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蘇生の章2nd第百七話 禁断の力【エルディラス】

 ニルヴィニアの配下の一人である灼熱王マグマ・レンソンを倒すべく、クリスたちは黄金郷の神殿の中で激戦を繰り広げていた。クリスとカレニアがマグマ・レンソンに立ち向かっていくが、その圧倒的な強さの前に徐々に追い詰められてしまう。炎の魔力によって隆起した筋肉から放たれる連続攻撃を受けて態勢を崩しているクリスとカレニアに止めを刺そうとした瞬間、ディンゴが背後から水冷弾を放ちマグマ・レンソンに不意打ちを仕掛ける。クリスたちは水属性の攻撃を受けてパワーが半減したマグマ・レンソンに一斉攻撃を仕掛け戦況が逆転したと思われたその時、力を取り戻したマグマ・レンソンの反撃を受けリリシアが戦闘不能に陥ってしまった。超獄炎状態(イフリートフォルム)と化し大きく戦闘能力が上昇したマグマ・レンソンが、リリシアを欠いたクリスたちに襲いかかるのであった……。

 

 体中の炎の魔力を最大限に高め超獄炎状態と化したマグマ・レンソンは青い炎を燃え上がらせ、クリスたちのほうへと向かってくる。灼熱王の体毛から燃え上がる青い炎は全身を包み、周囲一帯を焼きつくす程であった。

「おのれ貴様ら…よくもやってくれたなぁっ!!跡形もなく燃やしてやるから覚悟しろよっ!!

怒りに燃えるマグマ・レンソンは青い炎を纏いながら大きく飛び上がった後、そのまま急降下し炎拳の一撃を神殿の床へと放つ。マグマ・レンソンの拳が地面に叩きつけられた瞬間、強烈な熱風と爆風が巻き起こりクリスたちを襲う。

「まずは挨拶代わりだ…受け取りやがれっ!!

衝撃とともに放たれた熱風と爆風はあらゆるものを吹き飛ばし、防御の体勢をとるクリスたちを大きく吹き飛ばす。

「くっ…これが奴の本気というわけね。みんな、ここは隙を見つけて攻撃するしかないわっ!!

「どうだ小娘…この俺様は強ぇだろうがよぉっ!!貴様らだけは許さねぇ…跡形もなく溶けてなくなりやがれっ!!

マグマ・レンソンは口から煮えたぎるマグマを吐き、クリスたちに襲いかかる。しかしクリスたちは吐き出されたマグマを回避し、一気にマグマ・レンソンとの距離を詰めていく。

 「奴め…炎を焼きつくす程の熱量を持つマグマを吐き出すとはね。みんな、奴の口から吐き出されるマグマに当たってしまうと骨まで溶けてしまうわよっ!!

クリスたちがマグマ・レンソンとの距離を詰めるその間にも、マグマ・レンソンは口から煮えたぎるマグマを吐き出してクリスたちの動きを阻む。その影響により神殿の床には小規模なマグマ溜まりができ、クリスたちの足場を奪っていく。

「ほう…俺様との距離を詰めるつもりかっ!!だが、この俺様の怒りはこんなもんじゃねぇぜっ!!

マグマ・レンソンは大きく口を開け、神殿の天井に向かって煮えたぎるマグマを連続で吐き出す。天へと放たれた無数のマグマの塊は隕石のごとくクリスたちに降り注ぎ、クリスたちは大きく態勢を崩してしまう。

「みんな、奴が無数のマグマの塊を降らせてきたわっ!!ここは回避の体勢を……きゃあぁっ!!

クリスが仲間たちに回避の体勢をとるようにと伝えようとした瞬間、クリスは空から降ってきたマグマの塊に被弾してしまう。降り注ぐマグマの塊は容赦なくクリスたちに降り注ぎ、仲間たちは次々と降ってくるマグマの塊を回避するので精一杯の状態であった。

「うぐぐ…私はまだやれるわ!!

「俺様のメテオでは消し炭にし損ねたが…貴様は大きなダメージを負っている!!なら俺様が次に放つ一撃で貴様は完全に消し炭にしてやるよぉっ!!

マグマの塊の直撃を受けたクリスであったが、再び立ち上がりマグマ・レンソンを迎え撃つ態勢に入る。クリスたちが武器を構えてこちらのほうへと走ってくる中、マグマ・レンソンは大きく息を吸い込み咆哮の体勢に入る。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!

マグマ・レンソンは吸い込んだ息を思い切り吐き出し、熱を帯びた咆哮を放つ。強烈な咆哮とともに凄まじい衝撃波が発生し、神殿の柱が次々と倒れていく。

「な…何なのよこの強烈な雄叫びは!!ここは急いで耳を塞ぎ、聴覚を破壊されないように気をつけ……しまったっ!!

最初のうちはなんとか踏ん張って耐えるが、耳を劈くほどの轟音に似た咆哮によりクリスは戦いの構えを解き耳をふさいでしまう。態勢を崩したクリスは大きく吹き飛ばされ、大きく壁に叩きつけられる。

 「どうした小娘…まさかこれで終わりというわけじゃないだろうな?俺様は貴様が痛みに苦しみ息絶える姿を拝まなきゃ納得いかねぇんだよっ!!

マグマ・レンソンは口から煮えたぎるマグマを吐き出し、両腕で吐き出した溶岩を練り合わせマグマの爆弾を作りだす。どくどくと煮えたぎる溶岩の爆弾をクリスのほうへと投げつけようとした瞬間、カレニアが体当たりを仕掛け態勢を崩させる。

 「そうはさせないっ!!

カレニアの体当たりを受け、マグマ・レンソンはマグマの爆弾を落としてしまう。

「ちくしょう…お前のせいで爆弾を落としてしまったじゃねぇか!!こうなったらお前から先に…ぐおっ!!

クリスにとどめをさし損ねたマグマ・レンソンが炎の拳を繰り出そうとしたその時、先ほど落としてしまったマグマの爆弾が爆発し、大きく吹き飛ばされる。マグマ・レンソンが態勢を崩している隙に、大きなダメージを負ったクリスを背負い、仲間たちのもとへと走っていく。

「クリス…大丈夫!?

「くっ…こんなところで…倒れている場合じゃない!!カレニア、回復薬をお願いっ!!

カレニアは鞄の中から回復薬の入ったビンを取り出し、傷ついたクリスに手渡す。カレニアから回復薬を受け取ったクリスは回復薬を飲み干し、失った体力を回復させる。

「ありがとうカレニア…おかげで助かったわ。」

「何言ってるのよ…私たちは仲間でしょ!!今私たちの代わりにエルーシュが奴と戦いを繰り広げているわ。クリス、私たちも助太刀するわよっ!!

カレニアがクリスの手当てをする中、エルーシュがマグマ・レンソンと戦いを繰り広げていた。しかし超獄炎状態となったマグマ・レンソンの凄まじい筋力と膂力の前に、エルーシュは徐々に押されていた。

「まだだ…ここで負けるわけにはいかんっ!!仲間たちを痛めつけた貴様だけは許さんっ!!

「お前ごときにこの俺様が倒せると思っていたのか…ならここで一気に葬ってやるぜっ!!

マグマ・レンソンの凄まじい炎の拳の応酬に押されていたエルーシュは全身に力を込め、マグマ・レンソンの拳を掴み大きく投げ飛ばす。マグマ・レンソンが空中で態勢を崩す中、エルーシュは六枚の翼を広げて連続攻撃を喰らわせる。

 「ぐおっ…おのれ貴様!!超獄炎状態の俺様をここまで追い詰めるとはな…だが、この俺様にはどう足掻いても勝てんっ!!

マグマ・レンソンは青く燃え盛る体毛を激しく震わせ、青色の粉塵を周囲一帯にばら撒きエルーシュの視界を奪う。しかしエルーシュは六枚の翼を高速ではばたかせ、発火成分を含む青色の粉塵を吹き飛ばしていく。

「悪いが…私にはそのような小細工は効かない。さて、そろそろ終わりにしようかっ!!

粉塵爆発を阻止したエルーシュは光と闇の魔力を放ちマグマ・レンソンに追い打ちを仕掛ける。エルーシュから猛攻を受けるマグマ・レンソンは超獄炎状態が解けたことにより体毛が青色から徐々に赤色に戻り、隆起していた全身の筋肉が収縮していく。

「ちっ…お前のせいで超獄炎状態が解けてしまったじゃねぇか!!どうしてくれんだよぉッ!!

「仲間たちの痛み…お前の体で思い知るがいいっ!!アースブレイカー!!

エルーシュは拳に増幅された闇の魔力を集め、マグマ・レンソンの体に大地を砕くほどの鉄拳の一撃を喰らわせる。渾身の一撃を受けたマグマ・レンソンは大きなダメージを受け、その場に崩れ落ちる。

「うぐぐぐ…この俺様がこんな優男ごときに追いつめられるとは…無念だ!!

マグマ・レンソンが死を覚悟したその時、ニルヴィニアの声がマグマ・レンソンの耳に入ってくる。

「千里眼の能力で神殿の内部をずっと見ていたが、侵入者ごときに手こずっておるな、マグマ・レンソンよ。いいことを教えてやろう。この黄金郷に伝わる禁断の秘術『エルディラス』を唱えれば、貴様は黄金郷に眠る無限のエネルギーを我が物にすることができる。そうすれば、侵入者など跡形もなく灰にしてやることができるぞ。」

「ニ…ニルヴィニア様っ!!その話は本当か…なら唱えさせてもらうぜ。こいつら全員ボロ雑巾にできりゃなんでもいいんだよぉっ!!黄金の秘術…エルディラスっ!!

黄金郷に伝わる禁断の秘術を唱えた瞬間、マグマ・レンソンの体が徐々に禍々しい姿へと変貌を遂げていく。禁断の力を手に入れたマグマ・レンソンは全身に青い炎を纏わせ、クリスたちのほうへと向かってくる。

 「想像以上だ…体中に力がみなぎってくるぜ。感謝するぜニルヴィニア様…この禁断の力で貴様らを跡形もなく焼きつくしてやるぜぇっ!!

禁断の秘術により禍々しく変貌を遂げたマグマ・レンソンは背中の噴出孔からマグマを噴き上げながら、熱を帯びた咆哮を上げる。その姿はまさに生ける火山そのものであり、全身からは触れるもの全てを燃え上がらせるほどの熱気を放っていた。

「あの一撃で奴を仕留めたと思ったが…まさか奥の手を使ってきたとはな。」

「俺様は黄金郷から無尽蔵に作られる無限のエネルギーを我が物とし、禁断の力を得た…さて、禁断の力でパワーアップした俺様に炎の力、とくと味わうがいいっ!!

マグマ・レンソンは背中にあるマグマの噴出孔を噴火させ、マグマの塊を飛ばしクリスたちを攻撃する。噴出孔から飛ばされた溶岩の塊が着弾した個所がマグマ溜まりとなり、徐々にクリスたちの足場を奪っていく。

「くっ…マグマ溜まりのせいで自由に動けないわ。あのマグマ溜まりに水の属性の術を当てればマグマを固まらせることができるのですが…私は低級の水の術しか使えないわ。」

「低級の術でもいいわ…とにかくやるしかないわ!!クリス、試しにあのマグマ溜まりに水の術を当ててみてっ!!

カレニアの言葉をうけたクリスは水の魔力を集め、精神を集中させて詠唱を始める。

「水の魔力よ…潤す雨となって周囲に降り注がんっ!!レイニー・スコール!!

クリスが詠唱を終えた瞬間、クリスの周囲一帯に雨が降り注ぐ。降り注がれた雨はマグマ溜まりを固まらせ、戦えるスペースを十分に確保することに成功する。

 「よし…クリスのおかげで戦えるスペースが確保できたわ。だが奴はまたマグマを噴火させてくるか分からないから、その時はまた水の術をお願いね!!

カレニアの言葉の後、仲間たちは一斉に戦いの構えをとりマグマ・レンソンを包囲する。一方その頃安全な場所で傷の回復を待つリリシアは、マグマ・レンソンの戦闘力が上がっているという事を察知する。

「な、何が起こっているのよ!?奴の戦闘能力が格段に上がっているわ。クリスたちの身が心配だわ…急がなきゃ!!

妙な胸騒ぎを感じたリリシアは再び立ち上がり、クリスたちのもとへと向かっていく。しかしマグマ・レンソンから受けたダメージは大きく、痛みのあまりその場にうずくまってしまう。

「うぐっ…こんなところで立ち止まっている暇はないわ!!そうだ…ヘルヘイム大監獄で得た自己再生を使えば傷を回復させることができるが、魔力を大幅に消費してしまうのが欠点だから攻撃の術を放てるだけの魔力を温存させておかないとあとできつくなりそうね。」

リリシアは魔力を大幅に消費して自己再生を行い、失った体力を回復させる。体力を完全に回復したリリシアはクリスちのもとへと向かおうとしたその時、セルフィの治療を終えたゲルヒルデが現れる。

「リリシア様、セルフィ様の傷の治療が完了いたしました。私はこれより強敵と戦っているクリスたちのもとに向かい、戦いが有利になるようサポートに入ります。」

「ありがとうゲルヒルデ!!ちょうど私もクリスたちの加勢に向かうところだったのよ。私は少し準備してからクリスたちのもとへと行くわ。」

リリシアが感謝の言葉を述べた後、ゲルヒルデは槍を構えてマグマ・レンソンと戦うクリスたちのサポートをするべく戦場へと戻っていく。リリシアが準備を済ませてクリスたちのもとへと向かおうとしたその時、マグマ・レンソンから受けた傷が完全に回復したセルフィがリリシアの前に現れ、一緒に戦うという旨を伝える。

 「リリシア、私も一緒に戦うわ。あなたと一緒ならなんだか勝てそうな気がするんだ…さて、準備は万端よ。あのマグマ野郎にひと泡吹かせてやろうじゃないのっ!!

リリシアは傷が回復したセルフィとともに、禍々しく変貌を遂げたマグマ・レンソンを倒すべく再び灼熱の戦場へと戻るのであった……。

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