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蘇生の章2nd第百六話 荒ぶる灼熱の王

 ニルヴィニアの野望を止めるべく黄金郷の先へと進むクリスたちの前に、ニルヴィニアの配下の一人である灼熱王マグマ・レンソンによって完膚なきまでに叩きのめされたセルフィが倒れていた。リリシアはゲルヒルデにセルフィの傷を回復させるようにと命じたその時、運悪く黄金郷に入ってきた侵入者を排除するべく神殿内を見回っていたマグマ・レンソンがクリスたちの前に現れ、激しい戦いが幕を開けるのであった……。

 

 セルフィの傷の回復に専念しているゲルヒルデを除く全員が集結したクリスたちは、武器を構えてマグマ・レンソンを迎え撃つ。クリスたちが戦いの構えに入る中、マグマ・レンソンは自らの体毛を激しく燃え上がらせ、戦闘態勢に入る。

「俺の体は十分あったまってるぜ…さぁ、どこからでもかかってきやがれ!!

「みんな…奴はニルヴィニアの配下よ。油断すればあっという間に骨まで黒焦げにされてしまうわ。ここは私とクリスで接近戦に持ち込むから…残りの者はサポートをお願いっ!!

カレニアは仲間たちにそう伝えた後、クリスとともに剣を構えてマグマ・レンソンのほうへと向かっていく。クリスとカレニアがこちらのほうへと向かってくる中、マグマ・レンソンは掌に炎の魔力を集めて炎の竜巻を巻き起こす。

「お前ら小娘らが相手か…だがこの俺様の熱い技でひーひー言わせてやるよぉっ!!こいつは挨拶代わりだ…受け取りやがれぃっ!!

クリスとカレニアはマグマ・レンソンの放った炎の竜巻をかわし、一気にマグマ・レンソンとの距離を詰めていく。

「よし…あと少しで奴の懐に潜り込めるわっ!!クリス、一気に攻めるわよ!!

「おっと…俺様の炎の竜巻を避けるとはなかなかやるじゃねぇか!!だが、この俺様の力をなめんじゃねぇぜっ!!

クリスとカレニアによって炎の竜巻をいとも簡単に避けられたマグマ・レンソンは炎の魔力を拳に集め、大きく飛び上がり大地に拳の一撃を繰り出す。マグマ・レンソンの拳が大地に叩きつけられた瞬間、大きな地響きが発生しクリスたちは大きく態勢を崩してしまう。

 「しまった…奴が起こした地響きのせいで動けないわっ!!

クリスとカレニア地響きで態勢を崩している隙に、マグマ・レンソンは全身に炎を纏い態勢を崩し身動きが取れないクリスとカレニアのほうへと突っ込んでいく。

「熱いぜぇ…熱いぜぇっ!!熱くて死ぬぜぃっ!!

マグマ・レンソンが灼熱の炎を纏いながらクリスのほうへと突進する中、カレニアは急いで態勢を立て直しクリスを抱えて回避しようとするが、間に合わず直撃を受けてしまう。

「くっ…このままじゃ直撃を受け……きゃあぁっ!!

炎を纏った突進の直撃を受けたクリスとカレニアは、大きく吹き飛ばされその場に倒れる。マグマ・レンソンは二人を吹き飛ばした後、カレニアの方へと近づき止めの一撃を放つ態勢に入る。

「ガハハハハッ!!この俺様は強ぇだろうがよぉっ!!さて…まずはあの眼鏡の小娘を燃やしつくすとするか!!

マグマ・レンソンは炎の魔力を集め、マグマで出来た巨大な腕を作りだしカレニアの方へと近づける。どくどくと脈打つ灼熱のマグマの腕からは止めどなくマグマが滴り落ち、その熱さにより神殿の床が溶けていく。

「俺のマグマの腕で…骨の髄まで温めてやるぜっ!!マグマ・ザ・ハ……ぐぉっ!!

マグマ・レンソンがカレニアに止めを刺そうとした瞬間、遠くから狙いを定めていたディンゴが放った水冷弾がマグマ・レンソンの背中に炸裂する。弱点である水の属性の攻撃を受けたことにより、マグマ・レンソンの体毛の炎が消え、大きく隆起していた筋肉も収縮していく。

「クリス…奴がひるんでいる今のうちにカレニアを安全な場所へと移動させるんだ!!

ディンゴの声を聞いたクリスは態勢を立て直し、カレニアを抱きかかえて安全な場所へと向かっていく。一方ディンゴの放った水冷弾を受けたマグマ・レンソンは全身を大きく震わせ、体毛を乾かそうとする。

「ちくしょうっ!!あのボウガンの使い手が放った水属性の弾に当たってしまったせいで俺様の体が水浸しになっちまった…俺様の立派で見事な体毛も湿ってしばらくは燃え上がれなくなっちまったぜ。だが、炎が使えなくとも俺様は強いぜぇっ!!

水に濡れて本来の力が出せなくなったマグマ・レンソンが体を震わせて体毛にしみ込んだ水気を飛ばす中、ディンゴはボウガンに高い貫通性能を誇る突貫弾を装填し、再びマグマ・レンソンに狙いを定める。

「俺の水冷弾を受けて奴は炎を纏えない…このまま一気に追いつめることができればこちらのペースに持ち込むことが可能だが、奴の弱点の水冷弾は先ほど放った奴でストックが尽きた。今のうちに突貫弾の速射で素早く攻め、奴の体力を削ることが最優先だ!!

ディンゴがボウガンの引き金を引いた瞬間、二発連続で発射された突貫弾がマグマ・レンソンの体に突き刺さる。突貫弾の一撃を受けたマグマ・レンソンは痛みのあまりその場に蹲り、わずかだが態勢を崩す。

 「がはぁっ!!冗談じゃねぇ…この俺様がここまで追いつめられるとは!!だがあと少しで体毛が完全に乾いて元の状態に戻る…その時はあのボウガン小僧をあの世に送ってや…ぐおっ!!

マグマ・レンソンが立ちあがろうとした瞬間、鉄扇を構えたリリシアがマグマ・レンソンの前に現れ鉄扇の乱舞を繰り出し、マグマ・レンソンの体を次々と切り裂いていく。

「この私の鉄扇の乱舞で、あなたを細切れにしてあげるわっ!!

「うぐぐぐ…あのボウガン小僧が撃ってきた水の弾丸さえ受けなければ、俺様はここまで追い詰められずに済んだ!!あいつさえいなければ…お前らなんぞこの俺様の熱い一撃で消し炭にできたのによぉっ!!

リリシアの鉄扇の乱舞によって切り裂かれるマグマ・レンソンは両腕で防御の体勢をとり、痛みをこらえながら反撃のチャンスを窺っていた。

「あら…今更負け惜しみとはみっともないわね。この場は一気に行かせてもらいますわよっ!!

「よし、体毛の水気が完全に吹き飛んだ!!これでいつもの力が出せるぜぃっ!!

その言葉の後、マグマ・レンソンの体毛の水気が乾き、再び体毛が激しく燃え盛る。元の力を取り戻したマグマ・レンソンは大きく後ろへ下がり、炎の魔力を込めて全身の筋肉を大きく隆起させる。

 「おのれ…小娘の分際でこの俺様をここまで追い詰めてくれたな!!俺様はもう怒ったぞ…ボウガン小僧の前に貴様から先に消し炭にしてやんよぉっ!!縛鎖の術(バインドスペル)・悪魔の鎖(デス・チェーン)!!

マグマ・レンソンが術を唱えた瞬間、相手の自由を奪う黒い鎖がリリシアのほうへと放たれる。マグマ・レンソンが放った鎖はリリシアの体に絡みつき、身動きをとれなくする。

「ちっ…野蛮で力任せの脳筋と思いきや、拘束術まで使ってくるとは驚いたわ。はやくこの状況を抜け出さ…きゃあっ!!

リリシアが鎖をほどき脱出を試みるが、マグマ・レンソンが両腕に渾身の力を込めて鎖を引き上げる。渾身の力で鎖を引き上げられたことで、リリシアの体は大きく宙へと舞い無防備な状態となる。

「お前に焦熱地獄というものを見せてやるぜ…悪魔の鎖に俺様の炎を注ぎ込めば、肉を焦がし骨を直接焼く灼熱の鎖となるのだっ!!

リリシアにそう言い放った瞬間、マグマ・レンソンはリリシアの体を締め付ける鎖に炎の魔力を注ぎ込み始める。マグマ・レンソンの炎が注ぎ込まれた黒い鎖は灼熱の炎の帯び、リリシアの体を焼き焦がしていく。

「うぐっ…熱いっ…うぐあああぁぁっ!!

「どうだ小娘…この俺様の怒りは熱いだろぉ!!だがこの程度の苦痛で死なれちゃ…俺様は納得いかねぇんだよっ!!

マグマ・レンソンは灼熱の鎖を力を込めて振りおろし、リリシアを大きく地面へと叩きつける。猛悪な一撃を受け続けるリリシアは薄れゆく意識の中、掌に黒い塊を集めてマグマ・レンソンの顔に狙いを定める。

「はぁはぁ…こんなところで…負けられないっ!!あいつが痛めつけたセルフィ様の仇を…討たないと……死んでも死にきれないっ!!

マグマ・レンソンの猛悪な拘束攻撃から脱出するべく、掌に集めた黒い塊をマグマ・レンソンの顔めがけて放つ。魔姫が放った黒い塊はマグマ・レンソンの顔に命中し、拘束攻撃が中断される。

 「く…くそぉっ!!なんてこった…前が見えねえじゃねぇか!!

マグマ・レンソンの拘束攻撃から逃れたリリシアは、クリスに鎖を切るように要請する。

「クリス…今のうちに鎖を切ってちょうだい!!

リリシアの声を聞いたクリスは剣を構え、リリシアの体の自由を奪う灼熱の鎖を切り裂く。マグマ・レンソンが視界を奪われもがき苦しむ中、クリスは深手を負ったリリシアを抱え、急いで安全な場所へと走っていく。

「リリシア、今度は私が戦うから…あなたはここで休んでいてください。」

 

「はぁはぁ…私としたことがここまで深手を負ってしまったわ。クリス、奴の相手はあなたに任せるわ。私は奴から受けた傷が回復次第戦闘に加わるわ。私が戦線に復帰するまで、四人で力尽きないよう持ちこたえてっ!!

リリシアを安全な場所に避難させた後、クリスは剣を構えて仲間たちのほうへと戻っていく。マグマ・レンソンは視界を奪う黒い塊が消え、腕を振り回しながらクリスたちの方に歩いてくる。

「ちくしょうっ…あの小娘が黒い塊を飛ばしてきたせいで逃げられてしまったぜ。まぁよい、あの小娘の前にお前たちから先に地獄に葬ってやるぜぃっ!!

怒りに燃えるマグマ・レンソンは、全身に炎を纏い大きく上空へと飛び上がる。燃え盛る火炎を纏いながら上空へと舞いあがったマグマ・レンソンは体を丸め、クリスたちめがけて急降下する。

「この俺様の炎の技で、お前らの体を熱くさせてやるぜぇっ!!

「みんな…私の後ろにっ!!

クリスは仲間たちを集めた後、アストライアの盾に自らの魔力を注ぎこみ聖なる防壁を作りだしマグマ・レンソンの回転攻撃を防御する。

 「みんな…奴の攻撃はとにかく重く、一発でも喰らえばかなり体力を削られてしまうわ。ここは私が奴を引きつけるから、他の者たちはその隙に攻撃してっ!!

仲間たちに作戦の内容を伝えた後、クリスは仲間たちの前に立ちマグマ・レンソンの注意を引く。

「おうおうおうっ!!お前が相手になるってのか…ならせいぜいこの俺様を満足させてくれよぉっ!!

マグマ・レンソンは炎の連続パンチを繰り出し、防御の体勢に入るクリスに次々と攻撃を仕掛けていく。クリスが敵の注意を引いている隙に、他の者たちはマグマ・レンソンの背後に回り込み攻撃の隙を窺う。

「よし、奴の背後に回り込んだわ。ディンゴ…奴の背中に麻痺弾を撃ち込み、奴を痺れさせることはできないかな?

「確かに今が絶好のチャンスだが、奴の筋肉が炎の魔力で大きく隆起しているから麻痺弾の麻痺毒が全身に浸透するかわからないが…とにかくやってみるぜ!!

マグマ・レンソンの背後に回り込んだディンゴは、鞄の中から強力な麻痺毒で相手の動きを封じることが可能な弾丸である麻痺弾をボウガンに装填し、マグマ・レンソンの首筋に狙いを定める。

「確かに全身が筋肉の鎧に包まれているが、唯一肉質が柔らかそうな首に当てることができればかなりの効果が期待できるな。だが奴の首に当てるにはかなり精神を研ぎ澄ませる必要がある…もし他の部位に当たってしまうと敵の注意が俺に向いてしまう可能性もあり得るからな。」

マグマ・レンソンの首筋に十分に狙いを定め、ディンゴは引き金を引き麻痺弾を放つ。発射口から放たれた麻痺弾はマグマ・レンソンの首筋に着弾し、強力な麻痺毒が体を蝕んでいく。

「な…なんじゃこりゃあっ!!俺様の体が動かねぇぞ…どうなってやがるんだぁっ!!

弾丸に込められた麻痺毒がマグマ・レンソンの体に浸透し、徐々に身体能力を奪っていく。麻痺毒によって身体能力を奪われたマグマ・レンソンはその場に崩れ落ち、苦悶の表情を浮かべながらもがき苦しむ。

「よし…作戦成功だ。奴の体が麻痺している間は攻撃し放題だ。だが拘束時間は約一分と短い、その短い時間の間で連続攻撃を仕掛け、一気に攻めるんだ!!

マグマ・レンソンがディンゴの麻痺弾を受けて動けない隙に、クリスとカレニアは武器を構えてマグマ・レンソンに攻撃を仕掛ける。

「ディンゴのおかげで攻撃するチャンスができたわ!!クリス、ここは連携攻撃で一気に攻めるわよっ!!

「うぐぐ…おのれ貴様らぁっ!!動けない隙に好き放題やりやがって…体が動けるようになったら真っ先にお前ら二人を消し炭にしてやるから覚悟しておけよぉっ!!

クリスとカレニアは連携攻撃を仕掛け、マグマ・レンソンの体力を徐々に削っていく。二人の剣から次々と繰り出される斬撃はマグマ・レンソンの体を切り裂き、大きなダメージを与える。

 「うぐぐ…少しだが体が動くようになってきたぞ。こんなときは炎の魔力を筋肉に注ぎ込みさらに筋肉を隆起させれば動けるようになるが…あまり魔力を注ぎ込みすぎると筋肉が裂けてしまう危険を伴うから迂闊に使えん。だが小娘どもにこれ以上好き勝手やらせるわけにはいかんなぁっ!!

手足がわずかに動かせるようになったマグマ・レンソンは全身に力を込め、再び立ち上がり態勢を立て直す。

「くっ…どうやら麻痺状態が解けたみたいね。クリス、一瞬でも気を抜いちゃだめよっ!!

「おうおうおう!!貴様ら…俺様が動けない間に好き放題してくれたなぁっ!!今度は俺様の番だ…俺様の灼熱の獄炎でお前らを灰になるまで焼きつくしてやっからよぉっ!!!

怒りの表情を浮かべるマグマ・レンソンは炎の魔力を最大限まで高め超獄炎状態(イフリートフォルム)と化す。超獄炎状態と化したマグマ・レンソンは青い焔を揺らめかせながら、クリスたちに襲いかかるのであった……。

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