蘇生の章2nd第四話 激闘!!飛竜帝ラディアバーン

 

 大宮殿での一夜の後、クリスたちは旅の支度を済ませ、謁見の間へと集まった。一行が謁見の間へと集まってから数分後、最長老の使いの者であるルーナがクリスたちの前に現れた。ルーナは最長老が腰かけている玉座の裏に隠された小さな宝石に魔力を込めた瞬間、大宮殿の隠し部屋へと続く転送陣を発動させると、クリスたちに乗るように命じる。ルーナが発動させた転送陣に乗ったクリスたちは、豪華な剣や鎧、そして魔導士が編纂したと思われる魔導書などが飾られていた。ルーナが言うには、この部屋では千年前の最長老が使っていた寝室であったが、しかし年老いた今では武器を振るえるだけの力を失い、最長老が使っていた物が散乱する物置と化しており、隠し部屋の奥には祭壇らしき建物があった。祭壇の中央には転送陣があり、どうやらここから天への道へと通じている転送陣であった。ルーナはクリスたちを天への道へと導くべく転送陣に魔力を送ったが、ルーナだけの魔力では魔力が足りず転送陣は発動しなかったが、クリスたちの助けにより魔力が復活し、天への道へと続く転送陣が発動する。クリスたちはアメリアと別れを告げた後、天界へと続く過酷な旅へと赴くのであった……。

 

 天への道へと足を踏み入れたクリスたちは広い場所に来た瞬間、竜のような巨影が彼らを横切った。不吉な予感を感じたクリスは仲間たちに武器を構えるように言った瞬間、ラディアバーンと呼ばれる巨大な飛竜がけたたましい咆哮をあげてクリスたちの前に降り立った。天への道へと足を踏み入れたエルジェの魔導士を次々と葬り去った飛竜とクリスたちの戦いが、今まさに始まろうとしていた……。

 

 「相手は巨大な飛竜よ…少しでも気を抜けば奴の餌食よっ!

クリスが仲間たちにそう言ったあと、武器を構えてラディアバーンのほうへと向かっていく。ラディアバーンは翼を大きくはばたかせ、向かってくるクリスを押し戻そうとする。

「フハハハハッ!!私の方へと向かってくるか…ならば押し戻すのみっ!!

ラディアバーンの翼から放たれる風圧により、クリスの体が徐々に後ろへと押し戻されていく。クリスは風圧に負けまいと、自らの足に力を込めて走り出す。

「羽ばたきの風圧で…前に進めないっ!!

翼から放たれる強烈な風圧が、クリスとラディアバーンとの距離を徐々に離していく。リリシアはクリスをサポートするべく、六枚の翼を広げてクリスのほうへと近づく。

 「クリスは私がサポートするわっ!!後のみんなは奴の背後にまわり、一気に奇襲攻撃をお願いっ!!

リリシアが仲間たちに指示を出した後、六枚の翼をはばたかせ、ラディアバーンの翼から放たれる風圧を相殺する。

「わ…私の風圧を相殺するとは……。だが、私の力をなめるなよっ!!

その言葉の後、ラディアバーンはリリシアのほうを向き、口を大きく開き炎のエネルギーを集め始める。

「私のことは気にしないで…。クリス、急いで奴の懐に入り、一気に攻撃をっ!!

リリシアがクリスにそう告げた後、ラディアバーンは口から高熱の炎弾を吐き出し、リリシアを襲う。魔姫は六枚の翼をはばたかせて大きく空中に舞い上がり、炎弾の一撃をかわす。

「悪いけど…私の力もなめないでいただこうかしら……。魔界で学んだ魔導術の高等技術…あなたの体で思い知るがいいわっ!!

リリシアは体に眠る闇の魔力を解放し、ラディアバーンに最大術を放つ態勢に入る。一方背後からラディアバーンを攻撃しているクリスたちは、転倒を狙うべく足を集中攻撃していた。

 「俺とクリスが足を攻撃して転倒を狙う!!ゲルヒルデとカレニアは尻尾を重点的に狙ってくれっ!

ディンゴの言葉の後、クリスたちは二つの班に分かれ、ラディアバーンに攻撃を仕掛ける。クリスとディンゴが足を狙い、ゲルヒルデとカレニアが尻尾を攻撃する作戦を決行する。

「カレニアさん…あの竜の大きな尻尾を切断するには、かなり大きなダメージが必要ですわ…。まずは私が離れて術を放ち、尻尾にダメージを与えますっ!!

カレニアにそう告げた後、ゲルヒルデは魔導書を開き術の詠唱を始める。

「天より降り注ぎし隕石の欠片よ……悪しき者に裁きを与えよっ!!メテオ・フォールっ!!

詠唱の後、天より巨大な隕石がラディアバーンの尻尾に降り注ぐ。尻尾に隕石の一撃を受けたラディアバーンは、苦痛に顔を歪めながら怯む。

 「ありがとうゲルヒルデっ!!あとは私が一気に尻尾を切り落とすわっ!

その言葉の後、カレニアは大きく飛び上がりラディアバーンの尻尾に狙いを定める。切断できる箇所を見つけたカレニアは、両腕に力を込めてサンブレードを振り下ろす。

「ぐっ…ぐわああぁっ!!私の尻尾が…尻尾があぁぁっ!!

遠心力が加わったサンブレードの斬撃が、ラディアバーンの尻尾を切り飛ばす。カレニアの一撃によって尻尾を切断されたラディアバーンは、激痛のあまりその場に蹲る。ラディアバーンが蹲っている隙に、リリシアは術の詠唱を始める前に、クリスたちにその場を離れるようにそう言う。

「みんな、ラディアバーンから離れてっ!!ここは私の術でとどめを刺すわ。」

リリシアの言葉を聞いたクリスたちは武器を収め、急いでラディアバーンから離れる。クリスたちが安全な場所へと移動したあと、リリシアは術の詠唱を始める。

 「わが身に眠る闇黒の魔力よ…すべてを破壊する球体となれ!!ダーク・デストラクションっ!!

リリシアが詠唱を終えた瞬間、すべてを飲み込み破壊する巨大な闇の球体がラディアバーンのほうへと放たれる。ラディアバーンは急いで態勢を立て直し空中に舞いあがろうとするが、リリシアの放った暗黒球から発せられる強力な引力により、ラディアバーンの体が徐々に引き寄せられていく。

「な…何が起こっているのだっ!!私の体が…動かぬっ!

「きゃははっ♪動けなくて残念ね…。私のダーク・デストラクションは強い引力で対象を飲み込み、破壊する闇の球体よ。この球体に飲み込まれたら最後、あなたの体は強力な闇の重力によって粉砕されるわ…。」

リリシアの言葉の後、ラディアバーンの体が完全に闇の球体の中へと吸い込まれる。闇の球体の中に閉じ込められたラディアバーンの体に、押しつぶされそうな痛みが走る。

「ぐおおぉっ!!体が…押しつぶされそうだっ!

重力を受けて、ラディアバーンの体が軋み始める。身を包む堅牢な鱗が次々と剥がれ、頭に生えた雄々しき角も、見るも無残に真っ二つに折れるほどであった。

 「さて……そろそろ終わりにして差し上げますわっ!!

パチンッ――と指を鳴らした瞬間、闇の球体は凄まじい爆発とともに消え去った。その爆発の後、完膚無きまでに打ちのめされたラディアバーンの巨体がクリスたちの前に落下する。

「く…くそっ!!人間ごときにこの…私がやられるとは…だが私を倒したところで、あと二人いるの天の番人は私より強い…貴様らにかなう相手ではな……ぐふっ!!

リリシアの術が止めとなり、ラディアバーンは最後にそう言い残し、息絶えた。

「ラディアバーンのほかにもう一人天の番人がいる…か。奴より強いとなれば、苦戦は必至ね。だがみんなで力を合わせればきっと勝てるわ…。さぁ、張り切って先に進むわよっ!!

天の番人の一人であるラディアバーンを打ち倒したクリスたちは、天界へと続く長い道を再び歩き始めるのであった……。

 

 その頃とある砦では、緑色の髪をした女の天の番人がラディアバーンが倒された事を報告する。そのことを聞いた天の番人の男は、驚きのあまり腰を抜かす。

「天の番人の一人、ラディアバーン様が倒されました…。」

「あ…ありえん……!!あの飛竜帝と呼ばれるラディアバーンが倒されるとはな…久々に強き者と戦えそうでうずうずしてきたぜ…。煌翼天セディエル様、次は俺に任せてくれっ!!

天の番人の言葉の後、自分の背丈だけある巨大な大剣を手にした大柄の体型の天の番人が名乗り出る。

 「粉砕将プレシアス…まさかあなたが出ることになるとはね…。元破壊神の兵団の下で破壊の限りを尽くしてきた荒くれ者だが、大規模な兵団の人員削減によって兵団から退団された悲しき猛者…さぁ、その怒りを侵入者にぶつけるのですっ!!奴らは天界を目指すべく、この砦を訪れるでしょう。砦に来る前に奴らを葬りさるのですっ!!

セディエルがプレシアスに侵入者の討伐するようにと命じた後、プレシアスは大きな剣を背負いその場を後にし、侵入者討伐へと向かうのであった……。

 

 ラディアバーンとの戦いの後、クリスたちは休憩をしながら二日間途方もなく長く険しい天への道を歩いていた。数時間足を進めたその時、建物らしき物体クリスたちの目に映る。

「あそこに建物らしきものがあるわ。みんな、あの建物があるほうに向かいましょう!!

「そうね…確かに行ってみる価値はありそうね。人がいそうな感じがするからね。」

カレニアの言葉の後、一行は人の気配がする建物のほうへと足を進める。クリスたちが建物のほうへと近づくにつれ、徐々に建物の輪郭がはっきりとなり、大きな砦がクリスたちの目に映る。

 「建物の正体は砦だったわ。しかしなぜこんな所に……?とりあえず、中に入ってみましょう。」

不思議に思ったクリスが砦の中へと入るべく、砦の扉のほうへと向かおうとした瞬間、突如上空から大きな剣を背負った大柄の男がクリスの前に降りてきた。

「だ…誰っ!?

「侵入者とは貴様とその連れのことか…天への道へと入り込んだ侵入者を排除しろというセディエル様の命により、この粉砕将プレシアスが相手になってやろうっ!!たとえ女でも容赦はしない…本気で行かせてもらおうぞっ!

突如クリスたちの前に現れたプレシアスは背負った大剣を構え、クリスたちを迎え撃つ態勢に入る。クリスはいったんプレシアスから離れた後、仲間たちに武器を構えるようにそう言う。

 「敵襲よ!みんな武器を構えてっ!!

クリスの声を聞いた仲間たちは、一斉に武器を構えて迎撃態勢に入る。クリスたちが武器を構えた瞬間、プレシアスは大剣を地面に突き刺し、クリスたちを威圧する。

「ほう…私と戦おうというのか。ラディアバーン様を倒した実力、見せてもらおうぞっ!!

プレシアスは大きな剣を構え、ゆっくりとクリスたちのほうへと近づいてくる。

「奴がこっちに近づいてくるわ……。だが大剣が重い分、動きが鈍いわ!ここは私たちの素早さを生かしてかく乱攻撃で攻めるわよっ!!

武器を構えたクリスはその身軽さを生かし、プレシアスをかく乱する。だがプレシアスは戸惑う様子はなく、大剣を握りしめ精神を集中させる。

「小娘め…こしゃくなマネをっ!!その素早さで私をかく乱するつもりだが、そうはいかんぞっ!ふんっ!

「きゃあぁっ!!

プレシアスは両腕に力を込め、大剣で自分の周囲を薙ぎ払う。薙ぎ払いによって生じた衝撃波により、クリスは大きく吹き飛ばされ、その場に倒れる。

 「大剣で自分の周囲を薙ぎ払っただけなのに…衝撃波でクリスを吹き飛ばすほどの威力を持つなんて…。どうやらあいつにはかく乱は通じないみたいね。ここは私が術で攻撃するから、あなたたちは下がっててちょうだい…。」

プレシアスの一撃によって倒れたクリスに代わって、リリシアが戦いの場に現れる。

「よくもクリスを……あなただけは私が必ず倒すっ!!

「ほう…また女か、笑わせるぜ。力ももたぬ無力な女ごときが、俺に勝負を挑むとは百年早いわっ!!

プレシアスの侮辱の言葉に、リリシアは怒りの表情を露にする。

「言っておくけど、女を舐めると痛い目に会うわよ…。さぁ、かかってきなさいっ!!

怒りに燃えるリリシアは髪飾りを鉄扇に変え、プレシアスを迎え撃つ態勢に入る。圧倒的な力を持つ粉砕将プレシアスを前に、リリシアはどう戦う!?

 

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