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蘇生の章2nd第百五話 セルフィの涙

 クリスたちが黄金郷へと向かうべくヴァルハラの地下水道の中を進む中、エンプレスガーデンではニルヴィニアが創造神を呑み込み黄金郷を支配したことを知ったアムリタはセルフィにニルヴィニアを倒し創造神であるクリュメヌス・アルセリオスを救出するようにと命じ、邪悪なる魔宮と化した黄金郷へと向かわせた。クリスたちよりも早く黄金郷へと到着したセルフィはニルヴィニアの待つ神殿の最上階へと目指し神殿の中を進むが、運悪く黄金郷に侵入した者の抹殺のために神殿の見回りをしていたニルヴィニアの配下の一人である灼熱王マグマ・レンソンに見つかってしまい、戦闘を余儀なくされた。

 

 セルフィが雷帝の爪を構えてマグマ・レンソンの方へと向かっていくが避けられ、指先から高熱のマグマの弾丸を放ちセルフィを追い詰めていく。だがセルフィはすぐさま態勢を立て直し、華麗なる足技でマグマ・レンソンを大きく吹き飛ばす。セルフィの足技を受けたマグマ・レンソンは猛烈な怒気を放ち、全身の筋肉を隆起させて激怒する。激昂したマグマ・レンソンの激しい猛攻になす術もなく、セルフィはマグマ・レンソンに完膚なきまでに叩きのめされてしまった……。

 

 ニルヴィニアの野望を止めるため邪悪なる魔宮と化した黄金郷に突入したクリスたちは、黄金郷の神殿の内部へと足を踏み入れる。

「この神殿は神聖な場所であったが、ニルヴィニアの魔力によって禍々しく変えられているみたいね。みんな、この先何が起こるか分からないから気を引き締めないとね!!

カレニアが気を引き締めるようにと仲間たちに伝えた後、一行は神殿の奥へと向かっていく。しばらく神殿の中を進んでいると、リリシアが何者かの魔力の波長を察知する。

 「この魔力の波長は…まさかセルフィ様がここにっ!!

リリシアが神殿の中で感じた魔力の波長は、エンプレスガーデンの女帝の一人であるセルフィの魔力であった。リリシアはその魔力を頼りに先を進んでいくと、そこにはマグマ・レンソンによって無惨に叩きのめされたセルフィが倒れていた。

「セ…セルフィ様っ!!何者かによって大きなダメージを受け瀕死の重傷だわ…ゲルヒルデ、今すぐセルフィ様を回復してあげてっ!!

リリシアはゲルヒルデに致命傷を負ったセルフィを回復させるようにと命じると、セルフィのもとに駆け寄り何があったのかを尋ねる。

「セルフィ様、その傷は誰にやられたの。詳しく説明してちょうだい!!

「はぁはぁ…ニルヴィニアの配下の……マグマ・レンソンに…がはぁっ!!

セルフィがリリシアに事のの経緯を伝えようとした瞬間、口から血を吐き出しながら痛みに苦しむ。

「ニルヴィニアの配下のマグマ・レンソンとか言う奴にやられたのね。大丈夫よセルフィ様、私たちが必ずあなたの仇をとってあげるわ。今ゲルヒルデがあなたの傷を回復しているから、あまり動いたりしゃべったりしちゃダメよ。」

リリシアの言葉の後、セルフィは涙を流しながらリリシアに助けを求める。

 「ううっ…アムリタ様から創造神救出の命を受けて一人で黄金郷に来たけど…私だけじゃ無理よ。ニルヴィニアの配下にボロボロにされて、私は何一つ救えなかったっ!!ぐすっ…リリシア……助けて…。」

リリシアは涙を流すセルフィの肩に手を添え、私たちが助けるという旨を伝える。

「当たり前じゃない…私たちがあなたを助けるわ。それにしてもセルフィ様をここまで追い詰めたマグマ・レンソンだけは許せないわ。奴はまだこの神殿の中をうろついて……!?

ただならぬ気配を感じたリリシアが振り返った瞬間、そこにはマグマ・レンソンの姿があった。マグマ・レンソンはクリスたちを見るなり、腕を振り回し肩慣らしを始める。

「いかにも…この俺がニルヴィニア様の配下の一人のマグマ・レンソンだ!!ニルヴィニア様より小汚い侵入者を抹殺するようにとの命を受け、見回りをしていたんだよぉっ!!

「ちょうどいいところに来てくれたじゃないの…セルフィ様の仇を討ちに行こうと思っていたけど、あなたが来てくれたおかげで探す手間が省けたわ。さぁ…始めようか。」

リリシアの挑発に怒りを感じたマグマ・レンソンは、血走った眼でリリシアを睨みつけながらこう答える。

 「ほう…この俺様とやりあおうってのか!!言っとくがこの俺様は強いぜ、お前のような小娘たちが相手でも絶対に手加減はしない…本気で行かせてもらうぜ!!あまり調子に乗っているとあの小娘のようにボロ雑巾にしてやるぜぃ!!

セルフィのようにボロ雑巾にしてやるという言葉を聞いて激昂したリリシアは、マグマ・レンソンの頬に平手打ちを放つ。リリシアから平手打ちを受けたマグマ・レンソンは全身の筋肉を隆起させ、怒りの感情を露わにする。

「ボロ雑巾にされるのは…あなたの方よっ!!あなただけは許さない…この私があなたを確実に消してさし上げますわよっ!!

「こ…小娘がぁっ!!よくも俺に平手打ちをしてくれたなぁ…もう許さねぇ!!貴様ら全員この俺様が骨の髄まで燃やし尽くしてやるから覚悟しやがれっ!!

マグマ・レンソンがクリスたちにそう言い放った後、全身に炎を纏わせクリスたちの方へと突進する。クリスは仲間たちを守るためにアストライアの盾を構えて防御するが、炎の推進力と遠心力が加わった突進の一撃は凄まじく、クリスは大きく後ろへとのけぞり防御の態勢を崩す。

「くっ…盾で防御していても大きく吹き飛ばされるなんてっ!!なんて恐ろしいまでの力なのよ!!

「どうだ…これが俺様の力だっ!!ここで一気に葬ってやるぜぃっ!!

クリスが急いで態勢を立て直そうとしている隙に、マグマ・レンソンは燃え盛る体毛で拳を燃やして炎のパンチを繰り出す。しかし間一髪のところでクリスは防御の体勢をとり、マグマ・レンソンの炎のパンチを防ぐ。

 「間一髪のところで炎のパンチは防げたが、ここまで力が強いと奴の攻撃を防ぐだけで精一杯だわ。ここは一気に奴との距離を離し、態勢を立て直さないとね。」

クリスは態勢を立て直すべく後へと移動するが、マグマ・レンソンは炎の拳を構えて執拗にクリスを追いかける。クリスをしつこく追い回すマグマ・レンソンであったが、背後からリリシアの不意打ちを受け、大きく態勢を崩す。

「おうおうおうっ!!貴様…戦いの最中に敵に背中見せてんじゃ……ぐおぉっ!!

「クリス、ここは私が奴をひきつけるから…その隙に態勢を立て直してちょうだいっ!!」

マグマ・レンソンがリリシアからの不意打ちを受けて大きく態勢を崩す中、クリスはマグマ・レンソンとの距離を離し、態勢を立て直す。

「貴様…俺様の邪魔をしやがってっ!!まぁいい…あいつは取り逃がしたが、お前から先にボロ雑巾にしてやるよぉっ!!

クリスを仕留め損ね怒りに震えるマグマ・レンソンは炎の拳を構え、リリシアに襲いかかる。しかしリリシアは素早い身のこなしで炎の拳をかわし、一気にマグマ・レンソンの懐へと入り込む。

「言ったでしょう…あなたは私が必ず消すって!!

リリシアは手のひらに集めた魔力を圧縮させ、マグマ・レンソンの鳩尾に放つ。圧縮された魔力の波動を受けたマグマ・レンソンは大きく吹き飛ばされたが、またすぐに態勢を立て直しリリシアの方へと向かってくる。

 「その技は『発剄』か…小娘のくせにこんな大技を隠し持っていたとは驚きだ。さて、遊びは終わりにしてそろそろ本気を出すとするかぁっ!!

リリシアにそう言い放った後、マグマ・レンソンは全身に炎の魔力を集め筋肉を大きく隆起させる。炎の魔力が大きく隆起した筋肉に注がれるたび、燃え盛る体毛が青い炎となりさらに攻撃性が高くなる。

「くっ…奴の戦闘力が一気に跳ね上がったようね。」

「見ろ…これが俺の真の姿『超獄炎状態(イフリートフォルム)』だ!!この状態になった俺様は取り扱い注意だぜっ!!

超獄炎状態となったマグマ・レンソンは青い炎を纏いながら上空に飛び上がり、体を丸めてリリシアの方へと急降下を始める。

「熱いぜぇ…熱いぜぇっ!!この俺様の炎で体の芯まであっためてやんよぉっ!!ギガント・スタンプッ!!

リリシアは全身を青い炎に包んだマグマ・レンソンの回転攻撃をかわし、すぐさま反撃の態勢にでる。しかし地面に着地した時に生じた超高温の熱波と爆発により、リリシアは大きく吹き飛ばされてしまった。

 「な…なんなのよあいつはっ!!回転攻撃を回避したがそのあとに熱波と爆発がこられちゃさすがに避けきれないわっ!!奴の回転攻撃だけは何としても阻止しないとね。」

回転攻撃と同時に襲ってきた熱波によって吹き飛ばされたリリシアは急いで立ち上がり、鉄扇を構えてマグマ・レンソンの方へと走っていく。

「まだしぶとく立ち上がってくるか…だが、貴様ら小娘が束になってかかってきてもこの俺様は倒せんっ!!今度こそ俺様の炎で消し済みにしてくれるわっ!!

マグマ・レンソンは指先からマグマの弾丸を放ち、リリシアを襲う。しかし魔姫はマグマの弾丸を鉄扇で受け流しつつ、マグマ・レンソンとの距離を詰めていく。

「ここは奴の指先から放たれるマグマの弾丸を跳ね返しつつ奴の懐に入り、一気に攻撃を仕掛けるっ!!

「おっと、あまり調子に乗るんじゃねぇよ…小娘がぁっ!!

マグマ・レンソンは拳に炎を集め、マグマ・レンソンの方へと向かってくるリリシアに攻撃を仕掛ける。リリシアは素早い動きでマグマ・レンソンの炎の拳をかわし、一気に懐に入り鉄扇の一振りを繰り出す。

「おうおうおう…この俺様の渾身の炎の拳が避けられてしまったうえ、懐に入られてしまうとはっ!!前代未聞の大チョンボのおかげで俺様の体内の熱が一気に冷めちまったじゃねぇかっ!!

「マグマ・レンソン…鉄扇の乱舞であなたの体をずたずたに切り裂いて差し上げますわっ!!

マグマ・レンソンの懐に潜り込んだリリシアは鉄扇の乱舞を繰り出し、渾身の炎の拳がかわされた悔しさのあまり体内の熱が冷め超獄炎状態が解け元の状態に戻ったマグマ・レンソンの体を次々と切り裂いていく。

「うぐぐ…俺様としたことが小娘ごときに反撃の隙を与えてしまったようだな。だが、この俺様の力をなめるんじゃねぇぜっ!!

リリシアから鉄扇の乱舞に切り裂かれているマグマ・レンソンは大きく体を揺さぶらせ、燃え盛る体毛をこすり合わせる。するとマグマ・レンソンの体から赤い粉が周囲に漂い、リリシアの視界を奪う。

 「な…何よこれっ!!奴の体から吹き出した赤い粉のせいで何も見えないじゃないっ!!

マグマ・レンソンの体から吹き出した粉塵によって視界を奪われたリリシアは、鉄扇を構えてマグマ・レンソンの方へと向かうが、マグマ・レンソンの体から吹きだした粉塵のせいで視界に捉えることができない状況であった。

「へっへっへ…俺様の姿が見えなくて困っているようだなぁっ!!この赤い粉は俺様の毛孔から吹き出した可燃性の粉塵だ。俺様が指を鳴らせばまき散らされた粉塵が次々と爆発を起こし、貴様なんぞ跡形も無く吹きとぶぜぃっ!!

軽く嘲笑を浮かべた後、マグマ・レンソンは指をパチンと鳴らす。その瞬間、周囲に漂う可燃性の粉塵が次々と大きな爆発を起こし、リリシアを襲う。

「あの粉塵爆発に巻き込まれたら…いくら炎属性の耐性に強い私であっても耐えきれないっ!!ここは女帝の障壁(エンプレス・リジェクション)で防ぐしかないわっ!!

リリシアは除隊の障壁を使い、マグマ・レンソンの粉塵爆風から身を守る。

「げげっ!!こ…こいつっ!!なぜ俺の粉塵爆発を受けてなんで生きていやがるんだ!!

「悪いけど…私はエンプレスガーデンの女帝から女帝因子(エンプレス・ジーン)を埋め込まれたので女帝の障壁を使うことができるのよ。みんな、戦いはこれからよっ!!

リリシアの言葉の後、クリスたちが武器を構えて魔姫のもとへと集合する。

「ほう…全員でかかってくるというわけだなぁっ!!だが貴様らの強さなど俺様の炎の前には無力に等しい…この俺様の燃え盛る炎で貴様ら全員骨まで溶かしてやるよぉっ!!

マグマ・レンソンはクリスたちにそう言い放った後、全身に炎の魔力を集めて筋肉を大きく隆起させ戦いの構えに入る。圧倒的な戦力を誇る灼熱王マグマ・レンソンを前に、クリスたちに勝機はあるのか!?

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