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蘇生の章2nd第百八話 蹂躙する聖鎖

 クリスたちがマグマ・レンソンと熾烈なる戦いを繰り広げる中、マグマ・レンソンは超獄炎状態(イフリートフォルム)と化し、クリスたちを徐々に追い詰めていく。全員が力を結集させてマグマ・レンソンを迎え撃つが、炎の魔力によって強化された膂力から繰り出される一撃によってクリスが力尽き、戦況は悪くなる一方であった。クリスが戦闘不能に陥る中、エルーシュが傷つき倒れたクリスに代わってマグマ・レンソンを迎え撃つ。エルーシュは術と拳の連打でマグマ・レンソンを仕留める寸前にまで追い詰めたが、黄金郷に伝わる禁断の術を使い禍々しい姿へと変貌を遂げてしまった……。

 

 クリスたちが禁断の力を手に入れたマグマ・レンソンに苦戦を強いられる中、セルフィの治療を終えたゲルヒルデがクリスたちのもとへと現れる。

「セルフィ様の治療が終わったので、クリスたちのサポートに入ります!!

「みんな、セルフィ様の治療に入っていたゲルヒルデが来てくれたわ…これで戦いが楽になりそうだわ!!

ゲルヒルデは槍を構え、禍々しい姿に変貌を遂げたマグマ・レンソンを攻撃する態勢に入る。

「ほう…小娘が俺様にやりあおうってのか!!上等だ、俺様は女でも容赦はしない…黄金郷の禁断の力、お前の体で思い知るがいいっ!!

マグマ・レンソンは背中のマグマの噴出孔からマグマを飛ばし、ゲルヒルデを襲う。しかしゲルヒルデは飛んでくるマグマを盾で防御しつつ、一気に距離を詰めていく。

「お姉さん、槍の使い方は十分勉強しているのよ。さぁて、次は私の番よっ!!

ゲルヒルデは防御の態勢を解き、槍を構えてマグマ・レンソンの足へと突っ込んでいく。遠心力の加わった渾身の突きがマグマ・レンソンの足に炸裂したが、わずかしかダメージを与えられなかった。

 「こんな貧弱な槍の一撃など、禁断の力を得た俺様にとっては痛くもかゆくもないわっ!!このまま踏みつぶしてくれ……ぐおぉっ!!

マグマ・レンソンが足を上げようとした瞬間、ゲルヒルデの手に持った槍の先端部が回転しマグマ・レンソンの足を抉る。ゲルヒルデの槍によって足を抉られたマグマ・レンソンは痛みのあまり態勢を崩し、大きく地面へと転倒する。

「お姉さんの扱う槍はね…ディンちゃんが改造してくれた回転式の槍なのよ。突撃で相手に一突きを与えた後、槍の先端を回転させることで相手に深い傷を負わせることができるのよっ!!

マグマ・レンソンが態勢を崩しもがき苦しむ中、ディンゴはボウガンを構えてマグマ・レンソンのほうへと向かっていく。

「俺がシルバーランスに手を加えて改良した回転式の槍『シルバーグレイブ』の威力はどうだっ!!次はこの俺が相手になってやるぜっ!!

ディンゴは相手に強力な雷を与える弾丸である雷撃弾を装填し、マグマ・レンソンに照準を合わせ引き金を引く。ボウガンの発射口から放たれた雷撃弾はマグマ・レンソンの体に着弾した瞬間、強烈な電撃が体を駆け巡る。

「うぐぐ…おのれボウガン小僧め!!次こそこの俺様がとどめをさしてや……っ!!

マグマ・レンソンが体中に力を込めて立ちあがろうとした瞬間、ゲルヒルデが放った聖なる光弾の一撃を受け再びその場に崩れ落ちる。再び態勢を崩す中、ゲルヒルデは聖なる魔力を集め束縛の術の詠唱を始める。

「聖なる魔力よ…悪しき者を縛る鎖とならんっ!!ホーリー・チェイン!!

ゲルヒルデが詠唱を終えた瞬間、無数の聖なる鎖がマグマ・レンソンの体を拘束する。

「おのれ小娘め…こんな魔力でできた鎖など、この俺様の怪力で引きちぎってくれるっ!!

マグマ・レンソンが身動きを奪う聖なる鎖を力を込めて引きちぎろうとしたその時、聖なる鎖がマグマ・レンソンの体を締め付けていく。

 「私の放った聖なる鎖は…引きちぎろうとすれば相手の体を締め付ける。つまり、私が術を解かない限りは相手に痛みと苦しみを与え続ける。これ以上痛みと苦しみを受けたくなかったら抵抗しないことね…。」

ゲルヒルデに冷たくあしらわれ怒りに震えるマグマ・レンソンは口を大きく開き、全てを焼きつくすマグマの高周波ブレス吐き出しゲルヒルデを襲う。ゲルヒルデは素早いステップで回避し、すぐさま反撃の態勢に入る。

「貴様ぁ…あまり調子に乗るんじゃねぇぞっ!!

「聖なる鎖よ…悪しき者に鉄槌を食らわさんっ!!『上昇(クレイン)』アンド『鉄槌(スタンプ)』ッ!!

ゲルヒルデがそう呟いた瞬間、聖なる鎖が大きく伸びてマグマ・レンソンの体を大きく宙へと浮かばせる。天へと伸びた聖なる鎖はマグマ・レンソンを宙に浮かばせた後、大きく急降下を始めマグマ・レンソンの体を地面へと激しく叩きつける。

「すごい…ゲルヒルデはあの聖なる鎖を意のままに操っているわ!!このままいけば…勝てるかもっ!!

「しかしあの聖なる鎖を維持するためには膨大な魔力が必要だから、彼女の魔力が尽きれば聖なる鎖は解けて反撃を許してしまうわ。クリス、ここは私たちの魔力をゲルヒルデに与え少しでも力になれるよう協力しましょう!!

クリスとカレニアは自分の魔力を少しだけ集め、ゲルヒルデに分け与える。クリスとカレニアの魔力を受けとったゲルヒルデは聖なる鎖に魔力を込め、マグマ・レンソンの体をさらに締め付ける。

 「ありがとう…あなたたちのおかげでで聖なる鎖を維持できる時間が延長できたわっ!!さて、お姉さんがあの怪物を一気にやっつけちゃうわよっ。」

聖なる鎖によってギリギリと締め付けられているマグマ・レンソンは口からマグマの塊を飛ばし、四肢を縛る聖なる鎖を溶かし束縛から逃れる。聖なる鎖が外れ自由となったマグマ・レンソンは背中のマグマの噴出孔からマグマを噴火させ、怒りの表情でゲルヒルデのほうへと向かってくる。

「私の聖なる鎖を…口から吐き出したマグマで溶かしてしまうなんてっ!!

「小娘め…よくもこの俺様をここまで痛めつけてくれたなぁっ!!今度は俺の番だ…覚悟しやがれぃっ!!マグマ・ストーム!!

マグマ・レンソンは両手に炎の魔力を集め、周囲一帯を吹き飛ばすマグマの嵐を巻き起こす。ゲルヒルデは強烈な熱風に耐えながら、再び魔力を込めて聖なる鎖に魔力を注ぎ込む。

「解けた聖なる鎖よ…再び集結し悪しき者を縛りつけんっ!!『集結(ギャザリング)』アンド『拘束(バインド)』!!

ゲルヒルデの言葉の後、マグマで溶けて解けた聖なる鎖がマグマ・レンソンの体に集結し再び身動きを奪う。

「うぐぐ…体が動かぬっ!!しかしお前の聖なる鎖はマグマで溶けて解除されたはずだ!!

「最初に言ったはずよ…私の聖なる鎖は私が術を解かない限り痛みと苦しみを与え続けると。万が一聖なる鎖が破られても、私が命令を与えれば再び集結し相手を拘束するっ!!

マグマ・レンソンが聖なる鎖によって再び身動きを封じられる中、リリシアとセルフィが戦いの場へと戻ってくる。リリシアはマグマ・レンソンを倒すための作戦の内容をセルフィに伝えた後、実行に移すべく術を放つ態勢に入る。

 「ありがとうゲルヒルデ…あなたのおかげで十分作戦を練る時間が出来たわ!!セルフィ様、まずは私が闇の術で奴を弱らせるから、その間に魔力を練り合わせて波動弾を大きくしてちょうだいっ!!

セルフィに作戦の内容を伝えた後、リリシアは両手に闇の魔力を集めマグマ・レンソンに術の連撃を喰らわせる。リリシアがマグマ・レンソンに攻撃を加える中、セルフィは急いで魔力を練り合わせ、波動弾を徐々に大きくしていく。

「もっと…もっと波動弾を大きくしなきゃ…奴は倒せないわっ!!

「わかった…奴はゲルヒルデが聖なる鎖の術で拘束しているから体は動かせない状態だが、奴の背中にはマグマを吹き出す為の噴出孔があるから油断できないわ。セルフィ、波動弾を放つ準備ができたら連絡をお願いっ!!

リリシアが闇の術で聖なる鎖で身動きがとれないマグマ・レンソンを攻め続ける中、セルフィは波動弾にさらに魔力を込めていく。

 「ちくしょう…俺様があの小娘の聖なる鎖の術のせいで動けない間に好き放題やりやがってっ!!もう許さん…これでも喰らって燃え尽きやがれっ!!

マグマ・レンソンはマグマの噴出孔からマグマを噴火させ、無数のマグマの塊をリリシアのほうへと飛ばしてくる。

「セルフィ様…ここは私に任せてください!!

回避不能なほどのマグマの塊を前に、リリシアは降り注ぐ無数のマグマの塊を防ぐべく闇の術を唱える。

「闇の魔力よ…全てを押しつぶす重力とならんっ!!グラヴィティ・フィールドっ!!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、広範囲に強力な重力場が発生しマグマ・レンソンの背中の噴出孔から放たれたマグマの塊が勢いを失い、垂直に地面に落下していく。その凄まじい重力の影響により、マグマ・レンソンはさらに身動きが取れない状態となる。

「よし…これで奴の攻撃を防ぐことに成功したわ!!セルフィ、とどめの一撃を放つまで後どれぐらいかかりそう?

「あなたのおかげで波動弾を十分大きく出来たわ。いつでも放てるわっ!!

リリシアに準備完了の旨を伝えたあと、セルフィは魔力を込めて大きく成長した波動弾をマグマ・レンソンに放つ態勢に入る。

 「私の最大級の波動弾の一撃で…跡形もなく消えなさいっ!!

その言葉の後、セルフィは大きく成長した波動弾を放つ。全てを破壊するほどの大きさとなった波動弾がマグマ・レンソンの体を飲み込み、体の内側に致命的なダメージを与えていく。

「うぐぐ……こ、この俺様が小娘ごときに…ぐおおぉっ!!!うぐああああぁぁっ!!

神殿中に響き渡る轟音のような断末魔の叫びの後、マグマ・レンソンはその場に倒れ息絶える。マグマ・レンソンとの長き戦いを終えたクリスたちは戦いで疲れてしまい、その場に倒れ込む。

「はぁはぁ…やっとニルヴィニアの配下のマグマ・レンソンを倒したわ。」

「私も…さすがにこの戦いで体力と魔力を消費しすぎたみたいね。みんな、ここで少し休憩しましょう。ここで体力と魔力を回復しておかないと、その先の戦いでやられてしまうからね。」

マグマ・レンソンを撃破したクリスたちは戦いで失った体力と魔力を回復させるべく、しばしの休息にはいるのであった……。

 

 クリスたちが休息をとる中、黄金郷の神殿の最上階の聖域に座すニルヴィニアは、マグマ・レンソンの生命反応が消えたことを感じ取り、他の配下たちにそのことを伝える。

「マ…マグマ・レンソンの生命反応が消えた!!私が禁断の力を与えてやったというのに、どうやら例の小汚いネズミどもに倒されてしまうとは…とんだ期待外れだったようだな。さて、次は誰が侵入者の排除に向かうのだ?

ニルヴィニアの言葉の後、アイシクルが手を挙げて名乗り出る。

「マグマ・レンソンは戦闘能力は私より上だが、所詮は暑苦しいだけの脳筋だったようね…次は私が行くわ。」

「アイシクル、お前が倒されたら次は私か…必ずやわが同胞であるマグマ・レンソンの仇を討ってくれ。」

グラヴィートに見送られ、アイシクルは侵入者の排除へと向かうべく聖域を後にする。

 「私の浮遊要塞に入り込んだ小汚いネズミ共は早々に排除しなければならん…冷酷妃アイシクルよ、よろしく頼むぞ…私の地上界侵略の計画を遂行する為にっ!!!

ニルヴィニアの言葉の後、己の野望の遂行するべく黄金郷を地上界へと向けて発進させるのであった……。

 

 その頃ヴァルハラでは、オーディンがオルトリンデにクリスたちはどこへ行ったのかを尋ねる。

「オルトリンデよ、ヘルヘイムの将のジャンドラを倒した英雄たちは皆どこへ行ったのだ…」

「むむ…クリスたちのことか?あの者たちはニルヴィニアの野望を止めるために大庭園の地下水道の転送陣を使い黄金郷へと向かった。ちなみに黄金郷へと行くための転送陣のある部屋がある場所は私が教えた。」

黄金郷への行き方をクリスたちに教えたという事を知ったオーディンは

「オ、オルトリンデよ…なぜあの者たちに黄金郷への行き方を教えたのだ!!まぁあの者たちは悪い奴は放っておけないから、私が止めても無駄だろうな。」

オーディンの言葉の後、オルトリンデがクリスたちの力を信じようという旨を伝える。

「オーディン様、今こそクリスたちを信じようではないか。ジャンドラを打ち倒したクリスたちならきっと、ニルヴィニアの野望すら止められるかもしれんからな。私はあの者たちを信じている…その勇気に再び天界が救われるとな。」

オルトリンデがそう告げた瞬間、二人の前にセディエルが現れ、思いもよらない言葉を口にする。

 「話は全て聞かせてもらいました。クリスさん達は今、邪光妃ニルヴィニアによって占領された黄金郷を取り戻すために戦っているのですね。クリスさんたちのサポートをするために黄金郷に行かせてくれませんかっ!!

クリスたちを助けるために黄金郷に行きたいというセディエルの言葉を聞いたオルトリンデは、危険だからヴァルハラへ戻るように諭すが、オーディンが行かせてやれと促す。

「な…何を言っているのだっ!!黄金郷は危険だ…お前が行っても死に行くようなものだぞ!!ここはクリスたちに任せて、お前は宮殿に戻るんだ。」

「セディエルはクリスたちを助けるために黄金郷に行きたいと言っておろう…オルトリンデよ、行かせてやれ。」

オーディンに促されたオルトリンデは、セディエルを黄金郷へと続く転送陣のある部屋へと案内するべくその場を後にする。

「オーディン様がそう言うのなら仕方ない…セディエルといったな。私が今から黄金郷へと続く転送陣がある部屋へと案内するのでついてきたまえ。」

オルトリンデが私について来るようにとセディエルに伝えた後、二人はヴァルハラの大庭園へと向かうのであった……。

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