蘇生の章2nd第七話 シャオーレ強襲!!

 

 長く険しい天への道を制覇し、煌翼天使セディエルと共に天界へと足を踏み入れたクリスたちはソウルキューブの魂を解放する手段を知る者を探すべく、一行は第一の目的地であるシャオーレへとやって来た。クリスたちはしばらく市場を散策した後、少しでもソウルキューブに関する情報を得るべくシャオーレの宮殿にいる長老を訪ねようとしたが、槍を構えた衛兵の厳重な警備により、宮殿内に入ることができなかったが、セディエルの交渉のおかげで宮殿への立ち入りを許され、一行は長老のいる大広間へと向かい、シャオーレの長老にソウルキューブのことについて尋ねると、ソウルキューブに封じられている魂を解放できる者はヴァルハラと呼ばれる大宮殿にいるオーディンだけだということを知り、クリスたちはソウルキューブに関する有力な情報を得ることができた。

 

 長老の話の後、爆発が起きたかのような轟音が宮殿内に響きわたる。その轟音の後、傷ついた兵士が長老に駆け寄り、シャオーレがヘルヘイムの魔物に襲撃を受けているとの旨を報告する。そのことを聞いたクリスたちはシャオーレを救うべく、武器を手に魔物討伐へと向かうのであった……。

 

 シャオーレを襲う魔物を倒すべく市場へと足を踏み入れたクリスたちは、その凄惨な光景に言葉を失っていた。

「な…何よこれ……?

「さっきまでここは露店で賑わっていたが、魔物の襲撃により壊滅状態ね…。どうやらここに魔物の気配を感じるわ。みんな、武器を構えて戦闘の準備をっ!!

魔物の気配を感じたカレニアは、クリスたちに武器を構えるようにと命じる。全員が戦闘態勢に入った瞬間、上空から翼を生やした魔物がクリスたちの前に降り立った。

 「ほう…まだ生きている奴が居やがったか。俺の鋭い爪で切り刻まれたくなかったらおとなしく降伏することだなっ!!

ヘルヘイムに生息する中級魔物のウイングデーモンは、尖った爪をクリスたちにちらつかせ、威嚇する。

「そんな威嚇なんて、怖くも何ともないわっ!!

ウイングデーモンに先制攻撃を仕掛けるべく、クリスは武器を構えて敵のほうへと走っていく。ウイングデーモンとの距離を縮めた後、クリスは大きくとびかかり煌めきの斬撃を放つ。

「これでも…食らいなさいっ!!

「甘いわ…小娘がぁっ!!

クリスがジャンプ斬りを放った瞬間、ウイングデーモンは一気に上空に舞い上がり、クリスの一撃を回避する。ウイングデーモンが上空に舞い上がった後、ディンゴは平均的な威力を持つ通常弾を数発分ボウガンに装填し、上空にいるウイングデーモンに狙いを定める。

 「クリス、ここは俺に任せろっ!!

クリスにそう告げた後、ディンゴはスコープを覗き込み上空へと舞い上がったウイングデーモンに狙いを定め、引き金に手をかける。

「ターゲット・ロックオン!!速射で撃ち落としてやるぜっ!

ディンゴが引き金を引いた瞬間、装填された通常弾が次々と発射口から放たれる。放たれた数発の弾丸は怒涛となってウイングデーモンの体を貫いていく。

「な…なんだその武器はっ!?天界にはそのような武器は存在しな……ぐふっ!!

ディンゴの怒涛の連続攻撃により、ウイングデーモンは最後の言葉とともに地面へと叩きつけられ息絶えた。ウイングデーモンを退けた後、クリスたちの前にシャオーレの衛兵が駆け付け、市街地が魔物の襲撃を受けていることをクリスたちに伝える。

 「市場の魔物はこれで全滅したが、ヘルヘイムの魔物が市外地へと侵攻を進めている。市街地で食い止めないとシャオーレは壊滅してしまうっ!!この町の明暗は君たちにかかっている、ぜひとも私たちに協力してくれ!!

協力してくれという要求に、クリスたちは真剣な眼差しで衛兵のほうを向き、答える。

「わかりました…。私たちもシャオーレを救うべく、協力させてください!!

「わかった。では今から市街地の魔物討伐に向かうので、私についてまいれ!!私の他に数人の衛兵が市街地で戦っているのだが、私たちでは下級魔物を倒すので精いっぱいなのでな…。」

衛兵の言葉の後、クリスたちはヘルヘイムの魔物を一掃するべく衛兵と共にシャオーレの市街地へと足を踏み入れる。クリスたちが来たときには、市街地では衛兵とヘルヘイムの魔物たちが白兵戦を繰り広げていた。

「ここがシャオーレの市街地だ。君たちがする任務はただ一つ、市街地を襲うヘルヘイムの魔物を見つけ、討伐することだ。それでは私は他の仲間とともに魔物の討伐に向かう。では頼んだぞっ!!

衛兵はクリスたちにそう言い残し、市街地で戦っている衛兵の援護へと向かっていく。衛兵が去った後、カレニアは目を閉じ、市街地の中にいる魔物の気配を感じ取る。

 「この市街地のどこかに強大な魔物の気配を感じるわ……。気をつけて先を急ぎましょう。」

強大な魔物の気配を感じたカレニアはクリスたちにそう告げた後、一行は市街地の奥へと急ぐ。市街地の大きな広場に来たクリスたちの目に、巨大な魔物の影が映る。

「いたわ!!あれが私の言っていた強大な魔物よ。しかしこれほど巨大な魔物だとはね…。だが臆しないで、勝負は心の持ちようよ。みんな、武器を構えて迎え撃つ準備をっ!!

その正体は、規格外の大きさを誇るヘルヘイムの上級魔物の中でも強大な力を持ち、頭に二本の大きな角を生やす精霊属モンスター、ギガントサラマンダーであった。炎を操る能力を持ち、敵対する者は超高熱の火炎で灰になるまで焼き尽くす凶暴かつ危険な魔物であることから、ヘルヘイムに生きる者にとっても危険な存在である。

 「な…なんてことなのっ!?ヘルヘイムに生息する超大型の魔物、ギガントサラマンダーがこんな市街地に…!!みんな、私たちの力では敵う相手じゃないけど、シャオーレを守るために奴と戦うしかないわ……。」

セディエルの言うとおり、体格差の違うクリスたちの力では到底ギガントサラマンダーを倒すことなどできない。しかしそんな困難を振り払うかのように、リリシアが一つの提案を出した。

「いい作戦を思いついたわ!!ここは奴の足を狙い、転倒を狙いましょう。どんなに巨大な魔物でも、ひとつの足を狙えば立っていられなくなるものよ。転んだ時はまさにチャンス…一気に頭部に攻撃を仕掛け、奴の角を折るわよ!!

リリシアが作戦内容を話した後、ゲルヒルデが率直に意見を述べる。

「リリシア様、足を狙って転倒を狙うとは……なかなかの考えね。では作戦を実行するにあたり、ここは二手に分かれて奴と戦うもいいかもしれないわ。まずはクリスとカレニアとディンちゃんが足を狙い、私とリリシア様が遠くから術で援護する作戦でどうかしら?

ゲルヒルデが出した意見に、リリシアは首を縦に振り了承のサインを送る。

 「そうね。私とゲルヒルデが力を合わせれば、奴を足止めできるかも知れないからね。剣の使い手であるクリスとカレニアは近接攻撃で攻められるし、ディンゴはボウガンで遠隔射撃で足を狙えるわね…。それじゃあみんな、早速作戦を実行に移すわよっ!!

作戦開始を告げるリリシアの声とともに、クリスたちは二手に分かれてギガントサラマンダーを迎え撃つ。クリスとカレニアは剣を構え、ギガントサラマンダーの足へと駆け寄り、攻撃を仕掛ける。

「クリス、ここは一気に攻めるわよっ!!

「シャオーレを救うためにも、一緒に頑張りましょう!!

ギガントサラマンダーの足へと向かったクリスとカレニアは、華麗な剣さばきでギガントサラマンダーの足を次々と切り裂いていく。クリスとカレニアによって足を狙われているギガントサラマンダーは、クリスたちの気配に気づいたのか、足をじたばたさせてクリスたちを襲う。

「ぐおおぉ…足が痛むと思ったら、お前たちの仕業だったのかっ!!

ギガントサラマンダーが足を動かすたび、強烈な地響きがクリスたちを襲った。その巨体から放たれる震動により、クリスとカレニアは大きく態勢を崩してしまった。

 「奴が私たちの気配に気づいたわ。ディンゴ、援護をお願いっ!!

巨体から放たれる地響きによって動けないカレニアは、ディンゴに援護するように要求する。その声を聞いたディンゴは水の属性を持つ水流弾をボウガンに装填し、ギガントサラマンダーの足に狙いを定める。

「了解。今から援護する!!

ディンゴはギガントサラマンダーの足に照準を合わせた後、気合いとともにボウガンの引き金を引く。発射口から放たれた水流弾は、ギガントサラマンダーの足めがけて向かっていく。

「何か刺さったようだけど…気のせ……ぐわあぁっ!!

放たれた水流弾がギガントサラマンダーの足に突き刺さった瞬間、圧縮された強烈な水のエネルギーによってギガントサラマンダーは大きく態勢を崩し、今にも倒れそうな様子であった。

 「よしっ!!今の一撃で奴は大きく態勢を崩したぞっ!!リリシア、ここはお前の強力な術で一気に足に攻撃を仕掛け、奴を転倒させるぞっ!!

ディンゴの声を聞いたリリシアは、精神を集中させ術の詠唱にはいる。

「わが身に眠る闇の力よ…混沌の刃と化して対象を切り刻まんっ!!カオシック・ペインッ!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、魔姫の持つ闇の魔力が刃と化し、ギガントサラマンダーの足めがけて放たれる。リリシアが放った術の直撃を受けたギガントサラマンダーの体が、地面から離れる。

「ぐ…ぐおおおおおぉっ!!

ギガントサラマンダーの巨体が、大きな音とともにその場に崩れ落ちる。ギガントサラマンダーが動けずにもがいている隙に、クリスたちが一斉に体に攻撃を仕掛ける。

「ありがとうリリシア!!あなたのおかげで奴に集中攻撃を喰らわせられるわっ!!みんな、奴が動けない間はやりたい放題よ!!

クリスの掛け声を聞いた仲間たちは、一斉にギガントサラマンダーの体を攻撃していく。しばらく攻撃を加えた後、クリスは手に持った武器を天に掲げて術の詠唱を始める。

「荒れ狂う雷よ…悪しき者に制裁を加えんっ!!波導究極雷撃術・裁きの雷っ!!

クリスが詠唱を終えた瞬間、聖なる光が雷に変わりギガントサラマンダーの体を貫いていく。聖なる雷によって体を貫かれたギガントサラマンダーは、最後の言葉とともに息絶える。

 「こ…この俺が本気を出すまでもなくやられるとは……ぐふっ!!

長き戦いの末、ギガントサラマンダーはクリスたちの前に倒れたのであった。戦いを終えたクリスたちの前に、先ほどの衛兵が駆け付けてきた。

「いくらあのお方でもギガントサラマンダーの圧倒的な火力には敵わないので助太刀す……ええっ!?

衛兵が息絶えたギガントサラマンダーを見た瞬間、驚きのあまり言葉を失っていた。クリスは衛兵にギガントサラマンダーを討伐したことを伝えた後、その場を後にしシャオーレの宮殿のほうへと歩いていく。

「あの巨大な魔物は、私たちが倒しました。衛兵さん、これで任務完了なんですよね…。」

「た…確かに君たちの任務は完了だ。君たちのおかげで、シャオーレの市街地の魔物は全滅し、この町の中枢である宮殿を防衛することができた。それにしても、ヘルヘイムに生息する上級魔物のギガントサラマンダーをたった五人で討伐してしまうとはな……。宮殿に戻ったら、長老に討伐完了の旨を伝えるんだぞ…。」

ヘルヘイムの魔物との戦いを終えた衛兵がクリスたちにそう告げた後、市街地の見張りへと戻って行った。ギガントサラマンダーとの戦いを終え、宮殿へと戻ったクリスたちは、長老に討伐完了の旨を伝える。

 「長老様…シャオーレの街を襲撃しているヘルヘイムの魔物を討伐してまいりました。」

クリスたちの言葉を聞いたシャオーレの長老は、

「おお、あなた方が魔物を倒してくれたのか…。シャオーレを救っていただいたその者たちに何かお礼をしなくてはな。衛兵よ、褒美の物を持ってまいれっ!!

クリスたちに褒美の物を持ってきてくれとの長老の言葉を聞いた衛兵は、すぐさま倉庫へと向かっていく。魔物討伐をやり遂げたクリスたちは、大広間で衛兵の帰りを待つのであった……。

 

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