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蘇生の章2nd第百十一話 極冷と業火

 クリスたちがニルヴィニアの待つ黄金郷の神殿の最上階を目指す中、ニルヴィニアの配下の一人である零酷妃アイシクルがクリスたちの前に現れ、黄金郷に入り込んだ侵入者を排除するべく襲いかかってきた。クリスが剣を構えてアイシクルに立ち向かっていったが、有象無象を氷像に変える氷の眼差し(シヴァズ・アイ)を受けて氷漬けにされてしまった。クリスがアイシクルの氷の眼差しを受けて戦闘不能に陥る中、リリシアは両手に炎の魔力を集め、アイシクルに攻撃を仕掛けるが、アイシクルの放つ猛吹雪の術によって打ち負けてしまった。リリシアは急いでアイシクルを視界にとらえるべく後ろに振り返った瞬間、リリシアはアイシクルの鋭い氷爪に体を貫かれ、氷漬けにされてしまった……。

 

 ゲルヒルデが氷漬けになったリリシアの治療を施す中、カレニアは両手に圧縮された炎の魔力を集め、アイシクルのほうへと向かっていく。

「くっ…ここは急いで態勢をたてなお……きゃあっ!!

アイシクルが起き上がろうとした瞬間、カレニアは再び爆ぜるエネルギー波を放ちアイシクルを吹き飛ばす。吹き飛ばされたアイシクルは大きく壁に叩きつけられ、その場に崩れ落ちる。

「さて…リリシアの仇でもとらせてもらうとしましょうかっ!!

「うぐぐ…小汚いネズミの癖に生意気な真似をっ!!だが私には全てを凍てつかせる氷の瞳があるのよ…私が睨めばあなたなど一瞬に氷像に変えて…ぎゃあぁぁぁぁっ!!

リリシアを氷漬けにされたことによって激昂したカレニアは無数の炎弾を放ち、態勢を崩し動けないアイシクルに集中攻撃をお見舞いする。炎弾を放ち終えた後、全身に炎の魔力を纏いながらアイシクルの

 「我が炎獄の舞踊で…あなたを焼きつくして差し上げますわっ!!炎の舞(ダンシング・ディ・フレイミオ)っ!!

カレニアは華麗かつ軽やかなステップを踏んだ瞬間、紅蓮の炎がアイシクルを包み、焼きつくす。炎獄の舞踊を踊り終えた時には、アイシクルは大きなダメージを受け瀕死の重傷であった。

「うぐぐっ…この私が……貴様のような小汚いネズミごときにここまで追い詰められるなんてっ!!ニルヴィニアの計画を遂行するためにも、糞汚いネズミどもはここで駆除するだけよっ!!

カレニアによって大ダメージを負わされたアイシクルは再び立ち上がり、氷のつぶてを放ちカレニアを攻撃する。しかしカレニアは飛んでくる氷のつぶてを全てかわし、アイシクルの懐へと入り術を放つ態勢に入る。

「さて、そろそろ終わりよ…覚悟なさいっ!!フレイム・インパクトっ!!

カレニアは圧縮した炎の魔力を手のひらに一点に集中させ、アイシクルの体に強烈な衝撃を喰らわせる。その衝撃はアイシクルの体が大きく地面にめり込むほどの威力だが、カレニアはその反動でしばらく動けなくなるほどであった。

「奴は私が完膚なきまでに痛めつけたやったけど、まだ息があるから何をしてくるかわからないわ。クリス、私はあの一撃を放った反動で動くことが出来ないから、すこし手を貸して貰えるかな…。」

少し手を貸してほしいとのカレニアの言葉を聞いたクリスは急いでカレニアのもとへと駆けより、カレニアを背負い仲間たちのもとへと走る。

「はぁはぁ…ありがとうクリス。私は動けるようになるまでしばらく休むわ。奴が使う氷の眼差しは喰らえば確実に凍らせられるが、何らかの方法で奴の目をくらませることができればしばらく無効化できるかもしれないわ。氷漬けにされたリリシアはゲルヒルデが治療しているわ。クリス、リリシアが戦線に復帰するまで稼げるだけ時間を稼げるかしら?

「わかったわ。この場は私がなんとか時間を稼ぎますので、カレニアは少し休んでください。」

カレニアにそう告げた後、クリスは剣を構えてアイシクルのほうへと向かっていく。カレニアの一撃を受けて深手を負ったアイシクルは血走った目でクリスを睨みつけ、再び氷像に変えようとする。

「うぐぐ…どうやらまた私に氷漬けにされたいみたいね。ならお望み通り氷像にして差し上げますわ!!氷の眼差し(シヴァズ・アイ)!!

「私に同じ手は喰らわないわよ…晶光(プリズム・フラッシュ)!!

アイシクルが氷の眼差しを発動する瞬間、クリスは手のひらから眩い光を放ち、アイシクルの目をくらませる。アイシクルが眩い光で目がくらんで動けなくなっている隙に、クリスは構えた剣に聖なる魔力を込めてアイシクルに斬撃を放つ。

「うぐぐ…あまりのまぶしさに前が見えぬっ!!

「我が剣に集まりし聖なる光よ…天を衝く大剣となりて悪しき者を粉砕する一撃を生み出さんっ!!天帝大聖斬(ギガンティア・レギンレイヴ)!!

天帝の剣に込められた聖なる魔力を解放した瞬間、クリスの持つ天帝の剣は巨大な光の剣と化す。クリスは渾身の力を込めて巨大な光の剣を振りおろし、アイシクルに天帝の斬撃を喰らわせる。

 「そ…そんなバカなっ!!私の天帝の斬撃が…まったく効いていないなんてっ!!

天帝の剣から放たれた全てを粉砕する光の斬撃は、黄金郷の神殿の床に巨大な穴を開けるほどの威力であった。しかしアイシクルは寸前で氷の防壁を作り、クリスの天帝の斬撃を完全に防御する。

「はぁはぁ…間一髪のところで氷の防壁を作っておいてよかったわ。あなたたちとの激しい戦いで私の体力と魔力が大幅に減ったから…こいつで回復するわ。この瓶の中に入っている液体は創造神をその身に取り込んだニルヴィニア様の体を流れる創造の煌液よ。こいつを飲み干せばあなたたちとの戦いで失った体力と魔力はたちどころにして全快する!!

クリスとの戦いでダメージを負ったアイシクルは懐から緑色の液体が入った瓶を取り出し、失った体力と魔力の回復を試みようとする。

「あいつ…あの薬らしきものをを飲んで体力と魔力を回復しようとしているわ!!だがそうはさせないっ!!

カレニアはアイシクルの体力と魔力の回復を阻止するべく、指先から炎の矢を放ちアイシクルの手に持った瓶を狙う。指先から放たれた炎の矢はアイシクルの手に持った瓶に命中し、瓶の中に入っていた緑色の液体が周囲に飛散する。

「私の手に持っている瓶を破壊して回復動作を妨害する…か。だが私は常に凍てつくオーラを放っているから、飛び散った創造の煌液を凍らせることができるということには気づかなかったようねっ!!

アイシクルはカレニアにそう告げた後、自身の纏う冷気によって凍りついた創造の煌液を口に含む。アイシクルが凍った創造の煌液を飲み込んだ瞬間、アイシクルの傷が一瞬のうちに回復する。

「くっ…回復を許してしまったせいで戦いが振り出しに戻ってしまったわね。クリス、ここは私も加勢するわっ!!

アイシクルの体力と魔力が完全に回復してしまったせいで、戦況が一気にアイシクルのほうへと傾いてしまった。一方ゲルヒルデによって治療を受けているリリシアは、体を覆う氷が完全に解け再び戦える状態にまで回復する。

「ありがとうゲルヒルデ…これでまた戦えるわ!!

「仲間を助けるのが治癒術師(ヒーラー)の役目ですので、困った時はお互い様よ。あなたが氷漬けにされている間、カレニアさんが炎の術でアイシクルを追い詰めていたのですが…緑色の液体を飲んで回復し、戦いが振り出しに戻ってしまったようですわ。」

ゲルヒルデからアイシクルとの戦いの経緯を知ったリリシアは、残念そうな表情でゲルヒルデにこう答える。

 「そう…アイシクルの体力と魔力が完全に回復してしまったことは非常に残念ね。ここはもう一度私が戦線に復帰するしかないわね。」

氷漬けから回復したリリシアは、劣勢に立たされたクリスたちの加勢へと向かっていく。一方アイシクルと戦いを繰り広げているクリスとカレニアは、完全回復を果たしたアイシクルに苦戦を強いられていた。

「せっかくここまで追い詰めたのに…回復するなんて卑怯よっ!!

「悪いわね…ニルヴィニア様からあなたたちを始末するようにと命じられたのでね。何としてでもここで確実に倒さなきゃ、ニルヴィニア様に申し訳が立たないからね!!

アイシクルは指先から無数の氷のつぶてを放ち、クリスとカレニアを徐々に追い詰めていく。クリスはアイシクルの放った氷のつぶてをかわし、アイシクルの背後へと回り込み羽交い絞めにする。

「しまった!!は…離せっ!!

「カレニア…私がアイシクルの身動きを封じているうちに術を放つ準備をっ!!

クリスがアイシクルの動きを封じる中、カレニアは炎の術を放つべく早口で詠唱を始める。しかしアイシクルは必死にクリスの拘束から逃れるべく、体をばたつかせて抵抗する。

「今すぐ離せば痛い目を見なくて済むわよ…もし離さないのなら、あなたを氷漬けにするまでよっ!!

アイシクルは全身に極低温の魔力を集め、クリスの周囲の温度を低下させる。アイシクルの体から放たれる極低温の冷気はクリスから体力を奪い、徐々にアイシクルを拘束する手が震える。

「さ…寒さで体に力が入らない!!でも…こんなところで負けていられないわっ!!

強烈な寒さによって全身から体力を奪われているクリスは持てる力を振り絞り、アイシクルを拘束する。一方そのころカレニアは術の詠唱を終え、両手に魔力を集め炎の術を放つ。

 「燦々たる焔の魔力よ…全てを焼きつくす波となって対象を焼きつくさんっ!!ヘルプロミネンス!!

カレニアは両手に集めた炎の魔力を解放した瞬間、マグマのように脈打つ炎の波がアイシクルのほうへと襲いかかる。クリスに羽交い絞めにされ逃げることができないアイシクルは、カレニアの炎の術の直撃を受けてしまう。

「ぎゃあああああああぁぁっ!!!

カレニアの放った燦々たる炎の波に焼かれたアイシクルは大きなダメージを受け、その場に倒れピクリとも動かなくなる。

「はぁはぁ…ありがとうクリス。あなたが奴の動きを封じてくれたおかげでアイシクルを倒すことができたわ。さて、仲間たちのもとに戻りま……っ!?

カレニアが仲間のもとへと戻ろうとしたその時、傷つき倒れたアイシクルが立ちあがってくる。アイシクルの周囲には凄まじいまでの混沌のオーラが発生し、冷たくも禍々しい雰囲気を醸し出していた。

「クリス、あいつ…何か様子がおかしいわっ!!武器を構えてっ!!

「私が糞汚いネズミどもにここまで追い詰められては…この力を使うしかないわね!!ニルヴィニア様より与えられた黄金郷の力を得られるという禁断の術で……貴様らの息の根を止めてやるっ!!

アイシクルは全身に集めた魔力を解放し、黄金郷の力を得るべく禁断の術を唱え始める。

「黄金郷に眠りし禁断の力よ…今こそ私に力を与えたまえっ!!ドラグニーア・エルディラスっ!!

詠唱を終えた瞬間、アイシクルの華奢な体が徐々に極低温を纏う竜の姿へと変身していく。

 「や…やばいわね。あいつが禁断の力を手に入れてしまったわ。以前戦ったマグマ・レンソンは炎の巨人に変身していたが、アイシクルの場合は竜のようね。いずれにせよ、変身前よりも飛躍的に戦闘能力が上がっているわ!!

カレニアが眼鏡を使いアイシクルの戦闘能力を探る中、クリスたちの加勢に来たリリシアがカレニアのもとに現れる。

「カレニア、私も一緒に戦うわっ!!

「ちょうどいいところに来たわ…ついにアイシクルが黄金郷の禁断の力を手に入れ、極低温の冷気を操る竜に変身してしまったわ!!リリシア、是非とも手を貸してちょうだいっ!!

手を貸して欲しいとのカレニアの言葉を聞いたリリシアは、両手に炎の魔力を集めて戦いの構えに入る。

「わかったわ。うしろで待機している仲間たちにもクリスの加勢に来るようにと呼びかけておいたから、あと少ししたら来るはずよ。さて、先ほどの借りを倍にして返してやろうじゃないのっ!!

リリシアの言葉の後、クリスたちは極低温の冷気を纏う竜と化したアイシクルに立ち向かうのであった……。

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