さだ!!なんとか奴の動きを止めることはできればなんとかダメージを与えられるはずだが…この早さじゃ麻痺弾を撃ち込めねぇ!!

負傷したディンゴが素早さを増したグラヴィートの早さに強いられる中、セルフィが負傷したディンゴに代わってグラヴィートに立ち向かっていく。

 「ここは私に任せてください…私の脚力なら早さが増したあいつに追いつくことができますっ!!瞬神走法(ボルティック・ダッシュ)!!

脚力を増大する術により韋駄天のごとき素早さを得たセルフィは軽々とグラヴィートに追いつき、グラヴィートに波導の魔力を込めた拳の一撃を食らわせる。セルフィの拳の一撃によってグラヴィートが態勢を崩す中、セルフィは目にもとまらぬ速さでグラヴィートの懐に入り込む。

「き…貴様っ!!いつの間に私の懐に……っ!?

「波導の力を拳に纏い…烈火の如き拳の連打で悪を討つっ!!火迅烈火拳っ!!

グラヴィートの懐に潜り込んだセルフィは両手に波導の力を纏い、烈火のごとき拳の連打をグラヴィートの体に浴びせていく。

「はあああああああぁっ!!!

セルフィの渾身の一撃が炸裂した瞬間、グラヴィートは大きく吹き飛ばされ壁に激突する。しかしセルフィは戦いの手を緩めず、グラヴィートに追撃を加えるべく再び懐へと飛び込んでいく。

「この止めの一撃で…この戦いを終わらせるっ!!煉獄蹴りっ!!

セルフィの煉獄の炎を纏った蹴りがグラヴィートの鳩尾に炸裂し、グラヴィートは大きなダメージを受けその場に崩れ落ちる。しかしグラヴィートはセルフィの強烈な蹴りを受けてもなお再び立ち上がり、体から血を流しながらクリスたちの方へと向かってくる。。

「がはぁっ!!こんな小娘にこの私がここまで追い詰められるとはな…まぁよい、最大出力の熱線で貴様らを骨の髄まで焼き尽くしてやるまでだっ!!

怒りの表情を浮かべるグラヴィートは両手に炎の魔力を集め、強烈な熱線を放ちクリスたちに襲いかかる。グラヴィートは熱線を放った状態でその場で大きく回転し、クリスたちの逃げ場をなくす。

「ゲルヒルデ、今すぐ仲間たちを集めて防壁の術をっ!!

今すぐ仲間を集めるようにとのリリシアの言葉を聞いたゲルヒルデは急いでクリスたちを集め、グラヴィートの熱線を防ぐべく防壁の術を唱える。しかしグラヴィートの熱線の威力は凄まじく、ゲルヒルデの防壁が徐々にドロドロと溶け始める。

「くっ…熱線の威力が強すぎて防壁が溶け始めているわ!!みんな、私に力を貸してくださいっ!!

力を貸してほしいとのゲルヒルデの言葉を受け、仲間たちは魔力を集めゲルヒルデのサポートに入る。クリスたちの魔力が加わったことにより、ゲルヒルデの聖なる防壁はグラヴィートの熱線に耐えうる強度となる。

 「ありがとうみんな…防壁に魔力を込めてくれたおかげでなんとか耐えらるわ!!

グラヴィートはしばらく熱線を放った後、疲れから息を切らしながらその場にへたり込む。

「ふぅ…私の奥の手である熱線を使わせた上、しかもそれを小娘の防壁によって防がれるとは悔恨の極み!!私の熱線は威力が高いが二日に一回が限度だというのに…このような場面で使わされると困るんだな。おかげで身体能力が格段と落ちてしまったではないかっ!!

グラヴィートが熱線を放ち終えて疲労状態となっている隙を見たカレニアは、先陣を切ってクラヴィートの方へと向かっていく。

「よし、奴が疲れている今がチャンスよ!!ここは私が先に行かせてもらうわっ!!

剣を構えたカレニアは素早い動きで疲労困憊のグラヴィートに背後から近づき、一気に強襲を仕掛ける。グラヴィートの背後に回り込んだカレニアは華麗な剣さばきでグラヴィートに連撃を加え、グラヴィートの体力を削っていく。

「うぐぐ…不意打ちとは卑怯な真似を!!だが、ニルヴィニア様より教えてもらった黄金郷の禁断の力を得るという術を使わなければ…侵入者を排除するまえにこちらがやられてしまうからな!!

グラヴィートはカレニアの体を掴んで放り投げた後、全身に魔力を込めて黄金郷の禁断の術の詠唱に入る。

「黄金郷に秘められし力よ…我に力を与えよっ!!エルディラス!!

グラヴィートは禁断の術を発動させ黄金郷の力を得たかと思われたが、グラヴィートはそのままの姿であった。術が発動しないことを不審に思ったグラヴィートはニルヴィニアと連絡を取り、解決策を問いただす。

 「むむっ…おかしいな。私は確かに術を発動させたはずだが…なぜ何の反応も無いのだっ!!ニルヴィニア様、私は確かに黄金郷の術を唱えたはずだが、これは一体何が起こっているのですか!!

「グラヴィートよ、行く前に言い忘れていたことがあったので教えてやろう。他の配下より優れた潜在能力を持つ貴様の場合は、術の発動まで少し時間が必要となる。侵入者に苦戦を強いられているところ悪いが、発動までの間しばらくその状態で持ちこたえてくれ。」

ニルヴィニアとの連絡を終えたグラヴィートは軽く腕鳴らしをした後、怒りの表情を浮かべながらクリスたちの方へと向かってくる。

「発動まで少し時間が必要になる…か。まぁよい、多少ハンデとなるが少しばかり反撃と行こうかっ!!その前に…こいつで体力回復をしないとな。」

カレニアの不意打ちによって傷を負ったグラヴィートは懐から創造の煌液が入った瓶を取り出し失った体力を回復しようとする中、ディンゴはボウガンを構えグラヴィートが手にしている創造の煌液が入っている瓶に狙いを定める。

「よし…狙いは十分定まった!!せっかくここまで追い込んだのに、回復なんてさせてたまるかっ!!

十分にターゲットに狙いを定めた後、ディンゴはボウガンの引き金を引き弾丸を放つ。ボウガンの発射口から放たれた弾丸はグラヴィートが手にしている瓶に命中し、瓶の中に入っていた創造の煌液があたりに飛び散る。

「し…しまったぁっ!!死に損いのガキのせいで唯一の回復手段がなくなってしまったではないか…まぁよい、私はあと少しで黄金郷の力を得る。それまではしばらくこの状態で……おお、来たぞっ!!来たぞぉっっ!!

グラヴィートがクリスたちにそう言い放った後、グラヴィートの体が徐々に禍々しい姿へと変貌を遂げ始める。果たしてクリスたちはニルヴィニアの最後の配下であるグラヴィートを倒し、転送陣を起動させるために必要な創世紋の秘石を手に入れることができるのか……!!

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