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蘇生の章2nd第百十話 零下の襲撃

 ニルヴィニアの配下の一人であるマグマ・レンソンを倒し一時の休息を過ごしている中、セディエルがオルトリンデの助力を得て黄金郷への侵入を果たした。一方黄金郷へと入り込んだセディエルの気配を感じ取ったニルヴィニアはヴァルハラ地下水道へと続く転送陣を破壊した後、創造神から奪った魔力で魔物を生み出し、侵入者を排除するようにと命じた後、ニルヴィニアによって生み出された魔物たちは次々と神殿の中へと向かっていった……。

 

 創造の魔力によって生み出された魔物たちが侵入者の気配を追いながら神殿の中を進む一方、セディエルは魔物たちに見つからぬように神殿の中を移動し、クリスたちと合流を果たした。しかしその時、ニルヴィニアから侵入者の排除を命じられた魔物たちに包囲され、戦わなければならない状況になってしまう。クリスたちは魔物たちの圧倒的な数に押され苦戦を強いられるが、セディエルの光の術により魔物たちを一掃することに成功した。ニルヴィニアが侵入者を排除するために生み出した魔物たちを全て撃破したクリスたちは、ニルヴィニアの待つ神殿の最上階へと向けて足を進めるのであった……。

 

 一方ニルヴィニアの配下の一人である零酷妃アイシクルはクリスたちの気配を探っていた。

「神殿の二階付近から侵入者の気配を感じるわ…配下の一人であるマグマ・レンソンを倒し、さらにはニルヴィニア様が生み出した魔物まで倒してしまうとはね…ニルヴィニア様の計画遂行のためにも、何としても倒さなきゃいけないわね。」

神殿の二階にクリスたちの気配を感じ取ったいると感じ取ったアイシクルは全身にあらゆるものを凍てつかせる氷のオーラを纏い、神殿の床を滑るようにしてクリスたちのいる方へと向かっていく。

「ニルヴィニアの計画を阻止しようとする小汚いネズミ共は、私が殺る……。」

アイシクルはその眼に静かなる怒りを浮かべながらクリスたちのほうへと向かう一方、クリスたちは神殿の二階へと到着し、戦いで失った体力と魔力を回復させ次の戦いに備えていた。

 「みんな、体力と魔力の回復は済ませたわね。しかしここは敵の本拠地…ニルヴィニアの配下はあと二人いるから、まだまだ油断はできそうにないわね。」

回復を終えたクリスたちが先を進もうとした瞬間、突然クリスたちの眼前に冷やかな霧が立ち込め、周囲の温度が真冬のような寒さとなる。突然の気温の変化にクリスたちが寒さに震える中、冷やかな霧の中に人影が現れる。

「やっと見つけたわ…ニルヴィニア様の浮遊要塞に入り込んだ小汚いネズミどもめ……っ!!

「早速敵が現れたようね…この先から凄まじい魔力を感じるわ!!みんな、武器を構えて戦う準備をっ!!

前方から敵の気配を感じたクリスは仲間たちに戦う準備をするようにと告げた瞬間、突如前方から鋭い氷の槍がクリスのほうに飛んでくる。クリスはアストライアの盾を構えて、氷の槍の一撃を防ぎ直撃を免れる。

「私の放った氷の槍を防ぐとはなかなかやるじゃない…自己紹介がまだだったわね。私の名は零酷妃アイシクル…ニルヴィニア様の配下の一人よ。ニルヴィニア様の命により、黄金郷に入り込んだ小汚いネズミどもを排除するっ!!

クリスたちに自己紹介を伝えた後、アイシクルは有無を言わさずクリスたちに襲いかかってくる。自らの指を氷の刃に変えて襲いかかるアイシクルに対し、クリスは光の剣を構えて応戦する。

「私は極低温の氷の魔力を操り、あらゆるものを凍てつかせる能力をもっているのよ。私が少し吐息を漏らせば…その息は白く輝く風となってあなたを凍てつかせることもできるのよっ!!

アイシクルがクリスに息を吹きかけた瞬間、吐いた息が白く輝く風となってクリスに襲いかかる。強力な冷気を含んだ風はクリスの体の自由を奪い、徐々に体が凍りついていく。

「あ…足が動かないっ!!ど…どうなっているのよっ!!

「さて…まずはあなたから氷像にしてあげるわっ!!氷の眼差し(シヴァズ・アイ)!!

アイシクルの瞳が妖しく光った瞬間、クリスの体が徐々に凍りつき物言わぬ氷像と化す。クリスが完全に凍りついた瞬間、アイシクルはクリスの息の根を止めるべく右足に氷の魔力を集め、氷の鉄脚を放つ態勢に入る。

 「私の必殺の氷の一蹴りで…粉々に砕け散るがいいっ!!氷雪脚(ブリザード・フェムル)!!

氷塊の如き右足から繰り出される脚技が氷像となったクリスに振りかかろうとした瞬間、リリシアが氷像となったクリスのもとに駆けより、アイシクルの氷の蹴りの一撃を庇う。

「はぁはぁ…間に合ってよかったわ!!私が来るのが少しでも遅かったら完全に粉々になっていたわ…。」

「小娘め…余計な真似をっ!!まぁいい…貴様もあの小娘と同じように氷像にしてくれるっ!!

クリスを殺し損ねたアイシクルは血走った目でリリシアを睨みつけ、瞳を妖しく光らせ氷の眼差しを送る。しかしアイシクルの氷の眼差しを受けてもなお、リリシアは凍りつく様子はなかった。

「な…なぜ私の氷の眼差しを受けても氷像にならん!!小汚いネズミはおとなしく凍りついていればいいのよっ!!

リリシアには氷の眼差しが効かないと知ったアイシクルは指先に氷の魔力を集め、強力な冷気の波動をリリシアに放つ。リリシアは赤き炎の魔力を含んだ炎弾を放ち、アイシクルの放った冷気の波動を相殺していく。

「貴様の操る極低温の冷気など…私の赤き炎の前には無力に等しいっ!!ブレイズ・ストームっ!!

リリシアは赤き炎の魔力を集めて炎の嵐を巻き起こし、アイシクルに攻撃を仕掛ける。迫りくる魔姫の赤き炎の術を前に、アイシクルはリリシアの術を相殺するべく両手に氷の魔力を集め吹雪の術を放つ。

「小娘の癖に…ずいぶんと舐めたことを言ってくれるじゃない。なら私の吹雪で凍りつきなさいっ!!南極の風(アークティック・ブリザード)っ!!

アイシクルが詠唱を終えた瞬間、両手に集めた氷の魔力が強烈な極低温の嵐となってリリシアの赤き炎の嵐を徐々に相殺していく。アイシクルの極低温の冷気に押されていくリリシアはさらに魔力を込め、アイシクルの吹雪を押し返そうとする。

「赤き炎の魔力よ…私にさらなる力をっ!!

「まだやるというのなら…全てを凍りつかせるまでよっ!!

魔力が込められた両者の強大な術が激しくぶつかり合い、凄まじいつばぜり合いと化す。両者一歩も譲らぬ激しいつばぜり合いの末、両者の術は爆発を起こし打ち消される。

 「はぁはぁ…なんとか奴の相殺できたわ。早くクリスを安全な場所に…っ!?

リリシアが氷像となったクリスを抱いて安全な場所に向かおうとした瞬間、アイシクルが神殿の床を滑るようにしてリリシアの前に回り込み、逃げ場をなくす。

「しまった…奴に回り込まれたわっ!!

「あなたたち二人は絶対に逃がさない…二人とも氷漬けにしてあげるわ!!

アイシクルは指先から極低温の光線を放ち、リリシアの足を凍らせ身動きを封じる。足を凍らされて身動きがとれぬリリシアの前に、アイシクルが不気味な笑みを浮かべながら近づいてくる。

「うふふ…あなた、きれいな顔をしているわね。凍てつく氷塊に抱かれ眠るがいい…氷の口づけ(シヴァズ・キス)」

アイシクルの唇がリリシアの唇に触れた瞬間、リリシアの体が徐々に凍りつき徐々に体が凍りついていく。両手両足が凍りつき術も唱えることができなくなったリリシアだが、全身に赤き炎の魔力を集めて身動きを封じる氷を溶かそうとする。

「私は…私はまだ負けるわけにはいかないわ!!愛する者たちがいる地上界を…そう易々とニルヴィニアなんかに渡さないわっ!!

その言葉の後、リリシアは体から炎の波動を放ち体の自由を奪う氷を弾き飛ばす。魔姫の体から放たれた炎の波動は広範囲に広がり、アイシクルによって氷漬けにされたクリスの体の氷を溶かしていく。

「な、なんてやつなの…全身が凍えきる前に私の氷をはじき返してしまうなんて!!

「私の赤き炎を魔力を舐めてもらっては困るわ。私の赤き炎は全てを焼きつくす業火…貴様の操る氷の魔力で私は氷漬けにすることなどできぬ。さて、そろそろ本気を出そうかしら……。」

リリシアは手のひらに赤き炎の魔力を集め、無数の炎弾を放ちアイシクルに放つ。しかしアイシクルはリリシアの放った炎弾を滑るようにかわし、氷の礫を飛ばしてリリシアを攻撃する。

「くっ…神殿の床を滑るようにして移動しているせいで攻撃が当たらないわ!!床を滑るようにして移動するとなれば…何らかの形であいつの移動範囲を狭くしてしまえばなんとかなりそうね。」

アイシクルが滑るように移動することにヒントを得たリリシアは、炎の魔力を集め円形の炎の壁を生み出す。炎の壁が出来たことで、アイシクルは徐々に移動範囲が制限される。

「きゃっ…炎の壁っ!!危うくぶつかるところだったわ。」

リリシアの作りだした炎の壁にぶつかる寸前でアイシクルは足に込められた氷の魔力を解除して方向転換を行おうとした瞬間、リリシアが蹴りを放ちアイシクルを大きく吹き飛ばす。

 「この一撃で…終りにして差し上げますわっ!!赤炎脚(ブレイズ・フェムル)!!

リリシアの炎の蹴りを受けたアイシクルは炎の壁に激突し、赤き炎の業火に身を焼かれる。しかし炎の一撃を受けてもなお、アイシクルは再び立ち上がりリリシアのほうへと向かってくる。

「うぐぐ…ニルヴィニア様の配下である私がまさかあなたのような小娘に深手を負わされるとはね。だがここで私が敗れてしまえばニルヴィニア様に申し訳が立たない…あなたたちのような小汚いネズミどもは私が確実に処分してやるわっ!!

怒りの表情を浮かべるアイシクルは口から氷点下の息を吐き出し、リリシアの作りだした炎の壁を相殺する。

「私の炎の壁を氷の魔力で相殺するとは…なかなかやるじゃない。」

「…長期戦は性に合わないのでね…なるべく早く済ませるっ!!

その言葉の後、アイシクルは鋭い氷の爪を作りだしてリリシアに襲いかかる。凶悪なまでの鋭さを持つアイシクルの氷の刃に対し、リリシアは鉄扇を振るいアイシクルの攻撃を受け流していく。

「ここは奴の攻撃を可能な限り受け流し、反撃のチャンスを……きゃあっ!!

アイシクルの攻撃を次々と受け流すリリシアであったが、アイシクルの鋭い氷爪がリリシアの体を貫く。アイシクルの氷の刃に貫かれた魔姫は傷口から徐々に体が凍りつき、氷像と化していく。

 「うふふ…少しばかり傷がついてしまったが、美しく仕上がったわ。さて…そろそろ粉々に砕いてさしあげますわっ!!氷雪脚(ブリザード・フェムル)っ!!

不気味な笑みを浮かべるアイシクルは氷の魔力を足に込め、氷像となったリリシアを粉々に砕くべく氷塊のごとき蹴りを放つ。氷塊のごとき蹴りがリリシアの体を砕こうとしたその時、間一髪のところでカレニアが高圧縮の炎弾を放ち、アイシクルを大きく吹き飛ばす。

「まずは一人…あの世に送って差し上げ……きゃああぁっ!!

「私たちの大切な仲間を…あなたなんかに殺させやしないっ!!ここは私がなんとかするから、ゲルヒルデはリリシアを安全な場所に運んでちょうだいっ!!

ゲルヒルデに氷漬けにされたリリシアを安全な場所に運ぶようにと命じた後、カレニアは剣を構えてアイシクルのほうへと向かっていく。一方ゲルヒルデは氷漬けにされたリリシアを安全な場所へと避難させ、治療に入る。

「このような場合は無理に溶かすとひびが入る可能性があるかもしれないから、ここはホットストーンを使ってゆっくり解凍していくことが大事みたいね。」

ゲルヒルデは体にこびりついた氷を溶かすための道具であるホットストーンを取り出し、氷漬けにされたリリシアの周りに置き、解凍に取り掛かる。はたしてクリスたちはニルヴィニアの配下の一人である零酷妃アイシクルを倒し、ニルヴィニアの野望を阻止することができるのか……!?

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