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蘇生の章2nd第百三話 神ヲ呑ミ込ミシ邪光妃

 ヘルヘイムの将である死霊王ジャンドラを倒し天界に再び平和を取り戻したのもつかの間、新たなる敵である邪光妃ニルヴィニアと名乗る者がヴァルハラに現れたことにより、フェアルヘイムは再び混沌の世になってしまった……。

 

 ニルヴィニアが現れてから数時間後、ヴァルハラの術士が急ぎ足で謁見の間に入り、オーディンに黄金郷の強力な結界が破られたということを伝える。

「オーディン様!!黄金郷の結界の反応が消えました……。そして四人の不審者が神殿の内部へと侵入した模様です!!

「おのれニルヴィニアの奴め…とうとう黄金郷へ侵入してしまった。このフェアルヘイム…下手をすれば人間界がニルヴィニアの手に堕ちてしまうかもしれぬ…ここは危険な任務だが、ジャンドラを倒したあの方ならきっとニルヴィニアの野望を打ち砕いてくれるかもしれんが…それを快く聞いてくれるかどうか…よかろう。もう下がってよいぞ。」

オーディンの言葉の後、ヴァルハラの術士はオーディンに深く一礼し謁見の間を後にする。

「オーディン様、私は引き続き感知術を用いて黄金郷に侵入した者たちの動向を探ります。何か動きがあればお伝えいたします。」

術士の言葉の後、オーディンは得も言われぬ不安を抱きながら玉座に腰かけ、眠りに着く。一方その頃黄金郷の神殿へと侵入を果たしたニルヴィニアは、配下たちとともに神殿の中を突き進んでいく。

 「おうおう…こんな何もない神殿の奥に何があるっていうんだ!?

マグマ・レンソンが黄金郷の神殿に何があるのかと尋ねると、ニルヴィニアは神殿の最上階に聖域があるということを配下たちに伝える。

「教えてやろう…この神殿の最上階には誰も入ることのできない聖域が存在する。わらわたちはその聖域を制圧し、黄金郷を巨大な浮遊要塞とするのだ!!そして地上界を第二のヘルヘイムに変えてやるのだっ!!

「さすがはニルヴィニア様…黄金郷の制圧に成功した暁にはこの俺が地上界で暴れまくってやる!!軟弱な地上界の人間にこの俺の恐ろしさを嫌というほど思い知らせてやるぜ!!

灼熱王の歓喜の声の後、ニルヴィニアと配下たちは黄金郷を制圧するべく神殿の最上階へと向かうのであった……。

 

 突然のニルヴィニアの宣戦布告から一夜明け、ヴァルハラで一夜を過ごしたクリスたちが目を覚ました。オーバーヒートの反動で子供の姿になってしまったリリシアも、魔力が戻り元の姿へと戻っていた。

「昨日は疲れているせいかよく眠れたわ。身長も胸の大きさ…そして失った魔力が完全に戻ってきたわね。でも宴の終盤にニルヴィニアとか言う奴が現れ宴の席が大騒動になっていたみたいね…せっかく平和が戻ったのに、また戦いの日々が訪れるというのは残念ね。」

眠りから目覚めたリリシアが昨日の出来事をエルーシュに伝えると、エルーシュは宴の席での経緯を話始める。

「うむ…見る限りあの女はジャンドラよりも強い魔力を感じた。ニルヴィニアは天界の中枢と呼ばれている黄金郷を支配するとか言っていたな。奴を倒さぬ限り本当の平和は戻ってこない…というわけだな。」

エルーシュの言葉の後、リリシアは深紅のドレスを身に纏いその場を後にする。

 「なるほどね…要するにニルヴィニアが次の敵のようね。ならば確実に奴の息の根を止めるしかなさそうね。その為には早く黄金郷へと行く方法を探さなきゃね。エルーシュ、準備ができたら大広間に集合してちょうだいっ!!

ヴァルハラの来客用の寝室から出たリリシアは、戦乙女が修行に励む鍛錬の間へと向かう。朝の鍛錬場にはオルトリンデしかおらず、他の戦乙女と鍛錬場の教官はまだ眠りについていた。

「鍛練中のところ失礼するわ…黄金郷に関することを少しだけでもいいので教えてくれませんか?

「いいところに来たなリリシアよ…鍛錬場は今私以外の戦乙女は眠っているので黄金郷に行く方法を話すことができるようだ。一度しか言わないので耳の穴をよく掃除した後で私の話をよく聞き、忘れぬように紙に記しておけ。黄金郷にかけられた橋は破壊されて今は通ることはできないが、実はもう一つ黄金郷に通じている道がある。それはヴァルハラの地下水道だ。本当かどうかは定かではないが、ヴァルハラの地下水道にはかつて黄金郷に通じる転送陣があり、昔の創造神に仕える僧侶たちはそこを通って黄金郷にお参りに行っていたという話を聞いたことがある…もしその転送陣が残っているなら、そこから黄金郷に行けるはずだ。ニルヴィニアの件はオーディン様より口止めされていて我々戦乙女はお前たちの助太刀はできぬ…だから天界を救えるのはお前たちしかいない。必ずやニルヴィニアの野望を打ち砕き、生きて必ずここに戻ってこい!!

黄金郷に行くための情報を得たリリシアはオルトリンデに感謝の言葉を述べた後、ヴァルハラの地下水道へと行く方法を尋ねる。

 「いい情報をありがとう…しかしヴ。ァルハラの地下水道へはどうすれば行けるのか詳しく教えてくれないかしら?

ヴァルハラの地下水道にはどうすれば行けるのかというリリシアの言葉に、オルトリンデは地下水道へと向かう方法があるということを伝える。

「現時点では地下水道へと続く通行経路は完全に封鎖されてしまったが、ヴァルハラの地下水道へと続いている道はひとつだけある。それは大庭園の中央に置かれているオーディン様の像の下に階段が隠されている。オーディン様の像を動かして階段を下りれば、ヴァルハラの地下水道へと行けるはずだ。この地下水道のどこかにあると言われる転送陣のある部屋を見つけ出すことができれば、黄金郷へと行くことができるであろう。おっと、教官がお目覚めのようだ。私はそろそろ鍛錬に戻るので、そのことを仲間たちによろしく伝えておいてくれ。」

オルトリンデはリリシアにそう言い残すと、再び鍛錬へと戻っていく。オルトリンデから黄金郷に関する重要な手掛かりを得たリリシアは急いで集合場所である大広間へと向かい、仲間たちと合流する。

「みんな、オルトリンデから重要な情報が手に入ったわ。聞いた話をまとめると、まず黄金郷に通じる転送陣はヴァルハラの地下水道にあり、地下水道に行く方法は大庭園の中央に置かれているオーディン様の像の下にある階段を下りれば行けるということよ。さて、朝食を食べ終えたら早速行動に移すわよっ!!

「さて、朝食を食べ終えたら急いで黄金郷に行き、何としてもニルヴィニアの野望を阻止するわよっ!!」リリシアから黄金郷に関する情報を聞いたクリスたちは、朝食をとるべく宮殿の食堂へと向かうのであった……。

 

 クリスたちがヴァルハラで朝食をとる中、ニルヴィニアと三人の配下はついに最上階の聖域へと到達していた。最上階の聖域には美しい草花が咲き乱れる美しい風景であったが、人の気配は全くなかった。

「ほう…誰もいないではないか。なら好都合だ…お前たち、この黄金郷を浮遊要塞に変える準備に取り掛かるのだ!!

ニルヴィニアが黄金郷を浮遊要塞に変えるようにと配下たちに命令した瞬間、ニルヴィニアの前に美しい女神が現れ、怒りのこもった目でニルヴィニアを睨みつける。

「黄金郷の聖なる結界を破ったのはあなたたちですね…天界の平和を乱す者は私が許しません。私の名は創造神クリュメヌス・アルセリオス…天界と地上界を統べる者であり全智全能の神!!悪しき者には罰を与えなければならないようですね。」

「創造神のお出ましか…わらわの邪魔をするならば神であろうと容赦はせぬっ!!わらわは黄金郷を支配し、天界と地上界を統べる女帝となるのだっ!!

ニルヴィニアはヘルヘイムの王錫を構え、アルセリオスに攻撃を仕掛ける。しかしアルセリオスは残像の術でニルヴィニアの攻撃を避け、聖なる雷を放ちニルヴィニアに反撃を行う。

 「創造の神である私に逆らうとは…不届き者には神の裁きを与えなきゃ駄目ですわね…パニッシュメント・レイン(裁きの礫)っ!!

ニルヴィニアに聖なる雷の一撃を喰らわせた後、アルセリオスは無数の聖なる光弾を放ちニルヴィニアに追撃を加える。無数の聖なる光弾はニルヴィニアと配下たちに降り注ぎ、大きなダメージを与える。

「うぐぐぐ…このわらわがここまで追い詰められるとは!!流石は創造の神…一筋縄ではいかないというわけだな。よかろう…ここは総攻撃でねじ伏せるまでだっ!!

ニルヴィニアの言葉を受けた配下たちは総攻撃を仕掛けるべく、一斉にアルセリオスの方へと向かっていく。

「おうおうおう…てめぇ、よくもニルヴィニア様に深手を負わせてくれたな!!この俺様がぶん殴ってボロ雑巾にしてやるから覚悟しておけよぉっ!!

「ニルヴィニア様…ここは配下たちによる見事な采配を見せよう!!

「…遊んであげるわ、創造神。」

配下たちが力の限りアルセリオスを攻めるが、アルセリオスは素早い身のこなしでニルヴィニアの配下たちの攻撃を次々とかわしていく。配下たちの攻撃を回避し続けるアルセリオスだったが、背後からニルヴィニアの不意打ちを受け、その場に崩れ落ちる。

 「うぐっ…不意打ちとは卑怯なり!!あなたたち、神に逆らうことがどれだけ重罪なのか分かっているのですかっ!!

不意打ちを受けたアルセリオスの言葉の後、ニルヴィニアは灼熱王と鎧覇王にアルセリオスを羽交い絞めにするようにと命じる。

「ほう…ずいぶんと手こずらせてくれたようだな。だがもう遊びは終わりだ。グラヴィート、マグマ・レンソン!!そいつを羽交い絞めにして動きを封じろ!!

ニルヴィニアの命を受けた灼熱王と鎧覇王はアルセリオスを二人がかりで羽交い絞めにし、完全に動きを封じる。

「へへっ…こっちにきやがれっ!!ひとつでも余計な真似をしたらボロ雑巾にしてやるぜっ!!

「くっ…汚らわしい者めっ!!離しなさ…あぐぅっ!!

配下の二人に羽交い絞めにされているアルセリオスはその状況から抜け出すべくマグマ・レンソンの腕に噛みつく。怯んでいる隙に脱出を試みるが、マグマ・レンソンの怒りの拳の一撃を受け再びつかまってしまう。

「こ…こいつ!!俺の腕を噛みやがった…もう許さねぇ!!ニルヴィニア様、こいつぶっ殺していいか!!

「わらわは奴を羽交い絞めにしろと言ったが、殺していいとは言ってはいないぞ…マグマ・レンソン、出すぎた真似は以後気を付けたまえ…さて、そろそろ止めといくか。」

ニルヴィニアは自らの腕を巨大な鬼の頭部に変え、アルセリオスを一呑みにする。創造の神をのみ込んだ瞬間、ニルヴィニアの体が徐々に禍々しい姿へと変貌を遂げていく。

 「フハハハハハッ!!創造の神を我が内に取り込んだことにより、私は神の如き全智全能の力を得た…まずは手始めにこの黄金郷を浮遊要塞に変えるとしよう…。」

ニルヴィニアが目を閉じて強く念じた瞬間、黄金郷は禍々しい魔宮へと姿を変える。ニルヴィニアによって浮遊要塞と化した黄金郷は徐々に降下を始め、地上界へと向かっていく。

「配下どもよ…これからはこのわらわが新たなる創造の神だということを地上界の者たちに思い知らせてやろうぞっ!!地上界に到達するまでには約一日はかかる…それまでわらわの見事なる浮遊要塞の内部を見て回るとよい。」

ニルヴィニアは配下たちにそう告げた後、地上界に到達するまで瞑想に取り掛かる。創造の神を呑み込みあらゆる物を生み出すことのできる創造の魔力を手にしたニルヴィニアは、浮遊要塞を使いフェルスティア制圧のために動くのであった……。

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