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蘇生の章2nd第百四話 突入、黄金郷!!

 強力な結界を破り黄金郷に侵入を果たしたニルヴィニアと配下たちは、神殿の最上階へと向かい浮遊要塞に変えるための準備を行う。そんな中、黄金郷を浮遊要塞にしようとするニルヴィニアたちに裁きを与えるべく、創造神であるクリュメヌス・アルセリオスが現れ、ニルヴィニアとの戦いが幕を開けた。はじめはアルセリオスがニルヴィニアの攻撃をかわし優勢であったが、配下たちによる卑怯な不意打ちによって態勢を崩し、ニルヴィニアによって一呑みにされてしまった。創造の神を呑み込み禍々しい女帝の姿と化したニルヴィニアは黄金郷を邪悪なる浮遊魔宮に変え、地上界に向けて降下を始めるのであった……。

 

 一方ニルヴィニアとアルセリオスとの戦いの後、エンプレスガーデンではアムリタが創造神の生命反応が途絶えたということを知り、イオニアのもとへと急ぐ。

「クリュメヌス様の生命反応が途絶えた……しかも天界の中枢と言われている黄金郷が何者かによって禍々しい魔宮に変えられてしまった。黄金郷に侵入した者は確か4人…首謀者は邪光妃ニルヴィニア、エンプレスガーデンの掟を破り女帝である我々を裏切った許せぬ者だ。」

「まさかニルヴィニアがヘルヘイムで三人の強き配下を集め、裏で暗躍していたとはな。私の記憶によると確か奴が来たのは十年以上前だったな。ヘルヘイムの偵察に行ったっきりそのまま姿を眩まし行方不明となっていたが、まさかこのような事態になってしまうとは…。この天界を見守ってくれる創造神が死んだ今、天界が混沌の世になるのも時間の問題じゃ……。」

イオニアとアムリタがニルヴィニアのことについて話し合っている中、イオニアの宮殿にセルフィが現れ、二人の話に割って入る。

 「その話…全て聞かせてもらったわ。黄金郷は現在強力な封印が解け、誰でも中に入れる状態よ…私たちも行ってニルヴィニアの野望を止めるってのはどうかしら!!

セルフィが黄金郷に行ってニルヴィニアを倒すのはどうかと二人に話しかけるが、イオニアはそれをしれっとした表情で一蹴する。

「うぐぐ…私たちはお前の意見には賛成だが、我々はエンプレスガーデンを守らなければならない…黄金郷に行きたいのなら行ってもよいが、死にに行くようなものだぞ。セルフィよ、命が惜しいならやめておくべきだ。」

イオニアがセルフィを説得する中、アムリタは僅かだが創造神の魔力を感じ取る。

「むむっ…微弱ではあるが、創造神の魔力を感じる!!不可能かもしれんが交信を始めるぞ…。」

アムリタは二人を集めた後、精神を集中させて創造神と交信を始める。交信をはじめてから数分後、わずかだが創造神の声が三人の耳に聞こえてくる。

 「……その声は、アムリタなのですね。私は邪光妃ニルヴィニアの体内に取り込まれてしまい身動きが取れない状態です。ニルヴィニアは私を一呑みにしたあと、私から奪った魔力で黄金郷を邪悪なる魔宮に変え、地上界を侵略しようとしています。どうか…どうか私に代わってエンプレスガーデンに反旗を翻したニルヴィニアに裁きを与えてくださ……。」

アルセリオスが何かを伝えようとした瞬間、アムリタとの交信が途絶えた。3分間という僅かな交信であったが、ニルヴィニアに関する重要な情報を得ることに成功した。

「むむ…黄金郷がニルヴィニアによって邪悪なる魔宮に変えられてしまったうえに、創造神をも呑みこみ大きな魔力を手にしてしまったか。ならばその悪しき存在を許すわけにはいかん…セルフィよ、もうあなたを止めはせん。邪悪な魔宮と化した黄金郷へと向かい、創造神クリュメヌス・アルセリオス様を救い出すのだ!!

アムリタがセルフィに創造神を救い出すようにと命じると、セルフィは黄金郷へと向かうべく床に転送陣を描き始める。

「わかりました…必ずやニルヴィニアの野望をその手で打ち砕いて見せます。アムリタ様…イオニア様、私は黄金郷へと行ってまいります!!

「天界と地上界の運命は全てはセルフィの手にかかっておる。もしお前が死ねば天界は滅び地上界は第二のヘルヘイムと化してしまう…必ずやニルヴィニアの野望を打ち砕き、無事にここに戻ってこい!!

イオニアとアムリタに見送られ、セルフィは床に描いた転送陣を作動させニルヴィニアの手によって邪悪なる魔宮と化した黄金郷へと向かうのであった……。

 

 一方ヴァルハラの地下水道へと来たクリスたちは、黄金郷へと通じている転送陣のある部屋を目指し薄暗い地下水道の中を進んでいた。

「ここから先にある小さな部屋から転送陣の魔力を感じるわ…だが転送陣が正常に作動しているかが問題ね。」

転送陣の魔力を感じ取ったリリシアの言葉の後、一行は魔力反応があった小さな部屋へと向かっていく。一行が部屋の中に入ると、その中心には転送陣が光を放っていた。

「よかった…この転送陣はまだ使えそうね。みんな、ニルヴィニアを倒すために黄金郷へ向かうわよっ!!

クリスたちは転送陣を使い、ニルヴィニアによって邪悪なる魔宮と化した黄金郷へと向かう。転送を終えたクリスたちが外に出た瞬間、神聖なる雰囲気とはかけ離れた光景が彼らの目に移る。

 「こ…これが黄金郷なの!?どうやらニルヴィニアの奴が黄金郷をあんな陰気な魔宮に変えてしまったのかもしれないわね。」

天界の中枢である黄金郷であったが、創造神を呑み込んだニルヴィニアの魔力によって邪悪なる魔宮に変えられ、地上界を制圧するための浮遊要塞と化してしまっていた。クリスたちが黄金郷の神殿の内部へと向かいニルヴィニアの待つ最上階を目指して進んでいく一方、最上階に鎮座するニルヴィニアはクリスたちが黄金郷に入ってきたということを知る。

「むむ…どうやらこの神聖なるわらわの魔宮に小汚い鼠が数名入り込んでしまったみたいだな。どうやってここに入ってきたのかは知らんが、配下たちよ、黄金郷に入り込んだ侵入者たちを殲滅せよ!!

ニルヴィニアが黄金郷に入り込んだ侵入者を倒すようにと配下たちに命令すると、我先にとマグマ・レンソンが手を上げてこたえる。

 「おっと…侵入者の排除は俺が先に行くぜ!!お前らはニルヴィニア様の護衛を頼んだぜっ!!

マグマ・レンソンは軽く肩慣らしをした後、黄金郷へと侵入した者の排除へと向かっていく。

「了解した。侵入者の排除を終えたら再びここに戻ってくるのだぞっ!!

「……相変わらず暑苦しい性格ね。」

マグマ・レンソンが侵入者の排除へと向かった後、ニルヴィニアは不敵な笑みを浮かべながら二人の配下にそう言う。

 「クックック…小汚い鼠どもがどうやって黄金郷に侵入できたのかが不思議だ…まぁよい、ここは腕っ節の強いマグマ・レンソンが侵入者を完膚なきまでに叩きのめしてくれよう。さて、残りの者たちは私の護衛を頼むぞ。」

ニルヴィニアの護衛を任せられたグラヴィートとアイシクルはニルヴィニアが瞑想に専念できるよう、闇の防壁を張りサポートに入る。一方クリスたちよりも早く黄金郷に到着したセルフィは急ぎ足でニルヴィニアのいる最上階を目指していた。

「ニルヴィニアの魔力はこの神殿の最上階から感じるわ…だがこの神殿の中にはニルヴィニアの他にも数名の魔力を感じた…となれば奴の配下もそこにいる可能性が高いわ!!

神殿の最上階へと急ぐセルフィの目の前に、侵入者の排除するために神殿を見回っていたマグマ・レンソンが現れる。セルフィは咄嗟に物陰に隠れ、マグマ・レンソンの動向をうかがう。

 「くっ…あいつはニルヴィニアの配下のマグマ・レンソン!!どうやらニルヴィニアは私が黄金郷に侵入したということはお見通しだったようね。ここは物陰に隠れて様子を見……っ!?

セルフィが物陰に隠れ様子をうかがっていたが、運悪くマグマ・レンソンに見つかってしまった。

「おっと…隠れていても俺にはお見通しだぜ!!ニルヴィニアの浮遊要塞に入ってきた小汚い侵入者はこの俺様がぶん殴ってボロ雑巾にしてやるよぉっ!!

「くっ…見つかってしまったからには戦うしかないわっ!!さぁ来なさい、エンプレスガーデンの女帝の力、その体で味わうがいいわっ!!

セルフィは雷帝の爪を構え、ニルヴィニアの配下の一人であるマグマ・レンソンの方へと向かっていく。

「あの小娘…爪を構えて俺の方へと向かってくるか。だが…この俺様には通用しないぜ!!

マグマ・レンソンは体内で燃焼した炎の魔力を足に集め、大きく空中へと飛び上がりセルフィの攻撃をかわした後、指先からマグマの弾丸を飛ばしてセルフィを襲う。

「くそっ…マグマの弾丸を数発受けてしまったわ。流石はニルヴィニアの配下というだけあって、ジャンドラの手下よりもパワーは上のようね。」

「俺の炎の拳で…骨の髄まであっためてやんよぉっ!!

マグマの弾丸を受けて態勢を崩しているセルフィにさらなる追い打ちをかけるべく自らの拳に炎を纏わせ、炎のパンチを繰り出す。しかしセルフィはすぐさま態勢を立て直し、素早い身のこなしでマグマ・レンソンの炎の拳をかわし、背後へと回り込む。

 「悪いけど…この勝負は私が勝たせてもらうわっ!!

マグマ・レンソンの背後に回ったセルフィは強烈な蹴りを放ち、マグマ・レンソンの体を大きく蹴り飛ばす。セルフィの足技を受けたマグマ・レンソンは怒りの表情を浮かべながら、血走った眼でセルフィを睨みつける。

「おのれぇ…小娘の分際でこの俺を蹴り飛ばしやがったなぁっ!!この野郎…こうなったら俺の本気を見せてやるぜ!!もう女でも容赦はしねぇ…覚悟しろよぉっ!!

セルフィに蹴り飛ばされ怒りに震えるマグマ・レンソンは全身から炎が噴きあがり、全身の筋肉が異常なまでに隆起し始める。

「な…何なのっ!!奴の体が炎に包まれたと同時に、筋肉が大きく隆起し戦闘力が一気に跳ね上がっているわ。この状況で奴の攻撃を受ければ…確実にやられる!!

セルフィが身構えるよりも早く、マグマ・レンソンは炎を纏いながら大きく宙へと舞い上がる。上空に飛び上がったマグマ・レンソンは炎に包まれた体を丸め、隕石のごとくセルフィめがけて落下していく。

「俺様の炎で燃え尽きろぉっ!!メテオ・スタンプっ!!

隕石のごとく落下するマグマ・レンソンを前に、セルフィは女帝の障壁(エンプレス・リジェクション)を張りマグマ・レンソンの攻撃を受け流す態勢に入る。

「ここは女帝の障壁を使い…何としてでも受け流すしかないっ!!

「うおぉぉっ!!!熱っちぃぃぜぇぇっ!!こんなに熱いと…脳みそがとろけちまいそうだぜぇッ!!

セルフィが女帝の障壁を張り防御するが、マグマ・レンソンの遠心力が加わった回転攻撃は女帝の障壁すら破壊し、セルフィを大きく吹き飛ばす。灼熱王の巨体が地面にぶつかった瞬間、凄まじい熱波と爆発が巻き起こり、セルフィの体を焼き尽くす。

 「うぐぐっ…こんなところで倒れている場合じゃない!!ここは物陰に隠れ……きゃあぁっ!!

セルフィが物陰に隠れて傷の回復を行おうとしたその時、マグマ・レンソンがセルフィの足を掴んだまま持ち上げ、逃げられなくする。

「おうおうおう!!この俺様から逃げられるとでも思っていたのか…もうそろそろ遊びは終わりだ。俺様の渾身の一撃で骨の髄まで焼き尽くしてやるよぉっ!!ヴォルカニック・バスター!!

マグマ・レンソンはセルフィを抱え、炎を纏いながら大きく上空へと飛び上がる。セルフィを抱きかかえながら空へと舞い上がったマグマ・レンソンは上空でセルフィの手足を拘束し、そのまま地面へと急降下する。」

「やはり勝負ってもんは…このぐらい熱くないと満足できねぇよなぁっ!!

大気圏に突入する隕石のごとき急降下の後、マグマ・レンソンはセルフィを頭から地面に叩きつける。脳天から地面に叩きつけられたセルフィはぴくりとも動かなくなり、すでに虫の息であった。

「ふんっ…死んだか。この俺様をもっと楽しませてくれると思ったのによぉっ!!でもボロ雑巾にできたからまぁいいか…さてと、残りの侵入者を探すとするかぁっ!!

セルフィを完膚なきまでに叩きのめしたマグマ・レンソンは黄金郷に入り込んだ他の侵入者を排除するべく、再び黄金郷の見回りへと向かっていった……。

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