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蘇生の章2nd第百一話 死闘の終結

 戦線に復帰したクリスの活躍により、戦況は一気にリリシア側が優勢となった。だがしかしジャンドラは死霊が込められた黒き炎を吐き出してクリスを襲うが、アストライアの盾を構えて防御する。しかし放たれた黒き炎は防御していてもクリスの生命力を奪い、徐々に防御の構えが解かれようとしていた。クリスが防御の構えが完全に解かれようとしたその時、遅れて玉座の間に来たヴァネッサの放った光の矢を受けて態勢を崩したことにより、クリスは危機的状態から逃れることに成功した。ヴァネッサはその後も光の矢で猛攻を仕掛けジャンドラの死霊の生成器官を破壊した後、戦乙女と連携しジャンドラを追い詰めていくのであった……。

 

 ヴァネッサが援護射撃を行う中、戦乙女とクリスは激しい剣戟を叩きこみジャンドラにダメージを与えていく。ジャンドラが態勢を崩した瞬間、クリスは神帝の斬撃を繰り出しジャンドラに大きなダメージを与えた後、爆炎化(オーバードライブ)状態となったリリシアが術を唱え、ジャンドラの体を炭化させるまで焼き尽くし、長き戦いに決着がついたと思われた。しかしジャンドラはリリシアの放った蒼き炎に包まれている間に瞑想を行い、死ぬ手前のところで完全回復を果たしていたのだ。圧倒的不利な状況に陥ったリリシアはジャンドラを完全に葬り去るべく、セルフィと協力してジャンドラの体内に侵入し禁忌の炎技「オーバーヒート」を発動させ、体の内側から致命的なダメージを与えることに成功した……。

 

 リリシアの決死の作戦により、ジャンドラを完全に葬り去ったかのように思われた。だが死霊を失ったジャンドラは暴走を始め、体から無数の触手を生やしリリシアの方へと襲いかかってくる。

「ゴゴゴゴ…オノレ!!小娘ドモメ……コロス!!

「やばいわね…どうやらジャンドラは私を狙っているわ。しかし私はオーバーヒートの反動で術は一切使えない状態だからこの場は戦乙女たちに任せて、仲間とともに王宮の外に逃げるしかないわっ!!

クリスはオーバーヒートの反動で10歳ほど若返ってしまったリリシアを抱え、傷つき倒れた仲間たちのもとへと走っていく。ジャンドラは無数に生えた触手を鞭のようにしならせてクリスを攻撃しようとするが、間一髪のところでオルトリンデが救援に入る。

「ジャンドラ…これ以上その者たちには手出しはさせんっ!!ここは私が相手だっ!!

「オルトリンデ…小癪ナ真似ヲ!!ダガアノ小娘ダケハ絶対ニ逃ガサンッ!!貴様ラ戦乙女ノ気高キ魂ヲ喰ライ尽クシタ上デ…皆殺シニシテヤルッ!!

仲間たちのもとへと向かおうとするクリスを殺し損ねたジャンドラはオルトリンデを怒りの眼で睨んだ後、次々と触手を伸ばしオルトリンデを襲う。しかしオルトリンデは素早い動きで触手の一撃をかわし、閃光の剣技を放つ態勢に入る。

 「我が剣に集まりし閃光の魔力よ…悪しき者に聖なる裁きを与えんっ!!スパークル・レイ!!

オルトリンデがレイピアの切先をジャンドラに突きつけた瞬間、切先に集められた閃光の魔力が聖なる雷となってジャンドラの体を貫く。オルトリンデの攻撃の後、シュヴェルトライテとセルフィが追撃を加え、ジャンドラを追い詰めていく。

「死霊王ジャンドラ…今日こそ貴様を討つっ!!黒死邪刀術…特式零ノ型、神鎚(テスタメント)ッ!!

「シュヴェルトライテ様…ここは私も助太刀いたしますっ!!龍神脚(ドラグヌス・フェムル)ッ!!

シュヴェルトライテの刀術とセルフィの龍の如き足技が同時に炸裂し、ジャンドラは大きく態勢を崩しその場に倒れ込む。一方ジャンドラの魔の手から逃れたクリスは仲間たちのいる場所へと到着し、仲間たちにヘルヘイム王宮の外に出るようにと伝える。

「みんな、今すぐここから出るわよっ!!私がジャンドラの体内に入り込んでオーバーヒートで仕留めたと思ったら暴走してまた動きだしたのよ!!今は戦乙女が玉座の間で食い止めているから、今のうちに逃げるわよっ!!

オーバーヒートの反動で子供の姿になってしまったリリシアの姿を見たディンゴは、驚きのあまり唖然となっていた。

「お…お前、まさか!!あの禁忌の技『オーバーヒート』を使ってしまったのか!?

「あの時はあれを使わなければジャンドラを倒せなかった…だから仕方なく使っただけよ。だがその反動で10歳ほど若返った姿になってしまったけどね。それより早く逃げないと奴がこっちに来るわよ!!

リリシアの言葉の後、ゲルヒルデがジャンドラとの戦いで傷ついた仲間たちの体力を回復させておいたという旨を伝える。

「リリシア様、傷ついた仲間たちの体力は私が回復させておきました。」

「ありがとうゲルヒルデ。これなら全員無事に王宮の外に出られるわっ!!みんな、早く王宮の外に向かいましょう!!

暴走状態となったジャンドラの相手を戦乙女たちに任せ、クリスたちはヘルヘイム王宮の外へと向かうのであった……。

 

 クリスたちがヘルヘイム王宮の外へと向かう中、今も玉座の間では戦乙女たちとジャンドラが激しい戦いを繰り広げていた。

「くっ…これだけ斬ってもまだ死なんかっ!!セルフィ…ここはお前の出番だ!!

ひたすらジャンドラに斬撃を加え続けるシュヴェルトライテの言葉を受け、セルフィは両腕に闘気を集め波動弾を放つ態勢に入る。

「リリシアがジャンドラの体内で最大級の一撃をお見舞いしてくれたおかげで戦いやすくなったわ。あとは私に任せなさいっ!!

「紫ノ髪ノ小娘ハ取リ逃ガシテシマッタガ…貴様ラダケハ必ズコノ私ガ葬リ去ルッ!!!

怒りに震えるジャンドラは体から触手を鞭のようにしならせ、セルフィに襲いかかる。しかし伸ばした触手はヴァネッサの光の矢によって切り落とされ、セルフィは触手の直撃を免れる。

「セルフィ…ここは私たちでジャンドラをひきつけるから、精神集中に専念してちょうだい!!

「ありがとう…あなたたちが協力してくれると精神集中に専念できそうね…ではよろしく頼んだわよ!!

セルフィが精神集中に専念できるよう、戦乙女たちはジャンドラをひきつけるべく行動を開始する。オルトリンデとシュヴェルトライテは武器を構え、体から無数に伸びる触手を切り落としセルフィのサポートに回る。

 「オルトリンデ…奴の精神はすでに崩壊し、全てを破壊することしか頭にないようだ。腐食した体から無数に生える触手はあらゆる生命を捕食し、その生物の魂を死霊に変えて奴の栄養にするのだ。こんな危険な奴を野放しにするわけにはいかない…ここで葬り去らなければジャンドラは捕食を完了しまた元の姿に戻ってしまうからな。」

シュヴェルトライテがジャンドラの体から伸びる触手を切り落としていく中、オルトリンデは閃光の剣技でジャンドラの体にダメージを与えていく。

「奴にとっては私たちの行動は無駄な悪あがきだが…私たちが攻撃を与えていけばいずれは倒せるはずだっ!!シュヴェルトライテ、攻撃の手をやすめるでないぞっ!!

シュヴェルトライテとオルトリンデが斬撃でジャンドラを攻める中、ヴァネッサは精神を集中させて光の弓を引き絞り、ジャンドラに狙いを定める。

「よし…狙いは十分定まったわ。奴の心臓を撃ち抜けばかなり動きを止めることができるかもしれないわっ!!

ジャンドラの腹部に狙いを定めたヴァネッサは光の弓を引き絞り、ジャンドラの心臓めがけて光の矢を放つ。放たれた光の矢はジャンドラの心臓に突き刺さり、ジャンドラは激痛のあまりその場に崩れ落ちる。

「ウググ…ヴァルトラウテメッ!!私ノ心臓ヲネライヤガッタナッ!!

「言ったでしょう…今度戦うときは必ず逃がしはしないって!!さぁセルフィ、一気に蹴りをつけてちょうだいっ!!

その言葉の後、精神集中を終えたセルフィは両腕の闘気を巨大なエネルギーの塊に変えてジャンドラの方へと放つ。セルフィの手のひらから放たれた巨大な波導弾は玉座の間の天井を破壊しながら、ゆっくりとジャンドラの方へと進んでいく。

「集められた我が闘気よ…巨大な波導弾となりて対象を跡形も無く吹き飛ばさんっ!!

セルフィの放った巨大な波導弾はジャンドラの体を突き抜けた瞬間、ジャンドラは断末魔の叫び声を上げながら跡形も無く砕け散り、長き戦いが終結する。

 「グッ…グオオォォッ!!ナ…ナゼダ…コノ私ガ、戦乙女ゴトキニ…ギャアアァァッ!!

最後の断末魔の叫びの後、ジャンドラとの死闘を終えた玉座の間にいる者たちは勝利の喜びを分かち合う。

「これで…ジャンドラとの長き戦いは終わったな。これで諸悪の根源はこの天界から消えた。」

「奴が倒れたことで、第二次天界大戦(スカイマキア)は終結した。さて、我々もヴァルハラに戻るとしよう。セルフィ、今夜はヴァルハラでジャンドラ討伐祝いの宴をするのだが、そなたも来るか?

オルトリンデがヴァルハラに来るようにと交渉すると、セルフィは嬉しそうな表情を浮かべて交渉に応じる。

「えっ…本当ですか!!エンプレスガーデンの女帝であるこの私がジャンドラ討伐祝いの宴の席に参席してもいいのですか!?

「いいのですよ…あなたがジャンドラをにとどめの一撃を放ったんですからね。さぁて、ヴァルハラに戻ったら宴の準備を始めるわよっ!!

ヴァネッサがそう言った後、ジャンドラとの戦いを終えた戦乙女たちとセルフィは玉座の間を後にし、ヴァルハラへと戻るべくヘルヘイム王宮の外へと向かうのであった……。

 

 一方ヘルヘイム王宮の外に出たクリスたちは、ヴァルハラへと戻るべく準備を進めていた。玉座の間のジャンドラの生命反応が消えたことを感じたリリシアは、仲間たちに戦いの決着がついたことを知らせる。

「どうやら玉座の間では決着がついたみたいね…ジャンドラの生体反応が完全に消えたわ。どうやら戦乙女たちが勝利を収めたみたいね。」

オーバーヒートの反動で子供のような姿になってしまったリリシアの姿を見たエルーシュは、驚きの表情を浮かべながらリリシアに問い詰める。

「ふぅ…長い戦いが終わって一件落着だな。だがリリシア…お前はなぜ子供のような姿になってしまっているんだ…知っている限りでもよいので詳しく教えてくれ…。」

「今からその時の一部始終を話しておくわ。戦乙女たちと協力してジャンドラと戦っていたが、あと一歩のところで葬れるというところで瞑想を使われてしまい戦況が一気に逆転してしまったわ。私は確実に奴を葬るべく、エンプレスガーデンの女帝であるセルフィの力を借りてジャンドラの体内に入り込み禁忌の炎技であるオーバーヒートを発動させジャンドラに致命傷を負わせることに成功した。しかし禁忌の技ゆえにその反動は凄まじく、子供の姿に戻ってしまったのよ。」

事の経緯を聞いたエルーシュは、子供の姿になってしまったリリシアの身を心配する。

「そうか…わかった。で、元の姿に戻れるのか?

「心配しないで。一日休めば失った魔力が戻り元の姿に戻れるわ。あっ…戦乙女たちが戦いを終えて王宮から出てきたわ。」

リリシアの言葉の後、ジャンドラとの死闘を終えた戦乙女たちとセルフィがヘルヘイム王宮の扉を開け、先に王宮の外に来ていたクリスたちと合流する。

 「よかった…みんな無事のようだな。諸悪の根源であるジャンドラは私たちの手で完全に葬り去った。皆の者よ、死霊王ジャンドラを打ち倒したことをオーディン様に報告するためにヴァルハラに戻ろう。」

オルトリンデがクリスたちの無事を確認すると、シュヴェルトライテがヴァルハラへと続く闇の回廊を開く。

「ふぅ…ジャンドラという脅威が去り天界に平和が戻ってきたな。私がヴァルハラに通じる道を開こう。闇の回廊(ダークネス・コリドール)!!

ジャンドラとの長く激しい死闘を終えたクリスたちはジャンドラを葬ったことをオーディンに報告するべく、闇の回廊を使いヴァルハラへと戻るのであった……。

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