蘇生の章2ndTOPに戻る

前のページへ  次のページ

蘇生の章2nd第百十三話 黄金郷・地上界到達

 クリスたちの連携攻撃によって追い詰められたアイシクルは黄金郷の禁断の力を得て、極低温の冷気を操る氷の竜へと変貌を遂げ、クリスたちに襲いかかってきた。リリシアとカレニアが術の詠唱に入る中、クリスは天帝の剣を構えてアイシクルに立ち向かうが、氷に覆われた頑強な甲殻によって斬撃が弾かれてしまいダメージを与えられなかった。一気に劣勢に立たされたクリスであったが、ディンゴが加勢に来たおかげでリリシアとカレニアが術の詠唱を終えるまでの時間を稼ぐことに成功し、二人の最大級の炎の術がアイシクルに炸裂しクリスたちの勝利に思われた。しかしアイシクルは二人の最大級の術を受けたが再び立ち上がり、猛吹雪を発生させクリスたちを氷漬けにしようとする。クリスたちはアイシクルの猛吹雪を防ぎ切った後、ゲルヒルデが限定解除を発動させアイシクルを撃破することに成功した……。

 

 アイシクルを撃破したクリスたちが神殿の先を進む中、神殿の最上階の聖域に座すニルヴィニアはアイシクルの生命反応が消えたことを知り、かなり焦燥していた。

「アイシクルの生命反応が…たった今消えた。どうやら侵入した小汚いネズミどもは確実にわらわのいる聖域へと向かっているのは確かだ…マグマ・レンソンもアイシクルもやられた今、侵入者を止められるのは鎧覇王グラヴィート、お前だけなのだ。」

ニルヴィニアから侵入者を止めろとの命を受けたグラヴィートはニルヴィニアに敬礼した後、聖域を後にし侵入者の排除へと向かっていく。

「わかりました…ニルヴィニア様。必ずや我が同胞であるマグマ・レンソンとアイシクルの仇をとってみせましょう。あなたの配下の最後の砦として…あなたの計画遂行のために尽力いたしますぞっ!!

グラヴィートが聖域を去った後、ニルヴィニアは不気味な高笑いを浮かべながら浮遊要塞を地上界へと向けて発進させる。

「わらわのかわいい配下が二人も犠牲になったが…運はわらわの方に向いてきている。わらわの浮遊要塞はあと少しで雲海を抜け、地上界へと到達する。あと少し…あと少しで地上界をわらわの手にできるぞ…ハハハハハハッ!!

ニルヴィニアの浮遊要塞と化した黄金郷は、徐々に速度を上げてフェルスティアへと向けて発進する。その数分後、黄金郷は雲の海を抜けフェルスティアの上空へと到達を果たしていた……。

 

 一方レミアポリスの王宮では、見張りの塔で見張りをしていた兵士がアメリアのもとにかけより、上空に未確認物体を発見したという旨を報告する。

「アメリア様…フェルスティア上空に未確認の物体を確認しました!!

「上空に未確認物体を発見した…か。大臣よ、私は今から兵士とともに見張りの塔へと向かい、未確認物体の正体を探るので、しばらくここを任せたぞ!!

アメリアは大臣にそう伝えた後、謁見の間を後にし兵士たちとともに見張りの塔へと向かう。塔に来たアメリアは望遠鏡を覗きこみ上空に浮かぶ未確認物体の正体を探ろうとするが、望遠鏡だけでは詳しくみることができず、アメリアは渋い表情を浮かべる。

 「むむむ…ここからでは望遠鏡を使っても正体はつかめぬ。なんとか近くまで行くことができれば正体がつかめそうだな…そこの者よ、ロックバードを連れてまいれっ!!

アメリアがロックバードを連れて来るようにと命じた後、兵士の一人が見張りの塔を後にし飼育エリアへと向かっていく。レミアポリス王宮の飼育エリアには人を乗せて進むことができるように手懐けられた鳥類や獣などが数多く存在し、戦闘や移動の際に役に立つ生き物ばかりであった。

「ロックバードなら…確か仮面の魔導士事件の際に十匹ぐらい捕まえて手懐けておいた奴がここにいたな。アメリア様が乗ることができるほどの大きい奴を持ってくればいいってことだな。」

見張りの兵士は大きいサイズのロックバードの背に乗り、アメリアの待つ見張りの塔へと向けて飛び立つ。

「クワーッ!!クワーッ!!

兵士を乗せたロックバードはけたたましい鳴き声をとどろかせ、翼をはばたかせて上空へと舞い上がっていく。一方その頃見張りの塔では、アメリアが渋い表情を浮かべながらロックバードの到着を待っていた。

「むむ…ロックバードはまだ来ないのか。私はもう待ちくたびれたぞ…」

「お待たせして申し訳ありませんアメリア様。ただいまロックバードを連れてまいりました。」

ロックバードが到着したその時、アメリアは嬉しそうな表情を浮かべながら兵士のもとへと駆けよる。

 「おお、待っておったぞ。これであの未確認物体の調査ができるぞっ!!それにしても、ひときわ体格の大きい個体を選んできたようだな。これなら私が背中に乗っても耐えられそうだ。では私はこれよりあの謎の物体の調査へと向かう。何かあったらこちからから報告するので、少しここで待っていてくれっ!!

見張りの兵士たちにそう告げた後、アメリアはロックバードの背に乗り上空に浮かぶ未確認物体の方へと飛び立つ。しばらく上空を飛行していると、アメリアの目の前に巨大な大きな岩のようなものが現れる。

「な…なんだあれは!?巨大な岩のようだが…よく見るとその上に神殿が建っているようだな。しかし不思議なことだな…上空からこのような神殿がこのフェルスティアに降りてきたとは驚いた。しかしまだ少しあの未確認物体の情報が欲しいので、少しばかり旋回してしばらく様子を見るとしよう。」

アメリアはロックバードを旋回させ、上空に浮かぶ未確認物体の周囲を飛行しながら情報を探る。

「いろいろと情報が集まったが、何か引っかかるところがあるな。この未確認物体はフェルスティアの空の上から降りてきたとなれば、何らかの異変により天界から降りてきたかもしれんな…いずれにせよ、何かよからぬことが起きることは確かのようだな。よし、そろそろ王宮に戻るとしよう。」

情報を得たアメリアは見張りの塔へと戻り、兵士たちに未確認物体の詳細を伝える。

「先ほどロックバードでフェルスティア上空に現れた未確認物体を調べてきたが、あの物体はこの地上のものではないことが分かった。つまり…このフェルスティアのはるか上空にあるといわれる天界から降りて来たということになる。この状況が何を意味するのかは知らぬが、天界側の奴らがこの地上界を侵略するために来たのかも知れぬということだ。」

アメリアからあの未確認物体が地上界を侵略するために降りてきたということを聞かされた兵士たちは

「ま…まさか、天界の奴らがこのフェルスティアを侵略しに来たということなのかっ!!アメリア様…我々はこのレミアポリスを守るため、全力を尽くしますっ!!

「そなたたちよ、このレミアポリスのために戦ってくれるとは嬉しい限りだ。悪しき者から平和を勝ちとるためには、戦うしかないのだからな。今はまだ襲ってくる気配はないが、いつかこの地上界を侵略する時が必ず訪れる。来るべき日が来るまで…訓練に励むがよい。それでは…解散じゃっ!!

アメリアの言葉の後、兵士たちは見張りの塔を後にし訓練場へと向かっていく。兵士たちが去った後、アメリアは深刻そうな表情で上空に浮かぶ未確認物体のほうを見つめながら、深く考え込んでいた。

 「ううむ…感じるぞ。あの未確認物体からおぞましいほどの邪悪なる気配が…!!私はクリスたちの身が心配でならぬ…どうか無事でいてくれっ!!

アメリアがクリスの無事を祈りながら、見張りの塔を後にするのであった……。

 

 一方ニルヴィニアの配下の一人である零酷妃アイシクルを倒したクリスたちは、ニルヴィニアの待つ最上階を目指すべく神殿の三階へと来ていた。

「この先に邪悪でおぞましい混沌の魔力の気配を感じるわ…どうやらこの先にニルヴィニアがいることは確かだが、まだ奴の配下が一人残っているから安心できないわ。」

ニルヴィニアの魔力を感じ取ったセディエルが仲間たちにそう伝えた後、カレニアはニルヴィニアの配下との戦いのいきさつをセディエルに話す。

「灼熱王マグマ・レンソンと零酷妃アイシクルは私たちの力でなんとか撃破したわ。残すは鎧覇王グラヴィートだけね。奴の配下はどれも強敵だったわ…何度も追い詰められそうになったけど、仲間たちとの協力があってこそ倒せたのよ。最後の一人のグラヴィートとか言う奴は私たちが倒した二人よりも強いかもしれないから、気を抜かないようにしましょう。」

カレニアの言葉の後、クリスたちは神殿の最上階へと続く巨大な転送陣のある部屋へと到着する。しかし転送陣は機能しておらず、クリスたちが乗っても転送する様子はなかった。

 「あれ…この大きな転送陣、私たちが上に乗っても作動しないわね。壊れてるんじゃないかな?

クリスたちが転送人から離れた瞬間、神殿の中に何者かの声がこだまする。

「無駄だ…この転送陣は私以外の人間には作動しない。教えてやろう、聖域へと続く転送陣を動かすには私が持っている黄金郷の宝である創世紋の秘石が必要だ。ニルヴィニア様のいる聖域へと行くにはこの私を倒すしか方法はないのだっ!!

何者かの声が途絶えた瞬間、聖域へと続く転送陣の中心に鎧をまとった男が現れる。

「貴様たちだな…私の同胞であるマグマ・レンソンとアイシクルを倒したのは。私はニルヴィニア様に仕える配下の最後の砦…鎧覇王グラヴィートだ。我が同胞の仇…ここでとらせてもらうぞっ!!

グラヴィートは自己紹介を終えた後、巨大な鉄球を振り回してクリスたちの方へと向かってくる。圧倒的な重量を持つ鉄球に回転による遠心力が加わり、破壊力を増していく。

「ここは私が聖なる防壁を張り、奴の攻撃を防ぎます!!サンクチュアリ・フィールドっ!!

ゲルヒルデは防壁を張り、グラヴィートの鉄球の一撃を防ぐ。しかし回転による遠心力が込められた渾身の一撃はゲルヒルデの防壁にひびが入るほどの威力であった。

「防壁を張り私の鉄球の勢いを止められるとでも思っているのか…だが、私の力をなめてもらっては困るなぁっ!!

グラヴィートの鉄球が聖なる防壁に当たるたび、防壁にひびが入り耐久力が弱まっていく。防壁が破壊される寸前まで追い詰めた後、グラヴィートは鉄球を振り回す手を止め、大きく飛び上がり最後の一撃を放つ態勢に入る。

「そ…そんな!!私の防壁がもう限界にきているわ!!ここは魔力を注いで修復に取りかか…きゃあっ!!

ゲルヒルデが防壁に魔力を注ぎ込み修復を図ろうとしたその時、グラヴィートの鉄球の一撃が防壁に直撃し、強固な守りを誇る聖なる防壁が破壊される。グラヴィートの鉄球が落下した際に起きた衝撃波により、クリスたちは大きく吹き飛ばされてしまう。

 「つ…強すぎるわっ!!私のサンクチュアリ・フィールドを簡単に壊してしまうなんてっ!!

聖なる防壁を破壊するほどの圧倒的な力を前に、ゲルヒルデは驚きのあまり唖然となる。

「どうだ…これが実力の差というものだ!!いくら貴様らが我が同胞であるマグマ・レンソンとアイシクルを倒したといえど、全てを破壊する剛力と堅牢強固な守りを持つ私の力の前には無に等しい。まずは防壁の術を使える貴様からひねりつぶしてやるとしよう!!

グラヴィートは再び鉄球を構え、ゲルヒルデに止めを刺すべく鉄球を振り回しながらクリスたちの方へと向かってくる。

「今度こそ…ニルヴィニアの邪魔をしようとたくらむ貴様らをひねりつぶしてくれるわっ!!

「みんな、ここは私が奴の動きを止めるわ!!メガ・スプレッドっ!!

グラヴィートが回転を始めた瞬間、カレニアは爆ぜる魔力を集めグラヴィートの足めがけて術を放つ。カレニアが術を放った瞬間、グラヴィートの周囲に爆発が巻き起こる。

「ふんっ…この程度の術など、何のダメージにもなら……ぐおっ!!

爆発とともに巻き起こった爆風により、グラヴィートは大きく態勢を崩しその場に倒れ込む。カレニアの爆発の術によって態勢を崩し動けない中、カレニアはゲルヒルデに聖なる鎖でグラヴィートを拘束するようにと命令する。

「奴が態勢を崩し転倒したわ。ゲルヒルデ、奴がもがいている隙に聖なる鎖でグラヴィートの動きを封じてちょうだいっ!!

「わかりました…この場は私がなんとか時間を稼ぎます!!束縛の術(バインドスペル)・聖なる鎖(ホーリー・チェイン)っ!!

ゲルヒルデは聖なる鎖を放ち、態勢を崩し動けないグラヴィートの体をぎりぎりと締め付ける。

「よし…なんとか拘束に成功したわ。さて、残りの者たちは鉄球の破壊に取り掛かるわよ。奴の武器を破壊すれば、大きくこちらのペースに持ち込めるからね。鉄を溶かすには強力な炎が必要となるので…私とリリシアで鉄球を溶かす作業にとりかかるわ。その間、クリスたちはグラヴィートに攻撃を加えてちょうだいっ!!

カレニアが仲間たちに命令を与えた後、カレニアとリリシアは炎の術を使い、グラヴィートの武器である鉄球を溶かす作業に取り掛かる。

「燦々たる焔の魔力よ…荒れ狂う炎の波となって全てを焼き尽くさんっ!!プロミネンス・ウェイブっ!!

「赤き炎よ…煉獄の竜巻となって全てを焼き焦がさんっ!!フレア・サイクロンっ!!

二人の放った協力な炎の術が、鉄球を跡形も無く溶かしていく。二人が作業に取り掛かっている間、クリスたちは武器を振るい聖なる鎖で拘束されているグラヴィートに集中攻撃を仕掛ける。

 「二人が鉄球の破壊に成功したわ…後は集中攻撃を仕掛け、一気に仕留めるわよっ!!

クリスたちは集中攻撃を仕掛け、グラヴィートに攻撃を与えていく。グラヴィートの体を覆う強固な鎧によって僅かしかダメージを与えられない状況だが、確実にダメージは入っているようだ。

「うぐぐ…この私が小娘ごときにここまで追い詰められてしまうとは!!だが…この私の力を舐めないでいただこうかっ!!鉄球が破壊されたが…私の体術で貴様らを葬ってくれるわっ!!

グラヴィートは全身に力を込め、身を縛る聖なる鎖を引きちぎり反撃の態勢に入る。果たしてクリスたちは最後の配下であるグラヴィート撃破し、ニルヴィニアの待つ聖域へと辿りつくことはできるのか……!?

前のページへ 次のページへ

蘇生の章2ndTOPに戻る